【レポート】Web担当者Forumミーティング 2021 春

いかにMAの味方を社内に増やしていくか? 成果を出したマーケ現場のMA導入・活用術

MAのメリットを社内に理解してもらい、サポートをフル活用しながら質の高いリードを営業にパスする仕組みを作る。MAで成果をあげる活用術を顧客事例とともに解説する。
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顧客が行動する場所がデジタル化し、企業がそれに対応する流れが進む中、コロナ禍が非接触をさらに加速した。BtoBのマーケティングにおいても、今やWebやデータを活用した施策が最重要といっても過言ではない。オンライン上でのコミュニケーションをきっかけに商談・受注へつなげていくための仕組みとして、多くの企業が採用しているのが「マーケティングオートメーション(MA)」だ。

Web担当者Forum ミーティング 2021 春」のセッションでは、国産MAツールを提供する「SATORI」の西田浩子氏が、顧客事例をもとにMAを活用してマーケティング施策の成果を出す秘訣を、同社の関静香氏の進行で紹介した。

SATORI西田浩子氏と関静香氏
(左から)SATORI株式会社 コンサルティンググループ リーダーの西田浩子氏と同社マーケティング営業部 マーケティンググループ リーダーの関静香氏

マーケティング現場が抱える2つの課題

セッションはマーケティング部門が抱える課題の紹介からスタートした。以下の図はSATORI社が国内BtoB企業のマーケティング、販売促進、広報、営業企画関連の業務に従事している約500名を対象に行った「国内BtoB企業におけるマーケティング実態調査レポート2021」から抜粋したグラフだが、ここから「マーケティング部門が抱える課題」を取り上げ、関氏は「課題は大きく2つにまとめることができる」と紹介した。

マーケティング部門に多く見られる課題(複数選択)
マーケティング部門に多く見られる課題(複数選択)

課題① リソースの確保(人員・スキル・予算)

上から3、4、5番目、下から4番目に注目。「ノウハウやスキルの不足」「人員・リソースの確保」「予算の確保」「適切な外注先の確保」といった項目を選択した企業が多く、限られた人員や予算で施策を推進し、効率的に成果創出しなければならないという状況が見て取れる。そこから抜け出すために、いかに社内の理解を得て、リソースを拡大していくかというのが大きな課題だ。

課題② 施策のPDCA

マーケティング部門が抱える課題で最も多く挙がったのが「戦略立案/実行計画」で約30%だった。そのほか、「施策の効果測定、改善」や「評価指標(KGI/KPI)の設定」という回答も多い。実施した施策のPDCAを回し、以降の戦略立案や改善計画に反映していくことが課題となっている。

社内に理解を求め、リソース拡大とMAの浸透を目指す

この結果からもわかるように、マーケティング部門のリソースが潤沢にあるというケースは、非常に少ない。そのため、まずは少ないリソースで小さくはじめて成果を積み上げ、社内の信用や期待を得ていくことで、将来的にリソースを拡大していくというステップを踏むことが順当な方法だ。

上記を実現するためには、MAが有効手段の一つになる。しかしながらMAを導入して運用に乗せていくためには社内の理解が必要不可欠だ。

では、限られたリソースで成果を出すために、どのようにMA活用や社内体制の構築を考えればよいのか?

本セッションでは「SATORI」ユーザー2社の事例をとりあげ、成功の秘訣について検証した。

MA導入・活用事例①IT・Webサービス企業のケース
社内巻き込み&ホットリード抽出の仕組み作り

ここで西田氏はIT・Webサービス事業を展開する「スラッシュ株式会社」の事例を紹介した。同社の取り組みは主に以下の2つとなる。

  1. 社内を巻き込み味方(ファン)を増やす
  2. ホットリードを抽出する仕組みを作る

取り組み① 社内を巻き込み味方(ファン)を増やす

同社では、ニッチな業界ゆえにターゲットとなる企業が限られている。いよいよ事業の全国展開を進める上で、限られた見込み顧客から得られるデータを活用するため、MAツールの導入が検討されはじめた。マーケ部門だけではなく、営業部門にも定着するために、求められる条件として、「操作のわかりやすさ」「機能が充実している」「毎日使えるものなど」が挙げられた。

しかし、MA導入にあたって双方にヒアリングをすると、「データをうまく活用したい」と考えるマーケティング側に対し、営業側からは「日々の営業活動に専念したい」という現状維持を求める意見があがり、進める上で大きな溝があることがわかった。

