時代はWebコンテンツ管理からWebエクスペリエンス管理へ――オラクルがWebCenter Sitesで目指すCMSの姿とは
エンタープライズ向けCMS(Webコンテンツ管理システム)「Oracle WebCenter Sites」がバージョンアップされ、特に「モバイル対応」「外部コンテンツ連携」「パーソナライズ」の機能が強化された。最新版となるバージョン11.1.1.8の提供を、日本オラクルが9月18日に開始したのだ。
これらの強化ポイントの内容をまとめるとともに、日本オラクルでWebCenter Sitesを担当する渡邊紳二氏と中根諭氏の2人に、同社が目指すCMSについて伺った。
注目機能は「モバイル管理」「外部コンテンツ連携」「パーソナライズ」
日本オラクルは9月18日、Webコンテンツ管理システム「Oracle WebCenter Sites」の最新版となるバージョン11.1.1.8の提供を開始した。
新バージョンで強化された機能のハイライトは、次の3つだ。
- モバイル対応
- 外部コンテンツ連携
- パーソナライズ
いずれもユーザーから強い要望があった機能だが、特にモバイルは「スマートフォンへの完全対応」といえる内容になっており、多くのWeb担当者が直面している課題に応えるものだ。
「外部コンテンツ連携」では、Web CMSとして管理できるコンテンツやデータの範囲が広がった。これによって、社内コンテンツ管理システムにあるものだけでなく、YouTubeのような外部サービスとの連携も簡単になる。
「パーソナライズ」は、Webサイトにアクセスしてきたユーザーのプロファイルや行動に基づいて、個別コンテンツを表示できる。これがプログラミングなどを必要とせず、マーケティング担当でも簡単に設定できるようになった。
これら3つの強化点について、さらに詳しく見ていこう。
モバイル対応――管理オプションでスマートフォンに完全対応
「モバイル管理オプション」の強化によって、モバイル向けWebサイトの管理がより簡単になり、効率的なモバイルユーザー向けマーケティングが可能になった。
具体的には、PC向けコンテンツと同じように、モバイル向けコンテンツも各種デバイスからどのように見えるかをCMSの管理画面で確認しながら制作できる。
モバイルといえば、急増するスマートフォンへの対応が急務となっているが、「スマートフォンとタブレット」「5インチ、7インチ、10インチ」「iOSやAndroidといったOSやバージョン」「その他ハードウェアごとの違い」など、多種多様なユーザー環境がWeb担当者を悩ませている。
モバイル管理オプションでは、デバイスごとの表示の違いを確認しながらページ制作が可能になった。また、PCサイト向けに作成したコンテンツを、モバイルサイトにも再利用でき、各デバイスごとに最適なデザインで配信できる。さらに、HTML5やレスポンシブWebデザインにも対応するなど、非常に幅広くて柔軟なモバイル対応の選択肢が用意されている。
コンテンツの制作や編集はHTMLを直接いじらず「画面上で見えているとおり」(WYSIWYGで)にできるので、マーケティング担当自らWebを使った施策が主導しやすくなるといえるだろう。
外部コンテンツ連携――YouTubeの動画も他のコンテンツと同様に追加
外部コンテンツリポジトリとの連携が強化されたことで、WebCenter Sitesの「外」で管理されているコンテンツを扱いやすくなった。たとえばYouTubeやBrightcoveなどで公開している動画を、外部サービスであることを意識せずにページ編集画面から扱うことができる。
今までのバージョンのWebCenter Sitesは外部のコンテンツと標準で連携できなかったが、新しいバージョンから「WebCenter Content」などと連携して、社内コンテンツを効率的に管理、活用することを想定した設計になっている。
これによって製品カタログ用の素材をマスターデータとして一元管理しておくと、自動的にWeb用に変換されてページ上で更新されるといったワークフローが可能になる。
外部コンテンツ連携はこれを外部サービスに対して拡張したもので、ページ編集画面からは、社内のコンテンツか社外にあるコンテンツかを気にせずに、1つの素材として扱える。
YouTubeの公式アカウントで公開した製品プロモーション用の動画を、自社サイトにも掲載したいといった場合に便利だ。YouTubeの動画では埋め込み用のHTMLタグが提供されているが、この外部コンテンツ連携機能を使えばタグを記述する必要さえなく、ドラッグ&ドロップで配置できる。
パーソナライズ――マーケティング担当者でもマウス操作で簡単設定
最近のキーワードである「パーソナライズ」や「ターゲティング」の機能も強化された。
具体的には、ユーザーに合わせて表示するコンテンツを変えることができる。たとえば、男性向けと女性向けのコンテンツやランディングページを用意しておいて、それぞれに最適な訴求を行うといったことが可能になる。
ユーザーの判定方法は、会員化されているならログイン情報とユーザープロファイルを照らし合わせて行える。また、あるリンクをクリックしたら「女性と判断する」など、柔軟で多様な判定方法が利用できる。これらのパーソナライズ機能は、もちろんモバイル向けコンテンツでも利用できる。
さらに今回のバージョンから、テストユーザーでログインせず、ユーザーセグメントを指定し、プレビューができるようになった。
これらにより、多様なユーザーセグメントの組み合わせパターンとそれらに対する配信コンテンツを簡単な操作で確認ができる。
