フリーランスを1年で廃業しないための“超実践的”サバイバル術 ~関わるとヤバい案件の見抜き方~
「フリーランスになりたい!」「副業したい!」と夢見る会社員は多い。自分の裁量で仕事ができ、働き方次第で高額所得も実現できるフリーランス。一方で、案件が常に獲得できるのか、イメージ通りの収入は得られるのか、不安定な働き方に不安が伴うのもまた事実だ。せっかく独立したはいいが、わずか1年で廃業などということにならないために、何か働き方の秘訣があるなら知っておきたい。
そこで、フリーランスとして独立して1年、軌道に乗って活躍中の石川優貴さんを迎え、会社に所属しながら副業も行うパラレルワーカーのお二人、中山順司さんと中道祐弥さんが、フリーランスのサバイバル術を根掘り葉掘り聞いてみた。
石川優貴さん
1986年生まれ。公務員、NHK、LINEなど多くの団体に所属して働いたのち、2018年9月に、家電&ガジェット系ライター・編集およびSEOコンサルタントとして独立。多くのメディア記事制作ディレクションを担当している。
フリーランスとして軌道に乗り、「会社員に戻る気はない」と言い切る。
「フリーランスになりたい」からフリーランスになるのは違う
中山順司さん(以下、中山) 石川さん、本日はよろしくお願いします。僕は、Faber Company(以下、Faber)で会社員をやりながら、個人でも働いているパラレルワーカーです。石川さんは昨年にフリーランスになったんですよね?
石川優貴さん(以下、石川) 2018年に独立して、ちょうど1年になります。今のところとても楽しくフリーランスとして働いています。
中山 石川さんは、フリーランスになる前、公務員やNHKで働いてたんですよね。安定を捨ててなぜ、フリーランスに?
石川 よく「フリーランスのなり方」を聞かれるんですが、僕は「フリーランスになりたい」と思ってフリーランスになったわけではなくて、「やりたいことをやる」ためにフリーランスになりました。
公務員、NHK、LINEと転職してきましたが、転職先の仕事がおもしろそうだったから転職を決めているんです。なので、フリーランスになった方がおもしろい仕事ができると思ったからです。
フリーランスで大切なのは「健康」と「一社に依存しないこと」
中道祐弥さん(以下、中道) 僕は、独学でWeb制作を学んで、1年間フリーランスをやっていた経験があります。でもその時はうまくまわらなくて、現在は Faber Companyで働きながら、夜や土日を使ってサイト制作とSNS戦略の仕事をしています。
“フリーランス”というのが働き方のトレンドになっていますが、フリーランスになって良かったこと、悪かったことはなんですか?
石川 ミーハーなんですが、「時代の最先端の働き方をやってるぜ」、みたいなワクワク感はあります……というのは半分冗談だとしても、メリットは「満員電車に乗らなくていいこと」と、「自分の裁量で仕事、時間を管理できること」です。
一方、デメリットは「収入が不安定なところ」です。会社員は高収入は得づらいですが、数百万円の年収が安定してもらえますよね。それに会社員は(やろうと思えば)ズル休みができるんですけれど、フリーランスは納期があってその日までに何が何でもやらなくてはいけない。
中道 わかります。あと、体調を崩したらおしまいで、誰も守ってくれないですよね。
石川 フリーランスで一番大切なことは「健康」だと思います。フリーランスや起業家のサクセス本っていろいろありますけど、これはどこにも載ってません(笑)。
中山 収入の不安定さがデメリットということでしたが、安定させるために気をつけていることってありますか?
石川 「1つの会社に依存しない」ですね。1社から100万円の仕事をもらうより、10万円の仕事を10個持ってるほうが安定しますから、そうなるようにいろんな方とお付き合いをしています。
フリーランスになる前に「パラレルワーク」してみて己の適性を知る
中山 フリーランスが向いている人って、どんな人でしょう?
