一年半足らずで100万DL達成! CPIを1/6以下に改善したTwitter動画広告の勝ちパターンとは?
動画広告のクリエイティブの変更で、CPIが1/6以下になったというコスメのクチコミアプリの「LIPS」。
LIPS(リップス)はリリースされてから、1年半足らずで100万ダウンロードを突破。現役東大生のエンジニアが中心となってデータドリブンでプロダクト開発を進める一方、YouTuberや動画広告などを使ったマーケティングでダウンロード数獲得に貢献している。
今回は、AppBrewの中川亮さんとTwitter動画広告の製作から配信までを手掛けたCyberBullの佐藤典太さんと松延康平さんに詳しく話を聞いた(以下、発話は敬称略)。
YouTuberマーケティングが効いてアプリ無料ランキング1位に
――LIPSがリリースされたのが2017年1月。最初はどんな施策からスタートさせたのですか?
中川(AppBrew): 最初は、ターゲットユーザーと近いYouTuberに使ってもらって、LIPSを知ってもらうところから始めましたね。
――その効果はどの位だったんですか?
中川: めちゃくちゃCPI(コストパーインストール)もリテンションレート(ダウンロード後の継続率)も良かったですね。あと、YouTuberに使ってもらったことで、目標とするCPIやリテンションレートの一つの基準ができたことも良かったですね。
この施策の効果が現れた例として、2017年10月21日にアプリの無料の総合ランキングでLIPSが1位を獲得しました。
――無料総合1位はすごいですね。
中川: 「ダウンロード数・アクティブユーザー数共に伸びるポテンシャルがLIPSにはあるんだ」ということで、社内で運用型広告を使ってダウンロード数を伸ばしていくことが決まりました。
――そのとき、中川さんのミッションは何だったのですか?
中川: 僕が入社したのは2018年1月なんですが、半年で運用型広告を使って100万インストールすることがミッションでした。
ちなみに、LIPSはコスメのクチコミアプリなので、私の重要な指標は、「アクティブユーザー数」「リテンションレート」「CPI」です。ユニットエコノミクスの予測を立てるにも、この値が大事になってきますので。
――なるほど。運用型広告といっても、運用型広告の種類も、チャネルもたくさんありますよね。どう運用していったのですか?
中川: 時系列で追って説明します。
2018年1月/2月: プロダクトと相性の良いチャネルを見つける
運用型広告をLIPSでは実施したことがなかったので、まずはプロダクトと相性の良いチャネル(媒体社)探すために、複数のチャネルで運用をしました。リテンションやCPIを参考にしながらチャネルを絞っていきます。2018年3月/4月: チャネルでどれだけ伸ばせるかを知る
運用することで相性の良いチャネルがわかってきたので、次はどこまでリテンションレートを維持しつつ、ダウンロード数を最大化できるかを調べていきました。2018年5月/6月: 勝ちパターンを知ってCPIとリテンションレートを改善する
ユーザーに響く運用型広告の勝ちパターンがわかってきたので、そこにフォーカスして、CPIとリテンションレートが良くなるように動いていきました。
――相性が良かったチャネルとは?
中川: 実はTwitterの動画広告なんです。もっというとTwitter単体で運用するよりも、YouTuberのキャンペーンと併用しながら運用していく方が効果が高ったです。後はユーザーがLIPSを使う時間帯に合わせて、配信が強化できていると、より効果が高いです。
――LIPSはクチコミアプリですよね? 私の感覚だと「最初はバナー広告」から運用をスタートさせてしまいそうなんですが、静止画での広告運用は考えていました?
中川: 「コスメのクチコミアプリ」と言っても、使う人ユーザーにとってイメージするものは全く異なります。だからこそアプリをダウンロードした後のイメージを持っておいてもらいたかったので、静止画よりも動画を中心に考えていました。
- どんなアプリなのか
- どんな情報があるのか
- どんな機能があるのか
LIPSは多機能で、ユーザーがクチコミを投稿したり、人気コスメランキングを見たり、コスメの使い方を見たりできます。そういった使い方を動画で紹介して、アプリを理解してもらいたかったのです。
――ユーザーも納得したうえでダウンロードしているからリテンションも良いのでしょうね。
訴求軸を決めてクリエイティブを作って高速PDCAを回す
――動画広告を作るところについて詳しく聞いていきたいのですが、どう進めていったのですか?
中川: 私たちの会社はエンジニア中心の組織なので、データドリブンに意思決定をしています。なので、LIPS内のユーザー行動データ、たとえば次のようなデータを参考にしています。
- アクティブユーザー数の多い機能
- 滞在時間が長い機能
- 人気タブに表示されるCTRの高い投稿
こういったデータをもとに自分たちが持っている仮説に対してCyberBull(サイバーブル)さんと一緒に「どういう訴求軸で作っていくか?」を話し合いました。
――CyberBullの佐藤さんにお聞きします。訴求軸を決めるとはどういうことですか?
