アクセス解析の「カオナシ」=ノーリファラー訪問の分析に挑戦してみるぞ(第58回)
ノーリファラーユーザーの訪問を分析して、具体的な対策を立てるためのヒントを得たい
参照元(リファラー)は、どのサイトのリンクからの訪問だったのかがわかるため、サイトへの流入のきっかけを知ることのできる重要な情報だ。しかし、
- ブックマーク
- ブラウザのURLサジェスト機能
- メールソフト
- RSSリーダー
- スマートフォンアプリなど各種アプリケーション
- セキュア(https)サイトから通常(http)サイトへの訪問
などによるサイト訪問は参照元なし(ノーリファラー)となり、どういうきっかけで来たのかをうかがい知ることができない。まさに『千と千尋の神隠し』に出てくる「カオナシ」のような存在と言える。
参照元なし(ノーリファラー)でサイトへ訪問してきた場合、そのきっかけがつかめないため、なかなか具体的な対策を考えることは難しいのだが、何とか少しでも、この参照元なし(ノーリファラー)による訪問から何かのヒントを得ることはできないだろうか。そこで今回は次のセグメントを利用してみよう。
- 「ノーリファラー」セッション
- 「ノーリファラー」訪問ユーザー
ただGoogle アナリティクス独特の参照元の仕様について、まずはあらためて触れておきたい。詳しくは下記関連記事を読んでいただきたいが、「ノーリファラー」セッションは、実は過去(2年以内)の訪問すべてにおいてノーリファラーでの訪問であることも意味するので、特殊なケースを含み、分析しがいがあるのだ。
ノーリファラーによる訪問を分析するためのセグメントの作成方法
「ノーリファラー」セッションのセグメントの適用方法
1つ目の「ノーリファラー」セッションのセグメントは標準に用意されているセグメントだ。
まずレポート画面の上部にある「+セグメント」(図1赤枠部分)のエリアをクリックしよう。ブラウザ表示の横幅が狭い場合は、すべてのセッション(図1青枠部分)の下に並んで表示される。
「+セグメント」(図1赤枠部分)のエリアをクリックすると、図2のようなセグメントの機能が表示される。
「ノーリファラー」セッションのセグメントは、まず「システム」(図2茶枠部分)をクリックして右側に表示されるセグメント候補の中から「ノーリファラー」(図2緑枠部分)をクリックして、「適用」ボタン(図2黒枠部分)をクリックすれば、このセグメントが表示されているレポートに適用される。
「ノーリファラー」訪問ユーザーセグメントの作成方法
2つ目の「ノーリファラー」訪問ユーザーは標準に用意されていないセグメントなので、新しいセグメントを作成していく必要がある。
左上にある「+新しいセグメント」(図2赤枠部分)をクリックして新規セグメントを作成していこう。
新しいセグメントを作成する初期画面では「ユーザー属性」(図3赤枠部分)が選択されているが、今回作成するセグメントでは「トラフィック」(図3青枠部分)を選択しよう。図3はその「トラフィック」を選択した画面だ。
今回のセグメントの条件設定は、図3緑枠部分で行う。
今回作成したいセグメントは「ノーリファラー」訪問ユーザーだ。図4のように、
- 「メディア」「完全一致」「(none)」
と指定しよう。
図5は別の指定方法だ、「メディア」の下にある「参照元」を条件にして指定する方法で、
- 「参照元」「完全一致」「(direct)」
と指定しよう。
これらはどちらも「ノーリファラー」での訪問を意味する設定だ。
このセグメントは「ユーザーベース」のセグメント(図3黄枠部分)だが、セッションベースのセグメントにすることもできる。標準では「ユーザーをフィルタ」(図3紫枠部分)が選択されているはずなので、今回はこちらのユーザーベースのセグメントにする。
これで該当セグメントの名前を「ノーリファラーユーザー」とでも名付けて、「保存」ボタン(図3黒枠部分)をクリックする。これで2つ目の方の新規セグメント作成作業は終了だ。
ノーリファラー訪問の増加はスマホからの訪問増加と関係があるのか、分析するには?
スマートフォンが急増した一時期を中心に、この参照元なし(ノーリファラー)が増加していることを報告する各種ブログなど(下記)が散見された。
これらのページでは、
- スマートフォンのブラウザや検索エンジンの仕様によって参照元情報が送られないこと
- アプリからWebサイトへの送客が増えていること
- スマートフォンにおいてもサジェスト機能が普及してきたこと
などが指摘されている。確かにそういう要因によりスマートフォンからの訪問でのノーリファラー(参照元なし)増加の傾向があるのかもしれないが、ユーザーの利用特性によって大きく左右されることなので、まずはスマートフォンによる利用や参照元なし(ノーリファラー)による長期トレンドを把握しておくのが無難だろう。
図6はあるサイトの全体のセッション、「ノーリファラー」セッション、「モバイル トラフィック」セッションの長期トレンドを表示したものだ。
- 画面上部グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面左側にあるメニューで、[ユーザー]をクリックする
- メニューが開くので、[サマリー]をクリックする
- レポート期間を数年程度に指定する
- グラフの表示単位で「月」(図6赤枠部分)をクリックする
- 「ノーリファラー」セッションのセグメント(図2緑枠部分)を適用する
- 「モバイル トラフィック」セッションのセグメント(図2紫枠部分)を適用する
このサイトでは、スマートフォンによる訪問(モバイル トラフィック)(図6緑の折れ線)は、この数年で何倍にも増えているが、ノーリファラーはそれに連動する形で増加することはなかった。もしモバイル トラフィックと連動してノーリファラーが増加しているようであれば、さらにモバイル トラフィックとPCトラフィックとを分けて分析するなどの工夫が必要だろう。今回は以降では、特にモバイルを分けることなく解説していくことにする。
ノーリファラーによる訪問を分析してみよう!
