ネット利用が進む高齢者の今――フリマアプリ「ラクマ」のオンライン教室から見えたシニア層のネットシフト
この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。
新型コロナウイルス感染症の影響によってシニア層のネット活用が増えています。情報収集はもちろん、商品購入を目的としたEC利用、不要な商品を売るためのフリマ活用などさまざま。
楽天が運営するフリマアプリ「ラクマ」とシニア向けコミュニティサービス「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」が共同で実施した「オンライン版 シニア向けフリマアプリ教室」から、“モノ”に関するシニア層のネット活用の現状、開拓のためのヒントなどを探ってみました。
コロナ禍で増えるシニア層のフリマ&EC利用
「趣味人倶楽部」がユーザーに対して実施したアンケート「新型コロナウイルスによる生活への影響」で、「新型コロナウイルス感染拡大前と比べて、家で費やす時間が増えたもの」を聞いたところ、約3割が「不用品の片づけ/処分をする時間」と回答しました。
2020年3月以降、シニア世代のユーザーから「ラクマ」の使い方などに関する問い合わせが増加。2020年4月における60歳以上の月間登録者数は、2020年2月比で約1.6倍に増加しています。
三井住友カードと顧客時間が共同分析した「コロナ影響下の消費行動レポート」によると、社会情勢の変化に伴う買い物の質の変化、高年齢層のEC利用への「デジタルシフト」の兆候など、消費行動の変化が垣間見えています。
新型コロナウイルスは高齢者の重症化リスクが高いとされる中、高年齢層(60~70代)の行動がどのように変わったのかを検証したところ、日常的にECモール・通販を利用しているとされる20~30代よりも、高年齢層における増加幅が大きいことが判明。
「ECモール・通販」の増加幅が「スーパー」を上回り、高年齢層が自らの身を守るために、外出を必要としない「ECモール・通販」を活用している消費行動の変化が推測できました。
こうした調査結果を踏まえ、三井住友カードと顧客時間は「高年齢層の『安全志向』重視の行動だと考えられるEC サイト活用のデジタルシフト傾向も見逃せない行動の1つ。この傾向を一過性の変化としてではなく、世代を問わないデジタルシフトの加速だと理解すると、ECサイトには高年齢層にも使いやすい操作性や画面構成・表現の考慮が、これまで以上に必要とされそうだ」とまとめています。
新型コロナウイルス感染症の影響により、確実にシニア層の「ネットシフト」「EC利用」「フリマ利用」が増えています。
5人の高齢者が出品に初挑戦
オンラインの「シニア向けフリマアプリ教室」に参加したのは5人の「趣味人倶楽部」会員。Zoomは「オンライン飲み会で使っている」「仕事で使い始めた」などで利用経験があるようです。
EC利用は「普段からよく使っている」「ネットでの買い物は家族任せ」などさまざま。「ネットショッピングは新型コロナの影響で初めて使ったけど、ヤフオク!は以前から使っていた」というユーザーもいました。
フリマアプリ教室は2日間で実施。「ラクマ」のサービス説明や出品方法、売れた後の対応方法、商品を購入する方法などを、スライドを使いながら参加者にレクチャーしました。
1日目に実施したのは「ラクマ」のサービス説明からプロフィールの入力、出品まで。楽天IDを登録するための会員登録や商品の写真撮影は事前に行っていたそうです。楽天IDと「ラクマ」の連携で戸惑うユーザーがいましたが、プロフィール入力以降はスムーズに進みました。
2日目は「出品していた商品が売れました!」という発表からスタート。梱包や発送方法、評価の方法など売れた後の手続きをメインに説明。復習も兼ねて他の商品を出品したり、「ラクマ」での商品購入方法の解説もありました。
「送料」と「値付け」は一番の疑問点
もっとも疑問点で多かったのが「送料」と「値付け」について。「送料はどうなるの?」「送料が最初にわからないと値付けしづらい」という声が多くあがりました。
特に匿名で商品を送れる「かんたんラクマパック」については初耳のようで、「普通に送るのとどっちが安いの?」といった質問もありました。
配送や梱包について疑問を持つユーザーも多く、「小さい物を送る時は封筒でも良いの?」「梱包する物がないときはどうしたら良いの?」といった質問があがっていました。
シニア層との関係性構築で役立つ「教室」。オンラインでうまく運営する方法は?
