利用者の目線で誰でも簡単に利用できるように
利用者の目線で誰でも簡単に利用できるように
「実際にお客様にご利用いただいて年賀状作りをどれだけサポートするか、お客様目線での利便性を考えたサイト作りというのは初めてでした
」と話す西村氏がこだわっているのが、利用者目線だ。
当初は、若者の年賀状離れを呼び戻そうという思いがあったというが、実際のサイト利用者をみると、年配の利用者も多いという。そのため、昨年269万のダウンロードがされた年賀状作成ツール「はがきデザインキット」においても、ただ新しい技術を取り入れていくだけでなく、インストールからプリントアウトまでをすべてチュートリアル動画で説明するなど、ユーザビリティの向上にも力を入れている。
「最先端技術の面白いコンテンツを準備しつつも、リテラシーの低い方もちゃんとサポートしていくようなサイト作り、2つの方向で進めています。今までPCになじみがなかったけれど、最終目標が年賀状作りという方がいらっしゃるので、動画の他にもメールでのお客様相談センターを専用で立ち上げたりしています
」
ツイッターのバズを通じて年賀状への思いを再燃させる
これまで、さまざまなコンテンツを追加してきた郵便年賀.jp。日本郵便ほどの組織となると、運営体制も組織立って行っていると思いきや、意外なことにその企画は社内で西村氏が1人で考え、パートナーの制作会社と協力して実現しているのだという。そうしたなか、2011年用に新たに立ち上げたのが、2010年にツイッターへ投稿したつぶやきの内容を解析し、最も利用した漢字を抽出して年賀はがきの素材として利用できる「今年の一文字」だ。西村氏は、ツイッター活用の目的をどのように考えていたのだろうか。
「年賀はがきを1枚でも多く売ることが根底のミッションにありますので、今話題のツイッターを使って、世の中の年賀というバズをどれだけ高めることができるかというのが頭にありました。ただ、私が年賀についてつぶやいたり、有名な方につぶやいていただいても盛り上がらないだろう。盛り上げるために、ツイッターの面白い機能を使ってなにかできないかと考えました
」
販売数やフォロワー数など、具体的な目標は定めずに、まずは年賀のプロモーションとして年賀のバズを高め、ツイッターを使うどちらかというとデジタルよりの人、アーリーアダプターの人たちに年賀という文化をもう一度思い起こしてほしい、という思いが強かったようだ。
「何か面白いことができないかと制作会社に相談したときに、過去3200ツイートまで抽出する機能があることを知り、清水寺でお坊さんが書く一文字を年賀と結び付けられないかと考えました。今年の漢字は、世の中のみんなが共感できる漢字ですが、ツイッターはどちらかというと自分本位な発信で、そのギャップが面白いのではないか。だったらツイッターで今年の一文字をやれば年賀というバズも高まるし、リアルとツイッターの世界の違いもみられて面白いのではないかとスタートしました
」
こうしてはじまった今年の一文字は、公開一週間で10万人以上、公開1か月後の12月には述べ32万人が利用しているという。「最終的な声の集約まではいっていないのですが、利用手前の認知度はアップしているはずなので、そこは成功しているのではないかと思います
」
好評を得ているツイッターだが、ツイッターという新たなツールを活用することに対して、社内で反対意見などはなかったのだろうか。「ツイッターを使うにあたり、社内でなかなか理解してもらえなかったというのはあります。mixiのときは、もともと何千万人のユーザーがいますよという話で、そうした人を呼び込むと理解してもらえたのですが、ツイッターはそうしたコミュニティとは異なるところがあります。ただ、巷でツイッターは利用したことがなくても聞いたことはあるワードではあると思いますので、私がいままでやってきた新しい取り組みのなかで、今年はツイッターなんだねと、温かい目で見守ってもらったところはあります
」
日本郵便として公式にツイッターを活用しているわけではなく、今年の一文字ではリリース以外の広報活動は行わずに、西村氏が個人的にツイッターを活用してつぶやいたり、ブロガーに協力をしてもらったりして広めた程度だという。日本郵便という伝統ある大きな会社では何かと縛りも大きくなりがちだが、はじめから組織として大きな目標をさだめずに、日頃からソーシャルメディアを活用する西村氏の経験を生かして、緩やかな関係を築いていったことが成功につながったようだ。
「ツイッターを見ていて最近嬉しかったのが、“日本郵便もやるじゃん”“日本郵便らしくないね”といったコメントをいただいたことで、日本郵便らしくないことをやりたいというのがWeb上の私の狙いではあります
」
日本郵便の信頼感、安心感でネットから年賀状をお届けする
最後に、西村氏に今後の展開について伺った。
「アクセス数がいい感じで上がってきていますので、2億PVまではもって行きたいですね。サイト自体を毎年の定番にするという狙いもあります。まだ、Webの世界には胡散臭いとか、これより先に行くのは怖いというところがあると思います。弊社の強みは、信頼感、安心感というキーワードかと思いますので、日本郵便という看板と、いろいろなネットサービス会社さんと組むことで、Webとアナログの新しい形として、信頼感、安心感をもってお届けできる。根底のプラットフォームを担えるのが、日本郵便の立ち位置ではないかと思っています
」
また、利用者が増えつつあるスマートフォン向けにも、新たなコンテンツを提供していきたいと考えているという。「スマートフォンは当然対応していかなければと思っています。たとえば、ハガキデザインキットの簡易版で、指先だけで簡単に年賀状が作れたり、そうしたアプリにするのもあるでしょう。最新技術のARを使って、葉書にマーカーをかざすと私(差出人)が立っているとか、そうした遊び感覚もムービーデコ年賀の発展系としてありではないかなど。今の技術を使いながら、ベースにある伝統的な年賀状のやり取りをより面白くできないかなというのが頭にあります
」
自分が利用者だったらどうなのか、サイト利用者の目線を忘れずにさまざまなサービスを打ち出している西村氏は、最後に「日本郵便という看板をもっとうまく使って、Webの最先端のサービスと弊社のアナログサービスの融合をもっと進めていきたい。もっと新しいことが弊社の埋もれた資産を使うとできると思います。宝の山だと自分の会社ながら思っていますが、それをまだ使い切れていないので、いろいろなご提案とかコンタクトをいただければと思います
」と話してくれた。
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