
AI時代のデジタルマーケ特集: 今するべきことは? 将来に備える姿勢は?【SEO情報まとめ】
今回は「AI時代のSEO・デジマ特集」だ。
AIが生活に浸透していくなか、SEOやデジタルマーケティングに携わる人は、何に気をつけ、どう考え、どんな姿勢でいるべきなのか?
海外からはランド・フィッシュキン氏とHubSpot CEOのヤミニ・ランガン氏が、日本からは渡辺隆広氏と住太陽氏が、それぞれの視点で教えてくれる。
さらに、「リアルタイムのAIボット」の話題と、グレン・ゲイブ氏による「生成AIコンテンツの注意点」も、あわせてお届けする。
「AI特集」としてAI系の情報を1ページ目にまとめたが、通常のSEO情報もバッチリだ。グーグルによる「URL構造のベストプラクティス」「noindexページでもJSレンダリング」といった技術情報や、オフィスアワー、6月コアアップデートなどの情報を、あなたのSEO力アップに役立ててほしい。
- ゼロクリック時代の新常識。今、マーケターが追うべき「トラフィック以外」の指標
- HubSpotのCEOが語る「AI検索の台頭」と「SEOの“崩壊”」
- 日本トップのSEO有識者が語るAI検索の実情と将来
- AI時代に注力すべき5つのSEO戦略
- ウェブに突如現れた新手の「AIリトリーバルボット」がもたらす影響とは?
- AI生成コンテンツと人間が書いたコンテンツに検索順位の差はなし!? ← 重要な点を見逃してる!
- グーグル検索におけるURL構造のベストプラクティスのドキュメントが刷新
- noindexページでもGooglebotがJSを実行しレンダリングをするようになる
- 2025年6月のオフィスアワー: AI Overviewの広告、サイトリニューアル後にアクセス数減少、サイトマップの毎日送信など
- グーグル、「2025年6月のコアアップデート」を展開開始。順位変動は発生しているのか?
- Google Search Consoleに分析情報レポートが新登場、Search Console Insightsの置き換え
- AI Overviewの順位が低下中? トップ表示が98%から88%に減少⤵️
今週のピックアップ
ゼロクリック時代の新常識。今、マーケターが追うべき「トラフィック以外」の指標
なぜトラフィックは危険な指標なのか (SparkToro) 海外情報
現在のデジタル環境において、「ウェブサイトのトラフィック増加に注力」することは「時代遅れ」で「効果的ではない」戦略だ
このように、SparkToro(スパークトロ)のランド・フィッシュキン氏が主張した。
グーグルやフェイスブック、リンクトインなどの主要プラットフォームからの参照トラフィックは減少しており、この傾向は過去4年間続いている。そこに見えるのは、プラットフォーム上でユーザーの疑問を完結させる「ゼロクリック時代」の足音だ。
318人のシニアマーケティングリーダーと実務担当者を対象とした2025年のハブスポットの調査では、「現在のマーケターが考える優先事項」と「オンライン環境の現実」との間に大きな乖離があることが明らかになった。
調査によると、次のようなデータがある:
マーケターの60%が今後12か月の注力する優先事項として「トラフィックの増加」を挙げている。
同様に、59%が主要なKPIとして「全体的なトラフィックの成長」を挙げている。
こうした「トラフィックへの注力」のほかにも、マーケターが取り組むべきことはある。注力する優先事項では「ユーザーエクスペリエンスの向上」が37%で2位、「セキュリティの強化」と「コンバージョン率の向上」がそれぞれ34%で3位に並んでいる。注目すべきは、「ウェブサイトでの購入や収益の向上」が16%で最下位の優先事項だったことだ。
現在、検索だけでなく各種のプラットフォームが、「ゼロクリックの世界」に突入している。これは、
- 外部ウェブサイトにユーザーを送る
のではなく、
- その場で答えを提供してエコシステム内に留める
ように設計されているためだ。たとえば、「家を買うときの手順」と検索すると、その疑問に対する包括的な答えが結果ページに直接表示され、ウェブサイトをクリックする必要性が減少するようになっている。
こうした実情からフィッシュキン氏は、トラフィックを「虚栄の指標」とラベル付けし、「トラフィックを追求しても他のマーケティング活動に比べて大きなビジネス成果をもたらす可能性は低い」と断言している。
では、トラフィックを追いかける代わりに、マーケターは何に注力すればいいのだろうか? フィッシュキン氏の持論は次のとおりだ:
RedditやYouTubeのような、「オーディエンスが既に活動している場所」で役立つリソースとなることに集中すべき
目標は「これらのプラットフォーム内でブランドの注目を集めること」であり、それが結果的に適切な人々をランディングページや製品ページに誘導することになる。
そしてフィッシュキン氏が推奨しているのが、「リードジェネレーション」や「コンバージョン率」のような、トラフィックよりもビジネス成果に近い意味のある指標に焦点を移すことだ。こうした指標は、より多くの顧客を獲得し収益を増加させるといったビジネス目標とより密接に連携しているからだ。
SEOに取り組んでいると、どうしても「上位表示」とそれに伴う「トラフィック増加」をKPIにしてしまう。しかし、ビジネス上の最終ゴールはコンバージョン増加(≒売り上げ増加)あるいはブランド認知向上だ。
「AIによる概要」や「AIモード」の登場により、ゼロクリックが今後さらに強まることは想像に難くない。トラフィック至上主義の考え方を再考したい。
- すべてのWeb担当者 必見!
