プレスリリース・ニュースリリースの書き方&活用基礎講座

見出しとリードでリリースの8割が決まる/リリースの書き方基礎講座#15[実践添削編2]

完成度の高いリリースを目指して細かな部分までチェックしていきます。

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リリースの書き方基礎講座

この連載では、主に企業の広報担当者に向けて、初めてでもわかるリリースの書き方から、ネット時代に即したリリースの書き方など、明日から役立つ基礎情報をお届けします。

前回の記事に続いて、編集部に届いた添削希望リリースの添削をお届けします。今回は匿名での紹介を望んでいるケースのため、いただいたリリースを下敷きにして、架空の会社名、商品名にすると同時に、内容を一部改変して作成したサンプルを使って解説していきます。

まず、サンプルリリースに目を通してみましょう。前回の添削記事同様、添削をしていく上でわかりやすいようにパーツごとに区切りました。

ヘッダー

報道関係者各位

株式会社イヌネコカンパニー
資本金:787,000千円
〒XXX-XXXX
長崎県長崎市XXXXXXX
TEL:(095)XXX-XXXX
FAX:(095)XXX-XXXX
http://www.example.com/

見出し

軽くて、コンパクト。さらに自立する。
実用性重視の『ドッグカー』進化型2タイプが新発売
開閉時の操作がより安全になり、日差し対策も充実。

リード

株式会社イヌネコカンパニー(本社:長崎、社長:犬猫虎象)は、軽さと扱いやすさで定評があった同社の小型犬用ドッグカー『ワンワンエル』シリーズをリニューアルし、1才まで使える『マルワン』と3才まで使える『ワンワンエル マルスリー』の2タイプを5月15日より、全国のペット用品専門店を通じて発売する。 いずれも3カ月から使用でき、近年都市部を中心に使用者が増加しているセカンドドッグカーとして適している。同社は1980年の創業以来、『飼主の視点』を大事にしており、今回のリニューアルにあたっても使用者からの意見やアンケート結果を重視し、安全性の向上、不満点の解消、機能面の充実に努めた。発売を記念したプレゼント企画も実施。応募はウェブサイトで受け付ける。

本文

■主な特徴(2タイプ共通)

1 軽量ボディ
公共交通機関を利用する際の階段の上り下り、エレベーターのないマンションの2階以上のフロアへの移動にも、負担を感じない軽量設計。愛犬を抱いたままでも持ち運びやすいショルダー付き。

2 オートロック・オート自立スタンド(特許)
たたむと自動的にロックがかかり、そのまま自立する。

3 高い安全性
5点式シートベルトを採用し、走行時の安全性を確保。また、開閉時の指鋏みを防止するため、新たな部品を採用することで、さらに安全性を高めた。

4 簡単操作 コンパクト
開閉操作は簡単。たたむとコンパクトになるので、自宅での保管や外出先での食事等でも場所をとらない、軽自動車にも収まる。

5 角度調節できる丸幌
愛犬をつつむようにカバーする丸幌を採用。日差しの方向に合わせて角度も調節できる。マルスリーには後ろからの日差しを遮る布地も付けており、紫外線から愛犬を守る。

6 2way快適シート
シートカバー取り付け、取り外しの2通りでの使用が可能。暑い季節にはシートカバーを外せば通気性のよいメッシュシートに切り替わる。外したシートカバーは丸洗いができる。

7 足を傷めないカバー付き
たたむ時、つま先がキズつくのを防ぐため、足で押す部分にプラスチック製のカバーを取り付けた。

■個別特徴

【マルワン】
・使用期間目安:3カ月~1才まで
・重量:3.5kg
・サスペンション付きタイヤ
・カラー2色ラインナップ
(レッド・ブラック)

【ワンワンエルマルスリー】
・使用期間目安:3カ月~3才まで
・重量:4.2kg
・直進性のよい、前輪旋回ロック付き
・背面から日差しを遮る布地付き
・バスケット付き
・カラー4色ラインナップ
(イエロー・レッド・グリーン・ブラック)

■アイテム一覧

商品名シート幅重量サイズ価格(税込)発売日
マルワン28cm3.5kg開:W41.5×D79×H94(cm)
閉23.5×37×H104(cm)
13,125円2009年5月15日
ワンワンエル
マルスリー
32cm4.2kg開:W43.5×D81×H97(cm)
閉23.5×40×H104(cm)
19,425円2009年5月15日
問い合わせ先

■本件に関するお問い合わせ先
メディア・業界紙・雑誌の方:営業課 TEL 095-XXXXXXXX
消費者の方:お客様相談室 TEL 095-XXXXXXXX

リリース添削係に届いたオリジナルのリリース(会社名・商品名は書き換えている)

読んでみてどう感じたでしょうか。会社側が伝えたいことは理解でき、リリースとしての最低限の体裁も整っています。記者がこのリリースを基礎資料にして記事を書くことも可能だと言えます。とはいえ、このリリースだけでは深みのある記事は書けません。記者の視点で見ると、内容に物足りなさを感じるリリースです。サイトを通してリリースを読む一般の消費者にしても同じでしょう。ではいったいどこをどのように直せばより完成度の高いリリースになるのか、改善すべきポイントを考えてみましょう。

