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コールセンター業界に現れた黒船「Amazon Connect」が生む“圧倒的な電話体験”

“コールセンター業界の黒船”と言われる「Amazon Connect」がもたらす顧客体験の変化は何か?

企業が持つ顧客接点の中で、最前線といっても過言ではないコールセンター。

そのコールセンター業界に、昨年「Amazon Connect」という黒船がアメリカからやってきました。

一部では「圧倒的破壊力」ともささやかれるAmazon Connectは、どうして日本において影響力があるのか。そして、コールセンターや電話の世界がこうしたテクノロジーと融合することで、どんな新しいイノベーションにつながっていくのか。

そこの疑問に答えていただくべく、株式会社モビルス 代表取締役社長 石井智宏さんに寄稿いただきました。

石井 智宏
1998年 早稲田大学卒業。
2009年 ペンシルバニア大学ウォートンMBA取得。
ソニー株式会社にて11年間ラテンアメリカ市場におけるセールスマーケティングに従事。国内投資ファンドにて執行役員に。ソニー元社長兼会長の出井 伸之氏が設立したクオンタムリーブ株式会社のエグゼクティブパートナーとして、多数の日本企業の海外進出を実行支援。2014年 モビルス株式会社に参画、代表取締役社長に就任。(現役)

コールセンターの至上命題は「絶対に繋がり途切れないこと」

コールセンターとは、その名の通り「電話」のセンターです。コールセンターではさまざまなKPIが設けられていますが、中でも消費者からのコールに対してどれだけ回答できたかという「対応数」は基本中の基本。

ネット回線を用いる電話も普及してきていますが、ことコールセンターにおいては、「絶対に繋がる」かつ「絶対に途切れない」ことが大鉄則です。こうした理由から、不安定なネット回線よりもまだまだ有線での電話回線の方が採用されてきました。

有線の「絶対安全」なコールセンターを構築するのには、初期費用で数千万円(場合によっては億単位)。加えてメンテナンスなどのランニングコストや通話料といった費用が脈々とかかり続けていました。機能を追加するのにも、その都度開発をする必要があり、それにもまた費用がかかってきます。

ソフトウェア製品も、ハードウェア製品の安全性に負けまいと品質改善をし続けていますが、コールセンターという場では大企業からの採用はなかなか伸びません。そうした背景があり、電話はハードウェアの世界観からなかなか抜け出せず、ほかのITテクノロジーとの融合も一歩遅れていました。

有線の「絶対安全思考」を覆すAmazon Connectの衝撃

そこで現れたのがAmazon Connectです。

AmazonはすでにAWS(Amazon Web Service)としてITサービスのプラットフォームを提供し、安全面でも圧倒的な信頼を得ていました。そんなAmazonが電話のプラットフォームを提供開始したことは、これまでの電話の安全性に対する認識をガラッと変えるものでした。

Amazon Connectは、コールセンターの機能をクラウド上に作ることができ、利用料は従量課金制です。機能としては、

  • 自動音声応答(IVR)などを使った複雑なシステム構築
  • その文言の編集
  • 通話を自動録音する機能

なども備えており、あらゆる点でコストや時間の節約につながります。

重厚長大なコールセンター構築に対して価格も安く、機能も充実し、安定性でもAWSの実績から信頼を得ている。日本のコールセンターは、これまでのコールセンターの在り方を覆す黒船を迎えたのです。

人件費が高騰する中、もしかするとコスト削減の打ち手として既存のコールセンターがクラウドにリプレイスされるかもしれません。もしくは、期間限定キャンペーンなど突発的に必要となるコールセンターの構築に使われるかもしれません。

Amazon Connectは、コールセンターがハードウェアの世界から抜け出し、さまざまなテクノロジーと連携するトリガーとしての役割を果たすことが期待されているのです。

電話×テクノロジーで変わるコールセンター

これまで云千万円とかかってきたコールセンターの構築が、Amazon Connectにより、安価に自分の手で可能になり、ほかのテクノロジーとの連携も可能になりました。どのような可能性があるか見てみましょう。

