シェア拡大”検索エンジンBing”にSEOは必要? MS広告最新情報も
新しいMicrosoft Bing(以下、Bing)、Microsoft 広告、ユーザー行動解析ツールのMicrosoft Clarity(以下、Clarity)など、ここ数年のMicrosoftの動きに注目するWeb担当者も多いだろう。そこで、「Web担当者Forum ミーティング 2023 春」にアユダンテのSEOコンサルタント 宮下 真菜 氏、同社のデジタル広告コンサルタント 粂野 三佳 氏の2名が登壇。今知っておきたいMicrosoftの最新情報、Microsoft 広告とSEO事情、Bing ウェブマスターツール、Clarityの具体的な活用法を紹介した。
AI搭載のBingを始め、新しい動きが加速するMicrosoft
粂野氏によると、ブラウザのMicrosoft Edge(以下、Edge)の国内ユーザー数は3,300万人、検索エンジンのBingの月間国内検索数は7億回にのぼり、Microsoftのブラウザや検索は国内でもシェアを伸ばしている。ユーザーの属性は、平均44歳、男性57%、勤め人が65%と、働き盛りのユーザーが多いプラットフォームだ。
Googleと比較してBingの方が、年収が高く、意思決定者の割合が高い。また、学校で利用するPCにはEdgeが採用されていることが多いため、若年層のユーザーも多いという。
直近の動きとしては、2022年5月にMicrosoft 広告を開始。翌月の6月にInternet Explorerのサポートを停止した。そして、2023年2月にはAIを搭載した新しいBingと Edgeが発表され、5月には新しいBingがオープンレビューとなり、すべての人に公開された。
新しい取り組みとして注目したいのは、Bing Image Creatorという画像生成AIがチャットの体系に融合されたことだ。チャット内からテキストで指示すれば画像生成ができるようになった。今後はさらに、Bing ウェブマスターツールでAIチャットのパフォーマンスが表示されたり、チャットにビジュアル検索が組み込まれたりすることが予定されている。
こうした動きを踏まえて、粂野氏は、「SEO、広告の観点でMicrosoftに注目が集まっている」と話す。
Googleとは異なるアルゴリズムで動くBing。BingのSEO対策はどうすべき?
日本国内の検索エンジンシェアを見てみると、Googleが76%超のシェアを占め、Yahoo!が約15%で続き、Bingは約7.5%となっている。宮下氏は、「Yahoo!の検索エンジンはGoogleを使っているため、Googleの母数が多い。多くのSEO担当者はGoogleの検索エンジン対策をしていると思う」と語る。
この検索エンジンシェアに影響すると考えられるのが、ブラウザのシェアだ。ブラウザのシェア状況を見ると、全デバイスでは、Chromeが約50%、Safariが約30%、Edgeが約13%。モバイルではSafariが約63%で、Chromeが約31%だ。
現在は、Chromeはもちろん、Safariも検索エンジンはGoogleだが、Safariの検索エンジンがBingになったとしたら、どうなるだろうか?
もしSafariの検索エンジンがGoogleからBingに替わったら、検索エンジンのシェアに大きな変動があると考えられます。現状はGoogle一強ですが、いつ終わるかわかりません。Bingを含め、他の検索エンジンと併せてブラウザの動向にも目を向けておく必要があります(宮下氏)
では、Bing検索の対策は何をしたらいいのだろうか? Googleと比較しながらBingをみてみると、次の3つの注目ポイントがある。
1. Bing検索からの流入が多いケースもある
1つめは、「Bing検索からの流入が多いケースもある」ということだ。次図のように自然検索の参照元を調査したところ、サイトA、サイトBは、Google、Yahoo!からの検索が多いが、サイトCはBingからの流入が約3割となった。
サイトA、サイトBは、スマホからの流入が多いB2Cサイトに多く見られるような結果だった。一方、サイトCはB2Bのサイトだという。また、サイトBの場合は、デスクトップに限るとBingからの流入が約3.5割ある。スマホサイトで調べた後、購入するために詳細を調べるときにはPCを使うユーザーが多く、結果としてBingが使われていると想定できる。
皆さんのサイトはA、B、Cのどちらに近いでしょうか? ぜひチェックしてみてください(宮下氏)
2. Google検索と順位が異なる
2つめは、「Google検索と順位が異なる」ことだ。順位調査ツール「Demand Metrics」を使って、ある比較系B2Cサイトの148キーワードの順位をGoogleとBingで比較したところ、Bingの方が圏外になるキーワード数が多かったという。
