カスタマージャーニーを設計してプロジェクトの進行をスムーズに
書籍『デジタルマーケティングの実務ガイド』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開。
この記事は、第4章「キャンペーン(プロジェクト)を企画・実行・レビューする」から、Chapter 4.1「カスタマージャーニーの位置づけ」の内容をお届けします。
4.1 カスタマージャーニーの位置づけ
キャンペーン(プロジェクト)を企画・実行・レビューする
本書で「キャンペーン」と呼ぶのは、「始まりと終わりがある、目的を持った一連のマーケティング活動」で、「プロジェクト」と読み換えても意味は通じます。
「新規会員獲得キャンペーン」などの狭義のキャンペーンのみならず、「新商品のローンチに向けた一連のマーケティング活動」などより広範で複数の活動を内包するプロジェクトも、ここでは「キャンペーン」としています。
カスタマージャーニーの用途
キャンペーン設計の第一歩はカスタマージャーニーの設計です。ただ、カスタマージャーニーの意味するところは非常に多岐に渡るので、まずは本書におけるカスタマージャーニーの定義を明確にしましょう。
本書におけるカスタマージャーニーとは、一言で言えば「キャンペーンの全体設計図」です。その用途は以下の通りです。
- キャンペーンの全体概要の関係者全員への説明資料
- エージェンシーへのブリーフィングの基礎資料
- クリエイティブの各パーツの文脈を確認するための地図
まず1. キャンペーンの全体概要の関係者全員への説明資料としての用途ですが、マーケティングキャンペーンの企画というのは、こと大企業やグローバル企業においては、様々な関係者の承認と確認を必要とする作業です。
その際、直属の上司以外の関係者に、企画書を詳細に説明する時間を確保できることは稀です。そんなとき、キャンペーン全体の概要をまとめた「1ページャー」があるととても便利ですが、時系列と並走する活動を縦横軸で表現したカスタマージャーニーはそれに適したフォーマットと言えます。
次に2. エージェンシーへのブリーフィングの基礎資料としての用途ですが、そうして社内承認を経たカスタマージャーニーは、そのままメディアエージェンシー、クリエイティブエージェンシーへのブリーフィング資料の基礎として活用できます。
フォーマットについて詳しくは次のチャプターで説明していきますが、ターゲットと期待する態度変容、最終的なゴールが一覧でまとめられているカスタマージャーニーがあれば、あとは予算とデリバラブルズ(提出物)を明確にすることでエージェンシーはプランニングを始めることができます。
エージェンシーのストラテジープランナーに、デリバラブルズの1つとしてカスタマージャーニーを作成してもらう、という進め方は、本書の定義と用途におけるカスタマージャーニーでは避けるべきです。
キャンペーンの全体設計はメディアニュートラル、メディアとクリエイティブの予算配分においてもニュートラルであるべきですが、メディアエージェンシーはメディアに、クリエイティブエージェンシーはクリエイティブに予算を傾注した設計をしたがりますし、両者が同じ場合でもエージェンシーにとってビジネス上のうまみが少ない設計は避けてしまうのが人情でしょう。
また、ターゲットとなる消費者や意思決定者の行動パターンは広告主・ブランドマネージャーが一義的に把握しているべきで、実際にキャンペーンを回したあとのラーニングも広告主に蓄積されるべきです。
広告主側でカスタマージャーニーを描くのは難易度が高い、クオリティーに自信が持てないという向きもあるかもしれませんが、エージェンシー側にもしっかりとしたカスタマージャーニーが描ける人は実はあまりいません。
今日、多くのケースでデジタル上のタッチポイントはカスタマージャーニーの中心にして大部分を占めますが、デジタルに詳しいエージェンシーの担当者は往々にして非常に細分化された領域を担当しており、逆にキャンペーンをホリスティックに(全体的に)俯瞰できるストラテジープランナーはデジタルにそれほど詳しくなかったりします。
複雑にしすぎると1ページャーとしての用途を損なうので、できる限り簡易にする意味でも、カスタマージャーニーは広告主が作成するべきです。作成に際してエージェンシーのストラテジープランナーや調査担当、メディア担当からデータやインサイトのインプットを受けることは、積極的に行われるべきです。
また、キャンペーンの全体の設計図としてのカスタマージャーニーは広告主側で作成し、それをベースに全てのタッチポイントを網羅した細かいコミュニケーションの設計図をエージェンシーに依頼して作ってもらう、という分担はもちろん可能です。
加えて、デジタルがカスタマージャーニーの大部分を占めるのであれば、広告主の中でも特にデジタルマーケティング担当がカスタマージャーニー作成を主導するべきでしょう。
ブランドマネージャーがいる組織ではブランドマネージャーと協業し、そうでない組織ではATL担当など他のチャネルオーナーのインプットを受けつつもデジタルマーケティング担当が主導して、カスタマージャーニーを作成していくことが理想的です。
デジタル以外の領域にはある程度「型」があり、担当者のインプットを受けて進めていけば、デジタル担当がそれを全体の設計図に組み込んでいくことはそれほど困難ではありません。しかし、この逆はなかなか成り立ちません。なるべくその理想型に近づけられるよう2章「デジタルマーケティングのSOWを定義する」で触れたデジタルマーケティングチームのSOWを調整しましょう。
最後に3. 各パーツ・クリエイティブの文脈を確認するための地図としての用途です。後に4.6「クリエイティブプランの作成」で深掘りしていきますが、デジタルマーケティングにおいてはコンテンツ以上にコンテクストがものを言います。
具体的なメディアプランやクリエイティブ作成にあたって、メディアプランナーやクリエイターは、とかく自分の担当領域に没入して近視眼的になりがちです。その際、カスタマージャーニーを地図として参照することで、常に自分の担当領域がどのような前後の文脈の中に位置づけられているのかを明確にすることができます。
また、実際に上がってきたクリエイティブの提案をチェックしたり社内で議論したりする際、大半の関係者はその制作物の全体における位置づけなどを覚えてはいません。その際に、前後の文脈をカスタマージャーニーで確認することで議論の飛躍を防止することができます。例えばとあるキャンペーンで、次の図のようなカスタマージャーニーを設計したとします。
このキャンペーンにおける「バナー広告」を承認してください、ということでミーティングを設定した際、文脈を忘れてしまっている関係者から「なぜ割引キャンペーンしか訴求しないのか?」「動画を訴求しないのはなぜか?」というチャレンジが入るようなことがあります。
実際の制作物を見せるに先立ち、カスタマージャーニーをとり出して、「このバナーはこういったコンテクストでこういう人に閲覧されます」という説明をすることで、そういった余計な話のセットバックを防ぐことができます。
カスタマージャーニーの要件
これらの用途を踏まえると、カスタマージャーニーは以下の3つの要素を満たすドキュメントである必要があります。これを本書におけるカスタマージャーニーの要件とします。
- 1ページで整理する・1ページャーである
- 経営陣を含めた関係者全員が理解できるものである
- キャンペーンの全体像(全ターゲットに対する全施策と、その前後関係)を表現している
次のチャプターでは具体的な事例を見ながら、再度これらのポイントを細かく解説していきます。
※次項のChapter 4.2「カスタマージャーニーを作成する」は、オンライン記事は未公開です。詳しくは書籍『デジタルマーケティングの実務ガイド』でご覧ください。
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