家具メーカーがバズって商品開発? Twitterをきっかけに大きな目玉焼きブランケットを作っちゃったセルタン
家具の製造メーカーというあまり表に出ない自社の魅力を学生に伝えるため、Twitterで採用アカウントを作った株式会社セルタン。
商品の紹介やプレゼント企画、Twitterで聞いた声から商品開発も行ってしまうという。
採用アカウント(@celutane01)ながら広報、営業、商品開発も行い、75000人以上のフォロワーを持つTwitterの中の人、八木健太郎氏と、たまたま取材日に帰国していたベトナムでFacebookアカウントを立ち上げた八木翔氏に話を伺った。(収録日: 2018年12月18日)
※採用アカウント担当は取材時点。現在は休止中。公式アカウント(@celutane00)
家具の製造メーカーという仕事の魅力を伝えるために始めたTwitter
――どういったきっかけでSNSを始めようと思ったんでしょうか?
八木(健): きっかけは新卒採用を任されたことでした。セルタンという会社は完全なる製造メーカーなので、我々の名前が世に出ることはありません。
当時から、弊社はおそらく国内でのソファー生産シェア16~17%を占めている日本最大のメーカーですが、学生のさんにはアピールできていないと思っていました。
じゃあその情報をどうやって伝えよう? と考えた結果、学生さんが普段情報を集めているツールを使おうと。
――なぜTwitterだったんでしょう?
八木(健): Twitterではもともと食パンの座椅子が商品単体で盛り上がる環境があったので、馴染みやすいかなと思って始めました。
フォロワーが増えたきっかけは偶然が重なったこと
――知名度が上がったきっかけはなんだったんでしょう?
八木(健): 最初は採用アカウントとして活動していたんですが、フォロワーが増えるきっかけは3回ほどありました。
1回目は「そらる」さんという、ニコニコ動画の人気アーティストのキャラクターの座椅子を、たまたま製造することになったのがきっかけでした。
その座椅子の製造過程をリアルタイムにTwitterで発信してみたんですが、そらるさんのフォロワーさんがとても盛り上がってくれて、ファンの方と我々が一緒に盛り上がるような環境が偶然できあがったんです。
そのときファンの方の一部がフォローしてくださったことによって、100人から500人くらいに増えました。そこから徐々に増えていったという感じです。
2017年6月にそらるさんとVillage Vanguardさんと一緒に作らせていただいた【はんぺん座椅子】の量産から出荷までをまとめたモーメントを作ってみました。
— ㈱セルタン採用チーム (@cellutane01) 2018年12月21日
かわいい。。
⚡️ 「#大量のはんぺんが攻めてくる感」https://t.co/eee0gyagC0
――2回目は何だったんでしょう?
八木(健): 2回目のきっかけは鳥です。ある鳥好きの方の家の軒先にツバメが巣を作って、そこからヒナが1羽落っこちてしまったんです。その方がヒナがまた落ちたら危ないからと、巣の下に弊社の食パン座椅子をクッションとして敷いてくれたツイートを偶然見けました。
それで、「使ってくださってありがとうございます。もしよろしければ新しい商品をお送りさせていただきます」という旨を個人的に送ったんですね。そしたらその方が一連のやりとりをツイートしてくださって。
――そこから広まったんですね。
八木(健): 鳥クラスタの方の輪がすごく強くて、一瞬で広がりました。それで、ツバメの話の翌日にはフォロワーが1,000人に。そこから、鳥関係の人に「鳥業界はいいぞ」と誘われ、セルタン採用アカウントも鳥クラスタの仲間入りになりました。
――3回目はなんですか?
八木(健): いつもお世話になっているフォロワーさんに「何かプレゼントをしたい」と思って始めたフォロワー1000人キャンペーンです。そのときはフォロワーが1,000人しかいなかったので、より多くの人に届けられるように10人に1人「目玉焼きブランケットS」が当たるイベントをやってみようとしたら、16000RTされてフォロワーがドドッと増えました。
そこからフォロワーの幅が広がり、バズるようなツイートもぽつぽつ出るようになりました。ただ、どのツイートも最初からフォローしてくださっていた方が広めてくれます。
フォロワーが増えても続けているプレゼント企画
――今はもうフォロワーが沢山いますし、10人に1人当たるプレゼント企画って大変ですよね?