さらに、パーソナライズのための設定は、あらかじめ用意されている基本項目を選択していくだけで完了できる。これもページ編集と同様に、別途エンジニアに依頼しなくても、マーケティング担当者が自分でできるため、迅速なPDCAにも貢献する。
市場トレンドとユーザーニーズを反映しながら着実に強化&改善
FatWireの買収から約2年が経ち、データベースをはじめとする他のオラクル製品との親和性を高めながら、WebCenter Sitesはバージョンアップを重ねてきた。
特に力を入れてきたのが「使い勝手」で、「11gR1 (11.1.1.6.0)」にメジャーバージョンアップした際に大きく変わった。
中根氏は、今回の新バージョンで強化された点も、これまでの流れに沿ったものであると説明する。
「この2年間でもっとも力を入れてきた部分が、ユーザーインターフェイスや操作性といった『使い勝手の向上』と『ソーシャルメディア連携機能の追加』です。
『使い勝手の向上』は、たとえば『コンテンツ制作』なら、HTMLの知識がなくてもマーケティング担当者が自分で作成できるようにすることです。モバイル対応の強化で、画面表示の確認が可能になっていますが、編集まで『見たまま』でできるようにしたのも、使い勝手の向上の1つです。
今回はさらに、どのようにグルーピングしてどんなコンテンツを表示するかというパーソナライズを行う際のルール設定も、マウス操作だけでできるようになりました。コードを書く必要はなく、これもマーケティング担当者が自分でできます
」(中根氏)
FacebookやTwitterといったソーシャルメディアとの連携も、11gから追加された機能だ。今回の新バージョンでも、記事へのコメントやアンケートの機能がさらに強化された。
「マーケティング担当者が、簡単にアンケートなどを設置できます。ユーザーとのコミュニケーション機能は最近特に重視されており、ソーシャルメディアを取り込んだコミュニティ施策をやってみたいというお客様も増えています。
ページを活性化させるという目的もありますが、コンテンツが頻繁に更新されることでSEO効果も期待できます。ただし、やりっ放しではなく、裏できちんとチェックしてまずいコメントを除外したり、ブラックリストやホワイトリストでフィルタリングしたりする機能を設けています
」(中根氏)
このほかにも検索、URL設定、レコメンドなどで強化や改善が行われている。
検索の強化: オラクルの検索システム「Endeca Guided Search」との連携により、サイト内検索で正確で関連性の高い検索結果を提供
バニティURL: コードを書かなくても、任意または特定書式に沿ったURLの設定が可能
レコメンド: マーケティング担当者が設定するルールベースと、Real-Time Decisionsによる自動レコメンデーションの組み合わせが可能
CMSの役割は「静的なコンテンツ管理」から
「動的なユーザー体験向上」へと変化
Oracle WebCenter Sitesは、これまでバージョンアップを重ねながらWebのトレンドを取り込み、ユーザーからのニーズにすばやく応えてきた。前身となる「FatWire」のイメージを持っている読者もいるもしれないが、「まったくの別物」と呼べるほどに進化している。この先、Oracle WebCenter Sitesが目指しているのはどのようなCMSなのだろうか。
「少し前までは、CMSの役割は静的なカタログのようなコンテンツを管理することが主流でした。しかし最近では『オムニチャネル』と呼ばれる、オンラインオフラインの境なく一貫したユーザー体験を提供することが注目され、パーソナライズが可能な動的なCMSへの関心が高まっています。
お客様のお話を聞くと、7割くらいは動的なサイトにしたいとおっしゃります。それ以外のお客様も、『ターゲティングをしたい』『行動履歴を基にページを出し分けたい』など、アクセスするユーザーに合わせてコンテンツを出すというニーズは増えています。静的なページを出すだけのCMSの時代は終わり、今後は動的なCMSが求められてくると思います。
また、もう1つ大きなニーズとしてあるのがグローバル対応です。どのベンダーも聞かれたら『できる』と答えますが、言語管理がしくみとしてきちんと備わっていて、言語ごとに情報を出し分けられる製品は、実はまだ少ない。
WebCenter Sitesは、これらのニーズに応えられる数少ないCMSだといえます。さらに、エンタープライズを見据えた製品であるという点で、独自のキャッシュ機能や高いパフォーマンスなど、オラクルが培ってきた強みが活かされています。
私たちは、WebCenter Sitesを単なるWebサイトのコンテンツ管理システムではなく、『Webエクスペリエンス管理ソリューション』として位置付けています。Webサイトにアクセスするユーザーの顧客体験をいかに高めるか。それを実現するための手段をいかに簡単に企業のお客様にご提供できるか。CMSはそういうステージに来ていると感じています
」(渡邊氏)
Oracle WebCenter Sites
提供事業者: 日本オラクル株式会社
Webコンテンツ管理システムとしての基本的な機能は当然のこと、オンラインでの「カスタマー・エクスペリエンス」を改善するための機能を備えた「Webエクスペリエンス管理」。
ターゲティング、テスト&分析、パーソナライズ&レコメンデーション、スマートフォンやタブレットなどのマルチデバイス対応、多国語サイト対応など、高度な機能を備えている。
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