プロモーションをちゃんと効果測定するには「普通のアクセス」を知っておくべし(第90回)
複数プロモーションの効果を測定するために、逆にそれらの影響を取り除いた「自然なアクセス」「ふつうのアクセス」を知っておきたい。
大きなサイトになればなるほど、日々さまざまなプロモーション活動を行っているだろう。検索連動型広告、メールマガジン、自社のコントロール下にあるソーシャルメディアでのプロモーションなどだ。
あまりにも多数の施策を行っていると、さまざまな活動の影響を受けた多数のアクセスの波が押し寄せ、「本来の自然な姿のユーザーのサイト利用行動パターン」がよくわからなくなっていることはないだろうか。検索連動型広告、メルマガの効果測定、などそれぞれの施策の分析はしているかもしれないが、逆にそういったかく乱要因になるアクセスを除いた基礎票とも言える「自然のアクセス」だけに絞ってみたい場合もあるだろう。
たとえば検索連動型広告は休日にしか行っていないとか、メルマガは毎週特定の曜日に発行しているということであれば、それによってその日だけアクセスは伸びているはずだ。
それらの影響をはがして見てみるということで、今回は下記2つのどちらかの条件を満たしているセッションを除いた訪問に絞り込んでみたい。
- 「メディア」がcpc(検索連動型広告を意味する)あるいはemail(メルマガを意味する)のセッション
- 「キャンペーン」の設定が存在する(つまりカスタムキャンペーンのパラメータが何かしら付与されていて、集客計測を特別に実施している)セッション
皆さんの集客施策がどのようなパラメータ(参照元やメディア、キャンペーン、広告のコンテンツなどの指定)を付与して計測しているかによって変化するので、実際は個々にカスタマイズしてほしい。
「自然なアクセス」「ふつうのアクセス」に絞り込むセグメントの作り方
標準に用意されているセグメントには今回紹介するセグメントは存在しないので、新しいセグメントを作成していく必要がある。
まずレポート画面の上部にある「+セグメント」(図1赤枠部分)のエリアをクリックしよう。ブラウザ表示の横幅が狭い場合は、すべてのセッション(図1青枠部分)の下に並んで表示される。
「+セグメント」(図1赤枠部分)のエリアをクリックすると、図2のようなセグメントの機能が表示されるので、左上にある「+新しいセグメント」(図2赤枠部分)をクリックして新規セグメントを作成していこう。
新しいセグメントを作成する初期画面では「ユーザー属性」(図3赤枠部分)が選択されているが、今回作成するセグメントでは「条件」を選択しよう(図3青枠部分)。図3はその「条件」を選択した画面だ。今回のセグメントの条件設定は、図3緑枠部分で行う。
今回作成したいセグメントは、
「『メディア』がcpcあるいはemailのセッション」を除くセッション、あるいは、「『キャンペーン』の設定があるセッション」を除くセッション
だ。設定の方法は、「1つのフィルタでまとめて設定する方法」(図4、後出)と、「2つのセッションベースのフィルタ条件を掛け合わせる方法」(図5、後出)がある。
1つのフィルタでまとめて設定する方法
図4の設定は、「××を除くセッション」という1つのフィルタでまとめる方法だ。フィルタの部分は「セッション」「除外する」と指定する(図4赤枠部分)。
「××」の条件部分が、「『メディア』がcpcあるいはemailのセッション」あるいは「『キャンペーン』の設定があるセッション」になるので、「あるいは」の指定である「OR」(図4青枠部分)で2つの条件を結べばよい。
そして、2つの条件「『メディア』がcpcあるいはemailのセッション」と「『キャンペーン』の設定があるセッション」は、それぞれ、「メディア」「正規表現に一致」「cpc|email」(図4緑枠部分)、「キャンペーン」「完全一致しない」「(not set)」(図4茶枠部分)とする。
「メディア」「正規表現に一致」「cpc|email」と指定(図4緑枠部分)すれば、「メディア」が「cpcあるいはemail」を意味するので、検索連動型広告やメルマガからの訪問を意味する(もちろん自動的に判定してくれるわけではなく、カスタムキャンペーンのパラメータを付与しなければいけない)。
「キャンペーン」「完全一致しない」「(not set)」(図4茶枠部分)は、「キャンペーン名が付いていない(not set)ものではない」、つまりキャンペーン名が付いている訪問を意味する。
これらをまとめて「除外する」わけだ。
これで該当セグメントの名前(図3茶枠部分)を「自然なアクセス」とでも名付けて、「保存」ボタン(図3黒枠部分)をクリックする。これで新規セグメント作成作業は終了だ。
2つのセッションベースのフィルタ条件を掛け合わせる方法
次の図5の設定は、2つのセッションベースのフィルタ条件を掛け合わせる方法だ。
「『メディア』がcpcあるいはemailのセッション」を除くセッション、あるいは「『キャンペーン』の設定があるセッション」を除くセッション
という条件は、
「『メディア』がcpcあるいはemailのセッション」を除くセッション
かつ
「『キャンペーン』の設定のないセッション」
とも言いかえられるので、2つのフィルタの掛け合わせでも実現可能だ。
まず1つ目のフィルタは「セッション」「除外する」と指定する(図5赤枠部分)。そして「『メディア』がcpcあるいはemailのセッション」の条件部分が、「メディア」「正規表現に一致」「cpc|email」(図5青枠部分)になる。
続いて2つ目のフィルタ条件を追記するために、「+フィルタを追加」(図5緑枠部分)をクリックする。2つ目のフィルタでは、まず「セッション」「含める」と指定する(図5黒枠部分)。そして「『キャンペーン』の設定のないセッション」の条件部分が、「キャンペーン」「完全一致」「(not set)」(図5茶枠部分)だ。
今回のように「除く」や「あるいは」などの複合条件になっている場合は、例によってベン図に描いて確認してみるとよいだろう(参考)。
これで該当セグメントの名前(図3茶枠部分)を「自然なアクセス」とでも名付けて、「保存」ボタン(図3黒枠部分)をクリックする。これで新規セグメント作成作業は終了だ。
プロモーションの影響を取り除いた「自然なアクセス」を確認するには?
