初代編集長ブログ―安田英久

オウンドメディアで購買ファネルの上層を狙うコンテンツ作成法

購買ファネルの上のほうにいる人に来てもらうコンテンツを作るための発想法を紹介します
Web担のなかの人

今日は、オウンドメディア向けのコンテンツ作成法(というか発想法)をお届けします。特に、コンバージョン直近ではなく、購買ファネルの上のほう(つまり購買に向けての態度変容が薄い人)の人を引き込むコンテンツの作り方です。

コンテンツ発想法:多段マンダラート

オウンドメディアというと、商品やそのジャンルといったテーマのコンテンツを作ることが多いかと思います。でも今回は、そうではなく、購買ファネルの上のほうにいる人に来てもらうコンテンツを作るための発想法を紹介します。

それは、「マンダラート」というものです。

  1. 数枚の紙と筆記用具を用意します。

  2. まず、1枚の紙に線を4本引き、紙を9マスに分けてください。

  3. 次に、9マスの中央に、あなたの扱っている商材を何か1つ書きます。

  4. その周辺の8マスに、その商材が応えられるニーズを入れていきます。

    ニーズ、願望、欲望、欲求、問題、悩み、疑問、不安……なんでもいいです。

    たとえばアクセサリなら「女性にもてたい」「合コンで目立ちたい」などもあるでしょうし、「金属アレルギーがあるけれどもオシャレしたい」というものもあるかもしれません。「ピアスをすぐになくしてしまう」という悩みかもしれませんし、「会社に着けていっても怒られないアクセってどんなの?」という疑問かもしれません。

    必ず8マスぜんぶを埋めてください。

    最初の3つや4つは出てくるのですが、8つはなかなか出ないかもしれません。でもそこで頭をひねったり、他の人と相談したりしながら、この「8マス埋めるまで考えたり調べたりする」のが大切なのです。

    売り手として考えるものだけでなく、実際に買った人へのヒアリングを行うことで、意外なニーズに応えていることがわかるかもしれません。商材の特徴がニーズに応えるものである場合、それも含めていいでしょう。

  5. ニーズを8マス埋められたら、次に別の紙を用意し、同じように9マスに分けます。さきほど記入した8つのニーズから1つ選んで、新しい紙の中央に書いてください。

  6. その周辺の8マスに、そのニーズや疑問をもっている人が検索エンジンを使うときに、どんなキーワードで検索するかを入れていきます。

    これも同様に、必ず8マスぜんぶ埋めてください。

    この際に、グーグルのキーワードプランナーのような、実際にどんな検索が行われているのか、どの検索フレーズがどれぐらい検索回数なのかを調べるツールを併用するといいでしょう。

  7. 検索キーワードを8マス埋められたら、次にまた別の紙を用意し、同じように9マスに分けます。さきほど記入した8つの検索キーワードから1つ選んで、新しい紙の中央に書いてください。

  8. その周辺の8マスに、その検索キーワードの共起語を埋めていきます。

    これも同様に、必ず8マスぜんぶ埋めてください。

    共起語とは?

    共起語とは、そのトピックに関することを話したり書いたりするときに、よく一緒に使われる単語です。

    たとえば、「カレー」の共起語としては「ライス」「ナン」「インド」「欧風」「辛い」「劇辛」「スパイシー」「汗」「ラッシー」「カツ」「チキン」「ビーフ」「マトン」「福神漬け」「ターメリック」「唐辛子」「タンドリー」といったところでしょうか。

    キーワードプランナーなどのツールを使うことで、共起語のヒントを得られるかもしれません。

※この「マンダラート」を私が最初に知ったのは、Web担でいま「誰も語らなかったWebコンテンツ作成技法」を執筆いただいている石井研二さんの解説でした。ここで紹介しているやり方は、石井さんのメソッドを参考に作ったものです(石井さんのマンダラート解説はこちら)。

ニーズに応えて態度変容を起こすコンテンツを――売り込みだけはNG!

これで、1コンテンツ分の準備が完了です。

選んだ1つのニーズをもって、選んだ1つのキーワードで検索した人が、「おっ」と思い満足してくれるコンテンツを作り、そのコンテンツで8つ(またはそれ以上)の共起語を自然に使うようにしていきます。

このコンテンツを見に来る人は、あなたの商材に興味があるのではなく、その悩みやニーズや不安があるだけだという点に注意が必要です。

ですから、コンテンツ自体では、売りたい商材のアピールに終始するのは絶対にNGです。そうではなく、ニーズと検索意図に応えることに集中します。

ただし、ただニーズを満たすだけでは企業としてコストをかける意味はないですよね。ですから、「このコンテンツは、こういうニーズをもった人に、こうなってもらうことを目的とする」という設定をします。

たとえば、こういう設定です。

電球の交換方法を調べている人に、「LED電球にすれば長寿命だから数年は交換しなくてもいい」ことを知ってもらい、「今は電球のソケットにそのまま付けられるLEDがある」ことを知ってもらう。

そして、コンテンツの方向性を、「その悩みを解決するには、こういう方法があるよね」といくつかの切り口で提案するなかで、上記のゴールにつながる記述を含めていきます。

さらに、コンテンツの最後などで、そのニーズをもっている人が想定した態度変容を起こしたら、次にとってもらいたいアクションを提示します。上記の例なら、「あなたの替えようとしている電球は、LEDにできるか調べる」「その電球の代わりになるLED製品を売っている場所を調べる」「ホントにLEDに替えるとお得なの?」といったコンテンツへの誘導ですね。

残りの7つのニーズに対しても検索キーワードを出していくと、64種類のコンテンツができるはずです。すべての検索キーワードに対して共起語をリストアップし、ニーズを態度変容につなげる設定を作り、コンテンツを作っていきます。

同様にして、その商材のニーズではなく「利用シーン」から発想を始めるのもいいでしょう。

オウンドメディアは潜在ニーズを拾えるのがメリット

「オウンドメディアで成果が出ない」という話題がありますが、その成果とは、何のことでしょうか?

もちろん、直接の最終コンバージョンを成果にするのもアリですが、メディア業を長くやっている人間として、オウンドメディアのもつ本当の価値は「潜在ニーズを拾い、ニーズを顕在化させ、購買ファネルに引き込む」ことだと思っています。

商材そのものにすでに興味をもっている人は、リスティング広告でつかめばいいのです。そうではなく、放っておくと自社の顧客にならなかった人を、その人がいま考えていることに応えながら購買ファネルに入ってきてもらうということができるのが、オウンドメディアの強みではないでしょうか。

「オウンドメディア」として、なんとなく業界のことをコンテンツにするだけだったり、広告と変わらないような売り手視点バリバリのコンテンツを作るのではなく、潜在ニーズを拾うコンテンツと、そこからの態度変容のデザイン、してみてはいかがでしょうか。

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