願わくば、この投稿がSEOmoz読者各位のお役に立ちますように。
以前に「公正使用(フェアユース)」について書くと約束したと思うんだけど、ようやく実現しました! ところが、予想したより記事が長くなってしまったので、2回に分けることにしたわ。申し訳ないんだけど、ちょっと辛抱して読んでね。
あなたが、ポップカルチャーをふんだんに取り入れた、おもしろくて、力強くて、粋なコンテンツを制作したと想像してみて。そのコンテンツの制作にあたって、ネット上のだれかが作った素材をいくらか拝借してきたとする。すると、引用したコンテンツの元サイトの所有者から、苦情のメールを受け取った。さあ、どうしよう?
公正使用についての話は聞いたことがあるし、他者の素材でも、場合によっては使っていいはず。でも、どんな場合ならいいのか実はわかっていない。さて、あなたは問題のコンテンツの掲載を中止して、苦情が出ないようにする? それとも、苦情のメールは無視して、相手の出方を見守る? あるいは専門家と相談して、自分はその引用した素材を合法的に利用できると主張して、その根拠を明確に示したメールを送り返す?
この記事の目的は、SEOmoz読者の皆さんに、公正使用に基づく防御についてレクチャーすることよ。ウェブ用コンテンツを制作している人は皆、自分のサイトに掲載するコンテンツが、著作権侵害にあたるものか、それとも公正な使用と認められるものかの見極め方を学ばなくてはならないの。
この記事を最後まで読めば、公正使用に関する問題をよりよく理解できるようになるはず。それによって、他人のコンテンツの著作権を知らずに侵害せずに済むようになり、いかなる著作権侵害の抗議にも対応できるようになるわ。
それじゃ、私がこのテーマに関して2回の記事で取り上げようと思っている内容を、簡単に示しておくわね。太字で示した部分が今回の記事で扱う内容、太字でない部分は第2回の記事で扱う内容ね。
- 「公正使用」とは何か?
- 公正使用という防御が認められるのは米国だけか?
- 公正使用は、商標、著作権、および特許法にどのように関係しているか?
- 公正使用についての大きな問題とはどんなもので、なぜそれに注意しなければならないのか?
- でも、言論の自由を規定した憲法修正第1条というのがあったはずだけど……
- 他人の著作権を侵害しているのか、単に素材を公正使用しているだけなのかを見極める4つのチェック項目:
- コンテンツ使用の目的とその性質。商用目的のものか、非営利的な教育目的のものか、など。
- 引用する著作権保護作品の性質。
- 引用量および、その引用部分が著作権保護作品全体に占める割合。
- 引用が、対象と想定される市場に及ぼす影響、あるいはその著作権保護作品の価値。
- 個別事例
- 自分のウェブサイトでだれかの発言を引用することはできるか?
- 制作者の名前を出せば、自分のウェブサイトに他人のグラフィックを掲載してもよいか?
- ソフトウェアに公正使用は認められにくいか?
- パロディは「公正使用」とみなされるか?
本論に入る前に、断っておきたいことがある。私は皆さんのことを本当にステキな人たちだと心から思ってるわ(特に私がPubConで会った人たちはね!)。けれども、私はあなたの弁護士としてあなたの立場に立っているわけではなく、また立つこともできない。ここに書くのは法的な助言じゃない。単に、法律に関する情報を提供しているだけ。もし著作権問題を抱えているなら、ちゃんと弁護士に相談するようお薦めするわ。
※Web担編注 この記事は主に米国の法律に関して述べているものであることに注意してほしい。
ちょっと脱線しちゃったわね。じゃ、始めましょ。
「公正使用」とは何か?
第106条:著作物における排他的権利と第107条:排他的権利の制限
著作権法(合衆国法律集の第17編)の第106条は、制作者が自分のオリジナル作品を独占的に使用できると規定している。以前の記事でも書いたとおり、著作権者は自分が作った作品の頒布を直接制御する権利を有する。私はこの記事で、「制作者」「著者」「著作権者」をまったく同義的に使うことにしている。つまり、オリジナルのコンテンツに対して権利を有する人すべてを表す言葉と解釈してね。
著作権法第107条は第106条を否定するもので、使用が「公正」であるかぎり、他人が自分のオリジナル作品を使用するのを許可するもの。
もっと簡単に言うなら、著作権者にも、自分の作品に対して100%の独占権があるわけではないということになるの。反対に、非著作権者にも「公正使用」という名のもとにコンテンツの制限的使用権が認められている。制作者の権利が絶対ではないので、あなたは著作権侵害の抗議に対して、自分の使用は「公正使用」の範囲だと主張して反論できるわけよ。
公正使用という防御が認められるのは米国だけか?
