13種類のブラウザ用人気ツールバー徹底検証――開発者/マーケターに便利かどうか【前半】
今回は、ウェブにおける最も人気の高いツール類であるにもかかわらず、めったに議論の対象にならない話題、そうブラウザのツールバーを取り上げてみたい。
いわゆるブラウザツールバーが登場したのは、1990年代の中ごろ。そして90年代終わりから2000年代初頭にかけて、雨後の筍のようにツールバーが出現し、人々のあいだで、これでツールバーも終わりだというようなことが囁かれた。
けれども僕としては、ツールバーがもうこれで終わりだという見方は早計に過ぎたと思う。たしかに、普及の拡大具合は以前ほどの勢いがないかもしれない。けれども、入手可能なツールバーの数や、オープンソースおよび非検索系ツールバーの復活が、古参の部類(少なくともウェブ的尺度での話)に入っていた媒体に新たな息吹を吹き込んでいる。
あらゆるウェブ開発者やインターネットマーケティング担当者が、Firefox用の独自ツールバー開発など、ツールバーの利用拡大に多大な労力を割いているのは明らかだ。もちろん、それら以外のツールバーを無視していいことにはならない。
そこで、以下に人気の高いツールバーを13種類挙げ、その機能を概説してみた。併せて、ごく一般的なユーザーとインターネット専門家の視点から見たプラグインの価値についても、僕なりの個人的な意見を添えておいた。
Googleツールバー
http://toolbar.google.com
機能:
日本語版:あり
- 候補キーワードおよび履歴キーワード表示付きの検索バー
- ニュース検索などGoogleの垂直検索サービスへのリンク
- お気に入りページをGoogle側に保存する機能
- PageRankインジケータ(インストール時にオプションで選択)
- ポップアップブロック
- フォーム入力のスペルチェック機能(および自動修正機能)
- フォーム項目のオートフィル機能(フォーム間で共通する個人情報の自動挿入機能)
- Send-to機能(電子メール送信、GoogleのブログサービスBloggerへの投稿、SMS送信の際、URL付きのメッセージを作成する)
- 検索キーワードのハイライト機能
- そのほかオプション機能としては、翻訳、表示ページへの投票(Googleがこのデータを使って何をしているのかは不明)、垂直検索やカスタムボタンの追加など
利用価値(一般ユーザー):中
ウェブブラウザに検索バーが内臓されるようになって、Googleのツールバーは一般ユーザーにとって以前よりは利用価値が高くはなくなっているようだ。とはいえ、未だ意義はある。ポップアップブロック機能(近ごろでは、ほとんどのブラウザがこの機能を内蔵しているけど)や、スペルチェック、フォームのオートフィル機能、翻訳機能は、たしかに魅力がある。検索キーワードのハイライト機能も、人によっては便利かもしれない。
利用価値(プロ):低
シンプルだ。解釈の仕方さえ正しく心得ていれば(必要とあらば無視できるなら)、GoogleのPageRankデータは興味深い指標になり得る。Firefoxのツールバーは、同じデータに加えてはるかに有用性の高い機能を備えているけれど、真摯なマーケティング担当者や開発者の関心をあまり呼びそうにない。
Yahoo!ツールバー
http://toolbar.yahoo.com
機能:
日本語版:あり(多少機能が異なる)
- 候補表示および垂直検索オプション付き検索バー
- Yahoo!ブックマークを使ったブックマーク機能
- Yahoo!メールおよびMy Yahoo!へのアクセス機能
- Yahoo! AnswersおよびYahoo! Gamesへの直接リンク
- スパイウェア対策機能プラグイン(オプション)
利用価値(一般ユーザー):低
Yahoo!の他のサービスを頻繁に利用する人ならば、このツールバーはかなり価値の高いものになるだろう。しかしほとんどのユーザーにとって、実装している機能はそれほどの価値をもたらさない。
Yahoo!ならほぼ間違いなく、ツールバーにもっと独創的で革新的なオプションを組み込めただろうに、Yahoo!のツールバーは90年代の終わりごろからほとんど変わっていない。Yahoo!のウェブ資産のうち、Del.icio.usやUpcoming、Flickrにアクセスするプラグインがなく、基本的なリンクの形でも用意していない。ウェブサイトあるいはURLの評価システム(GoogleのPageRankのような)もなく、Yahoo!はツールバーをくすぶらせておくに任せているようだ。
利用価値(プロ):低
Yahoo! Mailをはじめ、My Yahoo!、Yahoo! Answersなど、Yahoo!の他のサービスに強く関係している人でなければ、開発者やウェブマーケティングの担当者がYahoo!のツールバーを使うことは、ほとんどあり得ないだろう。そもそも、これらのボタンはリンクに毛が生えた程度のものに過ぎないし、ブックマークはサイドバーを使う方がおそらくもっと便利だろう。
