第5回 ニーズを捉えた中間媒体での情報提供で、流入アップ!
~外部サイトにおける出稿のコツ~
現実の店舗や窓口では、目の前にいるお客が困っていればすぐにわかるし、同じトラブルが重なれば問題がおきないように施策をとる。しかし、ウェブサイトを作っているときにはお客は目の前にいないし、公開後にお客の対応をするのはウェブサーバーやスクリプトという機械だ。そのため、現実の商売では当然のように行っている接客ができない、いや忘れてしまってはいないだろうか?
今木 智隆(株式会社ビービット)
「中間媒体への情報出稿」「SMO」の重要性の高まり
SEOやLPOといったさまざまな「最適化」(Optimization)に関するトピックスを、最近ますます目にするようになった。そのなかでも、ユーザーを引き込むための考えとして、急速に重要度を増しているのが「SMO」(Social Media Optimization)だ。SMOは、オグルヴィ・パブリック・リレーションズ社のロヒット・バーガバ氏が提唱した概念であり、情報の露出を適切にコントロールし、CGM系サイトでの認知度や評判を高め、サイトへのアクセスや評価を向上させる手法である。ブログのトラックバックの活用などもこれに含まれる。日本でも大手のニュースサイトがこぞって、はてなブックマーク機能やRSS配信機能を設置するなど、検索エンジン以外の外部サイトからの流入が増える傾向にある。
SMOは、いわゆるCGM系サイトに的を絞った概念だが、合わせてチェックしなければならないのが「比較サイト」「専門ニュースサイト」などの「中間媒体」だ。中間媒体は、第三者的(公平な)メディアとしてトラフィックも多く、大きなアクセスアップを見込める媒体である。
例として、次のような状況を思い浮かべてほしい。上司に突然呼び出され、「社内インフラを整備したいから、良さそうなサーバーを選んでくれ」と言われたら、あなたはまずどうするだろうか? あるいは、「これから外貨取引をやってみよう」と思ったら、どんなサイトを訪問するだろうか?
こういった場合、ある程度の事前知識があれば、直接メーカーや証券会社のサイトを訪問することも可能だろう。
だが一方で、「どのサービスにすれば良いのか比較したい」「どういったサービスが自分にとってベストなのか情報を集めたい」と、最初の時点で悩んでしまうユーザーも極めて多いはずだ。
こういったときに、ユーザーは比較サイトやニュースサイトなどの「中間媒体」を利用し、それを経由してアクセスしてくる。数百万人、場合によってはそれ以上の数のユーザーの「通り道」として、中間媒体は機能しており、今ではほとんどの分野で大きな影響を持つようになっている。
サイトの流入源は検索エンジンやメールマガジンだけではない。いかに適切な情報をこれらの中間媒体で示すかによって、ウェブサイトのトラフィックは大きく左右されるのである(図1、図2)。
今回は、外部サイトからの流入施策として、特に日本で存在感の強い比較サイトなども含め、幅広く「外部サイト(中間媒体)におけるユーザーの行動と流入施策」について考えてみたい。
中間媒体における情報提供のポイント
こういった中間媒体において、ユーザーの行動特性に着目しアクセスアップを目指すための具体的なポイントについて、解説を行おう。
SEOやSEMが、「検索ユーザーを直接サイトへ引き込むための施策」であるのに対し、SMOや中間媒体への出稿は、「特定のサイト(サイト群)からの間接流入に対する施策」となる(図3)。
①比較・検討ニーズを捉えた情報提供
たとえば外貨取引を始めようと思って比較サイトを訪問するユーザーには、「○○証券会社の外貨取引サービスはどんなものがあるか知りたい」といった、「特定のサービスに偏った情報収集ニーズ」はあまり見られない。
むしろその一歩前の、「手数料を安く抑えて取引がしたい」「ケータイからの取引がしやすい証券会社はどこか知りたい」など、自分のニーズを満たす証券会社をより第三者的な(文字どおり「中間的な」)視点で広い選択肢から探したいという思いが強い。
そのため、中間媒体に対しては、独自サービスの詳細説明やキャンペーン・PR情報など、自社サイトの情報を単に転載して提供し、掲載してもらうだけでは、ユーザーのニーズを充足させることは難しいのだ。情報提供にあたっては、ユーザーが他社サービスと比較検討することを念頭に置き、「他社のサービスとどこが違うのか」がより明確にわかるような情報提供を心がけたい。一方的なPRはご法度だ。また、その際には、「ユーザーは何を基準に比較するのか? 手数料なのか? 知名度なのか?」といった比較ポイントをしっかりと押さえよう。