公正使用の議論に本格的に入る前に、世界中にいるSEOmoz読者の皆さんのために、どこの法律制度についての話かをはっきりさせておきたい。この記事では、米国における「公正使用」について議論している。したがって、米国法の支配を受ける問題に対してのみ適用される。国際的なコンポーネントが絡む著作権問題について、適用の可能性の有無を調べるには、私が以前書いた記事を参照してね。
米国外に目を転じてみると、公正使用の概念は米国よりかなり限定されている。実際、欧州にいる友人は、公正使用に関する問題に対してまったく違うアプローチをとるの。公正使用の定義は、米国では非常に広く一般に適用されるのに対して、他の国々では著作権者の複製を制御する権利保護の特別な例外を示す、非常に限定的な意味に解釈される。この両者を比べてみるというのは非常に価値のあることで、いつかこのテーマでも記事を書いてみたいと思っているわ。
公正使用は、商標、著作権、および特許法にどのように関係しているか?
公正使用は、著作権侵害の抗議を退ける防御手段にはなるけど、商標あるいは特許法に対する防御手段にはならないの。ただし、商標および特許法違反の非難に対しても、同様の防衛手段はある。これについては、また別の機会に記事にするつもり。今は、著作権に関してのみ議論を続けていくことにしましょう。
公正使用についての大きな注意点とはどんなもので、なぜそれに注意しなければならないのか?
ウェブ用のコンテンツを作成していたり、ホスティングしている場合には、他のソースからどの程度までコンテンツを拝借できるか、そして、どの時点で相手に許可を求めなければならないかを理解しておく必要があるわね。逆に言えば、だれかがあなたのコンテンツを盗用していると思ったら、それが著作権侵害にあたることをきとんと確認すること。そうすれば、誤ってデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に照らした削除要求のメールを送って、恥をかくなどということが避けられる。
また、自分が著作権侵害で訴えられた場合、自分がそのコンテンツを公正に使用していると考える理由を、明確に表現できるようにしておかなければならない。私はこの記事が、あくまでも自分の主張を通すべきか、それとも相手の主張に従うべきかを判断するのに役立つよう願っているわ。
でも、言論の自由を規定した憲法修正第1条というのがあったはずだけど……
私はときどき、憲法修正第1条に基づいて、他のソースからコンテンツを拝借できる権利がある、と人々が主張しているのを耳にする。しかし、これが認められたのはただ一度だけ(Triangle Publ'ns対Knight-Ridder Newspapersの裁判、626 F.2d 1171、1980年、第5巡回裁判所にて)で、かなり限定的な状況であったと言えるわね。したがって、この憲法修正第1条を盾に防御するのは難しいと言わざるを得ない。この防御案は基本的に忘れたほうがいいと思うわ。
これは「公正使用」の問題に直接関係することではないんだけど、これを機に、なんでもかんでも言論の自由で押し通せると信じるのは、そろそろやめたほうがいいんじゃないかと思う。SEOmozファンの皆さんには、言論の自由を持ち出して著作権侵害の非難に対抗するような愚行は避けてほしいな。
憲法修正第1条は、「米国議会が、人々から言論の自由を奪うような法律をいっさい制定しない」ことを約束するものなんだけど、ここまで約束が包括的だと、その約束は履行可能なものではないし、望ましいものでもないことがわかる。ときには、言論を統制したほうがいいこともあるでしょ(名誉毀損などがそのいい例?)。大半の人々は、著作権問題がそういうケースの1つだと考えている。
アイデアとアイデアの表現の間には非常に重大な差がある。著作権はアイデアには適用されない。だけど、それが何らかの形で表現されると、著作権が適用されるの。この差によって、知識(アイデア)の普及を奨励する法律を制定できるようにすると同時に、著者のそうしたアイデアのユニークな表現を保護することで、その頒布の動機を与えるようになっているの。
著作権侵害の訴訟について弁護士に相談して、その弁護士が言論の自由を持ち出し、公正使用について触れなかった場合は、別の専門家に相談することを考えたほうがいいわね。
ここまで、公正使用について基礎的な概念を説明してきた。次回は、より具体性をもって考えていこう。→「著作権侵害問題:「公正使用(フェアユース)」とは?(後編)」を読む
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