唯一本当の意味で興味深いデータは検索語句の候補情報だけど、それとてYahoo!の通常検索でも見ることができる。
Yahoo! Site Explorerを使ったもっと簡単なデータ体験をもたらすような、ウェブマーケティング担当者にとって有用なオプションがないのもがっかりだ。個人的な見解だけど、これは大変な損失だと思うんだ。
MicrosoftのWindows Liveツールバー
http://toolbar.live.com
機能:
日本語版:あり
- キーワード候補表示および垂直検索オプション付き検索バー(一部外部のウェブ資産を含む)
- MSNBCの情報源に直接つながるニュースリンク
- 追加ボタンおよび追加オプション集へのリンク
- MSNポータルのコンテンツに直接つながるリンク
- 検索キーワードとスナップショットのハイライト機能
- ページ上の住所に対する地図サービスリンク
- HotmailやOutlookなど、マイクロソフトのメーラーまたはメールサービスを利用できるリンクおよび送信オプション
- Windows Live Spacesを使ったブログ作成および公開オプション
- Live Messengerの直接リンク
利用価値(一般ユーザー):中
マイクロソフトが展開するオンラインサービスの愛用者なら、LiveツールバーはYahoo!のものより多少は便利だし、ブラウザやウェブページとの連携性も高い。僕が気に入ったのは、美的なフィット感(と無理のなさ)だけではなく、各種ボタンのユーザビリティが比較的高いことだ(これは単に僕の好みかもしれない)。
ただ改めて書くけど、ツールバーの主要な機能は、主にMicrosoftの製品とオンラインサービスに結び付いている。そこには革新性もなく、それなしでは生きていけないと言えるものもない。
利用価値(プロ):低
ウェブの専門家にとって、マイクロソフトのツールバーはほとんど役に立たない。その道の人たちが、マイクロソフトのオンラインツールやサービスを頻繁に利用している可能性はきわめて低いからね(ただし人気のメール関係だけはたぶん例外)。また残念ながら、live.comのウェブマスターツールやデータと連携する機能もない。
Ask.comツールバー
http://toolbar.ask.com
機能:
日本語版:あり
日本語版はスマイリーセントラルツールバーとして、IE用ツールバーとして配布されている(Firefox版は用意されていない)。機能は英語版とは大幅に異なり、無料アイコンやショッピング、動画サイトへのリンクは一般ユーザーにとっての利用価値を高く感じさせるし、ブログのキーワードトレンドを示すAsk Trendやブログ検索はプロにとっての利用価値を高めている。
- 検索バー(ただし候補表示ツールなし)
- 検索キーワードのハイライト機能
- ニュース検索およびニュースリンク
- 表示コンテンツのサイズ変更
- 気象情報リンク
- ポップアップ・ブロック
- 地図リンク
- 商品検索
- Ask.comのMyStuffに保存したページや画像へのリンク
- 追加ボタンとカスタマイズ対応
利用価値(一般ユーザー):中
ここに強力な検索候補表示機能がありさえすれば、まさに僕のお気に入りツールバーとなるかもしれない。ごく普通のユーザー(僕が思い描いているのは、自分の父親や祖父母のような人)にとって、このツールが提供するリンクは、関連性が高く、便利で役に立つと思う。表示コンテンツのサイズ変更ボタンは特にすばらしいし、他のツールバーにもある機能とはいえ、気象情報、地図、ニュースへの直接リンクは良くできた機能だ(ちなみに、Google、Yahoo!、Windows Liveのツールバーだと、気象情報はオプションで追加できるカスタムボタン)。Askのツールバーはウェブインターフェイスの出来も群を抜いており、(少なくともシンプルさという点において)Googleのツールバーよりも優れたユーザー体験をもたらす。
利用価値(プロ):低
Windows Liveのツールバーと同様に、開発者やマーケティング担当者の興味を惹くようなものは事実上何もない。Bloglinesとの連携や、ウェブマスター向けの機能、あるいはPageRankに類似したデータなどを提供していれば(どのみち、現実的にAsk.comにとって損になることはないし)、間違いなくもっと魅力が増しただろう。
AOLツールバー
http://toolbar.aol.com
機能:
日本語版:なし
- 垂直検索オプション付き検索バー
- AOL Mail、インスタントメッセージ(AIM)、AOL Games、気象情報への直接リンク
- MapQuestによる地図表示および道案内サービスのプラグ&プレイ機能
- カスタマイズ可能なボタン集へのリンク
- Surfometer機能(僕のお気に入り!)