②一覧ページでの最適化
中間媒体のなかでも、特に比較媒体では、ユーザー側に「いくつもの候補を見たい」というニーズが強く存在するため、一覧ページが数多く閲覧される。そのため、この「一覧」からいかに自社の製品やサービスを選択してもらえるかによって、サイトへ引き込めるユーザーの数に大きな差が生じることとなる。
この「一覧からの引き込み」にあたっては、しっかりと出稿媒体の特性を捉えた情報出稿がとにかく重要である。たとえば、出張用のホテルを予約する場合にユーザーが好んで利用する旅行系の総合情報サイトから「楽天トラベル」と「じゃらんnet」を例として考えてみよう。
京都駅周辺のホテル・宿泊施設の一覧ページを見比べてほしい(図4、図5)。図を見れば一目瞭然であるが、同じホテルの情報であっても、2つの媒体での情報提供のスタイルはまったく異なっている。「楽天トラベル」は、文字のみでもユーザーに響く情報を届けることが必要になる。それに対し「じゃらんnet」では、写真を交えた情報提供が可能なので、また異なるアプローチをとる必要がある。
この例からもわかるように、媒体にはそれぞれの「特徴」が色濃く反映されていることが少なくない。中間媒体に情報を掲載するにあたっては、次のような事項を把握しておくべきだ。
- どんな比較項目が掲載可能なのか
- 視覚的アプローチはどの程度利用可能なのか
- 何が目立つ要素になっているのか
これらの前提に基づいて自社のPRを行うことで、費用対効果の高い出稿が実現されるのだ。
③サイトへの誘導は効果的に!
自社の製品やサービスを広く認知させたい際に、自社サイトだけでなく、各種媒体に対してプレスリリースを出稿する、あるいは機能紹介や特集ページを設ける企業が多い。しかし、単にプレスリリースを出稿した、というだけで満足をしてしまい、本当にユーザーを自社サイトへと引き込むに足る内容になっているかのチェックを怠ってはいないだろうか?
中間メディアへの情報提供は、キーワード検索にも上位表示しやすく、大きな流入源になりうるが、それだけに、ちょっとした工夫をするか否かで「ユーザーを引き込む効果」に大きな違いが生じる。図6と図7のサンプル画像を見てほしい。これは、よく見られるプレスリリースページの一例で、一見何の問題もなさそうだが、ミスを犯してしまっている。
ミスの例1
ユーザーがその製品、サービス名を知っていた場合を除いては、 「User's Eye」という名称を記憶しているわけではない。一見誘導効果が高そうなこのリンクであるが、ユーザーの立場から見れば、クリックしようという気が起きなくなってしまうのである(図6)。
ミスの例2(図7)
ユーザーがホームページに遷移しても、その製品・サービスのページにたどり着けるとは限らない。ユーザーは、その製品・サービスに興味を持ったのだから、目的とするページに最短でたどり着けることが必須要件となる。もちろん、その会社に興味を持つユーザーもいるので、リンクを置くこと自体に問題はないのが、プレスリリースの内容そのものに関心を持ったユーザーをどこへ誘導すべきか、最適なリンク先を選ぶことを心がけよう。
上記の問題点を解消する改善案としては、「リンク先の内容に興味を持ってもらえる具体的な記述にする」「個別の製品紹介ページをリンク先とする」「自社のリンクに対しては別に分けて記述する」といったパターンが考えられる(図8)。
どんなユーザーでもリンク先の内容を明確に理解できるように記述することがポイントだ。
- ユーザーの「比較ニーズ」「公平な情報を見たいという意識」をしっかりと認識し、ユーザーニーズを適える情報を提供する。また、一方的なPRはマイナスに働くことが多いことを忘れずに。
- ユーザーが経由する一覧ページにおいて、いかに自社の情報を選択してもらえるかが中間媒体攻略の肝となる。そのためには、各媒体で提供できる情報をしっかりと把握し、最適な出稿を行う。
- 自社の情報へと入ってくれたユーザーを取り逃がすことのないよう、具体的なキーワードを交えたリンクから詳細情報へと誘導する。
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