次図では、1位(緑)から50位以下(赤)までグラデーションで順位を表しているが、このサイトの場合はGoogleに比べるとBingでは1位の数が少なく、圏外の数が多いことがわかる。
ただし、検索順位の傾向はサイトによって異なります。たとえば、圏外の数は同じくらいでも、Bingの方が1位になるキーワード数が多いサイトもあります。自分のサイトの状況をチェックしてみてください(宮下氏)
3. GoogleはMFI、BingではモバイルとPC両方の最適化が必要である
3つめは、「GoogleはMFI(Mobile First Index)、BingではモバイルとPC両方の最適化をはかる」ことが大切になる。SEOをやっている人であれば、モバイルページを評価対象とする、GoogleのMFIのことはご存知だろう。一方、BingはMFIの概念がなく、PC、モバイルの両方を評価するため、両方の最適化が必要だ。
これまでPCページをおろそかにしがちだった人は、PCページの最適化も忘れずに実施していってほしいと思います(宮下氏)
Bing ウェブマスターツールで解析しよう
Bing SEOを始めるには、まずは施策に入る前にモニタリングする環境を作ってほしい。ここで使ってみたいのが、Microsoftが提供するBing検索用のトラフィック解析ツールである、Bing ウェブマスターツール(以下、ウェブマスターツール)だ。「Google サーチコンソールのBing版と捉えるとわかりやすい」と宮下氏。
次の表は、ウェブマスターツールとサーチコンソールを比較したもの。インデックス登録、サイトトラフィック解析、サイトマップ送信など基本機能は両方にあるものの、Google独自指標のエクスペリエンスレポートなどは用意されていない。「ただし注目したいのは、バックリンク、キーワード調査、SEOレポートといったSEOツールの機能がウェブマスターツールにあることだ」と宮下氏は語る。
キーワード調査では、Bing検索でのキーワードのインプレッション数を国、言語、デバイス別に表示できるほか、関連用語のインプレッション数も表示される。バックリンクは、どの外部サイトからどのページにリンクがあるのか、アンカーテキストの内容まで確認できる。管理している自サイトだけでなく競合など他サイトの傾向も見られるので、競合調査に有効だ。SEOレポートでは、Bingがランキング指標にしている項目のうち、課題があるページを確認できるという。
Microsoft 広告の強みを知ろう
続いて、粂野氏よりMicrosoft 広告についての紹介があった。2022年5月末にローンチされたMicrosoft 広告の主力メニューは、Microsoft 検索広告とMicrosoft オーディエンスネットワーク(MSAN)だ。
「マルチチャネルマネジメント」の考え方により、パフォーマンスの最大化やシンプルなキャンペーン管理が実現できる仕様になっているのが特徴だ。1つのキャンペーンから、検索広告、ディスプレイ広告、ショッピング広告など、一番パフォーマンスが最大化できる方法とタイミングで複数の広告が出せる。もちろん、検索広告やディスプレイ広告を別々に設定することもできる。
冒頭で紹介したBingユーザーの属性を反映してか、高価格帯商材、検討期間の長い商品やサービス、B2B、ハイクラス転職など、ユーザーと親和性のある業種や商材での出稿が伸びています(粂野氏)
Google 広告のインポートで複雑な初期設定不要
Microsoft 広告は、配信中のGoogleキャンペーンと同様のキャンペーンがすぐに実装できることが強みの1つだ。
Googleキャンペーンと同じ構造のキャンペーンをすぐに実装できるので、複雑な初期設定が不要です。容易に導入できるので、主力キャンペーンだけでも試してほしいですね(粂野氏)
Microsoft 広告設定時の注意点(検索)
ただし、Google 広告とは異なる点もあるので、設定時に注意したい。1つは、登録キーワードのマッチタイプの挙動が異なる点だ。Google 広告で「注文住宅」を登録キーワードにすると、「注文住宅」だけでなく「建売住宅」「家 建てる」などキーワードを拡張して対象とするが、Bing検索広告では「注文住宅」のみになり、拡張しない。そのため、インプレッションを増やすには、関連するキーワードを個別に登録した方がよいという。
2つめは、検索広告でも検索窓の下のディスプレイ面に表示されることがある点だ。広告内容とマッチしない場合は、「msn.com」「bing.com」「outlook.com」「outlook.live.com」を除外設定して、無用なインプレッションを発生しないようにするとよい。また、これら4つのドメイン以外にも、ネットワークのパブリッシャーが増加しているため、定期的にプレースメントをチェックして、必要があれば除外設定を都度していくことが必要。
