グラフィックデザイナーが力を発揮できる環境が整いつつある
グラフィックデザイナーが力を発揮できる環境が整いつつある
続いてのセッションは「デザイナーだからこそ活用したいCMSの魅力と実力」と題し、国産のCMS専業メーカーであるミックスネットワーク 布施貴規氏が講演。
布施氏はコピーライター出身で、紙、テレビCM、Webなどさまざまな媒体でディレクター、プロデューサーとして活躍してきたキャリアの持ち主。「Webの世界でのグラフィックデザインの可能性」といったことをテーマに、自らの経験を踏まえながら刺激に満ちた講演を行った。
まず布施氏は最近のWebデザインの傾向について、次のような問題をシビアに提起した。
Webデザインの現場の方に不評を買うかもしれませんが、提案いただく立場からあえて指摘させてもらうと、最近、動線設計やユーザーインターフェイス(UI)が、ルールのように均一化されたサイトが目立っています。提案を受けると、10社中8~9社は、同じようなワイヤーフレーム。“使いやすい”という魔法の言葉で均一化を進め、デザインの差別化がなくなっているのです。
情報設計の部分だけに注力し、使いやすいけれども楽しい部分がない。そして肝心の情報も、ニュースやトピックス程度しか更新されない。キャンペーンサイト以外の多くの企業サイトは、ユーザーの記憶に残すという「アド(広告メッセージ)的な要素」を欠いているのではないか。このように布施氏は話した。
そして、この使いやすさ偏重とも言える状況に陥った背景として布施氏が指摘するのが、優秀なグラフィックデザイナーが不足しているのではないか、ということだ。Web黎明期の90年代後半、グラフィックデザイナーは技術的なハードルの高さや、デザイン上の制約からWebを敬遠し、紙媒体など従来の領域にとどまってしまった。その結果、システム寄りの制作者によるロジカルな情報設計が主流になり、デザインの均一化が進んでしまったのではないか、というのだ。
本当にクライアントが求めているのは、価値ある情報が載っていたり、見ていて楽しかったりするなど、使いやすさだけでなくUX(ユーザーエクスペリエンス)まで高いレベルで提供できるサイトです。そしてUXを高め、差別化をするうえで重要なポイントになるのがデザインなのです。グラフィックデザイナーの方には、これまで磨いてきたデザインの力を生かして、Webの世界に新風を吹き込んでほしいと思っています。
布施氏によれば、最近のWebの世界では、グラフィックデザイナーが自らの力を最大限発揮できる環境が整いつつあるという。その要因は2つあり、1つはセッション1のメインテーマとなったクラウドフォントの普及、そしてもう1つが、扱いやすく高機能なCMSの存在だ。
CSSやHTMLをサポートしてくれるCMSを利用すれば、デザイナーは情報設計とデザインに集中できます。最近、リーンスタートアップ(ムダのない開発や起業の方法論)という言葉をよく聞きます。HTMLやCSSの知識は必要ですが、難しい技術はあとで学べばいい。まずはCMSをうまく利用して、これまでに培ってきたデザイン力を発揮することから始めてみてもいいと思います。
たとえば、ミックスネットワークのCMS「SITE PUBLIS 3」では、HTMLやCSSを一切意識しないでサイトを制作できるようになっている。サイトの構成要素をブロックと呼ばれるパーツにし、それらを組み合わせてWebを制作できるからだ。デバイスごとの表示・非表示もブロックごとに管理できるため、マルチデバイスへの対応も一元的に可能だ。当然ながら簡単に作れるということは、サイトの改善作業の負荷も低い。PDCAを繰り返して情報の鮮度と有効性を保っていくことで、徐々にサイトの価値を高められる。
クラウドフォントもタグを貼り付けるだけで簡単に表示できる。しかも、CMSの編集画面上にもクラウドフォントが反映されるので、コンテンツ担当者も、見た目の美しさを確認しながらコンテンツを入力したり編集したりできる。
グラフィックデザイナーが持っている、自由自在にフォントを扱えるスキルは、今後のWebデザインの世界では技術面をカバーする強力な武器になり得る。「そのフォントのスキルを生かして、リーンスタートアップも実践できる
」と布施氏は、始めてみることの重要性を改めて強調した。
iPadがわかりやすい例ですが、技術というより思想やデザインで、業界が大きく変わるケースがあります。Webの世界も技術だけがすべてではない。みなさんが持つデザインの力で、Webの将来を変えていってほしい。
最後に布施氏はこのようにエールを送り、講演を終えた。