HubSpotのCEOが語る「AI検索の台頭」と「SEOの“崩壊”」
コンテンツチャネルの多角化が不可欠 (TBS CROSS DIG with Bloomberg on YouTube) 国内情報
世界最大手の顧客管理ソフトウェア企業であるHubSpot(ハブスポット)のCEOであるヤミニ・ランガン氏が、AIの普及に伴うマーケティングの変化をテーマにインタビューに応じた。
インタビューのなかから、「AI検索とSEOの終焉」のパートにフォーカスして見ていく。このトピックに関してランガン氏が語ったことの要約は、次のようなものだ:
AIの台頭により、従来の検索エンジンは根本的な変革を迫られています。現在、グーグル検索の60%以上が、検索結果の上位に表示されるAI Overview(AIによる概要)によって直接的な回答を提供するため、ユーザーがウェブサイトのリンクをクリックする必要がなくなっています。これにより、グーグル検索と個々のウェブサイトとの間の伝統的なつながりが失われつつあります。
さらに、ユーザーは情報を探す際に、従来の検索エンジンを迂回し、「ChatGPT」や「Anthropic」のような生成AI(LLM)に直接質問を投げかけるようになっています。この新しい行動様式は、企業に「AI最適化」という新たな戦略を求めています。これは、特定の質問に対して的確な回答を用意し、その情報を複数のプラットフォームで繰り返し発信することで、LLMに発見されやすくすることを目的としたものです。
ハブスポット社自身もこの変化を予期しており、ブログからのトラフィックは減少しましたが、これは想定内のことでした。現在、コンテンツを起点としたリード獲得は、同社のマーケティング全体の需要創出計画の約10%を占めるに過ぎません。この変化に対応するため、ハブスポットは2021年から2022年にかけてコンテンツチャネルの多様化を積極的に進めました。具体的には、トップクラスのビジネス系ポッドキャストネットワークを買収し、「The Hustle」や「Mindstream」といったメールニュースレターを傘下に収めました。さらに、同社のYouTubeチャンネルは2000万人近くの訪問者を集めるまでに成長しています。
また、ハブスポットはAIをマーケティング活動そのものにも活用しています。ユーザーの意図に基づいてアウトリーチをパーソナライズすることで、コンバージョン率を80%~100%という驚異的な水準で改善させることに成功しています。これは、AIが検索行動の変化に対応するだけでなく、マーケティング効果を最大化するための強力なツールであることを示しています。
ランガン氏が指揮するハブスポットの取り組みからは、「コンテンツチャネルの多様化がいかに重要か」が伺える。検索エンジンだけに依存してトラフィックを獲得する戦略は、リスクが高まっている。ハブスポットの事例のように、YouTube、ポッドキャスト、ニュースレター、SNSなど、複数のチャネルで情報を発信し、ユーザーとの接点を多様化させることが不可欠だ。また、トラフィックが減った分をコンバージョン率の向上で補うことも忘れてはいけない。
AI検索とSEOに関係するパートは15:50あたりから始まる。このパート以外にも、AIが急速に普及してきた現代のマーケティング業界における、ランガン氏の考察を聞ける。日本語字幕がついているので全体を視聴することをおすすめする。
- すべてのWeb担当者 必見!
