
生成AIとグーグル検索、コンバージョン率が高いのはどっちからのトラフィック?【SEO情報まとめ】
ChatGPTなどの「生成AI経由のトラフィック」と、グーグルなどの「オーガニック検索経由のトラフィック」で、コンバージョン率はどう違うのだろうか? 参考になる良い調査データを紹介する。
ほかにも、「AI検索でSEO終焉?(またか)」「AI分析には昔ながらのアクセスログファイル解析」「大量の404ページでクロールに悪影響?」「エンティティとは」「オリジナルコンテンツとは」などなど、AIとSEOとサイト運営に関する情報を、今週もまとめてお届けする。
- 生成AIとグーグル検索、コンバージョン率が高いのはどっちからのトラフィック?
- Safariのグーグル検索減少でSEO終焉の危機!?
- 大量の404ページはクロールバジェットを浪費するのか?
- 多言語サイトで異なるドメイン名を割り当てることは可能か?
- SEO文脈での「エンティティ」とは何か? LLMでも重要な理由とは?
- 生成AIサービスでの露出分析、実は昔ながらのアクセスログファイル解析が良い
- SEOにおけるオリジナルコンテンツとは? どうやって作ればいい?
- 似たウェブサイトを異なるドメイン名で運営するとSEOにマイナスか?
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今週のピックアップ
生成AIとグーグル検索、コンバージョン率が高いのはどっちからのトラフィック?
検索が高いが、業種によってはLLM (SALT.agency) 海外情報
大規模言語モデル(LLM)プラットフォームなどの「生成AI経由のトラフィック」と、グーグルなどの「オーガニック検索経由のトラフィック」で、コンバージョン率はどう違うのだろうか?
SALT.agency(ソルト・エージェンシー)が調査し結果を公開した。
まず、2024年3月以降、生成AIサービスからの参照トラフィックが一貫して増加傾向にあることがわかった。これは生成AIツールの広範な採用と、引用および直接参照としてのリンクの組み込みが増加したことに起因すると考えられる。ChatGPTが断トツのトップで、Perplexityも成長を示している。
業種ごとのKECVR※比較が次の表だ。KECVRが高い方を強調表示してある
※「KECVR」は、「キーイベントコンバージョン率(Key Event Conversion Rate)」を意味するもので、元記事筆者の造語。いわゆる「コンバージョン率」ではなく、Googleアナリティクスに設定した「キーイベント」の、セッションに対する発生率と考えてよさそうだ。
業種 | KECVR | |
---|---|---|
生成AI経由 | オーガニック 検索経由 | |
一般情報 | 49.44% | 54% |
自動車 | 0.24% | 0.41% |
B2B Eコマース | 2.62% | 2.68% |
B2Bサービス | 2.77% | 3.01% |
キャリア | 22.31% | 16.58% |
カタログウェブサイト | 2.34% | 2.13% |
消費者向けEコマース | 17.56% | 24.12% |
教育 | 1.89% | 3.97% |
健康 | 13.24% | 12.88% |
人事 | 2.17% | 8.99% |
高級品 | 1.99% | 2.13% |
製薬 | 4.06% | 8.29% |
出版 | 10.49% | 6.57% |
不動産 | 6.25% | 2.71% |
SaaS | 6.69% | 6.71% |
通信 | 5.73% | 7.35% |
旅行 | 24.25% | 28.97% |
ほとんどの業種において、「オーガニック検索経由トラフィックのKECVR」が「生成AI経由トラフィックのKECVR」よりも高かった。これは、オーガニック検索経由で訪問したユーザーの方が、ウェブサイト上で有意義なエンゲージメント(コンバージョン)を行う可能性が一般的に高いことを示唆している。
ただし、生成AI経由トラフィックのKECVRがオーガニック検索経由トラフィックのKECVRを上回る例外もあった。5つの業種を抜き出して再掲する(生成AIのKECVRが検索に対して高かった順に示している)。
業種 | KECVR | 生成AIの 対検索 KECVR比率 | |
---|---|---|---|
生成AI経由 | オーガニック 検索経由 | ||
不動産 | 6.25% | 2.71% | 230.62% |
出版 | 10.49% | 6.57% | 159.66% |
キャリア | 22.31% | 16.58% | 134.55% |
カタログウェブサイト | 2.34% | 2.13% | 109.85% |
健康 | 13.24% | 12.88% | 102.79% |
いくつかの業種について、次のように分析している(以下で、「生成AI」は「生成AI経由トラフィックのKECVR」を、「オーガニック検索」は「オーガニック検索経由トラフィックのKECVR」を意味する):
消費者向けEコマース ―― 生成AIはオーガニック検索と比較して大幅にパフォーマンスが低かった。これは、ユーザーが詳細な製品情報、レビュー、価格設定を求めており、その点でオーガニック検索が優れているためだと考えられる。
旅行 ―― 生成AIは良好なパフォーマンスを示したが、依然としてオーガニック検索には及ばなかった。オーガニック検索は、視覚化や予約決定を助ける豊富なキュレーションコンテンツに好まれるが、生成AIは初期段階での推奨を提供する可能性がある。
SaaS ―― 生成AIはオーガニック検索とほぼ同等であり、生成AIトラフィックがほぼ同じくらい効果的であることを示唆している。これは、オーガニック検索からの信頼できる製品詳細とともに、パーソナライズされたガイダンスの価値によるものかもしれない。
キーポイントをまとめる:
オーガニック検索がエンゲージメントで優位 ―― 一般的に、オーガニック検索からアクセスするユーザーは、生成AI経由のユーザーと比較して、ウェブサイト上でより高いエンゲージメント(キーイベントコンバージョン率)を示す。
