「SEOが理不尽なクソゲーになった」時代の生き方とは? 衝撃の移籍を発表した辻さんと渡辺さんが語った
2025年、検索エンジンはどう変化するのか、それに対してSEOでは何に取り組むべきか、SEOの第一人者お二人にお話を聞きました。
一人は、長らく独立系として経営してきたSEO会社のso.laを2025年1月、Faber Companyにグループインさせることを発表した辻正浩さん。もう一方は、辻さんのSEOの師匠でもある株式会社DMM.com SEOマネージャーの渡辺隆広さん。ファシリテーターはWeb担当者Forum編集統括の安田英久です。
「SEOのおいしい手法」は、生まれては消えるを繰り返してきた
――SEOのおいしい手法はどのように変遷してきたのでしょうか?
渡辺: 2000年より前は、HTMLのマークアップで上位表示したいキーワードをcenterタグ、hタグ、boldタグ、strongタグなどで強調するのが基本的なSEOでした。
辻: 私が大学生だった95年頃、ほぼ30年前に、大学のUNIXサーバにアップしたホームページにtitleタグをたくさん書いてみたら、それだけで何でも順位があがった。そういう時期を経て、次はリンクスパムですね。
渡辺: Googleが登場したのが1998年。公開されていたPageRankアルゴリズムの論文が研究されて、「こうすれば順位が上がる」として攻略法が広まったのが2000年くらい。そこからリンクスパム全盛になりました。
辻: リンクスパムが効いた時代は長く続きました。仕事でSEOに取り組むようになった私ももちろん使っていましたし、ほとんどのビッグワードはリンクを買わないと上位表示できない時代でした。
検索エンジンスパムはリスクもあり、一般的には非推奨の手法です。今の感覚で言うと「リンクスパムをするなんて!」となるかもしれませんが、当時は「こうすれば検索エンジンに評価される」とわかっていて、他のWebサイトが行っているのにそれをやらないのは、SEO担当者としては職務怠慢と言われてもしかたがない時代でした。
その後、Googleがアルゴリズムのアップデートを行い、リンクスパムは効かなくなりました。それと入れ替わるように盛んになったのが「コンテンツファーム」。ほぼ無意味なコンテンツを大量投下するという手法です。
渡辺: リンクスパムが廃れ始めた2008年~2009年ごろに、自社サイトへの流入元としてコンテンツファームが低品質のコンテンツを大量生成、大量投下するという手法が盛んになりました。
そのような低品質コンテンツの検索順位を下げ、高品質なコンテンツを提供するサイトを高く評価するために導入されたのがパンダアップデートです。2011年から2013年まで、26回実施されました。こうしてGoogleが低品質コンテンツ対策を進めた結果、コンテンツファームの手法は効果がなくなりました。
辻: この次に、日本版コンテンツファームと言いますか、「きちんとコンテンツ制作体制を作って、一定の質が担保されたコンテンツを大量投下してアクセスを集める」という流れがやって来ました。その進化系がキュレーションメディアです。闇雲にコンテンツを大量生産するのではなく、一定の品質を保ったコンテンツ制作の効率化を目指すという方向性でした。
それで効果が上がった時代がありましたが、それも厳しくなっていきます。2016年頃から日本では誤った医療情報の問題、世界的にはフェイクニュース問題などから、サイトの信頼性を重視したアルゴリズムの導入が進みます。金銭、健康、安全などに重要な影響を与える可能性のあるキーワードについては、公的なサイトをはじめとした信頼性のあるWebサイトが上位表示されるようになりました。
――Webサイトの信頼性は何によって評価されるのですか?
辻: 複雑ですね。一言でいうなら「いろいろな要素を分析して評価している」としか言えません。この指標は2015年頃から実験を重ねていますが、変わり続けています。ドメイン名や検索数といった単純な要素だけではありません。
渡辺: わかりやすく言うなら、そのWebサイトに関するオンラインのレピュテーションを総合的に評価している感じです。
――その「レピュテーション」にはSNSでの言及も含みますか?