しかし、MAを活用するには、フレッシュな顧客データを多く持つ営業にデータを入力してもらう必要がある。そこで同社はMAの導入選定規準として、「ツールに慣れていない関係者でも操作がわかりやすく使えるもの」を条件にした。

導入にあたって、蓄積したデータが有効に機能するよう、最低限の入力ルールも予め策定した。たとえば、「担当情報は必ず入れる」「追客中のステータスは絶対に入れて欲しい」のような、具体的な作業内容に落とし込んだうえで営業部門に協力をお願いしたという。

ステップに分けて社内を巻き込んでいったのも、MAを理解してもらうひとつのポイントだった(西田氏)

理想に近づく3つのステップ
理想に近づく3つのステップ

ステップ1:具体的なゴールの共有と社内マニュアルの整備

実現したい未来像を明確にすると共に、その準備として社内でのマニュアル整備を行った。

マニュアルやQ&Aは「SATORI」でもコンテンツとして提供しているが、オンラインのため「目的のページにたどり着くまでのハードルが高い」と感じてしまう営業もいた。そこで、社内でよく使う、チャットツールやスプレッドシートなど全員が見られる場所に、スラッシュ社が整理・カスタマイズした独自の「SATORI」のマニュアルを置いたという。マニュアルを参照しやすくすることで、入力時に発生する不明点をその場で解消できる環境を整えたということだ。

ステップ2:社内の味方・ファンを増やすための勉強会

ステップ1で作ったマニュアルも利用しながら、営業とマーケティングを交えた勉強会を開催した。MAの機能であるシナリオによる自動通知メールなど実際に検討度合いの高まった顧客を抽出し、アプローチするまでを体験してもらうことで、「SATORI」の味方・ファンを増やすことができたという。

この勉強会は、MAの味方・ファンを得るだけでなく、マーケティングの取り組みを理解してもらうことにもつながり、社内で協力を得やすくするために有効な取り組みだと西田氏は語る。

社内を巻き込んだ活動
社内を巻き込んだ活動

ステップ3:繰り返し入力についてリマインド

中期〜長期のステップとして、入力のお願いについてリマインドを繰り返すことも大切だ。ヒアリングや勉強会を継続するだけでなく、お客様へのアプローチ漏れがないか、リマインドを、MAの機能にある「シナリオ」を通して行った。その結果、アプローチ結果と具体的なフィードバックを営業部門からマーケティング部門へしっかり出し、更なる改善の要望を吸い上げられる社内環境も構築することができたという。

取り組み② ホットリードを抽出する仕組みを作る

これは自社への検討度合いが高まった顧客のタイミングを逃さず営業部門へ通知する施策だ。検討度合いがわからない状態の顧客リストのままでは、どこにアプローチすべきかという優先順位の判断は、営業部門個々人の勘に基づくことになり、属人的アプローチを行ってしまう可能性がある。しかし、「SATORI」のようなMAには、顧客の行動履歴データを使ってリストの中で検討の度合いの高まっている“ホットリード”を適切に検知し、営業担当者へ通知してくれる機能がある。

たとえば、リストにある顧客のうち、自社サイトを閲覧した人をホットリードとして抽出し、アポイントを獲得する担当に通知するという仕組み(シナリオ)を作れば、“今”自社サイトに訪問しているホットな見込み顧客が可視化される。

シナリオからのホットリード抽出
シナリオからのホットリード抽出

ちなみにこのシナリオ機能はSATORI自身でも使っていて、関氏によれば「検討度合いの高い人が見るコンテンツである“キラーコンテンツ”を閲覧した人にアプローチした場合の商談化率は通常時と比較して約8倍にも上る」という。

ただし顧客のホットな状態は持続しないことも多く、タイミングを逃すとその間に他社での検討を積極的に進めていた、ということも。顧客のホットな状態を逃さずに即アプローチができる仕組みづくりは商談化率アップに重要だ。

MA導入・活用事例②不動産企業のケース
サポートをフル活用し、着実にMAスキルを拡大

続いて紹介されたのが、不動産仲介を手がける企業「リストインターナショナルリアルティ株式会社」のケースだ。担当者2名でまずはメール配信から始め、スラッシュ社と同じように、営業へホットリードを渡す仕組みを構築した。

