プロダクトマネージャーに必要な3つのスキルとは? リクルートのPdMが語る仕事のリアル
最近、よく聞くようになった「プロダクトマネージャー」という職種。プロダクトマネージャーにはマネジメントスキル、UXやテクノロジーの知識、マーケティング思考など、さまざまなスキルが求められる。なりたいけど何をしたらよいかわからないという方も多いのでは?
株式会社リクルートの加藤舞子氏が「デジタルマーケターズサミット 2023 Winter」に登壇し、リクルートのプロダクトマネージャーの役割や必要なスキルについて講演を行った。後半では、異業種・他職種から転職し、プロダクトマネージャーとして活躍するメンバー2名が参加し、質問に回答しながらプロダクトマネージャーの仕事のリアルを伝えた。
プロダクトマネージャーに必要なスキルとは? リクルートのプロダクトマネージャーに求められるT字型スキル
不動産ポータルサイト「SUUMO」のプロダクトマネージャーである加藤氏は、新卒でリクルートに入社。8年間飲食領域にて「ホットペッパーグルメ」などのプロダクトマネージャーを経て、2022年から「SUUMO」を担当している。
リクルートには、プロダクトデザイン室という「プロダクトを生み出し、成長させる」ためのデザインをするチームが存在する。プロダクトデザイン室には、大きく分けて3つの職種が存在する。「プロダクトマネージャー」「デザインディレクター」「クライアントサクセス」の3つだ。本講演では、プロダクトマネージャーの業務内容と必要なスキルを紹介する。
加藤氏はまずプロダクトマネージャーの具体的な業務について次の図を示した。リクルートではT字型スキルと呼んでいるという。
横軸はプロダクト開発のステップが時系列に並んでおり、その下にそれぞれのステップで求められるプロダクトマネージャーのスキルが整理されている。縦に長いほど重要なスキルだ。業務の流れは、まずマーケットを分析し、課題を特定、プロダクトの提供価値やその価値に対するリターンは何かを議論する。その後、メインとなるユーザーを定義し、関連する業務の要求を洗い出し、ユーザーが使う画面に必要な機能・デザインを固めていく。最後に、要件について開発を進めていき、進行管理をしていくという流れだ。
リクルートの特徴としてサービスの規模が大きく、関連ユーザーが多い点があげられます。クライアント(不動産会社)やカスタマー(顧客)だけでなく、営業、制作、オペーレーターなど、すべての関連ユーザーに対して、いつごろ・どのような提供価値のプロダクトや機能がリリースされるのか伝えていく必要があります。開発の進捗管理にとどまらない、プロジェクト管理をしていく必要があります(加藤氏)
プロダクトマネージャーに必要な3つのスキル
プロダクトマネージャーにはさまざまなスキルが必要となるが、加藤氏は必要なスキルとして次の3つをあげて、それぞれ詳しく解説をしていった。
- さまざまなファクトから仮説を立てること
- 本質的な“あるべき姿”を言語化すること
- 検証を繰り返し、ネクストアクションを定めること
1つ目のスキルは、「さまざまなファクトから仮説を立てること」だ。課題が顕在化している場合は、社内に蓄積されているさまざまなデータをもとに、数字を根拠に仮説を立てているという。その後、調査などを用いて定量アンケートを行い、マーケットのデータとサイトの利用者のログなどを照らし合わせて、打ち手の検討を行う。課題が顕在化していない場合は、取引を行っている企業クライアントに相談し、ヒアリングや常駐をして実際の業務を体験し、課題やマーケットニーズを特定しているという。
昨年秋に、不動産会社に2週間常駐した社員は、『一見すると合理的に思えないことも、ユーザーが変わると合理的で必要であることが理解できた』と話していました。データを見るだけでなく、現場の業務を把握して、課題に対してさまざまな視点から打ち手を検討することはとても大切です。数値の変化によって影響をうける方が多くいるので、1つのアクションの重みを現場で実感することにより、プロダクトづくりのスタンスが変わる面もあるかなと思います(加藤氏)
2つ目のスキルは、「本質的な“あるべき姿”を言語化すること」だ。加藤氏はプロジェクトリーダーが、キックオフミーティングでメンバーに発信したという資料を示した。
キックオフミーティングはエンジニア、デザイナー、データサイエンティストなどさまざまな職種の人が集まって、なぜやるのか、どうしてやっていくのか、どういう風にしたいのかの認識合わせを行う会議体です。ファクトが集まり、仮説を立て、打ち手まで絞れたときに、あるべき姿、目指したい姿を言語化するようにしています。はじめは間違っていてもいいので、言語化したあるべき姿をメンバーに発信します。それをもとに質問を受けたり、議論をしたりして目線合わせをすればよいので、まずは実現したい世界を断言することを大切にしています(加藤氏)
3つ目のスキルは、「検証を繰り返し、ネクストアクションを定めること」だ。
大切なのは、仮説通りなのかどうかを検証し、仮説通りではない場合、どうするか次のアクションを定めることです。A/Bテストの振り返りでも、勝ち負けよりも仮説に対して振り返りを行い、次に何をするのかを確認しています。次のアクションが決められない場合は、ファクトが足りなかったり、見落としていたりするので、もう一度ファクト集めに戻って、精度を高めにいくようにしています(加藤氏)
異業種・他職種から転職した二人が語る、プロダクトマネージャーの仕事のリアル
続いて、異業種、他職種から転職したメンバーが参加し、プロダクトマネージャーの仕事について加藤氏や視聴者からの質問に回答する形で進められた。
参加者の一人目は、大手インターネット企業でキャンペーン企画を担当していた小柳 雄二郎氏。2022年5月にリクルートに入社し、現在は新規事業である美容院デジタルサイネージ「BELLET」などのプロダクトディレクターをしている。二人目は、タイヤメーカーでWeb担当をしていた津野 彰大氏。入社して約1年で、現在は「SUUMO」の注文住宅のWEB予約導入などのプロダクトマネージャーをしている。
Q:前職で経験したことで活かせているスキルは?
