モバイルファーストとマルチデバイス対応: オートノミー22回目のユーザー会に潜入!
オートノミー株式会社は、同社のユーザー企業やパートナー企業を集めてのユーザー会を11月30日にグランドハイアット東京で開催した。日本でも有数の企業が参加し、「モバイルファースト」や「マルチデバイス」「マルチリンガル」といったテーマで情報共有が行われたこのユーザー会に潜入してきたので、様子をレポートする。
オートノミーのユーザー会は、CMS「TeamSite」や自動最適化システム「Optimost」、そして意味ベースマーケティングシステム「IDOL」といった同社のプロモート(Promote)事業部門の製品を利用する企業などを対象に開催しているもの。
同社はインターウォーブン時代から継続してユーザー会を開催しており、今回の「秋のユーザー会」は通算で22回目のユーザー会となる。少数の顧客との食事会から始まったユーザー会は同社の成長とともに規模が大きくなり、今回は95名が参加する大規模なものとなった。
ユーザー会ではまず同社代表の熊代氏による挨拶と、2011年の振り返りと近況の報告が行われた。2011年は、6月にアイロンマウンテン社デジタル部門を同社が買収し、10月にはヒューレット・パッカード社(HP社)に同社が買収されるなど、大きな動きがあったという。
HP社による買収に関しては、まずは米国側での統合を進めており、当面はHP社の業務系ソフトウェア事業を進めるなかで、オートノミーは引き続き同社の製品を提供していくとのこと。
国内の体制に関してはさらなる拡大を予定しており、営業・開発・サポートを含め現在の1.6倍~2倍の人員へと規模を大きくする予定だということが伝えられた。
また熊代氏は、2011年11月にはガートナー社のWCM分野のベンダー比較レポートで同社の製品がリーダークラスでも上位の評価を獲得したことを報告した。
モバイルファースト(基調講演)
続いて、株式会社コンセントの長谷川氏による基調講演が行われた。
テーマは「モバイルファーストの時代」。
長谷川氏は、「モバイルファースト」という言葉が使われるようになっているが、これは「単にスマートフォンなどのモバイルに対応することではなく、考え方である」としたうえで、いくつかの「モバイル先行企画」の例を挙げ、さらにグーグルやアドビといった企業で、プログラマーがモバイル版を先に考えて進めるようになっていることを解説。
モバイル(スマートフォン)でテスト的にまず何かを進め、そこで培った知見をPCのインターフェイスに応用するような、プロダクトのライフサイクルがまずモバイルから入る流れ、モバイルから企画を始める流れを「モバイルファースト」と呼んでいることを解説した。
そのうえで、モバイルファーストの考え方を理解するポイントとして次の3点を挙げ、それぞれについて解説していった。
- モバイル端末の普及による可能性
- モバイル端末の制約から生まれる選択と集中
- 新しい技術による革新
特に「モバイル端末の制約から生まれる選択と集中」の要素は、わかりやすくPC向けサイトにも適用できるポイントだろう。
スマートフォンを始めとするモバイル端末の画面は小さく通信の速度も遅いという「制約」がある。そのため、必然的にサイトで何を提供するか、何を表現するかを、「選択して大切なものに集中」することになるのだ。
その過程で「優先度は何なのか」「ユーザーに伝えるべきものは何なのか」をしっかりと考えるようになり、結果としてコアコンピタンスやコアメッセージをPC向けサイトにも反映させられるようになっていくというのだ。
長谷川氏は、その他のポイントについても具体的に例を挙げ、今と近い将来とその先に対する説明によって、示唆に富む充実した基調講演を展開していった。
これまでのWebにおいてユーザーは、目的に応じてキーワードを考えて検索し、さらに場合によってはサイト内で目的のページへとサイト内のメニューから移動するのが一般的だった。しかし長谷川氏は、iPhoneの音声インターフェイス「Siri」のような新しい技術によってより利用者視点に立ったサービス連携が進んでいくことを前提に、今後Webコンテンツは、「ユーザーに情報を探してもらう」場から「状況に合わせたコンテンツを提供する」場へ、つまり「ページ」ではなく「文脈を持った情報の提供」へと変わっていくとし、「モバイルファーストは、コンテンツファーストでもある」と締めくくった。
続いてのセッションでは、「オートノミー製品の最新動向」として、同社の坂本氏が主力のコンテンツ管理システム「TeamSite」の最新版に関する情報を、菅原氏が新しいマルチチャンネル最適化サービス「Autonomy MCO」の情報を提供した。
これらの内容に関しては9月の発表時の情報がWeb担にも掲載されているので、そちらを参照してほしい。
マルチデバイスの時代にコーポレートサイトをどうするか?