辻: SNSでの言及は直接的にはほぼ影響しませんね。最近話題になることも多い指名検索数は複雑な形で使っています。ただ数年前は影響が大きかったものの、今は、クリティカルな影響はないと思われます。指名検索数が多いだけで評価が上がるとしたら、問題を起こした企業のランキングも上がることになります。そうはなっていませんよね。
Webサイト単位の評価になったことで現れたのが、寄生サイトです。日本では2018年くらいから始まって、2022年に「おいしい手法」として急増しました。「信頼の高いWebサイトのドメイン名配下のディレクトリに、SEO目的で他のWebサイトを紛れ込ませる」という手法です。埋め込まれていたのは、ほとんどがアフィリエイトサイトでした。これも今は排除するターゲットになっていて、現実的な手法ではなくなりました。
――では、今はどのような「おいしい手法」があるのでしょうか?
辻: なくなりましたね。
渡辺: 費用対効果が見合うのであれば、「信頼性の高いWebサイトを丸ごと買収」が、今の唯一のおいしい手法かな。
辻: 確かにそれぐらいしかないですね。もう一つ、「ユーザー行動スパム」と呼ばれる手法がありました。クラウドソーシングを中心に、人にお金を払って特定の閲覧行動をしてもらうスパムで、2018年頃からすごく流行った。これがまだ少し生き延びている感がありますが、それも効かなくなってきています。
Googleの誕生以来、常になにかの効率的な「おいしい手法」がありましたが、初めてそれがなくなったタイミングだと思います。SEOの抜け道がどんどん塞がれて、いよいよ大きな抜け道が何もなくなってしまった状況なので、「ユーザーにとって価値のあるWebサイトを手間ひまかけて作りましょう」という結論にしたいところですが、それはSEOのプロが言うことではありません。
「質の高いコンテンツを作れば、時間はかかるが検索結果順位が上がる傾向にある」というのは確かです。ただ、それはコンテンツ制作分野の人がやる仕事で、SEOのプロである私の仕事ではない。コンテンツに関しては100点満点のWebサイトが複数あるという前提で、テクニカルな設定を工夫することで一歩抜きん出る。それがSEOの仕事です。
「SEO=いいコンテンツを作ること」という誤解が蔓延している
――企業のWeb担当者は、どのようなSEOを行えばいいのでしょうか?
辻: Webサイトの規模が大規模なのか、中小規模なのか」によって分けられます。
まず、私が担当しているような巨大サイトの場合をお話ししましょう。要は「大手メディアサイト」「報道機関のサイト」「大規模UGCのサイト」など、コンテンツが作られる体制が整っていて、質の高いコンテンツを提供しているサイトです。
そういうサイトは、コンテンツについてSEO担当者が関わるのは主な仕事ではありません。何をしているかというと、GA4やGoogleサーチコンソールの管理権限を付与していただき、クローラーのログを見て今までと違う挙動がないか確認したり、サーチコンソールのAPIを使って深い分析をしたりして、流入を増やすための施策を行うのが主な仕事です。
たとえばクローラーの挙動を見て変化があったとします。その場合、次のように考えます:
アップデートでこう変化した。
これは、「■■の要素を問題視していて、■■という形で解決しようとしたから、このような変動として表れた」と推測できる。
これによって検索市場には▲▲という影響が出るだろう。
であれば、自分が担当しているサイトには、このような変更を加えることで、プラスの効果があるはずだ
さらに、次のように考えることもあります:
これを問題視したアップデートがあったということは、今後さらに★★のような変更が予想できる。
となれば、長期的に考えて、サイトのこの部分はこのように手を入れておくべきだ。
こうした分析と判断にマニュアルはありません。これまでの施策と結果の経験から、流れを読んで予測して、対応を考え出すのがSEO専門家の仕事ですので。Googleの推奨を意図的に無視するべきことも多いです。既知の解決策があるわけではないので、過去がどうだったかを知っておくことも大事ですし、実施した結果が正解だったかどうか常にモニタリングしておかなければなりません。そして間違っていたらすぐに軌道修正をしなくてはならない。だから私の場合はいつも徹夜仕事になってしまうわけです。
――DMM.comのSEOマネージャーである渡辺さんはいかがですか?