例外の業種 ―― 健康、キャリア、カタログサイト、出版、不動産といった特定の業種では、生成AI経由のトラフィックのほうが高いエンゲージメント率を示した。
生成AIトラフィックは増加中 ―― 生成AIからの参照トラフィックは着実に増加しており、ChatGPTが主要なソースとなっている。
コンテンツの具体性が重要 ―― 消費者向けEコマースやB2B Eコマースのような取引型セクターでは、ユーザーが詳細で具体的な情報を求めるためオーガニック検索が優れている。いっぽう生成AIは、教育コンテンツや初期ガイダンスに適している可能性がある。
調査方法とデータ収集は次のとおりだ:
- データ収集方法: 多数のSEO専門家からデータをクラウドソーシング
- 収集期間: 2025年の最初の3か月間(1月1日~3月31日)
- 主な収集データ:
- 生成AIサービスが参照元の総セッション数
- オーガニックチャネル経由の総セッション数
- 生成AIセッションによって発生した「キーイベント」(GA4における重要なユーザー行動を示す指標)の総数
- オーガニックセッションによって発生したキーイベントの総数
- 参加ウェブサイトのカテゴリ/業種
- 分析指標: 「キーイベントコンバージョン率」(KECVR)という用語を導入し、両トラフィックソースのエンゲージメントレベルを比較
- 分析対象データ量:
- 生成AI参照セッション数: 671,694件
- 生成AI参照セッションのキーイベント数: 214,617件
- オーガニック検索セッション数: 188,357,711件
- オーガニック検索セッションキーイベント数: 62,191,461件
- ウェブサイト分類: 消費者向けEコマース、SaaS、旅行など40の業種に分類
- SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
グーグル検索SEO情報①
Safariのグーグル検索減少でSEO終焉の危機!?
「SEO終わった」はこれで何回目? (辻正浩 on X) 国内情報
Safariブラウザでの(グーグル)検索数が、2025年4月に初めて減少した。
これは、米アップルのサービス部門責任者エディー・キュー氏が、米司法省によるアルファベットを相手取った訴訟での証言で言及したことだ(ブルームバーグの報道)。
同氏は、「自社のウェブブラウザであるSafariにAIを搭載した検索エンジンの採用を検討しており、PerplexityやOpenAIなどのAI検索がいずれ従来の検索に変わっていく」との見解を示した。
こうしたニュースが、グーグル検索の没落を予見していると受け取る層がいる。だが、辻氏は次のように見解を述べている。
(1/n)SafariでのGoogle検索が減少という件。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) May 9, 2025
Googleは否定していて、どちらが正しいのかはわからないですが、最低でも十数年間は毎月上昇し続けていた事は確かでしょう。そして先月初めて減少した(可能性がある)ということ。
非常に興味深い情報ですね。それらからは色々と考えられますね。
(2/n)AI系検索が注目されてGoogle\(^o^)/オワタと驚く人が毎日のようにSNSに見られるようになってからもう2年経ちますが、その期間も従来型検索が毎月増え続けていた事になります。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) May 9, 2025
それくらい一般的なユーザが従来型検索を利用する検索行動・習慣は確固たるものと言えるでしょう。
(3/n)もちろん、従来型検索が今後ダウントレンドになることは確かです。ただSafariで十数年毎月上昇し続けて先月に初めて一度だけ減少ということは、まだ明確なダウントレンドじゃないはず。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) May 9, 2025
明確に従来型検索の影響が小さくなるのはまだまだかかるのでは。
(4/n)今は明らかに過渡期です。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) May 9, 2025
ただ、ここまで浸透した一般ユーザの検索習慣の変化には時間が必要です。大手PFの大規模な動線刷新などイレギュラーがない限り過渡期は長くなりそう。
にも関わらず、危機感を煽る会社・人が多いのは残念です。過渡期を活かして売上を立てたいのはわかりますけど。
(5/n)この過渡期に考えたほうが良い事は多くあります。ただそれが明確な数字に繋がるのはしばらく先になるかと。またこの対策は先行者利益が強い領域じゃないはず。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) May 9, 2025
数年先に向けた先行投資が出来る所以外は、手元の数字を上げるための従来型検索に向けた対応を主にすべきと考えます。
(6/n)こういう情報が出ると驚き屋さん・煽り屋さんが多く出ます。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) May 9, 2025
「Google終わった!すぐ次に向けて動かないと!今すぐ当社に発注しないと危険!」
などと危機感を煽ってくる所に騙されないようご注意ください。
「中長期的にみると、AIをベースにした検索にゆくゆくは移行する」という予想は筆者も理解できる。しかし、それをもって「SEOが終わった」と言い切るのは煽りにしか思えない。
先を見越して行動することは大切だが、危機感を助長するだけの焚き付けには注意したい。
- SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
大量の404ページはクロールバジェットを浪費するのか?