クラウドフォント活用に問われる、デザイナーとしてのセンス
最後のセッションでは、これまでに登壇した濱田氏と布施氏に、モリサワの高桑剛氏が加わり、「クラウドフォントとCMSでWebデザインの未来を拓く」と題したパネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッションの冒頭では、高桑氏がフォントの歴史を簡単に説明。モリサワのフォント配信サービスであるTypeSquareについては、「我々が開発してきた書体をWebの世界で使っていただける環境が、ようやく整ってきた。将来的にWebだけでなく、インターネット上のさまざまなデバイスに配信することを目指して“クラウドフォント”と呼んでいる
」と話した。
続けて、クラウドフォントをすでに利用している会場参加者の声も交えながら、ディスカッションへと移っていく。まず、司会者から、セミナーを振り返り、改めてクラウドフォントのメリットとデメリットは何かと問われた。これに対しては、濱田氏が次のように説明した。
一番のメリットは手軽に使えて導入リスクも低いこと。一度使い始めたら、もとのデバイスフォントには戻れないと思う。
また現場では、今まで本文や見出しのフォントについては妥協せざるを得なかった。しかし優れたデザインのサイトなどを見ると、見出しなどにクラウドフォントが使われ始めている。
今年から来年にかけて、和文フォントがクラウドフォントにどんどん置き換わっていくだろう(濱田氏)。
次に、CMSの世界でフォントはどのように考えられているかと質問され、布施氏が次のように答えた。
今は残念ながら、クライアントからクラウドフォントを入れてほしいと要望される状況には至っていない。しかし逆に言えば、クライアントに対して新しいことを提案できる大きなチャンス。テキストなので軽く、検索エンジンとの親和性も高い。コスト的にも画像を作るのと差がなく、デザインセンスも発揮できる。クライアントの立場でいえば、そういう新しい提案ができる会社と組みたいはず(布施氏)。
では、実際に提案される企業は、どのようなイメージをクラウドフォントに対して持っているのだろうか。これについては、濱田氏が次のように話した。
お客さんによって、新しいデザインの受け入れ幅はかなり違う。受け入れてくれるお客さんをつかまえていく能力も、新しいデザインに取り組むには必要。さまざまな技術やCMS、クラウドフォントを組み合わせて、デザインの均一化を打破していきたい(濱田氏)。
クラウドフォントの活用については、会場参加者から「TypeSquareの期間限定キャンペーンを利用し、何千ページかに実際に使った。デバイスフォントに比べて若干重い感じも受けたが、CSSだけでフォントを表記でき、画像を作る手間をかなり省けた」との声も聞かれた。また、導入理由については、「別のWebフォントを使っていたが、サーバーによってはすぐに使えないことがわかった。使い慣れたモリサワの書体がよかったので、TypeSquareを利用した」と話している。
こうした話を受け、フォント提供者側であるモリサワの高桑氏には、同社クラウドフォントの利用動向について、質問が投げかけられた。
使用フォントのランキングとして特徴的なのは、「UD新ゴ」をはじめとするユニバーサルデザイン書体がよく使われている点です。見出し向きのフォントがよく使われると想定していたが、実際には本文に使われている傾向が強いのではないか(高桑氏)。
また、クラウドフォント活用のハードルは高くないのかと質問されると、布施氏と濱田氏が次のように説明した。
技術的なハードルはまったくない。むしろハードルになるのは、タイポグラフィの知識やデザインのセンス。美しいフォントを使って、美しいデザインをどう実現するのか。読みやすいページをどう作るのか。こうしたことは今までのWebにはなかった発想になる(布施氏)。
CMSのように便利なツールによって、従来のWebデザイン業務の一部が置き換えられることはあるかもしれない。しかしデザインやディレクション、マネジメントといった部分は、プロフェッショナルであれば置き換えられることはない。そのあたりで勝負をして、CMSとクラウドフォントをうまく使いこなし、制作に携わっていけるのではないか(濱田氏)。
最後に、本セッションのテーマである「クラウドフォントとCMSでWebデザインの未来を拓く」について、それぞれの視点で一言ずつ述べられた。