八木(健): 大変です(笑)。3,366名の当選者がいたんですが。神奈川の拠点が主導でも、実際の製造は八木(翔)のいるベトナムの拠点でやっているんです。
八木(翔): 一生懸命作りました(笑)。
八木(健): このイベントを締めると数が決まるので、まずは生地から発注して、製造の人員を確保してという流れになります。梱包して送り状を貼るところまでは海外で行って、それを日本に送ってもらいます。いきなり3,000個も郵便局では送れないので、1週間に1,000枚ずつくらいを3週に分けて発送します。
実は普通の毛布と違って目玉焼きブランケットは表と裏の生地以外に3枚の生地でできているので、生地屋さんも大変です(笑)。
【10人に1人が当たる‼】#GirlsAward2018 #ガルアワ 出展記念‼#目玉焼きaward2018 実施中‼
— ㈱セルタン採用チーム (@cellutane01) 2018年9月15日
今回はinstagramでも重複してご参加頂けます!
◆応募方法:@cellutane01をフォロー&こちらのツイートをRTで完了
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目指せ10万RTで総額2480万円
インスタにも目玉焼き旋風を٩( 'ω' )و
――正直、プレゼント企画をやってから売り上げはどうですか?
八木(健): 赤字ですね。プレゼント企画後に外れて悲しい思いをされた人に対する救済措置として、感謝の気持ちも込めてブランケットの原価販売を行っています。そこで1,600~2,000枚ほど売れるんですが、もちろん利益は出ません。でも、3枚同時に購入していただけると運賃とかでちょっとだけ利益が出るんです。それをTwitterで言ってみたら購入する方の1割くらいは3枚以上買ってくださってビックリしました。
そのほかの商品でもセールを行っていて、そこではもちろん利益が出ます。一連の取り組み含めて赤字です(笑)。
プレゼント企画によって知名度が上がって、採用もうまくいくようになりますし。採用の費用で補填するという感じですね。
(ちなみに、原価販売なので一切の利益は出ないのですが、同じ送り先に3枚以上ご購入頂くと運賃で利益が出ます…いや、だから何だという訳ではないのですが…(*´ω`*)モジモジ) pic.twitter.com/6VmT0Jcmae
— ㈱セルタン採用チーム (@cellutane01) 2018年12月1日
――なんでずっと目玉焼きブランケットをプレゼントしているんでしょうか?
八木(健): Twitterって世界中で使われているツールですが、小さいクラスタの集まりだと思っています。他のクラスタと交流することってあまりないんです。そういったゆるいつながりのSNSの中に、目玉焼きブランケットという違うつながりをつくることによってクラスタ同士が繋がるのがおもしろいんです。ベトナムで目玉焼きブランケット持ってる人がいて、話ができたらおもしろいじゃないですか(笑)。
Twitterによる商品開発と営業活動
――Twitterから商品開発と話題になりましたが、実際はどんな経緯で商品開発したんでしょう?
八木(健): 目玉焼きブランケットのXLサイズは、「なんで本気で寝れるサイズがないんだ」という声からでした。我々としては、ひざ掛けサイズを作って、お昼寝できるくらいのサイズを作っておしまいのつもりだったんですけど……。生地や作りに関してはめちゃめちゃこだわっているので、暖かさや品質は保証できますが、「むしろ何で目玉焼きブランケットで本気で寝たいの!?」って感じでした(笑)。
皆さんが大きい目玉焼きが欲しいって言うからXLサイズを試作してみましたが、本当にこんなサイズを求めてますか?
— ㈱セルタン採用チーム (@cellutane01) 2017年10月26日
正気ですか?? pic.twitter.com/oBkDGii1hk
――Twitterによって商品開発したものはありますか?
八木(健): セルタン採用アカウントが鳥クラスタになったのを記念して、「鳥関係のものを作るので要望を教えてください」と発信したんです。そしたら、目玉焼きブランケットがあるならラグも欲しいと言ってくださった方がいました。黄身を追加できるようにとか、半熟の面と固焼きの面を分けてほしいという要望で、企画の絵まで書いてくださって開発をおこないました。生地も青島まで行って私が探しました!
――Twitterの延長で製品ができていくってすごいですね。
八木(健): SNS発生の商品はやっぱり個性的です。世の中大多数の人に売るものに目が行きがちですが、少数の人がとても好むものを作れるというのがSNSですね。
――目玉焼きの他にパンの商品も出していますよね。ヴィレッジヴァンガードのECで見かけましたが、これもSNS関係ですか?
