動画広告の配信先やフォーマットはどう選ぶ? CMerTV、GYAO、ブライトコーブ、Oath Japanが徹底解説
数ある動画配信プラットフォーム・アドネットワークのなかから、広告主はどのような視点で配信先を選び、どのような動画を配信するのが効果的なのか。
Web広告研究会の7月月例セミナー第二部講演では、動画プラットフォーム各社が「各社に聞く動画広告の使い方」をテーマに登壇。NTTレゾナントの宮原氏がモデレーターとなって、ショートピッチでサービス内容や動画広告の活用法が紹介された。
ブランディング広告にビューアビリティは必須――CMerTV
CMerTVの羽永氏は、動画活用のポイントの1つ目としてビューアビリティ指標の重要性を指摘し、企業ブランディングで動画を使うなら、しっかり見られなければ意味がないと語る。
そのため、CMerTVは完全視聴型の動画サービスとして「Perfect View Network」を提供している。Perfect View Networkは、オーバーレイで動画を表示させてインビュー率100%を実現する動画広告フォーマット。16:9の画面比率でテレビCMを補完する動画を配信できる。
掲載先メディアとしては、ニュース系、ビジネス系、スポーツ系など、150のメディアが用意され、視聴率換算で15.0%のリーチが可能だという。レポートでは、ターゲットに合わせたメディアの掲載状況と、それぞれのKPIがわかるようになっている。
2つ目のポイントは、配信面に合わせたクリエイティブを提供するモチベーションマッチング。たとえば、サッカーの日本代表を起用した動画であれば、サッカー専門のメディアに流すことで企業のブランディングや好感度の向上につなげられる。CMerTVでは、新聞社オンラインメディアのサッカーカテゴリにもまとめて配信できるという。
3つ目のポイントは、「テレビ文脈×デジタル文脈」にあると羽永氏は話す。若年層を中心にテレビの視聴時間が短くなっているいま、テレビCMだけでは適正な広告接触の獲得が難しくなっている。
そこで、CMerTVは博報堂と連携して、テレビCMとオンライン動画広告を組み合わせたキャンペーンのシミュレーションツールを提供している。テレビCMと動画広告に広告予算どのように投下すれば広告のリーチと効果を上げられるのか、効果的な予算配分を可能にする。
また、電通とも連携して統合マーケティングプラットフォームを提供する。テレビ受信機の視聴行動や番組嗜好などのデータと連携した「テレビ視聴ログターゲティング」をプランニングや広告配信に活用できる。
さらにCMerTVでは、リアルディスプレイネットワークも提供している。たとえば、BEAUTINISTA TVは、美容室の鏡の前にデジタルサイネージを設置して、女性をターゲットにした動画コンテンツを配信できる。美容室以外にも、ガソリンスタンド、居酒屋、金融機関、ネイルサロン、歯科医院などとも連携している。
インストリーム広告は、テレビCMの何を補完すると効果的か?――GYAO
GYAOの半田氏は、インストリーム広告の活用について解説。まず半田氏は、動画広告にはさまざまなタイプがあり、「動画広告」という言葉だけで会話するのはミスリードを生むと冒頭で指摘した。たとえば、タイムラインに流れるインフィードと、動画内のインストリームでは活用の目的が異なることが多いため、しっかりと理解しておく必要があるという。
続いて半田氏は、ユーザーの映像視聴動向についてYahoo! JAPANの自社調査を示す。
近年、テレビが見られなくなっていると言われているが、インターネットで視聴されているのは、ユーザー生成コンテンツよりもプロコンテンツやテレビ番組の伸びも大きく、違法投稿も含めてテレビ番組は多く視聴されているという。「テレビ離れ」という言葉もミスリードの要因であって、「実際はテレビ番組の伝送路も多様化し、視聴端末も多様化している」のだと説明した(※録画機の視聴含め)。
GYAOとインテージの共同調査から、VODとリニア配信の時間帯別視聴についても解説された。調査では、いつでもコンテンツを見られるVODでは全体的に視聴時間のピークが一般的なインターネット利用時間とほぼ合致し、インターネットが利用される夜間が高い傾向にある。