CMSとクラウドフォントは非常に相性が良いので、相乗的に広がってくれることを期待している。フォントメーカーの立場から申し上げれば、膨大な書体のなかから適切な書体を選び、使っていくにはかなりのスキルが必要になる。いくらでも使えるからと、むやみに書体を用いるとデザインを損なってしまう。Webサイトに合った書体をチョイスしてほしい(高桑氏)。
クラウドフォントは、サイト訪問者のコンピュータに入っていない書体でも自由に使えるのが面白い。ありきたりのデザインが増えていると言われるなか、クラウドフォントを用いれば、100ピクセルぐらいの大きな文字を使ったデザインも可能になる。日本でも海外のサイトのように知恵を絞ったデザインが、再来年あたりから見られるようになるのではないか(濱田氏)。
フォントを使ったデザインは、プログラミングよりもはるかに長い歴史の中で進化してきた。Webデザイナーが知らない知識がたくさんあるので、そういったスキルを生かして、クライアントに対する提案書類などもつくってみてほしい。
今後、デバイスが多様化するなかで、コンテンツを一元的に管理できるCMSの役割は、ますます重要になっていく。技術的な部分やマルチデバイス対応は、我々システム屋に任せていただき、デザイナーの皆さんはプログラムでは太刀打ちできないアイデアや発想力で勝負をしてほしい(布施氏)。
「PUBLIS Cloud Platform」提供開始
ミックスネットワークは、クラウド利用の小~中規模向けWebサイト構築・運営プラットフォーム「PUBLIS Cloud Platform(パブリス・クラウド・プラットフォーム)」(以下、PCP)の提供を、2012年8月30日(木)に開始した。
「PCP」は、高機能CMS「SITE PUBLIS」シリーズの最大の特長である、ブロック部品を組み合わせてWebサイトの編集を行う「ブロック方式」を採用しており、スマートフォン、モバイル、タブレット、PC等のマルチデバイスに配信するコンテンツを最適化させる「SITE PUBLIS」シリーズの機能はそのままに、さらにクラウドならではの利便性を兼ね備えた新しいサービスだ。
ドラッグ&ドロップによる直感的な編集作業や、PCサイトとスマートフォンサイトをPCP上で一元管理できるなど、Webサイトのスマートフォン対応をよりスムーズにそして高次元に実現できる。また、クラウドならではの利便性で、今まで高機能CMSの導入が難しかった期間限定のキャンペーンサイトなどにも導入が見込める。月額費用も9,800円~となっており、「SITE PUBLIS」の圧倒的な高機能をこの低価格で利用できることも大きな魅力だ。
- リリースを記念してさらにお得なキャンペーンを実施
通常29,800円の初期費用が無料になるなど、お得なキャンペーンを実施する。
- PCPについてわかりやすく解説する「特別無料セミナー」を開催
PCPの導入を検討されている方、パートナー契約に興味がある方向けに、無料セミナーを開催する。
- 東京:2012年9月7日(金)
- 東京:2012年9月14日(金)
- 東京:2012年9月20日(木) 等
詳しくはこちらへ → http://www.sitepublis.net/seminar.html
代理店、制作会社、デザイナーの立場からは、新サービス「PCP」を活用することでさらに自由度の高いデザイン、スムーズな構築、よりアクティブな運営を実現できるだろう。
「SITE PUBLIS」シリーズは、PC、モバイル(フィーチャーフォン)、スマートフォン、タブレットPCまで、マルチデバイス対応のWebサイト構築・運営プラットフォーム。
今後小~中規模Webサイト向けの「PUBLIS Cloud Platform(PCP)」と、大規模Webサイト向けの「PUBLIS Enterprise Platform(PEP)」の新ラインナップにより、CMSを超えた「Webサイト構築・運営プラットフォーム」の提供を行う。
Webサイト訪問者が利用する端末に合わせた「最適なプロモーション」を実現する。
株式会社ミックスネットワーク
- 設立:1997年8月7日
- 代表者:代表取締役 吉川 隆二
- 住所:【東京本社】東京都千代田区神田神保町1-11-1 DSM神保町ビル 4F
- 【福岡本社】福岡市博多区博多駅東2-6-26 安川産業ビル 8F
- 【関西支社】大阪市淀川区宮原5-1-18 新大阪サンアールセンタービル10F
- 【沖縄センター】沖縄県那覇市久茂地2-8-1 沖縄第27大京ビル 6F
- URL:http://www.micsnet.co.jp/
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