グーグル検索SEO情報①
日本トップのSEO有識者が語るAI検索の実情と将来
AI検索に対応するためのアクションは今すぐ必要か? (SEMリサーチ) 国内情報
検索とAIをテーマにしたセッションに登壇したという渡辺隆広氏が、時間の制約により講演で話しきれなかったトピックを個人ブログで共有した。
次のトピックについて渡辺氏は見解を端的に述べている:
- 検索・AIエージェントがSEOにどんな影響があるのか
- 検索クリック数が激減したというニュースに対するコメント
- 検索クエリと文脈
- いますぐAI Overviews やAI検索に対応するためのアクションが必要か
やれ「GEO」だ、「LLMO」だ、「AIのせいでSEOはオワッタ?」と躍起になっている人にこそ役立つ観点での記事だ。
- SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
AI時代に注力すべき5つのSEO戦略
AI検索により知識提供コンテンツは衰退する (ボーディー SEO) 国内情報
「AI検索が“知識提供コンテンツ”に与える影響」に関して、ボーディーの住太陽氏が見解を著した。
AI検索の普及とユーザー行動
「AIによる概要」や「AIモード」は精度こそ発展途上だが、クリックや再検索の手間を省くため、時間をかけて着実に主流化すると住氏は見ている。ユーザーは“少ない手間”を選ぶ本質的な怠惰ゆえ、従来型の検索からは段階的に離脱していく。
知識提供コンテンツSEOの衰退
AIが直接回答を生成することで、「○○とは」「○○ 意味」のような形式のクエリの流入はすでに減少している。ユーザーがリンクを踏まずに概要で満足するのならば、知識提供コンテンツは“AIの養分”となり、大幅なアクセス減が避けられない。
主要なSEO変化の予測
5年以内に顕在化するSEOの変化として、住氏は次のものを予測している:
- 知識提供ページへのアクセス消滅
- 購買系クエリでの露出競争
- 広報・社交活動が中心施策化
AIに引用される最適化(LLMO/GEO)の限界
現状の生成回答は間接引用が主で、出典は小さなリンク表示のみ。AIが生成する文章内などにブランド名が現れない限り、投下コストに見合う認知効果は得にくい(そして、その頻度は非常に低い)。
AI時代に注力すべきSEO戦略
長らくSEOの主役だった「知識提供コンテンツ」ですが、ついに主役の座を降りるときが近づいています
住氏は上記のように述べたうえで、今後のSEOの中心的な取り組みとして次のものを挙げている:
個人の体験談 ―― 読者は生のストーリーを求め、要約では満足しない。
個別事例紹介 ―― 高額・複雑な課題解決例ほど重要。
専門家の見解発信 ―― 独自洞察で存在感を高める。
ポジティブなレピュテーション構築 ―― オンライン・オフライン双方で評価を蓄積。
AIによるレコメンド獲得 ―― 地域商材では問い合わせ増につながり始めているが、現在の情報源は業者間リンク集など信頼性に課題。
これらの施策は、「AI検索に向けて」であろうが「既存SEOの延長」であろうが、優先的に取り組んでいく価値がある施策だともいえそうだ。
- SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
ウェブに突如現れた新手の「AIリトリーバルボット」がもたらす影響とは?
