CVR10%超! ハイブリッド広告で成果を出す「クリエイティブ制作」3つのポイント
GoogleやFacebook、Instagramなどの大手プラットフォームでは、AIによる最新アルゴリズムを用いた配信ターゲティングの自動化、最適化が急速に進化。CVR(コンバージョン率)を高めることが難しかったディスプレイ広告やSNS広告でもCVRが10%を超えるケースが見られるようになった。
「デジタルマーケターズサミット 2021 Summer」のセッションに、キーワードマーケティングの瀧沢貴浩氏が登壇し、同社が提唱する「ハイブリッド配信」によるディスプレイ広告、SNS広告と、そこで「成果を出せる」広告クリエイティブの考え方・作り方について解説した。
検索広告、ディスプレイ広告、SNS広告——運用型広告の性質とメリット・デメリット
瀧沢氏は2016年にキーワードマーケティングに入社し、広告運用チーム、マーケティングチーム、インサイドセールスのマネージャーを経て、2019年4月より取締役COOを務めている。
セッションの冒頭、瀧沢氏は「運用型広告の基本」について説明した。運用型広告は「リアルタイムに入札額やクリエイティブ、ターゲットなどを変更・改善しながら運用し続けていく広告」と定義される。
クリックされると広告費が発生するクリック課金で、リアルタイムにさまざまな設定が変更可能。オークションが行われ、入札額および広告品質により掲載順位が決定されるシステムだ。また、いつ、どこで、どんな人がクリックしたのか、どれだけの広告費を使ったのか、などのデータがリアルタイムで計測・分析できる特徴を持つ。主要な運用型広告は以下の3種だ。
- 検索広告:キーワードを検索した結果画面に表示される広告
- ディスプレイ広告:Webサイトの枠に表示される広告
- SNS広告:タイムラインなどに表示される広告
検索広告では「ブランド名やサービス名、社名などを含む検索」でCVRが10%を超えることは難しくないと瀧沢氏は述べた。これは、検索広告がユーザー自ら情報を取得しに行く「プル型広告」であるという性質による。
一方、ディスプレイ広告やSNS広告は情報を提供する「プッシュ型広告」である。ユーザーの意思や行動とは関係なく配信されるため、当然ながらCVRは低くなってしまう傾向がある。
しかし、最近では、プッシュ型のディスプレイ広告やSNS広告でも、CVRが10%を超えるケースが増えてきている。それが同社が「ハイブリッド広告」と提唱する配信手法だ。
ハイブリッド配信を担う広告メニューが拡大している
ハイブリッド広告を運用型広告のマーケティングファネルにあてはめると、もっともコンバージョンに近い「今すぐコンバージョン」と「種まき」の間に位置する。コンバージョンも獲得できてしまううえに、新しいお客様にサイト訪問をしてもらう「種まき」も行える広告メニューということだ。
そして最近は、このハイブリッド広告に該当する、CVに近づけていくための配信メニューが主要プラットフォームで拡充されてきている(図の赤枠部分)。
機械学習アルゴリズムでCVRが10%を超えるハイブリッド広告の仕組み
ハイブリッド広告は以下のような特徴を持つ。
- クリック単価が安価で、かつCV率が高い
- 今すぐコンバージョンと種まきの両立が可能
- リード獲得施策との相性がよい
瀧沢氏はこの中から、安価なクリック単価と高いCV率の仕組みについて語った。
検索広告でクリック単価が高騰するのは、広告枠が限られているからだ。たとえば競合性の特に高い「リスティング広告」というキーワードで検索した場合、クリック単価は数千円にまで跳ね上がってしまう。限られた広告枠に対して配信したい広告主が増えるほどクリック単価が上がっていくためだ。
一方、ハイブリッド配信として機能するのはSNS広告やディスプレイ広告となる。SNSを開いているデバイスの数だけ、Webサイトの数だけ広告枠が存在し、配信面は膨大な数にのぼる。そのためクリック単価を大幅に抑えることができるわけだ。