しない (r/TechSEO on Reddit) 海外情報
Reddit(レディット)のテクニカルSEOカテゴリに次の質問が投稿された。
管理するウェブサイトで、フィルターページのような意図しないnoindexのURLを1100万件ほどインデックスしてしまう問題が発生しました。数か月後、これらのページをグーグルが発見できないようにし、さらに410ステータスを返すようにしました。
この対応により、Search Consoleに報告される404エラー(これらは410ステータスを反映したものと考えられます)が急増しました。Search Consoleでのnoindexページの数は徐々に減少しているものの、依然として多い状態です。約1か月半の間、これらの410ページをグーグルは繰り返しクロールし続けています。
主な懸念事項は、次の2点です:
- クロールバジェットの非効率な使用
- 検索ランキングへの潜在的な悪影響
410ページのクロールをグーグルが自然に停止するのを待つべきか、あるいはrobots.txtを使ってさらに積極的にブロックすべきか決めかねています。
「大量の404ページがクロールバジェットを浪費し、ランキングにも悪影響を与えるのではないか」と心配しているのだ。
グーグルのジョン・ミューラー氏は次のようにコメントした:
「大規模なサイト所有者向けのクロール バジェット管理ガイド」の末尾にあるクイズをチェックしてほしい。
これらの404/410エラーがランキングに悪影響を与えることはない。削除されたコンテンツへの正しい対処法だ。ページ数が多い場合、こうしたリクエストの一部は、かなりの期間表示され続けるだろう(ページごとに更新頻度が異なるため、ある程度ばらけて発生する)。しかし、それで問題ない。
「『大規模なサイト所有者向けのクロール バジェット管理ガイド』の末尾にあるクイズ」というのはこちらのドキュメントだ。
404や410を返すページが多くても、クロールバジェットを浪費することはない。また、サイト内のそのほかのページのランキングに悪影響を与えることもない。
存在しないページ(URL)が404を返すのはウェブの決まりごとなだ。404のページがいくら多くても、中身がないのならば404を返すのが正常な状態なのだ。
- ホントにSEOを極めたい人だけ
- 技術がわかる人に伝えましょう
多言語サイトで異なるドメイン名を割り当てることは可能か?
可能 (John Mueller on Bluesky) 海外情報
多言語サイトに関してグーグルのジョン・ミューラー氏に次のような質問をした人がいた:
国際向けサイトで、各TLDで異なるドメイン名を使うことに何か問題はありますか? たとえば、次のような場合です:
- example.co.uk
- exemple.fr
- beispiel.de
なかなかおもしろい質問だ。英国向けとフランス向けは「example」という名前で、ccTLDが違うだけ。しかしドイツ向けはccTLDがドイツ向けで、さらに名前の部分が「beispiel」と異なるのだ(「beispiel」は「example」のドイツ語表記)。
ミューラー氏は次のように回答した:
特に問題はない。国ごとに名称が異なるブランドもあるし、それでもちゃんと機能する。
むしろユーザーが特定のバージョンを狙って検索するので、国別ターゲティングがよりうまく働くだろう。
Yay, danke :). Das spielt keine Rolle. Es gibt ja auch Marken, die anders in einzelnen Laendern heissen, das muss auch funktionieren. (Wobei vermutlich die Laendertargeting dann eh besser funktioniert, weil Benutzer gezielt nach einer Version suchen ... hmm :-))
— John Mueller (@johnmu.com) May 15, 2025 at 12:54 AM
多言語・多地域向けサイトであってもドメイン名を共通にする必要はない。大切なのは、ページ間の対応付けをhreflang
アノテーションで設定しておくことだ。
逆に言えば、hreflang
アノテーションを正しく指定できていなければ、同じドメイン名でもうまく処理されない可能性がある。
- グローバルサイトを運用するすべてのWeb担当者 必見!
SEO文脈での「エンティティ」とは何か? LLMでも重要な理由とは?
SEO上級者を目指すならエンティティ理解は必須 (Takeru on note) 国内情報
SEOを突き詰めていくうえで、エンティティの理解は重要だ。
「エンティティ」とは、日本語にすると「存在」「概念」「実体」といった意味あいだ。人物や組織、場所など“モノ”のほか、イベントやウェブサイトのような無形の概念も含む。SEOのみならず、LLM(生成AI)においてもエンティティの認識が大きく影響してくる。
こうしたエンティティの仕組みを、技術的な側面も交えながらDemamdSphere(デマンドスフィア)のTakeru氏が解説した。SEO上級者を目指すなら、読む価値のある記事だ。
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