テレビ局発の動画広告最新事情――日テレとテレ朝が取り組む認知と理解の成果拡大
テレビ放送各局で動画配信事業が進んでいる。オンデマンドや見逃し配信はもちろん、昨年には在京民放5社の公式テレビポータル「TVer」が立ち上がるなどの新しい動きもあり、動画広告ビジネスも好調だという。
Web広告研究会の8月月例セミナーは、「テレビ局発動画広告の今!」をテーマにテレビ局のインターネット動画への取り組み、テレビCMとネット広告の相乗効果など、動画コンテンツの活用事例を解説。
第一部では、日本テレビとテレビ朝日が、それぞれどのような動画サービスを提供し、デジタル施策を行っているかを紹介した。
日本テレビのインストリームビデオ広告
はじめに登壇した日本テレビの高橋氏は、「日テレ公式インストリームビデオ広告」を紹介する。
日本テレビが提供する「日テレ公式インストリームビデオ広告」は、日本テレビの見逃し配信サービス「日テレ無料(TADA)!」や「民放公式テレビポータルTVer」「GYAO!」に動画広告を配信できる広告メニュー。本編再生前のプレロール、本編合間のミッドロール、本編終了後のポストロールの3種類のフォーマットに対応し、完全再生率とビューアビリティが高いことが特徴だという。
また、一般の動画投稿サイトと比べてコンテンツの平均再生時間(分)が長く、テレビCMとネット広告を組み合わせることで相乗効果が生まれ、より興味関心を高めることができると高橋氏は説明する。
公式配信ならではの高画質が強み
テレビ局はこれまで、それぞれ有料課金型の動画配信サービスを行っていたが、日テレは2014年7月から無料広告型のサービスを始めている。各局の無料配信サービスが乱立するなか、在京民放5社の共同公式ポータルとして2015年10月に生まれたのがTVerだ。日テレ無料のコンテンツは、番組ホームページのほか、TVerやGYAO!にも配信されており、日本テレビのアドサーバーから各プラットフォーム上の動画コンテンツに広告を配信している。
テレビ局公式のキャッチアップサービス(見逃し配信サービス)の優位性について、高橋氏は「圧倒的な画質」を挙げる。日本テレビの自主調査では、一般の動画投稿サイトと比較して「画質がきれいである」との回答が、T層(男性)を除いた各層で25ポイント以上上回っている。
また、多くの視聴者層から「CMを安心して見ることができる」とも評価されている。テレビ局の公式配信であるため、高品質かつ長尺の動画であることが強みであり、じっくり動画を視聴する人が多く、前述のCM完全再生率の高さにもつながっている。
人気コンテンツはドラマが中心だが、バラエティや情報番組内のショートコンテンツの人気も高いことが日テレ無料の特徴だと高橋氏は話す。視聴のピークは23時台だが、12時台や18時台にもピークがあるため、屋外での視聴も多いことが予測される。
テレビ朝日のアウトストリーム動画広告
続いて登壇したテレビ朝日の渕 勇二氏は、アウトストリーム動画広告を中心に取り組みを紹介した。
動画コンテンツの視聴中ではなく、テキストコンテンツの上部や途中に挿入して視聴をうながすアウトストリームは、インストリームに比べて通信環境への依存が小さく、さまざまなメディアに広く投下できるのが特徴だ。
また、屋外のスマートフォン利用を想定しているため、音声がなく、小さな画面でも認識できるCMにする必要があると渕氏は話す。記事広告などと連携して拡散しやすく、ターゲットが広く、バリエーションが多いこともアウトストリームの特徴だ。
テレビ朝日では、インストリームだけでなく、アウトストリームも扱うことで、動画広告全般に取り組む考えがあると渕氏は説明する。アウトストリームによって、屋外や移動体向けの情報伝達手段を持ち、動画広告のバリエーションを広げるとともに、PR効果を最大化する狙いがあるという。
テレビ局自らが運営するメディアサイト
アウトストリームによるPR効果を最大化するため、テレビ朝日では、ターゲットセグメントごとのテキストメディアを開設し、それらのコンテンツをニュース配信ポータルの「favclip」と連携させている。また、自社コンテンツだけではなく、グノシーやスマートニュースなどの他社ポータルサイトとも連携する。
これらのテキストメディアをベースに、テレビ朝日ではアウトストリーム広告メニューの「favclipAD」を提供し、さまざまなメディアなどと連携することで動画広告の在庫を拡大している。favclipADでは、広告接触・非接触のパネル調査までをパッケージとして提供しており、テレビCMと組み合わせて活用することで認知向上が期待できると渕氏は話す。
動画広告の中身は、テレビCMの流用のほか、スマホ向けの制作を受託したり、記事広告と連動させたりすることも可能だ。
テレビCMは短い尺で広く認知させるのに対し、アウトストリームはターゲットごとに訴求内容を変えることができる。渕氏は、特に詳細認知を得ることに強く、テレビCM、インストリーム、アウトストリームなどを複合的に利用し、さまざまなアドネットワークやメディアと連携させることによって、これまでバラバラに行ってきた広告施策を「やりたいこと」や「求められていること」に応じて組み替えていきたいと話した。
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