(パネルディスカッション)
ユーザー会前半の最後のセッションは、パネルディスカッション。「スマホ、タブレット、セットトップ・ボックス……。マルチデバイスの時代にコーポレートサイトをどうするか?」というテーマに対して、花王株式会社の田中氏、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の増井氏、全日空システム企画株式会社の大場氏をパネラーに迎え、三菱電機株式会社の粕谷氏がモデレーターとして話を展開した。
セッションでは、パネラー・モデレータ計4社が「マルチデバイス対応」「マルチランゲージ対応」について、どう考え、いつ、どのように対応していったか、または対応できておらず今後しなければいけないと考えているかといったことが生々しく語られた。
キヤノンと三菱電機は主にB2B系の商材、花王はB2Cの一般消費財、全日空はB2Cということで、各社それぞれ現状のスマートフォンからのアクセス比率も違えばユーザー行動も違い、それぞれ「PC」「スマートフォン」「ケータイ」のマルチデバイス対応の考え方や状況が異なることが、各社の説明から明らかになった。
パネルディスカッションの内容をすべてお伝えすることはできないが、興味深かったポイントを2点ほど紹介しておこう。
1点は、「マルチデバイス対応」といってもシステム面とコンテンツ面を分けて考える必要があるということ。
マルチデバイス対応をシステム化する場合、コンテンツ管理システムやテンプレートをどう作るかといった点に関心が集まりがちだが、実際にはサイトのコンテンツそれぞれがモバイル対応する必要があるのか、どうモバイル対応していくべきか、システムとコンテンツをそれぞれどこまで一元化してどこまで個別対応するか、といった点まで考慮する必要があるというのだ。
また、コンテンツを作成するのはWeb主管部署ではなく各事業部の担当者だということも忘れてはいけない。コンテンツ作成・CMS投入・確認・承認といったワークフローも含めて考えるべきであり、マルチデバイス対応することによってWeb専任ではない人の確認作業の負荷が不必要に大きくなってしまわないように調整するのもWeb担当者の仕事だという意見が印象的だった。
もう1点は、モバイル環境でのコーポレートサイト利用という文脈(コンテキスト)を、サイト運営側から考えて新しく作っていくべきだということ。
コーポレートサイトのマルチデバイス対応という側面で考えると、ユーザーの自然な情報接触行動に任せているだけでは、スマートフォンを使ってコーポレートサイトを閲覧する状況は、訪問先の住所や地図を確認する程度に留まる可能性が高い。しかし、サイトを作る側つまり企業側から、よりユーザーがスマートフォンでもアクセスするようになる仕掛けやコンテキストを作っていけば、コーポレートサイトのモバイル環境での利用は変わっていくはずだということだ。
そうした「出し手側によるコンテキストを作る」例としては、ソーシャルメディアを絡めたコンテンツをスマートフォンに最適化して提供することで、これまで得られなかったエンドユーザーのアクセスを創り出すことができ、将来の購買に向けたエンゲージメントを構築した事例などが紹介された。
前半を終えたユーザー会は、場を懇親会会場に移し、オートノミー社の製品を利用しているユーザー企業や、その導入を支援するパートナー企業の人たちが、グランドハイアット東京の料理に舌鼓をうちながらコミュニケーションを深めた。
一般的な情報セミナーのような形をとりながらも、そこで語られる内容に、同じ製品を利用してサイトを構築・運用している人達に共通する情報やヒントを交えながら展開され、さらに個別に懇親会で情報交換が行われる、充実したユーザー会だった。
- オートノミー株式会社
→ http://promote.autonomy.co.jp(Promote製品サイト)
→ http://www.autonomy.co.jp/(企業サイト)
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