ではこのセグメントの活用方法を見ていこう。まず[ユーザー]>[サマリー]レポートに該当の2つのセグメントを追加で掛けて(図7赤枠部分)、ノーリファラーの全体に占める割合をまず確認する。
- 画面上部グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面左側にあるメニューで、[ユーザー]をクリックする
- メニューが開くので、[サマリー]をクリックする
- 「ノーリファラー」「ノーリファラーユーザー」のセグメント(図7赤枠部分)を適用する
セッション数ベースで比較すると(図7青枠部分)、ノーリファラーは全体の15%程度を占め、決して少ないとは言えない割合になっている。
次にセッションベースのセグメントとユーザーベースのセグメントの違いを比較してみる(図7緑枠部分)。
ユーザー数が同一なのは当たり前として、セッション数にあまり違いがない(741と768)という点が注目される。これは何を表しているかと言えば、過去ノーリファラーで訪問しているユーザーがその後、検索エンジンやその他の参照元などからの利用をほとんどしていないということになる。つまり初回訪問から最新の訪問まで、ズーッとノーリファラーで訪問している特異なユーザーであるということが言える。
ノーリファラーユーザーの中で、ミドルユーザー以上はどれぐらいいるのか、分析するには?
ただ訪問回数の累計が1回目や2回目がほとんどを占めるなら、特に驚くべきことではないので、次は[ユーザー]>[行動]>[リピートの回数や間隔]レポートに「ノーリファラーユーザー」のセグメントを掛けて(図8赤枠部分)確認してみた。
- 画面上部グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面左側にあるメニューで、[ユーザー]をクリックする
- メニューが開くので、[行動][リピートの回数や間隔]をクリックする
- 「ノーリファラーユーザー」のセグメント(図8赤枠部分)を適用する
すると多くのセッションは初回訪問や2回目の訪問だったが、残りの3割はサイトへ3度目以上の訪問をしており(図8青枠部分)、何十回と過去に訪問しているケースも少なくない。それが過去からズーッとノーリファラーだというのは驚きだ。
ノーリファラーのミドルユーザーが、どのページから閲覧を開始しているのか調べるには?
そこで今度は、「ノーリファラー」セッションに加えて、過去から累計3回以上サイトに訪問したセッションにさらに絞り込んで、どのページから閲覧を開始したのかを確認することで、ユーザーの閲覧の特徴をあぶり出してみる。そのために、さらに条件を加えたセグメントを作る必要があるので、図9のように「条件」分類の設定画面(図9赤枠部分)で、累計訪問回数が3回以上という条件(図9青枠部分)を追加したセッションベース(図9緑枠部分)のセグメント「累計3回以上訪問のノーリファラーセッション」(図9黒枠部分)を作成してみた。
[行動]>[サイト コンテンツ]>[ランディング ページ]レポートに、このセグメントを掛けよう(図10赤枠部分)。
- 画面上部グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面左側にあるメニューで、[行動]をクリックする
- メニューが開くので、[サイト コンテンツ][ランディング ページ]をクリックする
- 「累計3回以上訪問のノーリファラーセッション」のセグメント(図10赤枠部分)を適用する
「直帰率」や「ページ/セッション」「平均セッション時間」の3つの指標(図10青枠部分)は全体とあまり違いはなく、特にヘビーユーザーということでもない。ただ該当セグメントを掛けた場合に、上位のランディング ページは大きな違いがあった(図10緑枠部分)。感覚的に言えば、これらのページは習慣性のあるユーザーが取りそうな閲覧開始ページのパターンであることは想像できた。
より効果的なノーリファラー分析をするために
なおここまで絞り込んできたが、この状態で特にスマートフォン比率が高いという特徴はなかった。結果的にいろいろと絞り込んで、ユーザー像をあぶり出そうと試みたわけだが、とても成功したとは言えない。やはり重要な手掛かりとなるリファラー情報がないことが、いかに不自由なのかを実感できた。
自社の広告やメルマガなどでしか管理できないことだが、参照元なし(ノーリファラー)がなるべく少なくなるように、カスタムキャンペーンのパラメータを付与するなどの対策を行うことは簡単にできるので、まずはできることはやっておこう。カスタムキャンペーンのパラメータに関しては下記の関連記事を参照してほしい。
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