オンライン広告の規制と事業に関するカンファレンスに参加してみた(前編)
願わくは、この投稿がSEOmoz読者各位の御意にかないますように。
先週の金曜(4月18日)、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)のBerkeley Center for Law & Technologyとサンタクララ大学のHigh Tech Law Instituteが共同で開催したカンファレンス「法律とオンライン広告ビジネス(Law and Business of Online Advertising)」に参加する機会があったの。
このカンファレンスには、オンラインマーケティングにおけるスーパースターたちが顔をそろえていたわ。主だった人たちをざっと挙げただけでも、
- エリック・ゴールドマン氏――High Tech Law Institute所長(私のヒーロー)
- キム・ハウエル氏――マイクロソフト(テクノロジーに疎いリベラル系の学者たちに、オンラインマーケティングについて説明しなければならなかったのはお気の毒)
- ハル・ヴァリアン氏――グーグルのチーフエコノミストでUCBの教授でもある(なんていうか、大物ね)
- ジョン・ホリガン氏――調査会社Pew Internet & American Life Project
- オレン・ブラチャ氏――テキサス大学法学部準教授(スーパーマンを演じたクラーク・ケントにちょっと似てる)
- ペーター・スワイア氏――オハイオ州立大学教授(俳優のグレッグ・キニアにちょっと似てる)
- レベッカ・タシュネット氏――ジョージタウン大学教授
- ジェフリー・ローアズ氏――Eメールマーケティングを手掛けるExactTarget(法律とビジネスが人生そのものという人)
- アリッサ・クーパー氏(Center for Democracy & Technologyのテクノロジー担当主任)
など。ほかにもたくさんオタクっぽい人たちがいて、私はすっかりくつろいだ気分になったわ!
カンファレンスのハイライト
その日の朝は、オンライン広告がどのように機能するのかを説明する2つののチュートリアルから始まったの。ウェブサイトが行動ターゲティングという手法を用いて、ユーザーのアクセスごとに異なるページをどのように作成するか、その仕組みについて説明する任にあたったのは、大物のハル・ヴァリアン氏だったわ。1匹のハエを殺すのに核爆弾を使うような感じだったけど、いつだって基本に立ち戻るのはいいことよね。
確信はないんだけど、聴衆は主に、弁護士や付近の大学の研究者たちのようだったわ。それから、学生たちもあちこちにいたわね。中央にあったテーブルを囲んでいたのは、実際にテクノロジーに携わっている人たちだったみたい(こういう人たちが参加してくれて、ありがたかったわ)。
朝のセッションの大半は、検索エンジンと、相応に大規模で手の込んだ広告キャンペーンを展開している大企業に関する話が中心だったの。
グーグルのチーフ・エコノミストであるヴァリアン氏は、SEOマーケターや検索エンジンマーケターに簡潔なエールを送ったわ。SEOマーケターのことを、「高度な技術を持ったオンラインマーケター」だと説明したのよ。必要とされる教育と特殊技能の量からして、SEO担当者は弁護士に匹敵するんですって。
またヴァリアン氏は、将来SEOマーケターが広告代理店自体に組み込まれていくだろうと見ているわ。独立して無軌道な振る舞いをする人はいなくなるというわけ。全体的に言って、グーグルにおける最も優秀な人物の1人から、この職業を支持する好意的な姿勢が示されたセッションだったわね。
おもしろいことに、最も熱い議論になったのは、行動ターゲティングとそれが消費者のプライバシーに与える影響についてだったの。聴衆は行動ターゲティングに対して強い敵意を抱いているようだったわ。それに対して、パネリストたちは全員、行動ターゲティングは良いもので役に立つという点で意見が一致していたけれど「消費者がよく理解した上で参加するかどうかを選択できる場合に限る」という条件付きだったわ。
