BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

『More Joel on Software』/プログラマでなくとも読んでおきたい開発者注目のブログ選集【書評】

米国の開発者注目ブログJoel on Softwareの書籍第2弾。開発者以外の人にも有益な内容が詰まっている
ブックレビュー

BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

『More Joel on Software』

評者:斉藤 彰男(編集者、システム・エンジニア)

開発者注目のブログ「Joel on Software」の第2選集
ソフトウェアにかかわるさまざまな職種の人たちに有用な内容

『More Joel on Software』の書籍画像
  • ジョエル・スポルスキー 著、青木 靖 訳
  • ISBN: 978-4-7981-1892-5
  • 定価:2,800円+税
  • 翔泳社

ブログ、SNS、Q&AサイトといったWebコンテンツに掲載された記事をまとめて書籍として出版するケースをときどき目にする。ブラウザでアクセスさえすれば見ることができるコンテンツを、そのまま書籍にして、はたしてビジネスが成立するのだろうか? 出版社はそれなりの目論見があって出版するのだろうが、何がそれを可能にするのかは、なかなか興味深い。

本書もそのような一冊で、米国のブログサイト「Joel on Software」に掲載された記事のうち、2004年に出版された書籍『Joel on Software』(同名の邦訳は2005年にオーム社から出版)以降に書かれた記事を中心に集めた“第2選集”『More Joel on Software』の邦訳である。

著者のジョエル・スポルスキー氏は、マイクロソフト社でExcel Basic(後にVisual Basic for Applications:VBAと呼ばれるようになった)を開発したあと、ニューヨークに移り、2000年9月に自分の会社「Fog Creek Software」を設立した。ブログ「Joel on Software」を始めたのは2000年初頭のことで、ソフトウェア開発やマネジメント、ビジネス、インターネットといったさまざまな分野について執筆し、優れた文章表現力と、それを支える豊富なテクノロジーの知識、ユーモアのセンスなどが相まって、多くの読者を獲得。世界で最も人気のある開発者向けWebサイトの1つとなり、記事の一部は日本語にも翻訳されて掲載されている。

さて、第2選集である本書では、「マネジメント」「プログラマを目指す人へのアドバイス」「デザインの力」「大規模プロジェクトの管理」「プログラミングのアドバイス」「ソフトウェアビジネスを始める」「ソフトウェア会社の運営」「ソフトウェアのリリース」「ソフトウェアの改訂」の9部構成で、計36本の記事が掲載されている。これらのタイトルからも想像できるように、本書は開発者のみならず、ソフトウェアビジネスにかかわるさまざまな職種の人にとって有用な内容となっている。

なかでも評者がおもしろく読めた記事は、「はじめてのBillGレビューのこと」(第1部・第1章)。この記事では、ビル・ゲイツ氏がExcel Basicの機能のレビューを行ったときの様子が描かれているが、24時間前に送られてきた500ページもの仕様書を丹念に読み込み、欄外に書き込みをするという真摯さ、とりわけ難しい質問をして相手の準備の度合いを推し量る、といったエピソードが語られていて、ビル・ゲイツ氏の人となりを知ることができる。

また、「選択肢=頭痛」(第3部・第14章)では、Windows Vistaの「オフ」ボタンのことが取り上げられている。誰もが体験する戸惑いを題材にして、近頃のユーザーインターフェイスデザインのあり方に疑問を投げかけている。Vistaでは終了するための「電源」アイコンと「鍵」アイコンが用意されている(筆者も初めてWindows Vistaを使ったときに戸惑った)。メニューやハードとしての電源ボタン、ノートを閉じるなどの選択肢を含めると、なんと15の方法があると指摘する。これは「多くの選択肢は人を幸せにするという誤解に基づいており、私たちはこのことを真剣に考え直す必要がある」と語る。

他にも、Webブラウザの互換性について語っている「火星人のヘッドセット」(第4部・第17章)、ソフトウェアにおけるソーシャルインターフェイスデザインの重要性について語っている「ユーザビリティがすべてではない」(第3部・第15章)など、多くの記事を納得しながら読むことができた。

まずは、日本語翻訳サイトにアクセスして、「Joel on Software」の世界に浸ってみてはいかがだろうか。評者にとっては、ブログで読める記事があるにしても、本書はいつもそばに置いておきたい書籍である。

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