前回同様、質の高いリリースを目指すためにやや厳しいと感じられる指摘もします。もちろん、このサンプルリリースが間違っているという訳ではありません。より完成度の高いリリースに近づけ、メディアの記事になる機会を増やすとともに、しっかりとしたメッセージを消費者に伝えるための添削だと考えましょう。

この連載でこれまで何度も書いてきているように、「ヘッダー」「見出し」「リード」「本文」とその他別紙用に分けて、直すべきポイントを具体的に説明します。

1.ヘッダー
リリースには必ず発表した日付を入れる

オリジナルのヘッダー

報道関係者各位

株式会社イヌネコカンパニー
資本金:787,000千円
〒XXX-XXXX
長崎県長崎市XXXXXXX
TEL:(095)XXX-XXXX
FAX:(095)XXX-XXXX
http://www.example.com/

左上に「報道関係者各位」とありますが、前回も触れたように、サイトなどで一般消費者にも公開するのなら、読者対象を報道関係者だけに絞る必要はありません。「報道関係者各位」を「ニュースリリース」に変えて、幅広い層に向けた情報であることをアピールした方がいいでしょう。

右側には会社名以下7行分の会社概要が書かれています。本来この位置に必要なのは会社名だけです。この例のように、その他の多くの情報を詰め込むと見出しの位置が下がってしまい、見出しに到達するのに時間がかかります。メールやサイトで見る場合は、見出しを読むために下にスクロールしなければなりません。このような会社概要は、リリース本文とは別の「別紙」で詳細に記せばよく、ここでは「株式会社イヌネコカンパニー」だけにしましょう。

最も注意しないといけないのは、このリリースを出した日付がないことです。リリースのヘッダーには、そのリリースを公開した年月日を入れる必要があります。月日だけだと、サイトに掲載した際、後々それが今年なのか昨年なのかわからなくなるので、年も必ず入れます。たまに見かける「●月吉日」のような表現は、ニュースリリースではNGです。会社がいつそのリリースを出したか、いつその案件を発表したかは記者が記事を書く上でも、その他の利害関係者にとっても意味があることなので、年月日を明確にします。年号は、西暦が一般的です。

添削後のヘッダー

ニュースリリース

2009年4月25日
株式会社イヌネコカンパニー

2.見出し
企業が発信する情報だということを念頭に

オリジナルの見出し

軽くて、コンパクト。さらに自立する。
実用性重視の『ドッグカー』進化型2タイプが新発売
開閉時の操作がより安全になり、日差し対策も充実。

見出しの1行目は「軽くて、コンパクト。さらに自立する。」となっていますが、見出しには「。」を入れずに一言で言いたいことを伝えるのが基本です。元の表現を活かすのなら「軽くてコンパクトで自立する」になります。リリースの体裁として美しいのは「軽量・コンパクトで自立する」といった表現でしょう。

2行目の「実用性重視の『ドッグカー』進化型2タイプが新発売」は主語が省略されています。この文の主語は会社(株式会社イヌネコカンパニー)になるので、主語と述語の関係から「(株式会社イヌネコカンパニー)は~2タイプが新発売」ではなく「(株式会社イヌネコカンパニー)は~2タイプを新発売」が正しいと言えます。能動態の文として、目的語である「ドッグカー」の前の助詞を「が」から「を」に改めないと不自然な印象を与えるからです。また、書籍や作品名でない言葉に『』は使いません。

「ドッグカーが発売される」という受動態の文にして、最後の「~される」を省略しているから「~が発売」でいいのではないかという考え方もあるかもしれません。しかし、ニュースリリースの主語は会社でなければなりません。発売元の会社が出す文書で、自社の製品が発売されるという受け身の表現は変です。

1行目は2行目を修飾している文なので、2行目の途中までを合わせて「軽量・コンパクトで自立する実用性重視のドッグカー進化型」にした方がわかりやすいでしょう。2行目にはもう少し内容を加え、サンプルのリードの文言を活用し「1歳まで用と3歳まで用の計2タイプを5月15日に全国で発売」としてみます。この見出しなら、商品のタイプや発売日も伝えられるので、読み手に瞬時に内容を理解してもらえるでしょう。また、発売する日付を入れるので、あえて「新発売」と「新」を付ける必要はありません。新たに発売することは「新」の字がなくてもわかるからです。

見出しの3行目「開閉時の操作がより安全になり、日差し対策も充実」は、1~2行目の補足として、商品の特長が明確に表現されていて特に問題ありません。ただし、ドッグカーの構造がイメージできなければ何の開閉かがわからないので、「開閉時の~」の前に「本体」を加え「本体開閉時の操作をより安全にし、日差し対策も充実」にします。さらにこの文でも「商品がより安全になった」と現象を表すのではなく、リリースを発行した会社が商品をより安全にするよう施したという努力を示した方が効果的です。見出しは、次のようにするとすっきりするとともに、わかりやすくなります。

添削後の見出し

軽量・コンパクトで自立する実用性重視のドッグカー進化型
1歳まで用と3歳まで用の計2タイプを5月15日に全国で発売
本体開閉時の操作をより安全にし、日差し対策も充実

まるで文章のようなダラダラと長い見出しは、見出しとはいえません。ただし、短ければいいということでもなく、スペースとの兼ね合いを考えながら伝えたい事柄をを工夫して入れるようにしたいものです。

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