「リピートの回数」って訪問頻度のことじゃないの? 誤解されがちな数字の本当の使い方とは[第17回]
今回と次回の2回にわたって、リピートに関する2つのディメンション「リピートの回数」と「リピートの間隔」を解説しよう。これも用語と実際の意味が異なり、誤解が多い部分だ。
今回は「リピートの回数」について取り上げる。「リピートの回数」という言葉からは、普通は「集計期間内で何回リピートしているか」という「訪問頻度」を想像するだろうが、実際の意味はほど遠い。
リピートの回数は、「初回訪問のユーザー」と「ヘビーユーザー」を比較するときなどに使うディメンションだ。詳しく解説していこう。
- 「リピートの回数」の意味を理解する
- 初回訪問のユーザーとヘビーユーザーを比較する
[リピートの回数や間隔]レポートを見てみよう
まずは、実際にレポートを見てみよう。「リピートの回数」は、ユーザー系のレポートで確認できる。[ユーザー]>[行動]>[リピートの回数や間隔]レポートだ(図1赤枠部分)。
このページの「分布」というタブ(図1青枠部分)に、「セッション数」と「セッションの間隔(日数)」というリンクが用意されており、デフォルトでは「セッション数」が選択されている(図1緑枠部分)。
この「セッション数」が、レポート名の「リピートの回数」に対応するものだ。「セッションの間隔(日数)」は「リピートの間隔」に対応する。「リピートの間隔」については、次回解説する予定だ。
「リピートの回数」のレポートは図2のようになっており、「セッション数」の分布を示している。
一番左の列「セッション数」(図2赤枠部分)が「リピートの回数」を表しており、1回から8回までがそれぞれ1行ずつ、9回以降は複数の値がグルーピングされている(図2青枠部分)。
この「リピートの回数(セッション数)」とは、具体的にはどんな意味で、このレポートはどう読めばいいのだろうか?
リピートの回数は、集計対象期間内の訪問を数えたものではない
「リピートの回数」とは、それぞれのセッション(訪問)が、「トラッキングコードの実装を行いデータを収集し始めてから、累計で何回目の訪問にあたるか」を集計したものだ。集計対象期間内で何回訪問したのかを意味する「訪問頻度」でもなければ、集計対象期間内で「何回目の訪問か」を示しているのでもない。
具体例で話をしよう。ある計測対象サイトにおいて、ユーザーAとユーザーBが、そのサイトに訪れた訪問履歴が図3のようになっていたとする。なお繰り返しになるが、ここで言う「n回目の訪問」とは、「トラッキングコードの実装を行いデータを収集し始めてから、累計で何回目の訪問にあたるか」のことだ。また、各訪問時のページビュー数も括弧内に記述している。
月日 | ユーザーA | ユーザーB |
---|---|---|
8月5日 | 初回訪問(1ページビュー) | |
9月1日 | 初回訪問(2ページビュー) | 2回目の訪問(2ページビュー) |
9月1日 | 2回目の訪問(1ページビュー) | |
9月21日 | 3回目の訪問(3ページビュー) | 3回目の訪問(3ページビュー) |
ユーザーAがこのサイトに初めて訪問したのは9月1日で、その日のうちにもう1回訪問し、さらに9月21日に1回訪問している。
一方、ユーザーBがこのサイトに初めて訪問したのは8月5日で、2回目の訪問が9月1日、3回目の訪問が9月21日となっている。
この状態で、9月を集計対象期間に設定したとき、「リピートの回数」のレポートでは、それぞれの訪問はどのように扱われるのだろうか? 8月の訪問を除くと、9月の行動履歴は図4のように絞られる。
月日 | ユーザーA | ユーザーB |
---|---|---|
9月1日 | 初回訪問(2ページビュー) | 2回目の訪問(2ページビュー) |
9月1日 | 2回目の訪問(1ページビュー) | |
9月21日 | 3回目の訪問(3ページビュー) | 3回目の訪問(3ページビュー) |
図4の行動データを「何回目の訪問か」という回数別に整理したのが図5だ。たとえば2回目の訪問はユーザーAとユーザーBで2カ所あるが(図4オレンジ部分)、これを1行にまとめたわけだ(図5オレンジ部分)。