シニア向け通販の成功事例として業界内であげられるのが出版事業などのハルメク(旧いきいき)。シニア層向けに年間定期購読誌と通販カタログを提供し、定期購読誌『ハルメク』は読者数30万人を突破(2020年3月期)しています。
ハルメクの親会社であるノーリツ鋼機はシニア向け通販を手がける全国通販も傘下に持っており、ハルメク、全国通販などのシニア・ライフセグメントの2020年3月期売上高は277億7000万円(前期比0.3%減)。
ハルメクはシニア女性を対象にした講座やイベントを年に約200回、読者向けに実施。雑誌などのコンテンツのニーズ探索や方向性を把握するための「座談会」を年に約70回行い、雑誌読者・通販利用者のリレーション作りにつなげています。
シニア層とのリレーション作りで役立っている「教室」などをオンライン教室で行う際、気をつけるべき点は? 印象に残っていた点をいくつか紹介します。
スライドでわかりやすくルールなどを説明
講習前にフリマアプリ教室のルールをスライドを使って説明していました。スライドを使い、冒頭説明は参加者全員に意識付けをするために必要な手法だと感じました。
説明で特に重要なのがマイクのミュート機能を利用した「発言時はマイクをON、それ以外はOFF」にすることの説明です。「オンライン教室」を円滑に進める上で必要不可欠な説明です。
ただ、マイクのミュート機能は使い慣れていないためか、マイクがOFF状態のまま質問していた方も。「○○さん、マイクをオンにしてから質問をどうぞ」と運営側から促していたのは、質問者がミュート機能を意識することにもつながり、良いサポートだと感じました。
個別対応できる「ブレイクアウト」機能
複数人で作業を進めているため、中には作業がうまくいかないユーザーが出てきます。その際、特定のメンバーだけを別の部屋に移動させる「ブレイクアウト」機能が役立っていました。
ブレイクアウト機能は、「困っている参加者を1対1でサポートできる」「全体の進行を遅らせないようにする」という効果があります。
進行役以外に複数人のサポートメンバー
運営は、「趣味人倶楽部」から司会進行役1名、サポート2名、「ラクマ」から説明役1名、サポート1名という体制。サポートメンバーが複数名いたことで、ブレイクアウト機能を使用したサポートが実現できていました。
また、参加者の様子にすぐ気付くことができ、質問したい・困っているユーザーの見落とし防止にもつながっていたように思います。
参加したシニア層の感想は?
参加したシニア層のユーザーから「フリマアプリ教室に参加した理由」「参加した感想」などを聞きしました。
Q. フリマアプリ教室に参加した理由は?
- フリマアプリに元々興味がありました。敷居が高いと思っていましたが、これを機にチャレンジしてみようと思いました
- 仕事上、必要になってフリマを始めました。断捨離もしようと思っていたので参加しました
- ネットで買い物をしたことはありましたが、売ったことはなかったのでこの機会にマスターしたいです
Q. 講習を通して楽しかった点は?
- 出品商品に「いいね」がついたことが嬉しかったです。人から「いいね」をもらえるという初めての経験ができたことが良かった
- 「意外な物が売れる」ことが面白い。売れるか売れないかは別として、いろいろ出品してみようと思いました。ヤフオクを利用していますが、取引方法に共通点がありますね
Q. オンライン形式で講習を受けた感想は?
- 外出できないので、オンラインで講座が受けられて良かった
- コロナによる巣ごもりでストレスが溜まっていましたが、こういった場で人と話して交流することでストレス発散になりました
- コロナがなければZoomなどを使い始めていなかったが、使うと便利。コロナが収束しても生活の一部としてオンラインツールを使うことが定着するんじゃないかと考えています
Q. 周囲でフリマアプリを利用している人はいますか?
- 多くはないけどいます。特に洋服はどんどん溜まってしまうので売ったり、反対に安く買えるという話を聞きますね
- 不要品がまた使ってもらえるのは資源活用の意味でも良いことなので、もっと増えていくと良いですね
Q. ネットで物を購入することに抵抗はないですか?
- 最初は不安でした。けれど、楽天など大きな企業が間に入ってくれていれば、何か問題が起きたときもしっかり対応してもらえると思っています
オリジナル記事はこちら:ネット利用が進む高齢者の今――フリマアプリ「ラクマ」のオンライン教室から見えたシニア層のネットシフト(2020/06/25)
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