石川 自分で枠組みから何もかもを考えることが好きな人はフリーランスに向いていますし、言われたことを言われた範囲内できちんとこなす能力が高い人はサラリーマンが合うでしょう。
合わない方に行っても失敗するだけですから、僕は、フリーランスになる前にパラレルワークをやることをオススメします。言わば助走期間です。会社員をやりながら副業をしてみて、どちらが楽しいかを自分の中で比べて、楽しい方に行けばいいんじゃないですかね。
中山 会社員の副業状況を聞いたアンケート調査結果がありまして、1番が「会社で禁止している」、2番が「どう始めていいかわからない」、3番が「本業が忙しくて時間がない」でした。
石川 1番は仕方ないですが、2番、3番を理由としてあげる人は、そもそもフリーランスに向いてないですね。本当にやりたいなら、「どうやったら副業をできるだろう?」という考え方をしないと。
中道 「時間がない」は言い訳ですよね。寝る時間、移動時間、すべて削ればやる時間は作れます。僕も、新卒時代はホテルマンをやりながらホームページ制作をやっていました。もちろん時間的には厳しいんですが、両立できないとフリーランスにはなれないと思っていましたね。
石川 僕は“やるやる詐欺”が嫌いなんですよ。フリーランスになりたいって言いながら行動が伴ってない人、いるじゃないですか。今の時代、副業のためのプラットフォームはいっぱいあります。起業したければ5分でできるんです。できない言い訳をしちゃう人はそもそもフリーランスに向いてません。
「フリーランスになりたい」はいいとして、なってどうするかです。僕の場合は「いろんな人と仕事がしたい」「やりたくないことはしたくない」から、フリーランスになった。それが会社員でもできるなら、会社員のままでもよかったと思っています。
「まずはやる」が一番のサバイブ術
中山 フリーランスとしてサバイブしていくために、大事にしていることは?
石川 身も蓋もないことを言いますが、「まずはやる」です。シンプルに行動を起こすこと。フリーランスになったからといって、いきなり良いことがTwitterで言えるようになったり、フォロワーが増えたりはしません。フリーランスになってモテるとかもありません(笑)。泥臭くやるのが成功への近道です。
中山 やらずして結果を欲しがってもダメだよってことですね。
案件は“人とのつながり”から生まれる
石川 あと「人とのつながりを大切にすること」と「誠心誠意対応すること」は大事にしています。自分から相手のことを裏切らなかったら、フリーランスとして死にはしない。自分がやりたいことが明確で、それに対して頑張っていれば、その仕事を紹介してもらえることもあるし、誠意をこめて対応していれば道は開けます。
中山 うーん、それって当たり前な一般論に聞こえるんですけど……。
石川 でも、この基本をおざなりにする人、意外に少なくないんですよ。
中山 石川さんは人とつながるために、どんなことをしていますか?
石川 朝起きてから寝るまで、ずっとチャットしています。直接会うことができる人数は限られているし、会っていると時間もとられますけど、チャットだと複数の人と平行してしゃべることができますから。たとえば、これからメディアを立ち上げようと思っている相手に、「Web担のこの記事良かったから参考にどうぞ」を情報を送ると、「こういうの、うちでもやりたいね。石川くん、やってくれない?」となることもあります。
中道 相手から聞かれたわけじゃないけれど、良いアイデアを思いついたらチャットで伝える。間接的な営業にもなりますね。
石川 もちろん、直接人と会うことも大事です。フリーランスになって、ご飯は必ず誰かと行くようになりました。時間がないならコーヒーを飲むだけでもいい。ちょっぴりすごくいやらしい言い方をすると、フリーランスになりたてのころは、仕事を持っていそうな人に会いに行っていましたね(笑)。
人をどれだけ喜ばせたかが、報酬になって返ってくるのがフリーランス
中山 会社員時代にいろんな人とのつながりを強くしておいた方がいいということですね。
石川 フリーランスになりたくて人とつながっていたわけじゃないですけど、結果的にはそうなりますね。ただ、僕がもともとフリーランス志向、経営志向だったから仕事をいただけたんじゃないかと思います。会社員でいるときにも、自分がどれだけ会社にベネフィットを提供できるのかを考えられないと、フリーランスは難しいですね。人をどれだけ喜ばせたかが、報酬になって返ってくるのがフリーランスです。
中道 僕はフリーランスをやっていた時、ずっと家で仕事をしていて、新しい人に出会う場がなくなってしまったんですけれど、新しい人に出会うきっかけはどう作っていましたか?