人間のためではなくAIのためにコンテンツを作る時代がやってくる!? (The Washington Post) 海外情報
消費者の行動が「従来の検索エンジン」から「ChatGPTのようなAIツール」へと移行するにつれて、「リアルタイムのデータ検索用に設計された新しいタイプのAIボット」がインターネット上で急増しているという。
AIモデルのトレーニング用に大規模なデータセットを収集するためにウェブをスクレイピングするボット(クローラー)とは異なり、この新しい「Retrieval Bot(リトリーバルボット)※」は、ユーザーのプロンプトに答えるためにリアルタイムでコンテンツを収集・要約する目的で、OpenAIやAnthropicのような企業が展開しているものだ。
AIによるパブリッシャーのコンテンツ利用を監視するスタートアップ企業TollBit(トールビット)のデータによると、これらのリトリーバルボットからのトラフィックは指数関数的な曲線を描いて増加している。半数が報道機関から成る266のウェブサイトのデータに基づくと、リトリーバルボットからのトラフィックは2025年第1四半期に49パーセント増加した(2024年第4四半期との比較)。この増加は、同期間におけるAIトレーニング用にデータをスクレイピングするボットの増加速度よりも2.5倍速いものだった。チャットボットがウェブ検索や推論機能を搭載するにつれ、この加速は8か月間続いている。
こうした変化は、コンテンツ制作者にとって課題であると同時にチャンスでもあるという。ウェブサイトを訪れる「人間の目」は減少しているが、コンテンツへの全体的な需要とアクセスは爆発的に増加すると予想される。TollBitのCEOであるトシット・パニグラヒ氏は、ウェブサイトは人間ではなくAIの訪問者に対応するように方向転換する必要があるかもしれないと示唆している。
だが、ボットの特定をAI企業がより困難にしているという事実が、この問題を複雑にしている。パブリッシャーがブロッカーを使用しているにもかかわらず、こうした措置を回避したスクレイピングが3月だけで2600万件以上あることをTollBitは発見した。一部のAI企業は「自社のボットはユーザーの代理として機能するため、これらの指示に従う必要はない」とも主張している
リトリーバルボットの台頭は、コンテンツに対する公正な対価をめぐる議論を激化させている。多くのAI企業は、それがフェアユース(公正な利用)にあたると主張して無料でデータをスクレイピングしており、これがニューヨーク・タイムズを含む著者やメディア企業からの著作権訴訟につながっている。一方で、ワシントン・ポストやタイムなどの他のパブリッシャーは、OpenAIのようなAI企業とのライセンス契約を進めている。しかし、タイム社のCOOであるマーク・ハワード氏は、AIボットの大多数は有料の仕組みを使ってコンテンツを入手しておらず、パブリッシャーに公正な補償を行う市場は「確立にはほど遠い」と述べている。
AI技術がさらに発展しユーザーがAIを主要な手段として情報収集するようになる時代は、そう遠くない将来に訪れそうだ。そうなった場合、「パブリッシャーは、人間ではなくAIのためにコンテンツを作る」というパラダイムシフトが起きるかもしれない。
- SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
AI生成コンテンツと人間が書いたコンテンツに検索順位の差はなし!? ← 重要な点を見逃してる!
大量に生成するとペナルティの危険あり (Glenn Gabe on X) 海外情報
「AI生成コンテンツの使用率」と「グーグルの検索順位」の間に、相関関係は見られなかった
これは、Ahrefs(エイチレフス)が、60万ページを対象とした調査の結果だ。つまり、グーグルがAI生成コンテンツを特別に優遇することもペナルティを課すこともないという実情を示唆するものであるとエイチレフスは結論づけている。
「AIコンテンツに危険性はない」とも受け取れるこの調査結果に対して、著名なSEOコンサルタントのグレン・ゲイブ氏が注意喚起している。
この記事を読んで、すぐにAI生成コンテンツを大量公開しようとはしないでほしい。この話題には元記事が触れきれていない微妙な点がある。
それは、次のことだ:
AIコンテンツを大量に使って規模拡大しようとした結果、コアアップデートやスパムアップデートで壊滅的な打撃を受けたサイトの例は山ほどある。手動対策を受けたケースもある。
添付のスクリーンショットはその一例だ。
※筆者注 スクリーンショットは埋め込んだXの投稿で確認してほしい。インデックス削除されたか、ランキングが大幅に低下したAI生成コンテンツの検索トラフィックのグラフと思われるグーグルは常に、重要なのはコンテンツがAI生成かどうかではなく「品質」であると説明しているが、純粋なAI生成コンテンツを大量投入して規模拡大するのは非常に危険といえる。
さらに、この記事は、「グーグルがコアアップデートでサイトを全体的に評価する」という重要なポイントを欠いている。そのため、ある時点まではプラスの効果が見られても、天秤が傾いた瞬間に一転することがある。要注意だ。私はサイトレベルの品質アルゴリズムについて何度も執筆・講演してきた。
Please do not read this post and run to publish AI-generated content at scale. There is nuance with this topic that I believe the post misses... There are many examples of sites that got destroyed via broad core updates or spam updates that went down the path of heavily using AI… pic.twitter.com/uf2Wic2XiR
— Glenn Gabe (@glenngabe) July 7, 2025
このコラムでも何度も触れていることだが、AIを使ってコンテンツを作成すること自体に問題はない。問題なのは、品質チェックをおざなりにして低品質のコンテンツを大量に投入することだ。「大量生成されたコンテンツの不正使用」のスパムポリシーに違反するし、低品質コンテンツが多い場合はサイト全体の評価が悪化し品質を保っているページの順位も低下することがある。
- すべてのWeb担当者 必見!
ソーシャルもやってます!