Instagram「おうち吉野家」の事例で学ぶ! SNSでファンをつくるコミュニケーション戦略とは?

なぜ店舗への送客ではなく、冷凍具材の販売にInstagramアカウントを活用するのか? アレンジレシピ推しの経緯とは? 担当者が明かす吉野家Instagram活用秘話
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外出が制限されるコロナ禍が続き、ネット上での購買行動が加速するなかで、ネットにおけるファンづくりやブランディングの重要性も高まっている。なかでもInstagramは、女性を中心に支持されており、ライブコマース機能なども備えていることから、企業のマーケティング活動においても重要なタッチポイントだ。

2022年2月15日、ソーシャルメディアマーケティングの支援などを手がけるkazeniwaは、吉野家(※1)の諏訪和博氏を講師に招き、ブランドとファンとの関係性の深めかたに着目したオンラインセミナー「おうち吉野家の事例で学ぶ! SNSでファンをつくるコミュニケーション戦略とは?」を開催。吉野家の冷凍牛丼具材のプロモーションにおけるInstagram活用について、料理研究家とのコラボレーション、投稿キャンペーンなど具体例を挙げながら詳しく解説した。

(※1)吉野家の「吉」の正確な表記は「土」の下に「口」(つちよし)。

諏訪和博氏、丹こず恵氏
(左)株式会社吉野家 外販事業本部 事業企画室 室長 諏訪和博氏 (右)株式会社kazeniwa スマート&ソーシャルビジネス事業部 デジタルマーケティングチーム 丹こず恵氏

吉野家のInstagram、最初のうちは“茶色”ばっかり!?

ソーシャルメディアは消費者とのコミュニケーションに有用なツールだが、いざ本格運用するとなるとハードルは高い。往々にして下記のようなケースに陥りがちだ。

  • 定期的に投稿し続けるだけのコンテンツ量を用意しきれない
  • 告知ばかりになってしまう
  • アイデアがあってもそれを投稿に落とし込めない

ソーシャルメディアマーケティング支援を行うkazeniwaでは企業のそうした悩みの声を聞くことが多かった。そこで、企業のSNS担当者の課題解決に役立つイベント「ザ・ファンマーケ」を企画。今回、諏訪氏を招いての開催に至ったという。

吉野家では2017年5月から、Instagramアカウント(@yoshinoya_co_jp)を運用している。「おうち吉野家」をテーマに、吉野家が販売している牛丼の具などの冷凍具材を用いたアレンジレシピについて、週2回ほどのペースで投稿している。

吉野家のInstagramアカウント(@yoshinoya_co_jp

企業がSNSアカウントを作る場合、ブランドやサービスの消費者認知拡大が目的とされるケースは多い。しかし吉野家は全国に店舗網を広げており、2017年の段階で認知はすでに十分高い。そのフェーズにおいて、なぜ吉野家はInstagramの活用を企図したのだろうか。

諏訪氏によれば、@yoshinoya_co_jpアカウントは、そもそもは店舗運営事業の一環として開設した。しかし主要商材が牛丼であることから、投稿する画像が“茶色”のものばかりになってしまい、華やかさやカラフルさに欠けるケースが多く、結果として運用に行き詰ってしまったという。

一方、店舗としての吉野家の知名度は高いが、諏訪氏らの部署で取り扱う冷凍牛丼具材については、世間一般からの認知度はまだまだ低かった。そこで、Instagramアカウントの利用方針を「吉野家の冷凍具材の認知拡大」を目指す方向へと転換したのだという。

吉野家のリアル店舗は全国で約1200店あり、新商品の告知も含めてテレビCMなどのマス向け施策が大きな効果を発揮します。それに対し、冷凍牛丼具材は相対的に売上が低いため、マーケティング予算が限られてしまい、施策も絞り込まなければなりません。その前提条件ですと、SNSアカウントの活用は欠かせません(諏訪氏)

吉野家の冷凍牛丼具材は、自社ECサイトのほか、生協、イオン、イトーヨーカドーなどでも販売されている。ECサイトでの販売はおもに10食以上のまとめ買いが多かったが、店舗販売が広がったことで、少量だけ買いたいというニーズにも応えられるようになってきているという。

社内の反対にどう対応する? KPIは?

このイベントに際して、聴講者から寄せられた質問の1つに次のようなものがある。

「費用がかかるSNS施策に対して、社内から反対意見や課題の指摘はありましたか? どのように課題をクリアされたか知りたいです」――これは丹氏も、日ごろの業務の中で非常によく受ける質問だという。現場マーケター共通の悩みなのだろう。

諏訪氏は「反対意見は多くなかったが、費用をかける以上はそれに見合ったリターンがあるのか。その点については随時確認されている」と実情を明かした。

おうち吉野家がSNSキャンペーンを実施する際の指標として、SNS広告出稿時との比較を用いている。同社では直接ECサイトへのコンバージョンを取りに行く広告を別に出稿しており、キャンペーンの総コストから算出したリーチ単価と、広告リーチ単価を比較し、キャンペーンが広告を上回っていないかが成否の判断基準となっている。

SNS施策は「売上を直接上げるためのものではない」という声もありますが、ユーザーを集めることで吉野家に関するオーガニック投稿につながります。オーガニック投稿から直接コンバージョンへの導線を設けることはできませんが、広告と違い閲覧を“飛ばされる”心配がないため、ECサイト以外での購買も含めた最終的な成果としては、オーガニック投稿の方がより効果的だと考えています。ユーザーが吉野家について自主的に投稿してくれる意義は極めて大きいです(諏訪氏)

