スマホの“ながら視聴”検索の37%はテレビCM中、ダブルスクリーン連携と進化するインターネット技術
テレビを見ながらインターネットやメールを利用する「ながら視聴」行動。特にスマートフォン利用者はその傾向が強いという。これらの層を掴むためのキーとなるダブルスクリーン連携とは何か。メディアを支える最新ARやインターネット技術とともに解説された。
急激に普及し始めたAR技術
個人でも簡単に使えるサービスも登場
Web広告研究会の第5回月例セミナー第二部では、NTTコミュニケーションズの山下達也氏が登壇。「CMにもダブルスクリーン連携を活用する~普及するAR技術や進化するインターネット技術のこれから~」をテーマに、最新のメディアとインターネット技術についての解説を行った。
まず山下氏は、スマートフォン利用者のうち、テレビを見ながらインターネットやメールを利用している「ダブルスクリーン視聴(ながら視聴)」の割合が全体の64.1%を占めることを「スマートフォン利用実態調査2011」(DAC調査)から示し、CM視聴とスマートフォンの連携など、ダブルスクリーンを活かすのが効果的であることを説明した。
テレビを視聴しながらスマートフォンで検索した番組ジャンルは、ニュース、バラエティ、情報番組に次いでテレビCMが4位に入っており、37.3%となっている。さらに、ダブルスクリーン視聴者がそれ以外の視聴者に比べてチャンネルを変えづらいという。これらを説明したうえで、山下氏はCMダブルスクリーン連携のサービスイメージを以下の図のように示し、効果的にダブルスクリーン連携を行うことの重要性をアピールした。
これらのダブルスクリーン連携にはAR(Augmented Reality)技術が使われており、映像透かしや音声透かしなどのさまざまなメディア同期技術が使われていることを説明した山下氏は、米国のCMダブルスクリーン連携の事例としてHONDA JAZZ Appの映像をデモとして再生する。
これは、HONDA JAZZという乗用車のCMに向かって専用アプリを起動させたiPhoneを振りかざすと、CMのキャラクタをキャッチすることができ、取り込んだキャラクタで遊べるというものだ。また、NTTコミュニケーションズでも利用しているCMとスマートフォンの連携の事例もデモとして公開した。
続いて、AR技術について解説を始めた山下氏は、最近ではさまざまなシーンでAR技術が利用されていると説明する。たとえば、サッカー中継でフリーキックを蹴る際にゴールまでの距離が芝生の上に書かれているように表示されることがあるが、これもAR技術を使ったものである。このようにARが普及してきた背景には、「モバイル端末の進化」「モバイルネットワークの高速化」「クラウドサービス」という3つの普及があると山下氏は説明を続ける。
その他にも、さまざまなARサービスがあると一例を示した。
- 位置情報を活用したAR(セカイカメラやフレッツスポットなど)
- カメラ画像を活用したマーカー型のAR(IKEAのカタログAR)
- カメラ画像を活用したマーカーレス型のAR(名刺ARやカレンダーARなど)
さらに山下氏は、デモとして、ARアプリのlayarを使った名刺ARの例を示した。このデモは、layarがインストールされたスマートフォンを名刺にかざすと、名刺の上に顔写真やアピール用の動画、電話やメールが直接出せるボタンが出てくるもので、簡単にこれらのARを利用できることが示された。
前述の3つの要因によって、AR技術を活用してリアル空間とバーチャル空間をいつでもどこでも自由につなぐ新たなユーザー体験を提供できるようになったことを説明した山下氏は、これらのAR技術はさまざまなメディアで活用されており、比較的に簡単に利用できると話した。
愛知万博や洞爺湖サミットで実験されたネット技術の実用化が進む
続いてメディアとプロ向けインターネットの「いまとこれから」を解説し始めた山下氏は、最初にインターネットの仕組みを解説し、プロ向けとコンシューマ向けのインターネットがあることを説明。「局間バックボーンにあるプロ向けのインターネットをコンシューマが直接使えるインターフェイスを作ることで、どのようなことが起きるかを話したい
」とした。
通常はインターネットプロバイダなどが使う、プロ向けのインターネット環境を使い、インターネットがもっと太く速くなると何ができるかを、2005年の愛知万博で行った実証実験の映像を見せながら解説していく。
この実証実験は2005年の「愛知万博」会場と、幕張メッセのITイベント「INTEROP」の会場をつなぎ、じゃんけんをしてみるというもの。HDTV(ハイビジョン)映像を圧縮した状態でつないだ場合、遅延が発生してじゃんけんが“後出し”になってしまうが、非圧縮HDTVでつなぐと遅延が発生しなくなるという実験だ。
次に、同様に愛知万博の実証実験から、インターネットがもっと安定すると何ができるを示すために、山下氏はオランダのアムステルダムと名古屋の間で「インターネットメトロノームを活用したジャムセッション」の映像を公開する。
これだけの距離が離れると、非圧縮HDTVを使っても光の速度の限界から260msの遅延が発生すると説明する山下氏は、「260msの遅延があったとしても、(状況によって270msや280msにならずに)260msの遅延で安定していれば、面白い実験ができる
」と話す。この実験は、オランダのバイオリニストと、名古屋のピアニストのセッションを行う際、あらかじめ260msのずれを考慮したインターネットメトロノームを使い、オランダ側を1テンポ前にずらすことでしっかりとした演奏ができるというものだ。
山下氏は実験を振り返りながら、「当時、このような技術は特別に作らなくても、5年くらい経てば企業などが使えるレベルに達するのではないかと話していた。実際に、テレビの系列局をつなぐバックボーンには、これらの愛知万博の技術が使われており、新しいサービスとして今年の7月から運用されている
」と説明する。
たとえば、FNS27時間テレビでもこのバックボーンが各局の中継に役立てられている。従来のシステムでは、あらかじめ現地中継を行うためのネットワークリソースを放送時間に合わせて予約しておく必要があったが、現在のシステムではオンデマンドで管理でき、リアルタイムに各局の映像の切り替えられるという。
続いて山下氏は、2008年に行われた洞爺湖サミットの事例を紹介する。洞爺湖サミットでも、NTTコミュニケーションズはさまざまなサービスを提供している。マルチワンセグメントサービスを利用した多チャンネル放送は、サミットの国際メディアセンター向けに行ったサービスの1つで、各国の記者が自分のテレビ局の放送を見られるようにした事例だ。
マルチワンセグを利用することによって、各国の記者は自分が配信したニュースがどのように編集されて放送されたのかを確認することができ、次の記事を配信するときの参考として非常に喜ばれたという。「自分の局の放送を確認するだけでなく、他の国の放送内容を確認することはジャーナリストとして非常に重要という声もあり、震災や原発問題があるなかで、世論を喚起するためにこのような技術が役に立つ日が来るかもしれない
」と山下氏は話す。
最後に山下氏は、
第一部の遠藤さんからテレビ業界は生放送にこだわってはいけないという話が出たが、NOTTVといったスマートフォン向けのインターネット放送も、生にこだわらないでもう少しインターネットを上手に使わなければならないと、強く感じる。
と話し、講演を終えた。
オリジナル記事はこちら:「スマホの“ながら視聴”検索の37%はテレビCM中、ダブルスクリーン連携と進化するインターネット技術」第二部 7月23日開催月例セミナー
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