石川 「人に紹介してもらう」のが一番いいですね。自分がちゃんと成果を出していれば、口コミで仕事はいただけます。
中山 そういうとっかかりがないときは?
石川 クラウドソーシングやマッチングサービスなどのプラットフォームに自分のスキルを登録するところから始めるのが良いと思います。仕事を請け負った作業者というより、人としてつながって、相手に喜んでもらえることを考えて仕事をすると、つながりは強くなると思います。
自分の単価はどうやって決める?
中山 自分の適正価格って、意外に見極めるのが難しくないですか?フリーランスは自分の時間単価をどのように決めればよいのでしょう。
石川 僕は対価とは時間にではなく、持っている情報や相手に与えられるベネフィットへの評価だと思っているんで、作業時間に対する報酬については考えたことがないです。
極端な話、「最初のお仕事はゼロ円でもいいです。やってみて良かったと思ったら報酬をください」と言ったこともあります。金銭的に折り合わないことでも、やりたいと思ったら受注したこともあります。
中山 クライアントには、提供したものに価値を見出して、パートナーとして扱ってもらいたいってことですね。
石川 そういうふうに思っていただけているクライアントは、「現在の報酬はそんなに高くないですが、こういうところは石川さんの将来のメリットになりますよ」と、僕の成長のことまでを考えてくれています。
中道 ただ、お金にゆとりがないと、とにかくなんでも受注したくなってしまうんですよね……。
石川 だから、まずはお金に余裕のある会社員をやりながら、パラレルワークをやった方がいいんです。こちらが「価値がある」と思っていることも、クライアントにとっては価値がない場合もあることを、あらかじめ実感しておいた方がいいです。
“関わるとヤバい”案件の見抜き方
中山 ズバリ聞きます。“関わるとヤバい”案件の見抜き方はありますか?
石川 要件定義がふわっとしている案件はダメですね。特に「とりあえず、いい感じにして」なんていうのは絶対にダメ!
そういうときには、僕は目的から整理していきます。記事を発注されたなら、この記事で何をしたいのか。流入を上げたいのか、コンバージョンを上げたいのか、SNSでバズらせたいのかなどを明確にして、「それならこういうふうに作りますけど、いいですか?」と言質をとります。やることを具体的にし、「この約束は守ります。けれどここはできるかどうかわかりません」と先に提示します。
中山 記事の場合、発注する側が自分で要件定義までしているところは少ないですから、フリーランス側も自分の身を守る意味で、要件定義を話し合う棚卸力が必要ですね。
石川 あと、相手と話す際に使う言葉については、お互いの認識が合うように意識しています。たとえば“フリーランス”といっても、副業フリーランスもいれば、専業フリーランスもいますよね。「この言葉はこういうことでいいですか? 認識は合っていますよね」というのを言語化し、なるべく具体的に明確化するようにしています。
中道 受注の際に、契約書は交わしていますか?
石川 基本契約書を交わして、打ち合わせした内容はチャットなどのログに残しています。ログに残すのは公務員のときの癖ですね。公務員は、常にどこに責任があるかを明確にしているので。
中道 僕はフリーランスのときに契約を残していないことがあって、あとでひっくり返されたことがけっこうあったんです。そのあたり、注意した方がいいですね。
石川 よく、“人間関係が崩れる原因はお金と異性”って言いますけれど、僕は最初にお金の条件をしっかり合意しています。異性に関しても……気を付けています(笑)。
会社員時代と現在、毎日はどう変わった?
中山 会社員からフリーランスになって仕事のやり方は変わりましたか?
石川 正直、そんなに変わらないです。だから僕はフリーランスに向いていたのかもしれないですね。
公務員は、年間の業務内容が決まっていて、それ以外はするなって言われるんです。けれど、僕は自分の仕事以外のことでもたくさん提案していました。その延長線上が今という感じです。上司に与えられた仕事も、「これって、なぜやるんですか?」と普通に聞いていましたし。
中山 生活の仕方はどうですか?