販売ターゲットの主婦層向けにアレンジレシピを公開

諏訪氏によれば、冷凍牛丼具材の主要販売ターゲットは主婦層、なかでも子供のいる家庭だという。単身者と比べて大きな冷凍庫が家庭内にある可能性が高く、冷凍牛丼具材を常時ストックするような購買行動が期待できるからだ。同時に「未来の吉野家ファンを獲得する」ことも大きな目的である。家庭で吉野家の味に触れている子供たちなら、成長した時に吉野家の店舗へ足を運ぶ可能性は高くなる。

主婦層へのアピール、大口購入促進の観点から、吉野家のECサイトでは、希望するペースと数量で定期的に冷凍牛丼具材が宅配で届く「定期お届け」サービスを実施している。利便性の高いサービスだが、アンケートを採ったところ、解約理由として「購入分を消費しきれない」との声が圧倒的に多かった。加えて、温めた牛丼をそのまま食卓に出すことに抵抗を感じるとの声もあった。

そこで、冷凍牛丼具材のアレンジレシピを発信するという発想にたどり着いたのだという。

丹氏は実際にInstagramに並ぶアレンジレシピについて、「調理の簡単さ・見た目の楽しさなどがとても優れていて、主婦の利用がしっかり考えられていると思います」と高く評価。諏訪氏も「吉野家の商品はもともとしっかり味付けされているため、いろいろとアレンジしても失敗しにくい」と、商品特性の面でもアレンジレシピと相性が良いことをアピールした。

アレンジレシピの発信にあたっては、料理研究家とのコラボレーション企画を積極的に展開している。2018年には料理家SHIORI氏が考案したレシピ集の第1弾が書籍として出版。その後も商品に同梱するレシピ冊子を制作し、Instagramキャンペーン時にプレゼントとして活用をしている。なお、これまでにコラボした料理家の多くが主婦であり、子育て中である。その点も一般的な主婦層との共感性を意識した結果だという。

料理家とのアレンジレシピコラボ本を出版

商品企画アンケートもInstagramで実施

また、吉野家ECサイトにて販売するギフト用“丼”(どんぶり)の企画開発にあたっては、Instagramでアンケートを実施した。ECサイト会員だけを対象にアンケートを採る方法もあったが、より広範なユーザーと共同で商品開発したいとの狙いからInstagramを選んだ。

Instagramのストーリー機能を使い、「ギフト用どんぶりを贈るなら入学祝いと就職祝い、どっち?」といった選択式の問いを投げかけ、それに答えてもらう。短時間で募集を締め切ったが、合計で400件の回答が集まり、最終的には「就職祝い&結婚祝い」が選ばれた。その結果発表までをすべてInstagramで行った。

Instagramでのアンケートには、購買シグナルの獲得に加え、顧客との親密度(エンゲージメント)を高める効果があったという。「社内では当初、比較的年長の方へ贈るギフトとしての丼が選ばれると思っていて、まさか就職祝いのような若者向けが選ばれるとは考えていなかった」と諏訪氏が言うように、アンケートを通じて意外な発見も得られたようだ。

Instagramでアンケートを実施し、商品企画に反映

UGCを増やす投稿キャンペーン

2021年10月には、吉野家関連のUGC(User Generated Content:一般ユーザーによって作られたコンテンツ)を増やすための投稿キャンペーンを実施した。コロナ禍で気軽に外食できないなかでも「おうち外食」の気分を味わってもらうため、冷凍牛丼またはテイクアウト牛丼のどちらかを食べているシーンの写真を投稿してもらった。

実際に投稿された写真は、子供たちが牛丼を頬張っている姿が少なくなかった。これは結果的に主婦層に対し「子供たちがこんなに楽しそうに牛丼を食べている」「牛丼ってジャンクなイメージがあったけれど、子供たちに食べさせていいんだ」という気付きを与える効果があったと諏訪氏は分析している。

また、ECサイトでの商品販売は、商品の外観やスペックだけに注目が行きがちだが、人にスポットライトをあてることで、サイトに活気を与えることもできる。

丹氏はSNS運用の専門家の立場から「UGCは、ターゲットの共感や信頼を集めやすく、商品購入の意思決定にも有効」だと説明。UGCを増やすための施策は販売促進に直結すると述べた。

投稿キャンペーンでは、子供たちが牛丼を味わっている際の写真が多く寄せられた

今後もInstagramに注力していく

直近の2022年2月には、人気アニメ「劇場版 呪術廻戦 0」との連動キャンペーンをリアル店舗・ECサイトで同時開催した。商品購入者に限定のカードをプレゼントするという内容で、ECサイトでは早々に売り切れるほどの好評を得た。

さらに、Instagramでは、料理研究家のMizuki氏によるライブ配信を実施。リアルタイムで平均1200~1300人ほどの視聴者を集め、終了後には24時間で1万3000回再生させるなど、こちらも人気だった。

Instagramでアレンジレシピの作り方をライブ配信する取り組み

このように、Instagram施策を次々打ち出し、今後も注力していく計画の吉野家だが、SNSを効果的に活用するには、人員など相応のリソースが必要となる。吉野家の社内でInstagramの運用を直接担当しているのは諏訪氏ともう1人だけで、運用や企画立案には外部の力を借りているという。

ここで丹氏は、kazeniwaのSNS運用代行サービス「SUP(サップ)」について紹介、SNSのプロが専任担当として加わり、ブランドの魅力を引き出す投稿企画を立案し、新しいファンの獲得・育成、そしてさらなるファンを生み出す流れを支援するとアピールした。

諏訪氏は最後に、「吉野家の冷凍牛丼は、世間にようやく認知されはじめたところ。より多くのお客様に召し上がっていただくために努力していきたい。そして将来的には、お子様たちが初めて食べる外食に吉野家が選ばれるようになれれば」と語り、講演を締めくくった。

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