聴衆は、クッキーとその仕組みについてきわめて強い興味を示していたわ。そして、「Network Advertising Initiative(NAI)のオプトアウトプログラムじゃ、広告主が消費者に関する情報を収集するのを阻止できない」と聞くと、聴衆は驚き、困惑していたわ。このプログラムは、広告主が個人にターゲティング広告を提供するのを防ぐだけ。企業はやっぱり消費者の情報を利用しようとするし、消費者はなおも広告を見せられるけれど、個人の嗜好をターゲットにした広告ではないということね。ともかく、NAIのオプトアウトプログラムをわざわざ使用する消費者の多くは、この点をわかっていないという気がするわ。結局のところ、プライバシーに敏感な人々を悩ませているのは、行動ターゲティングじゃなくトラッキングそのものだと考えるしかない。
答えが示されていない疑問
「プライバシーポリシーでは、どの程度の情報開示が必要か?」
ウェブサイトなどでどのような情報が収集されるのか、そしてその情報がどのように使われるのかについて、プライバシーポリシーで明らかにしなければならないということには、誰もが同意するでしょうね。でも実際のところ、プライバシーポリシーは行動ターゲティングの透明性を高めるのにあまり役立っていないわ。その理由は、次の2つ。
誰もプライバシーポリシーを理解していないから。
多くのサイトが個人情報販売は行わないと明言しているものの、後で方針が変わってもそれをユーザーに知らせないから。
興味深い問題なのに議論から抜け落ちていたのは、管轄権の影響力とインターネットの世界的な広がりについて。米国のプライバシー法を他の国々とどう調和させるかという議論はまったくなかったわ。それに、世界規模の市場においてプライバシーを守らせる方法や、セキュリティ問題についても話し合われなかったのよね。こうした国際的な問題について、次のカンファレンスではもっと多くの時間が費やされることを期待したいわ。
検索エンジンのランキング操作やインターネット規制の課題について、オレン・ブラチャ氏が興味深い議論を展開
もし、自分の顧客の検索順位が明確な理由もなく下落して、それが検索エンジンの責任だと感じたり、検索エンジンがユーザーを、検索エンジンに広告を多く出稿しているサイトへと導いているんじゃないかと思ったりしたことがあるなら、ブラチャ氏がフランク A. パスカル氏と共同で執筆した論文「連邦検索委員会が必要? 検索に関する法律におけるアクセス性、公平さ、説明責任」を読んでみるべきね。下手に要約しようと試みるより、要約文をそのまま引用したほうがよさそうだわ。
個人情報を収集する業者、ケーブルネットワーク、電話帳に現在適用されているような種類の規制を、検索エンジンにもかけるべきだろうか? この論文では、検索結果を操作し構成できる検索エンジンの能力に対する規制に賛成の立場をとっている。憲法修正第1条を正しく理解すれば、それがこの種の規制を禁じていないことを明らかにし、こうした介入があったとしても、必ずしも重要な企業秘密が暴かれるわけでもないことを示す。
われわれは検索エンジンのランキング操作に対する評価基準となる基盤を示した後で、なぜ市場の規律や技術的進歩によって検索エンジンのランキング操作を抑止できそうにないかを説明する。技術に精通したユーザーやパーソナライズド検索により、企業の不正行為をある程度まで抑制できるかもしれないが、現在検索市場を支配している寡占的事業者による不適切な行動を阻止できる見込みはほとんどない。裁判所は、言論の自由があるから検索結果は規制できないという判断を示す傾向があるが、この論文では、検索エンジン規制に向けて現在進んでいる協議への賛成論を述べている。
現時点で私は、連邦検索委員会を設置するのがいいという考えに賛成する気にはなれないわ。でも、この議論は確かにとても重要だと思う。行き詰るかもしれないけど、道筋は描いておくべきだから。
ブラチャ氏の問いかけは、少なくとも次の2つの理由により重要だと思うの。
政治的良心の持ち主なら、組織とは自分たちにとっての最大の利益を追求するものだと決めつけたりしないでほしいの。自分の利益が影響を受けるかどうかについて結論を出すのを棚上げにして、先にこの組織について研究することが必要よ。
インターネットは、ますます私たちの暮らしや実生活に浸透しているわ。オンラインとオフラインの世界が融合するにつれ、規制が必要となる時期がやってくるかもしれないでしょ。規制が合法なのか、現実的に実施可能なのかという検討を、明らかに規制が必要になるときまで始めようとしないのは間違っているわ。
この記事は2回に分けてお送りする。後半でも今回に引き続き、「法律とオンライン広告ビジネス」カンファレンスのレポートをお届けする。→「オンライン広告の規制と事業に関するカンファレンスに参加してみた(後編)」を読む
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