さらに、オーディエンスネットワークにも検索広告が表示されるが、これは、検索キーワードとは連動せずに、コンバージョンしそうなユーザーに対して配信される(判断のシグナルは公表されていない)。配信結果を見ながら最適化していく必要がある点にも注意してほしい。
なお、オーディエンスネットワークの特徴の1つに、ターゲティング機能の充実があります。北米ではLinkedInプロフィールを使ったターゲティングができますが、今後、日本でも実装予定です(粂野氏)
Microsoft 広告のトレンドを知ろう
続いて、粂野氏が注目しているトレンドを紹介していった。1つめは、配信面としてのNetflix 広告だ。外部にリンクできないが、将来的にはリンク機能が付くのではないかと期待しているという。
2つめは、Bingのチャット面にも広告が表示される仕様になったことだ。たとえば次図のように、チャットの内容に合わせ、太文字や注釈番号がついた文章にマウスオーバーすることで広告表示される。なかには、マッチするショッピング広告も表示される場合がある。
3つめは、日本でローンチされたばかりの「マルチメディア広告(MMA)」だ。画像、テキスト、CTA(Call To Action:行動喚起)がセットで表示される。「検索結果が左側に出て、右側にMMAが出るので、検索広告とセットで配信すれば画面をジャックするような配信もできるのでは?」と粂野氏は期待を語った。
Clarityを「仮説の検証」や「課題の発見」に使おう
最後に、無料で使えるユーザー行動分析ツール「Microsoft Clarity」が紹介された。アユダンテでは、「仮説の検証」と「課題の発見」を目的に使用しているという。
SEOでは、画面のレイアウト、導線、ナビゲーションの改善、ユーザー行動の分析に使っており、広告では、コンバージョン率の改善、LP(Landing Page)の分析に使っている。さらに、ユーザーの定性データを集めて、新しいユーザー層のあぶりだしを行っている。
Clarityの主な機能に、次の3つがある。
- ダッシュボード:セッション数、課題がある箇所などがわかる。
- ヒートマップツール:タップ、スクロール、エリア(より広い範囲でのタップ)などが可視化される。
- セッションレコーディング:1セッション中のユーザーの行動が録画される。スクロールやタップ、離脱などを確認できる。
セッションレコーディングでの録画内容を全部みるのは時間がかかりますが、新機能として、AI(copilot)がレコーディングされたユーザー行動を要約してくれるようになりました。さらにユーザー行動の理由を推測して、それに対する施策についても提案をしてくれます。AIの進化に伴い、提案、分析業務までしてくれるのではないかと期待しています(宮下氏)
Clarityを使ったサイト解析の実践例
実際の活用例として、アユダンテが提供する企業向けTwitterクライアント「つぶやきデスク」のサイトでの例が紹介された。
「仮説の検証」例
「つぶやきデスク」のサイトでは、グローバルメニューに「サービス」を設置し、クリックするとトップページに遷移させている。「サービス」という表記なので、ユーザーのなかにはサービスの説明ページに遷移すると考えて、トップページでも「サービス」をクリックする場合が多いのではないか、と仮説を立てた。
実際にトップページのエリアヒートマップを見ると、ページ全体のクリックのうち1.88%が「サービス」をクリックしていることがわかった。そこで、UXの改善のために削除を検討しているという。
「課題の発見」例
トップページ中のプランを解説するブロックでは、次図の赤枠で囲った箇所(「新規登録」のボタン)にのみリンクをはっていた。しかし、エリアヒートマップを見ると、ボタンよりも上のテキストがクリックされていることがわかった。
さらにセッションレコーディングを見ると、カーソルを動かしたあと、「価格詳細を見る」をクリックしていた。このことから、詳細を知りたいユーザーを迷わせるUIになっているという課題に気づいたという。
本講演ではBing検索、Microsoft広告、Clarityと盛りだくさんの内容が紹介され、Microsoftの最新情報がわかる内容だった。Microsoftのサービスは、デジタルマーケティングの世界で今後さらに注目が高まると予想される。いち早く試してみてほしい。
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