石川 定休日もないので、ほとんど毎日仕事しています。1日フルで休むことはないですね。たとえばカフェにいれば、「このカフェは、こういうふうに変えたらおもしろいんじゃないか」とか考えちゃいますし、「このキーワードって検索ボリュームどれだけあるのかな?」て、つい思ってしまいます。あ、ただ、元日だけは休みます(笑)。
中道 睡眠時間はどれくらい確保するか、決めていますか?
石川 特に決めてないです。ただ午前中に仕事をしたいので、だいたい夜の12時には寝て、朝の6時くらいに起きています。
中道 食事は会社員時代と変わりましたか? お恥ずかしい話なんですが、僕は稼げてないときは、食費をおさえようと思って、吉野家のミニの牛皿だけを買ってきて、家で米を3合炊いてそれにぶっかけて食べていました。
石川 生命維持に必要な食費問題は切実です。フリーランスが軌道に乗って、お店で何も考えずに「大盛!」って言えたときの優越感といったらないです。貧困時代は、パスタや食パンで食いつないでいましたが、パンは基本「そのまま食べるか、焼くか」の二択。焼くと光熱費がかかるな、どうするか……っていう瀬戸際で悩むわけです。バターやチーズなんて、ご褒美でしたよ(笑)。
中道 わかりみが深すぎる……。お金ないときはチャリか歩くか、テレカンにするか。削れるところは徹底的に削ってました。
中山 フリーランスあるあるですね。石川さんは、スタートしてどれくらいでその生活から抜け出せました?
石川 半年くらいですね。先日、両親の結婚記念日に、家族をホテルのレストランに招待しました。当初5万円の予算が、お酒を飲みすぎて、3万も予算オーバー。支払いのとき「マジか!」ってビビりましたけど(笑)。親をレストランに招待したことが初めてで。経済的なゆとりが、心のゆとりにつながって、親孝行しようと思ったのだと思います。
中山 親孝行できましたね……。ところで、情報収集はどのようにしていますか?
石川 無駄にたくさんの情報を集めることはしていません。業界のトップにいらっしゃる方をSNSでフォローして、関係する記事を読んでいます。たとえばSEOだったら、Googleが公式で出している内容と、鈴木謙一さん(@suzukik)、辻正浩さん(@tsuj)だけを追っています。
ただ、正しい情報は押さえつつ、自分の軸は持っておく必要があると思います。そのために他業種の情報を集めたり、本を読んで自分の軸をチューニングしています。
昔の自分にアドバイス「誠心誠意、生きろ」
中山 昔の自分にアドバイスするとしたら、何と言いたいですか?
石川 「誠心誠意、生きろ」ということですね。昔が誠実じゃなかったわけじゃないですけれど、フリーランスになって、人のおかげで生活させていただいていることをより感じているので、もっともっと人を大切にしたいと思っています。
それと、「人の役に立ちたい」の「人」には自分も入っているよ、というのを早く教えてあげたいですね。人の役に立ちたいという思いはずっとあったんですが、今までずっと、「人」=「他人」と思っていたんです。でも、まずは自分がハッピーにならないとだめだと、最近思い始めました。
中山 最後に、たとえば親戚や友だちがフリーランスになりたいと相談してきたらどのように答えますか?
石川 「やりたきゃやれば」ですかね。冷たい言い方ですが……。副業フリーランスであれば、ハードルはゼロです。自分のスキルと仕事をマッチングしてくれるプラットフォームはたくさんありますし、登録自体は無料でできます。「やりたいなら、まず行動せよ」です。
中道 フリーランスになって1年。会社員に戻りたい気持ちはありますか?
石川 まったくないです。会社員には戻りません! むしろ、もっとフリーランスの人に増えてもらって、一緒に上を目指したいです。僕もまだ2年目、登っている最中。フリーランスについて語るなんておこがましいかなと思いましたけど、この記事を見て、「フリーランスをやってみようかな」と思ってくれる人がいたら嬉しいです。
中山中道 本日はありがとうございました!
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