文章の「スピード感」って何だろう
書籍『新しい文章力の教室』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開!
この記事は、第4章「もっとスムーズに」から、Chapter 4-48「スピード感をコントロールする」の内容をお届けします。
スピード感は出せばいいというものではない
多くの文章教室では「文章で大事なのはスピード感」「一文は短く」「冗長な表現はNG」といった指導がなされています。確かにその通りなのですが、この本ではもう少し突っ込んだ、現場レベルの話をしたいと思います。
まず前提として、作文の苦手な人ほど、冗長でダラダラした文章を書きがちです。したがって初心者に対しては、スピード感を出せと言うのが当然のアドバイス。しかしその先にある真髄は、「適切なスピード感にコントロールしよう」というメッセージなのです。
スピード感とは「文字数あたりの情報量」
ところで文章における「スピード感」とは何でしょう?
クルマにおけるスピード感とは、走っている速度からもたらされる体感のことですから、乗っているクルマが同じなら時速=距離÷時間に比例します。
ではよく耳にする「文章のスピード感」とは? 同じことを言うのに1,000文字かかっている文章と500文字かかっている文章では、どちらがスピード感があると思いますか? 当然後者です。すなわち、文章におけるスピード感とは情報量÷文字数で割り出すことができるのです。
例文で考えてみましょう。
その本は7月5日に発売される。(15文字)
その本は7月5日発売。(11文字)
下の例文のほうが、同じことを言うのに要した文字数が少ない。すなわちスピード感が高いということです。
スピードの出し方とコントロールを覚える
スピードコントロールのサンプルとして、まずは水泳を思い浮かべてみてください。初心者のうちはモタモタとしか泳げませんから、速く泳げるようトレーニングします。しかしトップスピードが出せるようになったら、今度は距離に合わせたスピードに制御して、適切に泳ぎきるのがセオリーです。
もしくはライブパフォーマンス。最初のうちは盛り上がらず、とにかくアゲることを目指すものです。しかしただアッパーなだけでは客も演者も疲弊してしまい、60分なりの持ち時間を充実させることはできません。アゲた熱をバラードでいったん冷ましたり、ミドルテンポでタメを作ったりして、おしまいまで飽きさせずに客席の熱量を制御する手腕が必要とされます。
文章もしかり。あまりにも冗長なら読み手は離脱しますし、ソリッドすぎてもぶっきらぼうで読む気が失せてしまいます。われわれが目指すべきは「完読」ですから、基本はコンパクトにまとめつつ、無愛想にならない程度の丁寧さをもって読者をおしまいまで導かねばなりません。
まずはスピードが出せるようになって、その後適切にコントロールすることを覚える。スピード感にまつわるテクニックは、この2段階を踏む必要があると考えています。
まずはスピード感が出せるようになろう。その後は適切にコントロールして、快適なスピードで読者を完読まで連れていきましょう。
「書ける人」になるための方法を伝授!
「書けないカギは書く前にあり」。毎月3,000本以上の記事を配信し続けるカルチャーニュースサイト「ナタリー」で実践されている文章の書き方を、一般向けに解説する初めての書籍です。
通称「唐木ゼミ」と呼ばれる社内勉強会で新人育成を担当する著者が、「悩まず書くためにプラモデルを準備する」「事実・ロジック・言葉づかいの順に積み上げる」など独特の概念を通じて、文章を構造的に書くための方法をわかりやすく教えます。
文章の具体的な改善ポイントも解説。企画書、報告書、レポート、ブログ、SNSなどあらゆる文章に有効です。
ソーシャルもやってます!