電話×翻訳機能・音声認識

  • 翻訳機能との連携
    海外との電話で、翻訳機能と連携させることにより、話者の言語が相手の国の言葉に相互に翻訳されて聞こえる。国籍の違う二人は自分たちの言語のまま、タイムラグなく通話することができます。海外にコールセンターを構えている企業は、オペレーターにネイティブレベルの日本語のスキルがなくても、製品の知識さえあれば日本の消費者の問い合わせ対応が可能になるかもしれません。
  • 音声認識
    電話をすると機械音声が問いかけます。それに応答するとその内容がテキスト化されてデータに保存。「お困りの点は?」「折り返し希望の時間帯は?」などとテキストを工夫すれば、混みあう時間帯のカスタマーサポートの一次受付になります。外国語でテキストを登録すれば、海外からの問い合わせの一次受付にもなり、手続きや申請に活用ができそうです。

    電話×音声AIチャットボット

    • インバウンド対応
      今までは「~~の場合は『1』を、~~の場合は『2』を」と、最後まで聞く必要があった音声ガイダンス。チャットボットが一次対応をすれば、「パスワードを忘れた」などとこちらが言えば回答が返ってくる、解決しない場合はオペレーターにつなぐ。といった対応が可能になります。もし民間でも普及すれば、しつこい営業や悪質な詐欺の電話などを追い払う仕組みにもなるかもしれません。
    • アウトバウンド対応
      クレジットカードの支払遅延に対して督促をする際、オペレーターが怒鳴られることも少なくないと聞きます。これを音声チャットボットにより自動的に電話をさせ、回答(支払予定日など)を顧客データに保存。テキスト化すれば検索が可能になります。話した内容を文字にして相手に送ることもできるでしょう。業務の効率化だけでなく、オペレーターのストレス軽減にもつながりそうですね。

    機械と電話で話すということは、電話をかける側にもメリットがあります。24時間365日稼働しているという点はもちろんですが、悩み、借金など、相手が「人間」だとかけづらいようなセンシティブな内容も、相手がロボットと分かっていれば気軽にかけられるかもしれません。

    このように電話にさまざまな技術を組み合わせることによって、新しい体験ができる可能性を秘めているのです。

    AIから電話がかかってくる時代はもうすぐそこまで来ている

    今年の5月に、Googleの開発者向け発表会であるGoogle I/O 2018が開催されました。そこでは、AIが自分の代わりに美容院やレストランの予約電話をしてくれるGoogle Duplexの発表があり、「AIがこんなに自然に電話ができるのか」と話題となりました。

    サービスの正式なリリースがいつになるかはまだ分かりませんが、これも電話の常識を覆すサービスに違いありません。

    このように、AIを始めとする電話と技術の組み合わせは確実におこなわれています。遠かれ近かれ、こうしたサービスから始まる大きなムーブメントは確実に起こるでしょう。

    日本は2020年にオリンピックの開催を控えています。それまでに、言語などのコミュニケーションの障壁をいかになくせるかが「おもてなしニッポン」の鍵になります。

    安定稼働という信頼を得たクラウド通話サービスから始まる、コールセンター、そして電話の革命を楽しみにしましょう。

    石井 智宏
    ソニー株式会社にて11年間ラテンアメリカ市場におけるセールスマーケティングに従事。国内投資ファンドにて執行役員に。ソニー元社長兼会長の出井 伸之氏が設立したクオンタムリーブ株式会社のエグゼクティブパートナーとして、多数の日本企業の海外進出を実行支援。2014年 モビルス株式会社に参画、代表取締役社長に就任。

    「AI:人工知能特化型メディア「Ledge.ai」」掲載のオリジナル版はこちらコールセンター業界に現れた黒船「Amazon Connect」が生む新しい電話体験 | Ledge.ai(レッジエーアイ)

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