前職ではキャンペーンのLP制作で、デザイナー、エンジニアのスケジュール管理などを経験しました。タスクを細かく分けて遅延なく進むように調整した経験は、現在の仕事でも活かせています。また、新卒で入社してからの半年間は新規営業をやったので、新規事業でわからないことを自分で開拓していったり、ファクトを自分で集めにいったりするところで活かされているかなと思います(小柳氏)
小柳氏が担当する「BELLET」は、美容院にデジタルサイネージを置いて広告やコンテンツ配信をするサービスで、「ホットペッパービューティー」との連携はあるものの、基本的には顧客がゼロの状態から新規の顧客を獲得していっているという。
前職では、プロダクトマネージャーという言葉を知りませんでしたが、店舗の集客やWebサービスの収益・効果は見ていたので、プロダクトの戦略を描き、あるべき姿の言語化はしていました(津野氏)
Q:転職して足りてない・最も必要だと思ったスキルは? そのスキルはどうやって習得した?
事業全体の戦略、方針を言語化するスキルは、前職で経験がない分、足りていないと感じました。わからないことだらけでしたが、レベルの低い状態でも自分が考えたことを上長や周りの人に壁打ち(相談)していました。いろいろなフィードバックをもらって、ブラッシュアップしています(小柳氏)
前職はトップダウンの会社でしたが、リクルートはボトムアップの会社。上司と意見が違うと思ったら、『何がどう違うのか』を伝えるカルチャーの会社です。入社して1ヶ月半、上司の意見に従っていたら、『反論してきなよ』と言われました。初めて上司の意見に反論したときは緊張しましたし、その返しが来て負けるというフェーズがありました(笑)。半年過ぎたあたりで、徐々に上司を説得できるようになりました。自分が何をしたいかを考え続けて、いろいろな人に意見を聞いて、自分の中で納得できる意見をつくることが大事だと思います。
『SUUMO』ではプロジェクトをやるべきかどうかも議論します。トップダウンの会社であれば、やらないという選択肢はありえませんが、『SUUMO』ではやらないという判断になることもあります。やる/やらないの判断からするという点は驚きました(津野氏)
小柳氏も「お前はどうしたいんだ? と本当に聞かれるんだ」と感動したという。イエスマンではなく、自分の意見を伝えて、フィードバックを得るという経験を日々しているという。とはいえ、転職したてでは、知らないから反論できないというフェーズがある。そのフェーズはどうやって乗り越えていったのだろうか?
いろいろな人に話を聞いて回ることが大事だと思います。リクルートは聞いたことに対して、みんながオープンに教えてくれるので、ファクトが集まって、自分の意見ができていくという感じでした(津野氏)
Q:異業種からの転職なのに、なぜ採用されたと思う?
加藤氏は自分が面接官だったら、どうして二人を採用したかという観点で以下のように答えた。
共通するのは、適切な好奇心があることです。好奇心を実現するために、いろいろな人に話を聞いて、開拓して、楽しんでいることが話していて伝わってくる。リクルートは、賢い人がサービスを作っているというよりも、アイデアを言う人、こういう風に実現できるよという人、こうすれば拡張しやすいのではという人たちが集まって、プロダクト価値を生み出している会社。好奇心があることは重要な素質です(加藤氏)
かっこいいサービスの裏には地道な努力があって、その泥臭い部分をポジティブに推進していけると思ってもらえたのかなと思います(小柳氏)
メーカーで働いていた時に、店舗に行って現場の担当者の声を聞いて本社に伝えるということをやっていました。聞いてもすぐ教えてもらえないこともありましたが、情報を自分で取りに行ってアクションにつなげた経験が評価されたのかなと思います(津野氏)
Q:ファクト収集での、対人ヒアリングのコツは?
2つあります。1つは、ヒアリングの時間は短く、回数を増やすこと。本音を引き出すには信頼関係を作ることが大事。『あいつ、また来たな』と思われるくらいに。行けないときは電話をしています。もう1つは、ヒアリングの目的を伝えることです。みんなのためにやっていることが伝われば、協力してくれます(津野氏)
Q:プロダクトマネージャーに必要な3つのスキルはどうすれば磨ける?
私は一つ一つの仕事を機会として捉えることなのかなと思います。『これはプロダクト価値づくりにつながるのだろうか』という仕事もあると思います。たとえば、打ち合わせをするときは、誰の心をつかむのかターゲットを決めています。この人の、この心を動かしたいので、こういう仕事をしようと目的設計をして取り組むと振り返りがしやすいです。つまりは、目の前の仕事を頑張るということなのですが(笑)、捉え方を変えてみるのも大事なのかなと思いました(加藤氏)
やろうとしていることは、誰のためにやっているのか立ち返るようにしています。誰にどんな価値提供をするのか、解像度が高くなると、なぜこのプロジェクトをやっているかに気づけると思います(小柳氏)
できている人のやり方・考え方を真似することです。結論が出たことに対して、どういう思考のプロセスで考えたのかを聞き、それをそっくりそのまま自分でやってみています(津野氏)
プロダクトマネージャーは、関わるフェーズが広く、コミュニケーションする相手も多い。先端的な仕事というよりも、地道にコミュニケーションをとりながら業務を円滑に進めていく役割ということが伝わったのではないだろうか。最後に「リクルートでは共に挑戦する仲間を募集しているので興味のある人は応募してほしい」と加藤氏は講演を締めくくった。
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