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Figma CPOが語る、AI時代のWebデザインの進化 「Config 2025」現地レポート(後編)

Figma主催のデザインカンファレンス「Config 2025」の現地レポート。Figma CPO 山下祐樹氏へインタビューを行った。

この記事は、前編・後編の2回に分けてお届けしている。前編では「Config 2025」で発表したFigmaの新機能4つについて紹介している。

デザインツール「Figma」が主催するカンファレンス「Config」。サンフランシスコからの現地レポート後編となる今回は、Figmaチーフ・プロダクト・オフィサー 山下祐樹氏へのインタビューをはじめ、「Config 2025」の様子を紹介する。

「アイデアからプロダクトまでの道のりを最短距離で」

Figmaチーフ・プロダクト・オフィサー 山下祐樹氏

――日本のWebクリエイターにぜひ使ってほしい機能は?

Webデザイナーであれば、やはり「Figma Sites(フィグマ・サイツ)」でしょう。すでにFigmaでWebサイトをデザインしている人なら、その延長で簡単に始められます。デザインは「アイデアをユーザーに届ける」こと。昔は「デザインしたらあとは開発に任せる」という手順を踏んでいましたが、今は「最後まで自分でコントロールしながら届けられる」ツールがあります。

共同作業では、アイデア1を深く掘り下げて、途中でうまくいかないと気づけば戻って、次にアイデア2を掘り下げ、また戻ってアイデア3へ……と「くり返し」に膨大な時間を取られることがあります。

「すべてのアイデアを深く検証するには、もっと素早く、現実に近い形でアイデアを視覚化できなければいけない」。そう考えて、今回の機能開発に取り組んできました。日本のデザインコミュニティの皆さんが、どんなフィードバックをくれるのか楽しみにしています。

――4機能の開発で特に課題だったことは?

デザインとコードは完全には一致しない点です。あるブラウザではきれいに見えても、別のブラウザでは崩れるなどです。ですから、それぞれのレイアウトを同時に比較しつつ作業できる機能をつけました。また、最大の課題は「どこまでAIに任せるか」「いつ、デザイナーに修正を促すか」の見極めでした。

多くのWebサイトはいまだに静的ですが、ユーザーはもっと動的な体験を求めています。ただ、それを作るスキルがないことも多い。そこで、デザインにコードを持ち込む「コードレイヤー」のような機能を追加しました。たとえばAPIと接続して実際のデータを表示させるといったことが、AIの支援により簡単にできるようになります。

――エンジニアとデザイナーの垣根は低くなっている?

Figmaでは、デザインと開発の両方に情熱を持つ人を多く採用しています。Figma Drawのデモに登壇したローラはデザインのバックグラウンドを持つエンジニア。近年は、デザイナーがコードを書けたり、エンジニアがデザインを理解できたりする傾向が強まっており、両者の距離は近づいています。AIの進化もそれを後押ししています。

――トランプ政権によるAI規制緩和の影響は?

政府の方針も多少影響しますが、それよりもAIそのものが進化しており、社会の受け止め方も変わっています。以前は「AIに仕事を奪われる」と恐れていたデザイナーも、今では「AIを使えば自分でもコードが書ける」とポジティブに捉えるようになっています。

Config参加者に聞く、Figma新機能の感想

ノーコードWeb プラットフォーム「​​Studio」プロダクトデザイナー 富浦咲野氏

今回の新機能では、私は「Figma Make」を一番使うと思います。当社でもFigmaを使ってデザインエディターを作っているのですが、Figma上のデザインデータやプロトタイプのみでは、操作感の検証が十分にできないことが多々あります。

ここ半年ぐらいはFigmaのデザインをベースにv0(ブイゼロ)やClaude(クロード)などのAIツールを活用し、実際の操作感の簡易的な検証を行っていましたが、Figma上でその一連のフローが完結するのであればうれしい。

Config参加は去年に続き2回目。ジャンルが違う機能が一気に4つも出るアップデートの規模、技術力に改めて驚いています。

「Config2025」サマリー

ブース出展・アクティビティがより充実

GitHubなど企業出展や、Figmaのメンバーへ質問できる「エキスパート・バー」などが賑わっていた。中でも長蛇の列だったのが、Google Designのブースだ。専用カメラで撮影した来場者のオーラを視覚化し、心理状態や個性を色で分析する「オーラ診断フォトサービス」で、なんと最大40分待ち!

Google Designのオーラ診断ブース

会場内には配信用ブースも用意されていた。アメリカを中心にした最新テックニュースなどを日本語リスナー向けに流す人気ポッドキャスト番組「オフトピック」も取材に訪れていた。

配信者ブースの設置は去年から

リーダー層向けセッションがより充実

3年前から始まったリーダー層に特化したセッション「リーダーシップ・コレクティブ」。今年は3階フロアを貸し切ってより多くのセッションが行われた。

対話型AI Claude(クロード)を開発するAnthropic社CPOによるセッション

多言語対応が進化

Figmaの韓国語とポルトガル語版がリリースされたばかり。Figmaユーザーの85%がアメリカ国外からということを考慮して、Config会場でも初めてAIによる逐次翻訳アプリ「Wordly」が導入された。テック系の単語などの日本語翻訳は精度がイマイチではあったが、今後ますます多言語対応の仕組みは必要となるだろう。

各セッションへの導線にはAI同時通訳サービスの案内

多様性への信念に影響なし

第二次トランプ政権が多様性排除の姿勢を打ち出してから初のConfig。影響が心配されたが、登壇者のジェンダー比に大きな後退は見られなかった。

プロダクト開発に関するセッションの中では、地元スタートアップ「Augmental」のCEO コーティン・シンガー氏​​が、手足が自由に動かせない人向けに舌でPC操作ができるデバイスを開発した背景をプレゼンした。インクルーシブなプロダクトデザインに取り組むライアン・ハドソン=ペラルタ氏が車椅子で現れ、実際に舌でFigmaを操作するデモを見せると大きな拍手が起きた。

舌で操作するハンズフリーマウスウェアの開発についてのプレゼン

観客を最も盛りあげたのは、NIKEスニーカーのNY限定モデルなどで大きな成功を収めた中国系移民2世デザイナーのジェフ・ステイプル氏だった。これは抜群のおもしろさなので、ぜひ説明抜きで動画を見てほしい。「多様な視点こそ、デザインを進化させる」というFigmaの強い信念が、今回のConfigからも感じられた。

5月14日は欧州で初のConfigをロンドンで実施

サンフランシスコConfigの閉幕から6日後、5月14日にはイギリス・ロンドンのExCeL LondonでもConfigが開催された。このイベントは、Figmaがヨーロッパで初めて開催した対面型カンファレンスとなり、約2,500名以上​​が参加した。

Config LONDONの会場

開発担当者が各新機能をガイドする「オフィスアワー」開催

新機能を具体的にどう操作するかFigmaスタッフのガイドで体感できる「オフィスアワー」(使用言語は英語のみ)が6月24日まで開催中だ。残念ながら現地時間9時=日本時間午前2時〜なので、リアルタイム参加は難しいかもしれないが、登録しておけばアーカイブも利用できる。
詳細・登録はこちらから。

8,500人が世界中から集まった「Config 2025」最終日のハッピアワー
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