しかし、ユーザー層と配信面が膨大であるがゆえ、運用が煩雑になり、人の手ではターゲティングしきれない問題があった。“ざっくりとしたターゲティング”で配信対象を広げた場合、争うライバルが少ないためクリック単価は抑えられるものの、「ただのばらまき」になってしまい、見込客の獲得率向上は期待できなくなる。
反対に仮説を立てて細かくターゲティングする方法もある。しかし、「経営者、男性、40代……」というように仮説を絞り込んでいくと、配信対象が狭まって競合が増え、検索広告と同じようにクリック単価が高まってしまう。さらには、人の作る仮説は「想像力の範囲内」という限界がある。そもそも仮説自体が正しいかどうかという問題もあり、クリック単価と配信効果のバランスを取る難しさもあった。
こうしたSNS広告やディスプレイ広告の課題を解決してくれたのが、大手プラットフォームによる「機械学習アルゴリズム」である。これによりここ2~3年の間で、ターゲティングの自動化・最適化が急速に進化した。
運用者が設定するのは「地域や性別」程度の大雑把なターゲティングのみでよく、あとはアルゴリズムが膨大なユーザーから最適なターゲティングを行い、広告が配信されるたびに柔軟に最適化を行ってくれる。そのためターゲットの重複が少なく、クリック単価は安くなる(瀧沢氏)
さらに、ユーザー単位での広告の出し分け・最適化まで同時に行われているという。「思わず目を止めたくなるメッセージ、広告クリエイティブを一人ひとり変えながら高度な配信最適化が行われる」というのだ。
機械学習アルゴリズムによるターゲティングの最適化によって膨大なユーザーを効率よくターゲティングでき、クリック単価が下がることに加え、ターゲティングの精度向上とクリエイティブの配信最適化によってCVRが上がるというのが、ハイブリッド広告の特徴だ。
プッシュ型であるハイブリッド広告でCVRが10%を大きく超え、あたかも人の心を読んでいるかのような配信結果が実際に確認されている(瀧沢氏)
最新アルゴリズムに対応する広告クリエイティブの考え方
機械学習アルゴリズムによりターゲティングと配信最適化の精度は大きく向上している。では人は何に注力すべきか? それは広告クリエイティブである。さまざまな属性のターゲット、ユーザーのタイミングに適した広告を配信できるよう、広告グループや広告セットには、複数の広告クリエイティブを用意しておくことが必要となる。
複数のクリエイティブを制作する際の注意点はどのようなものだろうか。瀧沢氏は「見込み顧客のニーズに応えるメッセージ(= テキスト)を考え抜くことが非常に重要」と語り、同社の広告配信事例から、最新アルゴリズムに対応する広告クリエイティブの考え方を説明した。
ハイブリッド広告配信でカギを握る「クリエイティブ」
重視すべきはニーズに応えるメッセージ
サンプルとして用いられたのは、お役立ち資料をダウンロードしてもらう1か月間のリード獲得広告キャンペーン。3パターンのクリエイティブを配信したが、それぞれの違いはわずか前半2行のテキスト部分のみ。後半のテキストと画像は同一のものを使用したにも関わらず、サイト閲覧単価には大きな差が生まれたのだ。
このキャンペーンから得られた知見は、「クリエイティブのPDCAはまずテキストから始めるべき」というものだ。瀧沢氏はその理由として次の3点を挙げた。
- 目を惹くクリエイティブよりも悩み(ニーズ)に寄り添うメッセージの方が効果が高い
- 学習期間短縮のためのPDCAが回しやすい(画像だと制作に時間がかかり、スピーディに試行できないため)
- 実際に、たった数行の違いで成果が大きく変わる
テキストは前半部分が重要
テキスト設定は「前半部分」「後半部分」に分けて考える。プッシュ型広告ということを踏まえると、ポイントとなるのは前半部分で、「ここでいかに目と指を止めてもらえるか」を最重要視すべきという。ワードは具体性のあるものを選ぶこと。抽象的なワードによるメッセージだと反応率は大きく下がってしまうそうだ。