利用価値(一般ユーザー):中
たぶんがっかりするだろうと思いながら使ってみたけど、結果は嬉しい驚きだった。もしAOLユーザーなら、このツールバーはおそらくぴったりだ(AIMやAOL Mailと直接結びついているしね)。MapQuestをはじめ、気象情報、ニュースなどとの連携もしっかりしている。驚いたことに、オプションで利用できるボタンが山ほどあり、それらをインストールするための使いやすいギャラリーもある。
それから、何と言っても僕のお気に入りは、「Surfometer(サーフォメーター)」という機能だ。これは、長期にわたって自分の閲覧ページ数を記録し、表示する。ウェブサーフィンを重ねれば、自分のランクも教えてくれる。正直に言えば、他のウェブサーファーと比較できる機能と、サイト別や分野別で自分のアクセス行動を図式化する機能を加えてくれたら、僕はもうAOLツールバーに首ったけになると思うよ。というか、僕って完全なオタクだな(笑)。
利用価値(プロ):低
もし、僕みたいにSurfometerのアイデアを本当に気に入るようなら、実際にはGoogle Desktopの方が利用価値は高い。カスタマイズオプションの簡便性は、他のツールより多少魅力的かもしれないが、残念ながらそれ以外に、ウェブの専門家に特別訴求する点はない。
Alexaツールバー
http://toolbar.alexa.com
機能:
日本語版:なし
- 主要検索エンジンと組み合わせた検索オプション(それとAlexa自身のエンジンによる検索)
- 訪問サイトに関する情報(上図にあるとおり、SEOmozが満3才だと表示していることに注目)
- 訪問サイトのトラフィック順位とその動向(数値と上下の矢印で表示)
- 関連サイトの表示
- ポップアップ管理ツール
- Amazon.comおよびArchive.orgへの直接リンク
- 印刷ボタン
利用価値(一般ユーザー):低
Alexaのツールバーは競争情報を示すツールとして開発されたので、ウェブサイトの人気データ(非常に不正確だけど)とか、表示サイトの連絡先情報(これまた大嘘の内容)などが手に入るぐらいで、事実上これといった機能は何もない。
Alexaのデータの価値は、Alexaのツールバーを導入する人の数次第なんだから、これはひどすぎるよね。これを使う人がより普通の「平均的な」人たちであればあるほど、Alexaのデータも良質なものになるけど、実際にはそれをこの市場にうまく提供できていない。
利用価値(プロ):中から高
みんながみんなとは言わないけれど、大半のウェブ専門家にとって、Alexaのツールバーを使う(そしてAlexaにデータを提供する)のは有益なことだ。その理由は簡単で、わずかしかいない同ツールバーの利用者が、日常的にウェブサイトを利用すれば、それがごくわずかでもそのサイトのランクを押し上げるのに十分だからだ。
企業や評価サービス会社や投資ファンド、さらには競合相手にも、いまだにAlexaのデータを信頼して、戦略決定に有益と考えている無知な意思決定者が大勢いる。加えて、関連サイトのデータやサイト情報は、競争上の情報として役立つかもしれない(ただし、そのデータや情報を多少割り引いて考えるならばの話)。
Compete.comのツールバー
http://tools.compete.com
機能:
日本語版:なし
- 主要検索エンジンを使用する検索オプション
- Compete.comおよびMyCompeteパネルへの直接リンク
- 信用度評価
- 閲覧中のサイトに関する競争関連データ
- ポップアップ形式のトラフィック推移情報
- 小売サイトなどが提供する特別クーポンを利用できるDealボタン
利用価値(一般ユーザー):低から中
一般的なユーザーがCompeteのツールバーを使用する際、最も魅力的な機能は、もしそのサイトに特別セールなどの商品があった場合、「Deal」ボタンが有効になって二重の値引きを利用できること(Amazon.comやGAPなどのサイトでよくボタンが有効になった)と、信用度表示だ。これで一般的なウェブサーファーを何千人も集められる訳ではないだろうが、Alexaのツールバーよりはずっとましだ。
利用価値(プロ):中から高
Competeのデータは特別すばらしいものではないが、場合によってはAlexaのデータより使えることもある(そうでない場合は、同程度にだめか、むしろAlexaより悪い)。だが、Competeはハイテクおよびメディア分野の新興企業の中で急速にのし上がっていること、そしてたとえわずかでもランキングに影響を与える(さらに競争相手の動向が見える)ことから、このツールバーは悪い選択ではない。
CompeteがAlexaの方向性でもう少し改良を進め、関連サイトのリストを提供すれば、もう少し価値が高まる可能性もある。Competeの蓄積データが増えるに伴い、間違いなくその有用性は高まり得る。
前半となるこの記事では、7種のツールバーを紹介した。
- Googleツールバー
- Yahoo!ツールバー
- MicrosoftのWindows Liveツールバー
- Ask.comツールバー
- AOLツールバー
- Alexaツールバー
- Compete.comのツールバー
後半となる次回では、残り6種のツールバーを見ていこう。
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