初代編集長ブログ―安田英久

Googleサーチウィキは検索結果カスタマイズツールじゃない。ただのメモだ

グーグルが日本語インターフェイスでもサーチウィキの機能を追加した……単なるメモツールだ。
Web担のなかの人

5月7日にグーグルが日本語インターフェイスでもサーチウィキの機能を追加した。「検索結果をカスタマイズできる」「順位を変更できる」などと言われているが、大きな間違いだ。あれは、単なるメモツールなのだから。

サーチウィキとは?

まず、サーチウィキ(SearchWiki)とは何かを簡単に解説しておこう。グーグルアカウントにログインした状態でグーグルでウェブ検索をすると、検索結果ページ内で特定の検索結果に対して

  • 順位を上げたり下げたり
  • 消したり
  • コメントを残したり

でき、さらに、検索結果ページの最下部から

  • 独自のページを検索結果に追加したり
  • 他の人が加えた順位上げや消しの数を見たり
  • 他の人が書いたコメントを見たり
  • そのコメントが役に立ったかどうか評価したり

できる機能だ。

サーチウィキの表示例。赤丸で囲んだ部分がサーチウィキの機能。
検索結果ページの最下部にサーチウィキのその他の機能がある。「自分のサーチウィキ メモを見る」のリンクから、順位の上げ下げやコメントの一覧を表示できる。
「この検索のサーチウィキ メモをすべて表示」のリンクをクリックすると、他の人がどんなメモをしているかを確認できる。

サーチウィキで検索結果が大きく変わる?

これだけを見ると、「究極のパーソナライズだ」「SEOは意味がない」と考える人もいるかもしれないが、決してそうではない。理由は次のとおり。

  • サーチウィキが有効なのはグーグルアカウントでログインしている人だけ
  • サーチウィキで加えた変更内容は自分にしか反映されない

つまり、これは検索結果をカスタマイズしたり、特定のページの順位を変更したりするツールではない。単なる「探した情報を後から参照するためのメモ」なのだ。

「前に見たあのページ」をメモするためのインターフェイス

自分が検索をした場合のアクションを考えてみてほしい。後から情報を参照する可能性がある場合には、検索結果から見つけた、良さそうなページのURLをテキストに書いておいたりブックマークしたりするだろう。場合によっては、そのページの本文の一部をブックマークのコメントに入れておいたりtwitterなどのマイクロブログで書いておいたりするだろう。

サーチウィキとは、そういった行為をシンプルに行えるようにしたものだ。

つまり、「検索で見つけたあのページ」を後から見直す場合にも、最初にしたのと同じ「ググる」という行為で透過的に行えるようにしたメモツールに過ぎないのだ(そうすればまたアドワーズを見てもらえるし)。そして、そのためのインターフェイスとしてグーグルが最適だと考えたのが「検索結果を自分に合った形にカスタマイズしておく」なのだ。

もしかしたら、どうも人気がないらしいGoogleノートブックで実現しようとしていたコンセプトを、検索結果をキーにして、もっと受け入れられやすい形で実装してみたものなのかもしれない。

グーグルは公式ブログで「検索結果表示をカスタマイズできるようになりました」のように書いているが、そのとらえ方では、サーチウィキの本質を逃してしまうのだ。

将来はSEOに影響があるかも

とはいえ、サーチウィキがSEOにまったく関係ないわけではない。渡辺隆広氏がSEMリサーチで次のように書いているように、将来、サーチウィキでの評価が検索結果での順位決定アルゴリズムに組み込まれる可能性はゼロではない。

なお、Googleプロダクトマネージャー・Cedric Dupont氏は、サーチウィキのユーザデータをシグナルとして見ていること、可能性は否定しないと発言していますので、現在はともかく将来的にサーチウィキの変更が他ユーザに適用されるかどうかはわかりません。

http://www.sem-r.com/seo/20090507124252.html

しかし、同記事で続いて渡辺氏も書いているように、そうなったとしても、あくまでも数多くの評価項目の1つとして参考にされるだけだろう。グーグルアカウントを大量に取得して自分のページをサーチウィキでアゲまくったり、ライバルのページを消しまくったりするようなSEOスパムが可能になることは、あり得ないだろう。

改めて強調しておこう。「自分のサーチウィキ メモを見る」というリンクテキストでわかるように、サーチウィキは、検索結果をカスタマイズしたり順位を変更したりするツールではない。単なる自分用メモを検索結果に残せるだけのツールだ。

この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト 上に再掲したものです。

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