4つの分析の優先順位の考え方
4つの分析の優先順位の考え方
4つの分析によって具体的にサイト改善の施策として考えられることは、下記のようになる。
- キャンペーンなどで集客する(流入)
- SEOを行い、中長期的な集客施策を行う
- PPC、バナー広告、タイアップ、アフィリエイトなどのキャンペーンを行い、短期的な集客施策を行う
- 適切に接客する(回遊)
- LPOを行い直帰率を下げる
- ユーザーの使う言葉を用いてサイトを改修する
- 成約に励む(コンバージョン)
- 購入プロセスを改善して、コンバージョン率を上げる
- 資料請求プロセスを改善して、資料請求率を上げる
- 既存顧客をもてなして再訪を促す(リテンション)
- メルマガを発送して、新たな注文をもらう
- 資料請求顧客に、フォローアップ・コールをする
さて、ここで冒頭の問いに戻る。下記施策AとBのうち、あなただったらまずどちらを実行するだろうか? この問いは、これまでに説明した4つのフェーズの施策のうち、どれが投資対効果が高いかという問いを考える応用問題ともなっている。
施策A新規獲得キャンペーンに1,000万円のコストを掛け、売上を2,000万円増やす
施策Bコンバージョン率を改善するための内部施策に1,000万円のコストを掛け、コンバージョン率を0.1%上昇させて、売上を1,000万円伸ばす
コンバージョン率 | 利用者数 | 購入回数 (人数) | 平均 購入 単価 | 売上高 | 投資額 | 純増利益額 | 投資対効果 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
現状 1か月 | 2.0% | 100万人 | 2万人 | 1万円 | 2億円 | |||
施策A 1か月 | 2.0% | 110万人 | 2万2000人 | 1万円 | 2億2,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 100% |
施策B 1か月 | 2.1% | 100万人 | 2万1000人 | 1万円 | 2億1,000万円 | 1,000万円 | 0円 | 0% |
一番右の列に投資対効果と書いてあるので、当然施策Aを答として期待しているとお考えだろうが、正答は施策Bだ。
もちろん細かい条件などを書いて質問したわけではないので、質問の不備はご容赦いただきたいのだが、投資対効果は短期だけで見てはいけないということを言いたかったのだ。表3を見ていただければわかるとおり、コンバージョン率の改善施策(施策B)はその効果が1年続くかどうかは別として、数か月は続くという前提で行うものだが、キャンペーンの集客(施策A)は普通キャンペーン終了後に持続的な効果が続くことはあまり考えられない。上記の例では、施策Bの効果が3か月間続けば、ROIは200%に跳ね上がる。
コンバージョン率 | 利用者数 | 購入回数 (人数) | 平均 購入 単価 | 売上高 | 投資額 | 純増利益額 | 投資対効果 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
現状 3か月 | 2.0% | 300万人 | 6万人 | 1万円 | 6億円 | |||
施策A 3か月 | 2.0% | 310万人 | 6万2000人 | 1万円 | 6億2,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 100% |
施策B 3か月累計 | 2.1% | 300万人 | 6万3000人 | 1万円 | 6億3,000万円 | 1,000万円 | 2,000万円 | 200% |
もちろん明確なコンバージョンのないサイトもあるだろう。当然各サイトの事情によって異なるが、どう考えるべきかというヒントだととらえ、自サイトに合った計算をしてみてほしい。
一般論としての改善施策の優先順位を以下に示しておくので、考える際の参考にしていただきたい。
優先順位 | 施策 | 理由 |
---|---|---|
1 | 既存顧客をもてなす(リテンション) | 新規顧客獲得コストは、既存顧客維持コストより遥かに高い。いったん顧客を捕捉しているのなら、この資産を最大限に活用することをまず考えるべきだ。 |
2 | 成約に励む(コンバージョン) | 購入プロセスなど数ページの改修で、コンバージョン率を劇的に上げられる可能性が高い。すでに関心のあるユーザーを顧客に転換させることが、今の資産を有効に使う次善の策である。 |
3 | 適切に接客する(回遊) | 比較的流入数が高く直帰率の高いページだけの改修を行うことで、全体の直帰率の改善に効果がある。一見さんに関心をもってもらうことが、今の資産を次に有効活用する手になる。 |
4 | キャンペーンなどで新規顧客を集客する(流入) | SEOは中長期的にボディーブローのように効いてくるので、着実に実行したい施策だ。短期的な集客施策は、効果が低くてもやらないといけない。既存顧客だけではビジネスは発展しないので、定期的になんらかの新しい顧客誘導の仕掛けは必要になるが、一からユーザーを誘導しなければならないため、効率は悪い。 |
時間のない皆さんの場合は、この考え方を自分のサイトに応用してみて、自分のサイトの事情に合わせた優先順位を決めて、優先順位の高いフェーズから始めてみるとよいだろう。
次回以降それぞれのフェーズの具体的なデータの見方に入っていくことにする。
まとめ
- アクセス解析は4つの対顧客戦略で考える
- 4つの分析に入る前にベンチマークを把握する
- 4つの分析の優先順位の考え方を知り、改善施策に役立てよう
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