何回目の訪問か | 内訳 | 総訪問(セッション)数 | 総ページビュー数 |
---|---|---|---|
初回訪問 | ユーザーA(2ページビュー) | 1(ユーザーAの1回) | 2ページビュー |
2回目の訪問 | ユーザーA(1ページビュー) ユーザーB(2ページビュー) | 2(ユーザーAとユーザーBの1回ずつ) | 3ページビュー |
3回目の訪問 | ユーザーA(3ページビュー) ユーザーB(3ページビュー) | 2(ユーザーAとユーザーBの1回ずつ) | 6ページビュー |
もし「集計対象期間内で何回訪問したのか」というユーザーごとの訪問頻度分布を示すなら、ユーザーAは9月に3回訪問し、ユーザーBは同2回訪問しているので、図6のような分布になるはずだ。
訪問頻度 | 内訳 | ユーザー数 | 総ページビュー数 |
---|---|---|---|
1回 | (該当なし) | 0人 | - |
2回 | ユーザーB | 1人 | 5ページビュー(2+3) |
3回 | ユーザーA | 1人 | 6ページビュー(2+1+3) |
どうだろう、図5と図6ではだいぶ様相が異なることがわかるだろう。訪問頻度なら、集計単位は人数(ユーザー数)ベースでなければならない。しかし、「リピートの回数」はセッション数を数えているという違いもある。
「リピートの回数」はどのように見ればよいのか?
これをふまえて、実際のレポートをもう一度見てみよう。図7の[リピートの回数や間隔]レポートでは、図5の「何回目の訪問か」「総訪問(セッション)数」「総ページビュー数」の列がそれぞれ「セッション数」「セッション」「ページビュー数」に対応している(図7赤枠部分)。
たとえば、初回訪問は、この集計対象期間では1,887セッションあり、そのセッションでの総ページビュー数は2,701だったという見方をする(図7青枠部分)。
これら訪問回数別のセッション(数)とページビュー数は(図7緑枠部分)、それぞれ単純合計すると、サイト全体のセッション(数)とページビュー数に合致することになる(図7黒枠部分)。
1列目のディメンション名の表示が「セッション数」、2列目の指標の表示が「セッション」と、どちらも「訪問回数」の意味を表すにもかかわらず、微妙に実際の意味が異なるのが紛らわしいところだ。
ヘビーユーザーの比率を見る
では、このレポートから何を読み解けばよいのだろうか? 大きくは、2つのことを見るとよいだろう。1つはヘビーユーザーの比率、もう1つは、訪問回数別のセッションの1訪問あたりのページビュー数の比較だ。
ここでいうヘビーユーザーとは、過去からの累計で何度も来ているユーザーのことを指す。図7でいうと一番左の「セッション数」列で数字が多いユーザーのことで、「そのサイトの常連がどれくらいいるのか」という割合がヘビーユーザー比率だ。
訪問回数別に1訪問あたりのページビュー数を比較する
そして、その常連の1訪問あたりのページビュー数は、図7の3列目「ページビュー数」を2列目「セッション」で割って計算する。たとえば初回訪問(セッション数が1)は、前述したとおり1,887セッションでページビュー数は2,701なので、割り算すると1.43となり、「初回訪問のユーザーは平均して1.43ページ」なので、あまり回遊していないことがわかる。
一方、2回目の訪問では、図7の数値で計算すると「873ページビュー÷424セッション=2.06ページ」、これを初回訪問よりも1セッションあたりのページビュー数が多く、初回訪問のユーザーに比べると回遊しているということがわかる。
こうして見ていくと、このサイトでは「26回以上の訪問になると回遊状況が落ちてくる」という面白い変化がある。実は、このサイトでは一定以上のヘビーユーザーは「更新情報だけを見に来る」という傾向があり、これは特に問題ではないのだ。
「リピートの回数」は、訪問頻度ではなく、このように「初回訪問のユーザー」と「通算で何度も訪問しているヘビーユーザー」を区別して比較できるディメンションだ。皆さんのサイトでは、納得感のあるデータになっているだろうか?
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