渡辺: DMM.comは複数の大規模サイトを抱えていますが、現在はまだサイトごとに基本的な改善策を少しずつ実施している段階です。同時に、全社的な検索エンジンへの興味関心を高めて、SEOを推進しやすい文化醸成をしています。まだまだ手をつけられていない課題が山積していますが、次のようなことから進めています:
- Google検索セントラルに書いてある基本事項は全部押さえる
- ユーザー目線で見やすい、使いやすい、来訪目的を満たせる状態にする
最近はテクニカルSEOをきちんと理解している人がいないので、テクニカル要素がSEOの課題だと認識できない企業が増えてきたように思います。
辻: SEOのプロを名乗る人の95%が、コンテンツしかわからなくなってしまいましたね。
渡辺: SEO担当者の採用面接で、「テクニカルSEOでどのような施策を行ってきましたか?」と聞くと、「titleタグにキーワードを入れた」「meta descriptionの記述内容を調整した」と回答する人が多い。それはテクニカルSEOではありません。
中小規模のサイトは、まずSEOの基礎を確認することから
――では中小規模のWebサイトにSEOを実施する場合は、なにが大切でしょうか。「このサイトのSEOを月40万円でなんとかしてほしい」と頼まれたらどうしますか?
渡辺: 多くの中小企業のサイトは、Google検索セントラルに書いてあるような、いわゆるSEOの基本ができていないことが多いですね。
たとえば、「URLの正規化」は、検索セントラルのドキュメントにも書いてあるのに、rel="canonical" link アノテーションが記述されていなかったり、正しく設定されていなかったりすることがある。
あるいは、ユーザーが検索で使うキーワードをWebサイトで使っていないというのも、散見されます。たとえば家具のサイトで、ユーザーが「会議用テーブル」を探しているのに、Webサイト内には「大型角テーブル」という表記しかなければ、検索でヒットするはずはありません。
辻: これらの中小規模サイトは、SEOの基本を押さえて、いいコンテンツを作ることで、検索エンジンからの評価を上げられることが多いですね。
UXの部分は、SEOの基礎ができていれば、人間にとっても見やすくなるので、あまり問題がないことが多いです。ただ、「人間が見るのには関係ないが、検索エンジンにとってはこれが必要」という領域が忘れられがちです。そのような穴を塞ぐことも重要な部分です。SEOの観点では、1つのポイントを突き詰めて90%の状態にするより、15%の状態×6領域にした方が絶対に効果があります。
あとは、CMSやプラットフォームの選定も重要ですね。GA4やサーチコンソールが使えないCMSやプラットフォームは、SEOの観点からは推奨できません。たとえば、更新性の必要な小規模コーポレートサイトを作るなら、WordPressが無難と思います。リーズナブルな金額でサイト制作してくれる事業者もたくさんありますから。なお、ブログなら私も関わっている「はてなブログ」をお勧めします。so.laのお客様だからというわけではなく、本当にいいサービスですよ(笑)。
自社商品/サービスのユーザーはどこにいるのか
――SEOのためには、X、YouTube、Instagram、TikTokなど、プラットフォームの動向も理解しておくべきでしょうか?
渡辺: 私が昔からずっと言っていることですが、SEOをやる前に、自分たちの商品やサービスの顧客がどこにいるのか把握するべきです。
新規事業を立ち上げた会社にありがちですが、「Webサイトを開設し、SEOをやれば、ユーザーがどんどんやってきて、売上が上がる」と考えてしまっていませんか? しかし、よくよくビジネスモデルを聞いてみると、そもそも選択するプラットフォームを間違っていることが多いんですよ。
「SEOよりもこうするほうがいいのでは?」という例は、具体的には次のようなものがあります:
そのビジネスモデルならInstagramやTikTokといったソーシャルメディアがいいんじゃないの?
SEOではなく、広告がいちばん効率良いのでは?
商品を配送するときの箱にチラシを同梱するほうが効果的
そもそも、そんなに検索が発生するビジネスじゃないよね
SEOは集客の手段の一つではありますが、万能ではありません。SEOの相談を持ちかけられたときに、ビジネスの観点から有効なアドバイスをするために、他のチャネルの特性を理解することは必要だと思います。
Instagram、TikTok、YouTubeのユーザーは、そのプラットフォームの中だけで活動して、外には出ていきません。だから集客を考えるなら、「自分たちの(見込み)顧客が活動している場所は、Instagramなのか、TikTokなのか、YouTubeなのか、トラディショナルなWebなのか」を把握して、注力するチャネルを見極めることが大事です。間違った方向で努力すると、時間とお金とリソースの無駄になります。
辻: FacebookやTwitter(の名称だった頃)は、以前はWebへの流入元として価値があったのですが、特に日本ではそれがほとんどなくなり、流入元としてあまり重要ではなくなりました。TwitterがXになってからは、それが顕著です。Xに代わって、Google Discoverやはてなブックマークなどが重視され始めています。
SEO人材の育成をどのように進めるべきか
――長らく独立系としてさまざまな重要メディアのSEOを支えてきた辻さんの株式会社so.laは、2025年1月、Faber Companyにグループインすることを発表しました。これはどういった経緯でしょうか?
