生田昌弘の「Web担当者に喝!」

eスポーツはインターネットに匹敵する巨大なメディアになる。Web黎明期の風を感じた

Web黎明期に感じた風を「eスポーツ」にも感じたという生田氏。4年ぶりとなる「喝」コラムは、喝は抑え気味にeスポーツに抱いた魅力について語る。

Webに出会ったとき、新しいメディアの出現を予感した。

ビジネスとして成功するか、そんなこと考える前に「これはやらなきゃ」と、その世界にダイブしていた。

eスポーツにも、インターネットと出会った時と同じ感覚を覚える。

eスポーツはメディアになると私は確信している。

インターネットとの出会いを振り返る

インターネットが登場した時代は、わずかな買い替え需要に各社が躍起になるモノが売れない時代だった。これを解決する可能性を秘めたインターネットに私は魅了され、ビジネスになるはずだと思いWeb屋を始めた。10年、20年と時間の流れとともにインターネットは、巨大なメディアへと成長していった。

Webと出会い十数年が経過した頃、スマートフォンという革新的なものにも出会った。このスマートフォンの登場により、インターネットは若い世代だけのメディアではなく、すべての世代が使う「メディア」としての位置を確立した。

しかも、インターネットは今までアナログの時代ではわからなかった、ユーザーニーズが明確にわかるメディアである。企業の多くがそれに気が付き、最強のマーケティングツールとして、さまざまなサービスが生まれ、人々の生活に溶け込んでいる。

インターネットでビジネスをやり始めて28年、そんなある日eスポーツに私は出会った。そしてeスポーツにかかわる人たちとのコミュニケーションで感じた。これからの世代にリーチをかけるには、必修のメディアだと。

そう、28年前に感じたのと同じように「eスポーツはメディアである」と感じた

Z世代、アルファ世代にどうアプローチするか頭を悩ませる企業たち

eスポーツとはなんなのか? 改めての説明は不要だと思いつつ、一般社団法人日本プロeスポーツ連盟のサイトには以下のように説明がある。

「eスポーツ(esports)」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。

引用:一般社団法人日本プロeスポーツ連盟

このeスポーツをプロゲーマーがNo.1を目指すゲーム競技と捉えるのは、なんともナンセンスである。

多くの企業は、これから消費を担うZ世代やアルファ世代にどうアプローチをしていくか、頭を悩ませているだろう。Z世代やアルファ世代と言われる若者は、かつてメディアの王者と言われたマスメディアは、もちろん見ない。

インターネットすらも、最低限しか見ない。ゲーム配信閲覧とコミュニケーションに必要不可欠なツールとして TwitchやTikTok、Twitterを利用している。しかし、彼らにとってこれらはインターネットではなく、単なるコミュニケーションツールとして使っているに過ぎない。

インターネットというネットワークを利用しているかどうか…そんな細かいことは、どうでもいい世代。マスやWebでの告知よりもTwitterでの告知に一番反応する世代。それがZ世代であり、アルファ世代。そんな生態系を目の当たりにした私は確信した。

そうか、eスポーツは彼らのコミュニケーションツールなんだ。

そもそもeスポーツは彼らのなかで、独立したメディアなんだ。

新しい時代の幕が開く瞬間?<ソーシャルサーチの時代へ>

「ググるからタグる」という検索行動の変化が叫ばれている現代。Google検索だけでなく、SNSで検索する人の割合が50%を超える時代が来るだろう。「Webブラウザ」という言葉が、過去の言葉になる時代が来る。

何度も、何度も変革を経てきた、インターネットに、また大きな変革がやってくるのだろうと感じた私は、2021年10月9日、キノトロープの28回目の誕生日にeスポーツに本格的に取り組むと決めた。

私たちがWeb屋として、次の10年を生き残るために必要不可欠だと考えたからだ。いや、それは、ビジネスの問題ではなくその熱い空気と、2度と無い瞬間の中にいられることは、人生において最大の幸せだと感じるからだ。

1990年後半、インターネットの扉が開かれようとしていた時、みんなが悩み、苦しみ、議論して、新しいものを作り上げていた時代。その中に参加できた幸せは、私の人生の中で、何にも代えがたいものだ。

そして、その感動を再度味わえそうな予感がしている。

これは、参加するしかないじゃないか!

eスポーツはすべての世代のコミュニケーションの懸け橋になる!

20年後ビールを片手に晩酌をする親父がTVで見ているのは、野球ではなくeスポーツになるかもしれない。

人種、年齢、性別を超えて、共通の話題でコミュニケーションしているはずだ。さらに、同じチームとして共に戦うことさえ可能なのだ。それこそがジェンダーレスのあるべき姿であり、グローバル化の実現に他ならない。

1995年に私が本格的にインターネットに取り組んだころ、まず一番に感動したのは、遠く離れた海外の方とチャットやゲームができる、ということだった。そして、eスポーツにもそのとき感じた感動を抱く。eスポーツ上で生まれるコミュニケーションは、間違いなく新しいコミュニケーションになるはずだ。

そしてそれは、今スポーツにまで進化しようとしている。

eスポーツが、コミュニケーションを加速させる瞬間に、僕たちは生きている!

僕たちの次の仕事は、このメディアを加速させることだと確信している。

*参考

経済産業省の報告書にZ世代とeスポーツについての興味深いまとめがある。ダウンロードして読んでみてはいかがだろうか。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/2022generationzadreport.html

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