この時、SATORIのサポート担当からマーケティング担当者自身に電話アプローチしてみてくださいと薦めた。

まずは、“新しいツールの導入=作業が増える”という印象を払拭するために、営業部門にとってツール活用によるメリットを感じてもらう必要があった。そのため、まずはマーケ部門自身が行動し、抽出されたリストの質を検証してもらった。その結果をもって説得する方が、社内で協力を得やすいためだ(西田氏)

これが社内で推進するための重要なポイントとなり、その後、営業からどのようなリードが欲しいかといった要望が聞けるようになったという。

さらに、マーケティング部門によくある悩み「営業部門にリードをパスした後の進捗の後追い」は、KPIの持ち方で解消できるという。「営業部門とマーケ部門が共通の目標を持つことで、自部門の領域の目標達成だけにとどまらず、本当のゴール達成に向けて目線を合わせやすくなる。結果、達成に向けて責任の押し付けあいではない“本質的な議論”ができるようになる」(西田氏)ということだ。

このように、前提に共通の目標を持ったうえで、さらにMAを活用して最大限の成果につなげていくためには、ツールベンダーのサポートをフルに活用し、ありたい姿を実現することを勧める。

リストインターナショナルリアルティ様には弊社のサポートをフル活用していただき、MAのスキルアップはもちろん、他社事例や施策のアイデアも提案して実際の施策に役立ててもらった。その結果、案件獲得数は3~4倍へとアップした(西田氏)

サポートをフル活用し、案件獲得数は3~4倍へとアップ
サポートをフル活用し、案件獲得数は3~4倍へとアップ

また、同社は他社MAツールからの乗り換えだったため、膨大な既存データの移行・整理に関してもサポートが大いに貢献したという。

こうしたサポートの有用性をさらに向上させるべく、SATORIでは、2021年4月からカスタマーサクセス組織の見直しを行うなど、一層サポートを強化している。

  • オンボーディンググループ:主にMA導入後の初期の立ち上げを支援する
  • コンサルティンググループ:MA単体の活用にとどまらず、Webマーケティング全体の成果向上に向けた具体策の提案を行う

MAを活用して、運用型広告のROIを最適化

セッション後半のテーマは、今後の戦略立案や改善計画に、取り組みの結果を反映していくという課題を取り上げた。マーケターに常について回る取り組みの一つとして、「広告の費用対効果最適化」が挙げられる。一般的に、広告の費用対効果最適化というと、いかにクリック数を増やすかという議論になりがちだ。しかし、クリックされている広告がイコール受注につながっているとは限らない。

MAのデータを使うと、売上げに繋がる広告がどれなのかを見極め、改善することが可能になる(西田氏)

MAで取得できるデータは、以下の3種類だ。セッションでは、このうち左の2つのデータを使った運用型広告のROI最適化について紹介した。

MAで取得できるデータ
MAで取得できるデータ

Web広告の運用では、WebでのコンバージョンをKPIにすることが多い。しかし本来は、Webで獲得したコンバージョンが実際に商談獲得に繋がっている有効リードなのかが重要だ。

つまり、「広告を見て自社サイトに流入」や「フォーム入力して資料請求」のようなオンラインの動きだけでなく、「フォームの内容から有効リードを判定して営業部門に渡す」「営業担当が商談する」「契約に至る」といったオフラインの動きを含めて、広告の評価や最適化をしなければ意味がない。MAにはオフラインの情報も蓄積されているため、それをGoogle広告にインポートすれば可能だ。

オフラインデータをGoogle広告にインポート
オフラインデータをGoogle広告にインポート

その他にSATORIでは、ポップアップやプッシュ通知を活用した施策を実施することで、広告の依存度を下げ、1訪問当たりの価値を向上させている。

Google広告のROI最適化
Google広告のROI最適化

関氏は最後に、多くのマーケティング担当者が抱える「二大課題」を解決するポイントを以下のようにまとめ、セッションを終えた。

課題①:リソース不足の環境で成果を出す必要があること
解決策:小さな成果を作ることで社内の信頼を獲得し、定着を図っていく
課題②:実施施策から次への改善・戦略へつなげること
解決策:MAツールの活用で顧客の動きや施策の結果を見える化し、得られたデータから、更なる改善の要望を吸い上げられる社内環境を構築する

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