一方、時間という概念の中で編成される番組表に沿ってリアルタイム配信するリニア配信サービスは、テレビ視聴と同様で19時~22時に視聴時間のピークが高くなり、オンデマンドというインターネットサービスそもそもと大きな違いを感じる。リニア配信は時間に対して編成の仕方次第で単純に放送とバッティングしてしまう。
テレビCMと動画広告の新たな活用法について、GYAOは野村総合研究所とともに提案するケースが増えてきているという。テレビCMの効果は瞬発力、成果、効果共に最強の広告品目である事は変わらない。一方で更に効果や成果を高める為に、テレビCMだけでは難しくなってきている、適切なフリークエンシー分布を作り出すためだ。
以前に比べて世帯人数は減少し、同じ世帯GRPでも個人GRPは減少してリーチが減ってきている。また、10~40代を中心にテレビ視聴時間は減少傾向にある。そうした背景から、「テレビCMを大量出稿しても届かない層又は低フリークエンシー層」と「フリークエンシー過多となる層」に二極化しており、テレビCMだけで適切なフリークエンシー分布を作り出すことが難しくなっているというのだ。
適切なフリークエンシー分布を作り出すためには、テレビCMに加えて、デジタルサイネージや動画広告を活用する必要がある。動画広告では、テレビ視聴に近い体験が得られるインストリームがテレビCMのフリークエンシー補完に適していると半田氏は説明する。
インストリームの認知は上がっており、その多くがリーチ補完のために使われているが、リーチ獲得以前にテレビCMのフリークエンシーが最適化されていないという課題があるため、CMのフリークエンシー補完のためにも、インストリームを使ってほしいと半田氏は話した。
テレビCMと変わらない動画体験が広告価値を高める――ブライトコーブ
ブライトコーブは動画広告配信の会社ではなく、動画コンテンツの配信と管理を行うツール(Online Video Platform)をクラウドで提供している会社だ。
企業サイト上や社内向けの動画配信管理で使われている一方で、放送局やTVerなどの見逃し配信でもOnline Video Platformが使われており、新聞社や雑誌社、Webメディア、海外サイトでも使われていると北庄司氏は説明する。
ブライトコーブが提供している動画プレイヤーの特徴は、動画に広告が挿入されて再生されるまでの表示速度にあるという。視聴者に快適な環境を提供するため、ミリ秒単位で表示速度を追求している。
また、ビューアビリティ計測ツールのMOAT社と連携して動画の視聴率を高めたり、米国インタラクティブ広告業界団体(IAB:Interactive Advertising Bureau)とともに動画広告の標準規格であるVAST 4.0の策定を進めたりもしている。
動画配信技術を支える同社がパブリッシャーから与えられたミッションは、「テレビの視聴時間が減少するなか、テレビCMのような視聴体験を動画広告でも提供すること」だと北庄司氏は話す。
たとえば、民放ポータルのTVerで動画を見る際には、動画冒頭に表示されるプリロールや番組途中のミッドロールは、テレビCMと同様にスキップできない仕組みだ。また、野球などのライブ配信でも、テレビと同じように攻守交代時に広告動画を入れることが可能だ。特に番組途中に挟まれるミッドロールは必ず見られるため、ほぼ完全視聴される(ビューアビリティ100%)と北庄司氏は述べる。
こうしたテレビのような体験を動画でも実現することで、広告主に対しての動画広告の価値を高め、動画広告に対する視聴者の不信感をクリアにしていくことに取り組んでいる。
DSPがクリアにする動画広告への期待と懸念――Oath Japan
Oath Japanの福島氏は、動画広告への期待と懸念に対してDSPができることを解説した。
2015年のeMarketer調査によると、デジタル広告に占める動画広告の割合は、米国が30%であるのに対して、日本は11%となっている。また、マクロミルの調査によると、日本の動画広告におけるDSPの利用度は、YouTube(7割弱)とFacebook(5割弱)の2つが高い。