八木(健): そうですね。目玉焼きブランケットのXLがバズって品薄になってしまったときがありました。そこで、いろいろな商品をセットにして「バズ袋」としてヴィレッジヴァンガードさんで販売してもらいました。
ヴィレッジヴァンガードさんに紹介されたことによって、ボツになっていたものが製品化されたこともあります。
あとはフォロワーさんが「ソファーやクッション作るならセルタンがいいよ!」って仕事を取ってきてくださったことも(笑)
人の輪に入り込んで、気が付いたら商品が売れるようになっていったという感じですね。採用アカウントなので売るためのアカウントではないんですが、売り上げにはつながっています。
コミュニケーションの取り方
――フォロワーが増えて大変なことは何でしょう。
八木(健): フォロワーが増えたことによって、フォロワーの種類が増えました。そうすると、ファンだけではなく、単なる懸賞として参加する人が増えたので気にしなければいけないことが出てきました。
人が少しでも嫌な思いをしない「おもしろいツイート」という線引きがとても難しいですね。私も何回か失敗をしてますし、回を重ねるごとにノウハウを身につけました。でもいろいろな方に配慮して投稿となると、どうしても更新頻度は下がってきてしまいますね。
――フォロワーとのコミュニケーションはどう取っていますか? 返信頻度など教えてください。
八木(健): たとえば、DMを送ってきてくるお客さんもとても多いです。プレゼント企画で、「当たったー!」と報告してくれる方がいるので。そういう人に対しては極力返信をしています。DMだと他の人が見る可能性も少ないと考えているので、喜んでDMを下さった方がもっと楽しくなるような返信をするように心掛けています。
――ツイートに対するリプライなどにはどう対応していますか?
八木(健): リプライに関しては、返してしまうと「なんであの人だけ」という不平不満が発生してしまうことがあるので、時間を決めて時間内に返信をくれた人には上から返すというように、特定の人にだけ返すようなことがない運営ができるよう気を付けています。
――一気に拡散されたり、フォロワーが増えたりすると好意的ではない人からもリプライが来ますよね。
八木(健): ありますね。200件の中の1件攻撃的な書き込みがあれば、0.5%の人にはそういった思いがあるということには気が付けます。そのうえで、「自分たちはこういう姿勢でどうしていて、こう考えています」と伝えて納得してもらうしかないですね。
海外でのSNS展開
――ベトナム支社でもSNS利用を開始とのことですが、なぜこちらはFacebookなんでしょう?
八木(翔): ベトナムでは、Facebookはほとんどの人がやっていますし、フランクなツールとして使われていて、日本のTwitterに近いです。ただ、拡散力がTwitterより弱いので他の手法を考え中です。
――他の国でもSNS展開は考えていますか?
八木(翔): そうですね。まずはベトナムで試しているという感じです。まだ始めたばかりでフォロワーが1,700人くらいなので。日本と東南アジアでは感覚が違う部分も大きく、まずはベトナムで上手くいけば他の国でもうまく運用していけると考えています。
――ベトナムでも目玉焼きブランケットを盛り上げていこうと考えていますか?
八木(翔): 好まれる家具は国によって違いますが、「目玉焼き」はどこの国にもあるモチーフですし、盛り上げていきたいですね。
ベトナム工場では、目玉焼きブランケットのキャンペーンが終わって注文が入ると、「オプラー(目玉焼き)来たぞ!」って盛り上がります(笑)
――今後の運用としては、どんなアカウントを目指したいですか?
八木(翔): ベトナムでもやはり企業アカウントというと広告ばかりというアカウントがまだまだ多いです。なので、我々のアカウントはお客さんと一緒になってイベントとしてプレゼント企画を楽しもうという姿勢を作っていきたいです。
将来的に目玉焼きブランケットを色んな国で見られたらいいですね(笑)。
家具製造メーカーでも、SNSを通じてエンターテインメントを提供できる
――今後のアカウント運営はどうしていきたいですか?
八木(健): 今まではものを作って売るのが仕事だと考えていたんですが、我々がものを届けられる人は数が少ないんです。ですが、SNSを通じてエンターテインメントを提供できるんじゃないのかと思っています。多くの人が楽しんでくれて、つながりができたらいつか家具が必要になったときに「セルタンの家具を買おう」「セルタンに入社しよう」ということがあるかもしれないと思っています。
八木(翔): 社内でSNSをやるにあたってベトナム社の人と話をしたとき、「家具って本来はいらないものだよね」という話が出ました。1か月3、4万円の給料で暮らしている人からしたら、「食べるもの」「住む場所」「洋服」以外はなくても死なないんです。そんな国で家具を売ろうとしています。でも、お金持ちだけじゃなく、お金がない若い人にも買って欲しい。家具は必要のないものだけど、あったら楽しいという価値を見い出してもらいたいんです。家具や物を売るのではなく、楽しみを売っていきたいとベトナム社の人が言っていました。そのためのツールとしてSNSを使っていきたいです。
――ありがとうございました。
ソーシャルもやってます!