瀧沢氏は、NGワードとして「豊富な」「高級」「高品質」「多数の品揃え」「安全」「リーズナブル」などを挙げ、弱い言葉、凡庸な表現、抽象的なまとめ言葉などは避けるべきだとした。
また、アルゴリズムの最適配信に対応できるよう、前半部分のメッセージを複数用意することも肝要だ。
一方、後半部分は、表示されたときに「…もっと見る」で省略される部分のため「前半部分でフックが成功していれば、この部分のテキストは長くても読んでもらえる」ということだ。箇条書きや適切な改行などで、わかりやすく内容を伝えることがポイントとなる。
また、画像部分は「ユーザーが得られるもの(ベネフィット)をしっかりと訴求することが大事」で、LPの印象に合わせるようにするとよいと瀧沢氏は述べた。
3ステップで「刺さるメッセージ」のクリエイティブを作る
テキストを重要視し、前半部分に複数のメッセージを用意する。ではそのメッセージを具体的にどう作ればいいのだろうか。瀧沢氏は実際に同社で用いられているクリエイティブ制作のメソッド使い、複数のクリエイティブを作成するプロセスを紹介した。
①セグメンテーション・ターゲティングで配信の設計図を作成
まず考慮するのが「セグメンテーション・ターゲティング」だ。具体的には次の3ステップに沿って最初に広告配信の設計図を作っていく。
- 市場:商品・サービスの購入者を整理する
- セグメンテーション(分割):属性や状態などで分割する
- ターゲティング(誰に):今回の広告でどのセグメントを狙うのかを決める
ここではハンバーガーチェーンを広告主と仮定した。1の市場は「昼食にハンバーガーを食べたい層」などと整理し、2のセグメントはその市場をできるだけ網羅するように決めていく。「性別・年代・職業・注文方法」などの「属性や状態」を機械的に洗い出し、分割することがポイントだ。
このセグメントの中から広告で狙う属性や状態を選ぶと、それが3のターゲットになる。ここでの配信ターゲットは「男性・30代のビジネスパーソン・Uber Eatsを利用する人」と絞られた。
②ニーズの洗い出し
ターゲットが決まったら次に行うのが「ニーズの洗い出し」だ。在宅勤務中の30代男性で、Uber Eatsのアプリ入れている顧客の不安・不満・期待といったニーズは何かを列挙する。
【ニーズの例】
- 野菜不足解消したい
- 外に出ずにそこそこ美味しいモノを食べたい
- 塩っぽいモノをがっつり
- 夏なので辛いモノ など
列挙されたニーズの中から広告で訴求できるニーズを選択する。ここでは「夏なので辛いモノが食べたい」というニーズに訴求することになった。
③メッセージを考える
続いて、ニーズに沿った訴求メッセージの考案だ。前半部分を複数用意する。
【前半部分のメッセージ例】
- 夏にぴったり!レッドホットバーガー
- 吹き出す汗が気持ちいい!
- 夏こそ旨辛ッ!
- アツがナツいぜ!
- 8月限定!エクストリームホットな奴が登場! など
これらの訴求メッセージを同時に配信していく。
また、「半額クーポン配信中」「○月○日登場!旨辛レッドホットバーガー」など、ターゲットニーズに限定されない共通ニーズに訴求するメッセージがあれば、それも忘れずに配信して欲しいと瀧沢氏は話した。
最後に瀧沢氏は、ハイブリッド配信を成功に導くポイントとして、次の3点を総括した。
- 最新アルゴリズムの特徴を知り、クリエイティブにこだわる
- テキストで手を抜かない。特に前半部分が重要
- 顧客ニーズを適切整理し、メッセージを発信する
キーワードマーケティングでは、「広告運用コンサルティング」「運用代行」「広告運用プロフェッショナル養成講座」の3つのサービスの提供を通じ、広告の直接効果(CPA改善やCV増)にこだわった運用型広告の支援を行っている。
広告パフォーマンス診断やWeb広告についての具体的な相談などがあれば、お気軽に問い合わせてほしいと瀧沢氏は述べ、セッションを締めくくった。
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