「ソルジャー的」働き方は辞めよう！ 自分でやったほうが早い病から抜け出すマネージャー思考

皆さん、こんにちは。Web担編集部の四谷です。今週は四谷が担当します。

今日は、「出版大手4社と海賊版サイト撲滅との戦い」について、考えてみたいと思います。

●海賊版サイトと大手出版社の戦い

2022年2月2日に、講談社、KADOKAWA、集英社、小学館の出版大手4社は、CDN事業者の米クラウドフレア社に対し、海賊版配信の差し止め及び損害賠償請求を求める訴訟を、東京地方裁判所に提訴しました。賠償請求額は4社合計で4億6,000万円（被害総額の一部請求）。

講談社のリリース　https://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2022/20220201_Cloudflare.pdf

個別の海賊版サイトに対し、訴訟を起こすのではなく、海賊版サイトの運営者が利用している事業者に対して訴訟を起こしたのです。海賊版サイトを根本からなくすには、Webサイトの情報を載せているサーバー提供事業者に対して訴訟を起こした方がいいはずです。

海賊版サイトと聞いて「漫画村」を思い出す人も多いと思いますが、漫画村でも海外のサーバー事業者に情報開示請求を行い各種情報を取得し、逮捕起訴できました。海外のサーバーを経由しても逮捕できることを証明しましたが、日本の法律の影響範囲は当然ながら日本だけ。

海外のサーバー事業者のすべてが、情報開示請求に応じるとは限りません。それこそ、応じない方が多数のはず。だからこそ今回、CDN事業者に対し訴訟を起こしたのかなと。

〇CDNとは？

CDN（コンテンツデリバリーネットワーク）とは、アクセスが集中してもサバ落ちせずにサイト運営をし続けられるサービスのことです。世界各国にサーバーを設置して、Webサイトの一時的な複製「キャッシュ」を作り、ユーザーからのアクセスをサーバーではなくキャッシュに分散アクセスさせることで、一度に大量のアクセスが来たとしてもサバ落ちしないという仕組みです。

〇海賊版サイトの被害額は1兆円

昨年（21年末）に、集英社の海賊版サイトの撲滅活動を行っている方と、たまたまお話する機会がありました。集英社でも、Web上の競合分析・市場分析ツールを使って海賊版サイトの把握と各海賊版サイトのアクセス数、滞在時間等から被害額を算出し、撲滅に向けて各機関と連携している、という話を伺いました。

近年、海賊版サイトの利用は広がっており、海賊版サイト上位10サイトの月間アクセス数は、3億6千万にも及ぶそうです。漫画村の月間アクセス数が約1億だったので、海賊版サイトの上位10サイトのアクセス数は、漫画村の3倍以上に伸長していることになります。

集英社の海賊版撲滅活動をされている担当者いわく、「我々が把握しているだけでも1,000以上の海賊版サイトが存在する。上位10サイトの平均滞在時間は約30分。1回のアクセスで、だいたい単行本の漫画1冊分が無料で消費されている。こういった情報を基に被害額を算出している」とのこと。

出版社などで構成される一般社団法人ABJの調べによると、2021年の海賊版サイトの被害額は、少なくとも1兆円を超えると試算。前年（2100億）の4.8倍に急拡大しているそうです。伸長している背景には、コロナ禍によるおうち時間の増加も関係しているようですが、それ以外にも問題はあります。それがアドフラウドです。

〇海賊版サイトにおける「アドフラウド問題」

明らかに著作権違反にも関わらず、なぜ海賊版サイトが増殖するのか。それは広告による収入が簡単に得られるからですよね。もちろん、海賊版サイトは著作権違反に該当しますし、利用者であっても、違法サイトと知りながら、コンテンツをDLすることは罰則の対象となります。ただし残念ながら、見ているだけならば現行の法律では、罰則には当たりません。

各出版社が心血を注いで作ったコンテンツを、違法と知りながら無断でWebサイトにアップロードして、サイトのビュー数に応じた、広告収入を得る。こういった仕組みがあるからこそ、海賊版サイトが無くならないのです。

〇デジタル広告の仕組み

旧来、広告の中心にあったマス広告では、広告を掲載する「メディア」と広告を出稿する「広告主」、両社の間をとりもつ「代理店」の3者で広告の「枠」の売り買いをしていました。マス広告に介在するプレイヤーは非常に少なかったです。

ところが、デジタル広告ではそのプレイヤーの数がとんでもなく増えています。広告を掲載するメディアの数もWebサイトやWebページ、さらにはアプリ…と物凄い数ですし、広告を出稿する広告主も、今や広告は数百円から出せるようになっていますので、物凄い増えています。

さらに、メディア、広告主の数の増加に伴って、両者間をとりもつ仕組みや事業者も増えています。たとえば、広告を掲載するメディアを集めた配信ネットワークの「アドネットワーク」。さらにアドネットワークを束ねる「アドエクスチェンジ」。広告をターゲティングするための「データエクスチェンジ」。広告をリアルタイムに売り買いする「リアルタイムビッティング」…。

このようにデジタル広告は、マス広告に比べて圧倒的にプレイヤーが増加。（デジタル）広告の民主化が進んだ一方で、広告詐欺も増加していったわけです。広告業界では、JAA、JAAA、JIAA の広告3団体によって、デジタル広告の品質を第三者認証する機構として「JICDAQ（ジックダック：一般社団法人 デジタル広告品質認証機構）」を21年に設立しています。

広告主は無料で登録でき、メディアやその他デジタル広告の配信にかかわる事業者は、同機構の定める審査を通過することで、「品質認証事業者」として認定されます。広告主他が品質の担保された事業者を通じてデジタル広告の売り買いをすることで、デジタル広告全体の健全化を推し進めようという狙いがあります。

〇海賊版サイト撲滅は難しい…

海賊版サイト撲滅は正直、難しいのが現状。それでも、大手出版社が戦うのは、自分たちひいては、漫画の著者を守るためだからです。出版社の端くれとして思うことは、人々を楽しませるコンテンツを作る制作者は、皆、命を削って作っているんです。命を削って作っている制作者たちに、読み手ができる還元方法は、1）正規にコンテンツを買う　2）ありがとうの気持ちをつぶやく　この2点しかありません。「クリエイターに還元していこう！」心からそう思うばかりです。

さぁ、今週も頑張りましょう！

Web担の編集後記も毎月末に更新してますので、よろしければご覧ください：
https://webtan.impress.co.jp/editors_note