私がずっと困っていたことに、「私の仕事を引き継げる人がいない」ことがありました。私が病気で長期間業務ができない状態になれば、かなり困った事態になります。とはいえ、現実問題として引き継ぎ相手を育てるために時間をかけて採用を行うような時間的余裕もない。
ではどうすれば良いか。「他の会社と一緒にやって、そちらの会社を手伝いながら、自分の今のお客様の対応をしつつ業務を手伝ってくれる人を増やし、育てて、引き継げる人間を作る」、私が目指したのは、これです。そこで1年ぐらいかけて10社くらいの方とお話しして、一番私の理念に共感していただけたFaber Companyへのグループインを選択したという次第です。
- 「辻正浩がFaber Companyにグループイン SEOの未来を創るこれから」にて、 辻さんの弟子を募集中
――SEO人材は、足りないわけですね。
辻: 複雑なサイトのSEOに対応できるハイエンドのプロフェッショナルSEO人材は、日本に一桁しかいないと思います。そして、その人数を増やすには、テクニカルSEOがわかっている中堅クラスの人材が多数必要なのですが、それも全然足りていません。できる人は手が回らなくて案件を断っていて、その案件をできない人が無理矢理やって、お客様が苦しんでいる、という不幸な状況です。この状況を打開するために、中堅SEO人材を育てる必要があると思っています。
――渡辺さんがSEOマネージャーを務めているDMM.comでも、テクニカルSEO人材は足りていないのでしょうか?
渡辺: 正直言うと、当社だけで20人以上足りませんので、現在募集中です。
- 渡辺さんにSEOを指導してもらえるチャンスの採用情報:
DMM.comのSEOスペシャリスト(事業一般)
――DMM.comに入社すれば、渡辺さんにきっちりSEOを教えてもらえるということですか?
渡辺: はい。DMM.comのSEO人材教育はかなり充実していますよ。
辻: インハウスでSEO人材が5人~10人いるところは、DMM.comさん以外ですと、日本だと十数社しかありません。その他の多くの企業では、SEO経験者がいないのだから、教育体制自体がありません。
――DMM.comは、どのような体制になっているのですか?
渡辺: 毎週月曜日の朝に勉強会を実施しています。あとは、独自のスキルマップに従って各自の目標を設定して、それを業務上で実施しながら身につけるという形にしています。
今、一人1サイト担当にしているので、「100点満点中60点分は自分で進められる」ようにして、残り40点分は私からフィードバックします。それほど効率が良いとは言えませんが、社内の教育制度としてはかなり充実していると思います。
辻: SEOの考え方を業務に即して伝えられる教育環境があることは、本当に重要だと思います。そこがないと、結局ふわふわしたものになって使えない。
テクニカルSEOに必要な知識はどんどん変わっていくので、最初にそこそこ教わっても10年で使い物にならなくなります。でも、考え方がきちんと身についていれば、その後の変化に対応できます。SEOの考え方を育む教育体制が備わっている会社は本当に少ないですが、DMM.comは渡辺さんがいるならそこができていますよね。
渡辺: 私が常に言うのは、「表面的な事実や情報だけを捉えるな。ちゃんとその事実にいたった背景とセットで理解しろ」で、これは社内で徹底しています。今は、Googleが更新情報をXで発信してくれるようになったので、事実は誰でもすぐに把握できます。
しかし、その事実(この場合、新機能の発表や仕様変更など)の背景はあえて説明しないことがある。だとしても、「Googleの目指していることやWebの環境変化」を考えれば、「近年はユーザーのなかでこういう変化が生まれているという背景があったからGoogleはこういう目的を達成するために変更をした」ということがある程度推察できるし、「そういう意図だったら将来はこうなるよね」という未来も予想できる。
たとえば、鈴木謙一さんのブログ(海外SEO情報ブログ)を読んでいる人は多いですが、彼が書いている事実に加えて、「なぜそうなったのかというプロセスを考えて、理解してね」ということは徹底させています。
――とりあえず2025年のSEOは、何に取り組めばいいのでしょうか?