佐藤(CyberBull): 訴求軸とは動画広告を作るときの伝える内容の切り口ですね。中川さんからデータや仮説をもらうのですが、私たちも訴求軸を決めるにあたって、プロダクト理解を深めました。
――プロダクトの理解を深めるとは、どういうことでしょう?
佐藤: 具体的には、社内の女性陣に協力してもらってLIPSのアプリを実際に使ってもらいました。
使っていくと、ターゲット属性やユーザーの使われ方が見えてくるんです。そこで、プランナーやエディターなども含めたチームで打ち合わせをして、提案する訴求軸を決めます。最終的に中川さんと一緒に打ち合わせをしながら、4つの訴求軸を決めていきました。
決まった訴求軸から、クリエイティブを作っていきます。そこから枝分かれするようにPDCAをどんどん回していく感じですね。訴求軸がそもそも大きく違っていたら、元も子もないので、そこのすり合わせはしっかりと行います。
――効果の良かったクリエイティブとは?
佐藤: BeforeとAfterを比較すると、配信翌週にはCPIが1/3以下に、2か月後には1/6以下に改善したのです。
Beforeは、テキスト内容がカットごとに変わっていました。しかも、画面の切り替わるスピードが早いので、伝えたい要素がユーザーに伝わっていないのではないか、という仮説のもと、伝えたいテキストを1つに絞り、カットの尺を長くしたところ、すごいCPIが良くなりました。
――確かに、固定されている方がわかりやすいですね。
佐藤: クライアントさんは、「アレもやりたい、これもやりたい、こんな要素も入れたい」と言いがちなんですが、ユーザーさんには伝わらないんです。そもそもたくさんの情報を処理しきれませんから。だからシンプルなものが良いんですよね。
――勝ちパターン発見ですね。クリエイティブを作るうえで重要なポイントは?
松延(CyberBull): 動画広告の場合、まず重要なことは画角です。スマホを縦で見ることを前提に、画面占有率の高い1:1でクリエイティブを作って、PDCAを回していきます。
動画広告の場合、特に冒頭が重要です。僕らはアテンション(Attention)と言っていますが、3秒以内にユーザーの注目を集めるようにしています。
――構成について詳しく教えてください。
松延: アテンション部分では、たとえば、「テロップが下から出てくる」「画像が変化する」といったアクションを入れるように心がけています。あとは、引きの絵よりも、アップの絵の方がユーザーの目を止めてもらいやすいです。
佐藤: Twitter動画の特徴としては、動画の冒頭に人の顔が写っているとCTRが高くなる傾向があります。
10パターン前後の動画クリエイティブを作る
――クリエイティブのパターンって最初どのくらい作るんですか?
松延: 今回の場合だと、訴求軸を4つ決めていたので、その軸1つに対して、2~3パターン作ります。なので、全部で10パターンくらいになりますかね。
――そんなに? なぜそんなに量産できるのですか?
佐藤: そもそも動画の尺が長いものは作っていません。10秒とか15秒程度のものが中心です。そして、1つの動画に多くの要素を入れず、あくまでも訴求軸を1つに絞って作るので、実は機械的にできるんです。
たとえば、「ランキング機能」を訴求軸にしていたら、ランキング機能のメリットや良さをわかりやすく伝えることを優先して作ります。CTRが良いクリエイティブが見つかったら、それを横展開してきます。
――中川さんにお聞きしたいのですが、クリエイティブのチェックはどうしているのですか? パターンが多いとチェックも大変そうな気がします。
中川: LIPSではプロダクトのデザイナーがいるので、その人がチェックしています。しかし、常にデザイナーがチェックできるわけではありません。そのため、ロゴの世界観を守るために必要なことをガイドラインとして言語化してもらって、僕でもチェックできるようにしています。
最後に
――最後に皆さん一言ずつお願いします。
佐藤: さらに多くの人にLIPSを使ってもらえるように、クリエイティブの勝ちパターンを模索していきたいです。Twitterだけでなく他の媒体でもいろいろ試したいですし、ダウンロードを目的としたダイレクトだけでなく、認知を広げるプロモーションでも貢献出来たらと思っています。
松延: LIPSさんとの動画制作を通じて、「わかりやすい動画が当たる、好まれるんだ」ということが明確になって、事例としていいものが作れたなと思っています。佐藤も言っていますが、我々の制作チームにはダイレクトとプロモーションの2チームがあります。プロモーションでもお手伝いできたらいいですね。
中川: CyberBullさんのいいところは、単純に入札金額とかクリエイティブ改善だけにとどまらず、媒体の仕様変更とかもちゃんと新しい情報をアップデートしてくれるところです。しっかり媒体の仕様を把握した上で成果が出るように最適化を目指してくれるのは、ありがたいです。
まさに私たちも、ダイレクトを進めながら「ブランディング」を進めていきたいフェーズです。ブランディングを通じた獲得数の最大化も狙っているので、いずれそこも協力していただきたいです。
――ありがとうございました!
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