次にこのセグメントの活用方法を見ていこう。基本的にはユーザーの平常時の行動パターンを見る目的なので、[ユーザー]>[サマリー]レポートにこのセグメントを追加で掛けて、違いを比較してみるとよい。
長期トレンドから短期トレンドまで確認したいので、下記のパターンを見てみよう。
- 1年間を対象にして月次で見て、季節変動があるかを確認する
- 1か月を対象にして日別に見て、平日休日の利用パターンを確認する
- 平日あるいは休日の1日を時間別に見て、利用時間の特徴を確認する
ご承知だと思うが、レポート対象期間はレポート右上にある集計対象期間を指定することのできる日付範囲表示の部分(図6赤枠部分)をクリックすれば、対象期間の指定画面(図6青枠部分)が出てくるので、ここで設定しよう。
またグラフ表示の細かさを指定する部分はその下にある(図6緑枠部分)ので、日別に見たければ「日」を、時間帯別に見たければ「時間別」をクリックしよう。
ここでは、2つ目の「1か月を対象にして日別に見る」と3つ目の「平日あるいは休日の1日を時間別に見る」場合を紹介しよう。
1か月を対象にして日別に見て、平日休日の利用パターンを確認するには?
まず1か月を集計対象にして日別に見た場合が図7だ。
図7の青折れ線は日別の全体のセッション数の推移で、いくつかピークがある(図7青矢印部分)。
しかし、該当セグメントを掛けた(図7赤枠部分)オレンジ色の折れ線を見ると、平日休日含めて曜日での変動はほとんど見られず、フラットな利用傾向だとわかる(図7緑矢印部分)。
平日あるいは休日の1日を時間別に見て、利用時間の特徴を確認するには?
図8は平日の2日間の時間帯別データに該当セグメントを追加で掛けたグラフだ。
このケースでは、2日目の後半に明らかにメルマガの影響と思われるピークが出現する(図8赤枠部分)のだが、それを除いたセグメントが掛かっているオレンジ色の折れ線は、淡々と前日と同じカーブを描いている。つまりお昼休みの12時のピーク(図8青矢印部分)と、夜に盛り上がるピーク(図8緑矢印部分)が平日のベースの「自然なアクセス」であることが明確になる。
「スマホからの自然なアクセス」と「PCからの自然なアクセス」の違いを確認するには?
さらにこの「自然なアクセス」がスマートフォンとPCでどのような違いがあるのかを確認してみたのが、図9だ。先に説明したセグメントに、さらにスマートフォン利用あるいはPC利用という条件をそれぞれ加えたセグメントを作って掛けた(図9赤枠部分)ものだ(設定方法は最後に説明する)。
スマートフォン利用では、肌身離さず持っているという特性から、朝の立ち上がりがPCよりも早く(図9青矢印部分)、夜のピークもPCよりは盛り上がりが高い(図9緑矢印部分)という特徴がよく出ている。
一方のPC利用は昼休みに閲覧が増える傾向(図9黒矢印部分)が読み取れた。
「スマホからの自然なアクセス」「PCからの自然アクセス」の設定方法
2つのセグメントのうち、スマートフォンの方の設定内容だけ示しておこう。図10がそれだ。
元の図4の設定に、「+フィルタを追加」(図10赤枠部分)をクリックし、スマートフォンでの利用条件として、フィルタを「セッション」「含める」として、「デバイスカテゴリ」「完全一致」「mobile」(図10青枠部分)を加えればよい。PCからのアクセスに絞り込みたい場合は「mobile」(図10緑枠部分)のところを「desktop」と指定しよう。
「デバイスカテゴリ」(図10黒枠部分)は、スマートフォン、PC、タブレットの3種類を分類してくれるディメンションだ。タブレットを指定したければ、「tablet」と入力すればよい。いろいろ試してみていただきたい。
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