Oath Japanは、毎年調査会社のInsightNow社と動画に関する調査を7カ国1,600名に対して行っている。調査では、動画広告で重視する要素として、「ブランド認知」「ビューアビリティ」「ターゲットリーチ」が挙げられており、グローバルと日本に大きな差はない。
ここで、ターゲットリーチと認知について考えてみたいと話す福島氏は、ターゲットリーチを増やしながら認知を高めるには、広告接触回数が必要数まで達した人数を最大限に増やすことが必要だと説明する。
つまり、特定のユーザーにフリークエンシーが偏り、必要回数まで接触できない人が増えることを避けなければならない。理想は、少ない接触回数で認知させて、到達を超えた分の予算を別のユーザーに対して使うことだ。
こうしたターゲットリーチと認知の最大化は、他のプラットフォームと比較してDSPの得意分野だと福島氏は説明を続ける。Oath JapanはDSPとSSPを運用している。そのため、DSPの豊富な広告在庫を、SSPを通じてさまざまなデバイスやインストリーム/アウトストリームに幅広く配信してターゲットにリーチできるという。
動画広告はフォーマットごとに特徴が異なる。たとえば、インストリームは画角が大きく音声も使えるためブランディングに強いが、在庫が少なく単価が高い。ターゲティングするほど在庫が少なくなるため、リーチを確保するためにはアウトストリームにも頼らざるを得ない状況になると福島氏は説明する。また、同じアウトストリームでも、インリーチとインバナーがあり、画角や単価、在庫に違いが出てくる。
このような違いに対しても、DSPは、「人に対するターゲティング」「豊富な在庫によるリーチ」「認知効果の高い在庫から優先的に配信」「在庫横断でのフリークエンシー制御」という特徴を生かして認知を最大化できるという。
また、同じインリードでも、SNSと記事コンテンツではユーザーアクションが異なると福島氏は話す。SNSは短時間でコンテンツを大量消費して流し読みする傾向があるのに対し、記事コンテンツは興味を持って能動的に読みに来るため、コンテンツ内に長期滞在する傾向がある。そのため、記事コンテンツはビューアビリティが高くリーチを獲得しやすいという。
前述のアンケート調査では、動画広告の懸念についても聞いており、「配信先サイトの質」「オーディエンスの質」「効果計測」などが課題としてあげられている。
配信先サイトの質は、近年、広告主を悩ませている課題だ。しかし、現在はDSPとアドベリフィケーションツールの連携が進んでおり、ブランド毀損の可能性があるサイトへの広告配信を事前排除できるようになってきている。また、ロボット訪問に対する不正インプレッションを排除するなど、コストを抑えながら、人間に配信してビューアビリティの高めることが可能だという。
DSPがリーチできるターゲットは、接続するオーディエンスデータによって異なる。Oath Japanの場合は、外部オーディエンスデータのほか、自社メディアの読者データを持ち、マイクロソフトユーザーIDを活用したターゲティングができる。
「オーディエンスターゲティングは約3割しかマッチしていない」とされるニールセンの調査もあるが、マイクロソフトのユーザーIDは自己申告で取得しており、71%のマッチ率があるという。
広告主に求められる総合的なプランニング
ここまで、各社の動画広告を紹介してきた。講演の最後、モデレーターの宮原氏は次のようにまとめた。
「動画広告と一言で言っても、さまざまな形式があり接触スタイルは違う。企業のプロモーション上の位置づけによって、発信内容や尺を変化させる必要があり、リーチとフリークエンシーのバランスも考えなくてはならない。登壇者の全員が指摘するように、複合的なメディアの使い方も考える必要がある。今後は、統合的なプランニングのもとで動画広告の活用方法を整理していくことが求められる」
「動画広告の配信先やフォーマットはどう選ぶ? CMerTV、GYAO、ブライトコーブ、Oath Japanが徹底解説」2017年7月25日開催 月例セミナーレポート 第2部
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