渡辺: これまで説明した内容をまとめる形になりますが、こういうことです:
「トラディショナルなWeb」「Instagram」「TikTok」「YouTube」とプラットフォームが分断されているので、顧客がどこにいるのか把握し、注力する場所を決める
Webサイトで集客するなら、「Google検索セントラル」に書いてある基本的なことはチェックして正しく実装する
Googleが出しているドキュメントは定期的に確認。表層的に見ずに、背景を考える
辻: SEO周りの話には陰謀論みたいなものが多くて、それを信じると思考停止やピント外れなSEOに陥ります。
Googleの基本的な考え方と昔からの変化の流れをきちんと知っていれば、確度の高い推論を行えます。検索エンジンの進化とSEOの歴史を知っている人に教わるのは、とてもいいことだと思います。
弊社もSEO人材を育成しますが、本気でSEOのプロフェッショナルになりたい人には、いい環境になると思います。人数的には2~3人が限界ですが。
テクニカルSEOはAIに置き換わることはない仕事
――高度なSEO人材になれば儲かりますか?
辻: 「濡れ手に粟」というわけにはいきませんが、まじめに働けば引く手あまたでわりといい稼ぎは得られるんじゃないでしょうか。Googleの理不尽さに振り回されますが、それは環境が変化するからであって、無意味なことをやらされるブラックな仕事ではありません。
――SEO人材に向いているのはどういう人だと渡辺さんは思いますか?
渡辺: あらゆることに好奇心のある人です。SEOは結局、Webに関係することは何でも扱うので、何にでも興味を持つ人でないと理解できないし、できるようにならない。あとは、インターネット全般が好きな人。スマホを1台渡されれば、会議室に24時間カンヅメされても楽しく過ごせる人。
SEOはある意味クソゲーだから、クソゲーを楽しめるゲーマー気質の人は向いているかも(笑)。
――この場合のクソゲーは「難しすぎて普通にプレイしてもクリアできないゲーム」の意味ですよね。
辻: 自分でコントロールできない要素が多いから、確かにクソゲーですね(笑)。
渡辺: Webサイトのコンテンツ制作に関しては、近い将来、多くの部分がAIに置き換わるかもしれません、でも、テクニカルSEOはAIには置き換わりません。なぜなら、大規模サイトのSEOノウハウは表に出ていないし、検索エンジンのアルゴリズムが常に変化しているから、AIは学習できないからです。
辻: 「どのサイトにでも当てはまるセオリー」というものが少ないので、今の形のAIに全て任せるのは難しそうです。AIの補助をうけて、AIを最適化するような仕事も多いので、今後も長く必要とされ続ける仕事だと思っています。
――では最後に、Faber Companyで新たなスタートをする辻さんの決意と、2025年の展望をお願いします。
辻: 最近思うのですが、日本社会は今かなりネットに依存していて、現実的にネットは検索に依存している。その検索をきちんと支えるというのは、日本の社会を支える仕事をしているということ。これは、理論だけの「きれい事」ではありません。
2024年は年初から大変な出来事がたくさん起こった年でした。大きな災害や感染症、犯罪などが発生して社会不安が起きると、やはりみんな検索します。知りたいと思った人に誤情報ではなく正しい情報を伝えることの重要性を考えると、正しい情報を発信するWebサイトがきちんとSEOを実施することが社会に必要と思っています。
2025年も社会的にも検索エンジンまわりも色々なイレギュラーが起きると思いますが、それにしっかり対応して日本の社会を支えていくというのは私の仕事で、今後もどうにかしなければと思っています。
しかし私も50歳になりまして、徹夜もそろそろつらくなってきました。今までずっと一人でやってきましたが、今年は、社会を支えるSEOを継続的な取り組みにする足掛かりを作りたい。Faber Companyの皆さんをはじめ、協力してくださる方も多くなり、現実的に進めることができるだろうと思います。検索もそれを取り巻く状況も大きく変わる中、そういうところの価値はやはり変わらないと思いますから。
――渡辺さんから辻さんにエールをお願いします。
渡辺: おそらく辻さんは100歳になっても、老人ホームでSEOをやると思うので(笑)、Faber Companyにグループインして、日本社会の情報インフラを支えるSEO人材を育てつつ、引き続きWebに貢献してもらえればと思います。
辻: いや、あと10年以内には引退したいです(笑)。全力を尽くせない状況で仕事したくないなという気持ちなので、体が動かなくなったら引退します。そうしたら、やっと積みゲーになったままの『ドラゴンクエスト9』『ファイナルファンタジー X』以降がプレイできるので、早くプレイしたいです(笑)。
――お二人とも、ありがとうございました。
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