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パルコとウエルシア薬局に学ぶアプリ活用 ユーザーとの接点をアプリで作るには?

ヤプリ初の書籍『マーケターのためのアプリの教科書』出版を記念したオンラインセミナーの一部を紹介。

アプリをマーケティングツールとして活用するには、DLしてもらうための施策や使い続けてもらうための施策が必要になってくる。顧客と接点を作り、アプリを通じてどうコミュニケーションをとるべきか。パルコの林直孝氏と、ウエルシア薬局の清田明信氏が語った。モデレーターはヤプリの半大二郎氏が務めた。

本記事は、8月27日に出版されたヤプリ初の書籍『マーケターのためのアプリの教科書』の出版を記念して行われた4週連続セミナーの第2週のセミナーをまとめたもの。

ウエルシア薬局株式会社 販促企画部長 清田明信氏(左)/株式会社パルコ 執行役員 CRM推進部兼デジタル推進部担当 林直孝氏(右)

アプリで接客時間を長くしたかったパルコと、チラシの代わりにアプリを導入したウエルシア薬局

――アプリ導入の目的から教えていただけますか?

林氏(以下、林): パルコは関東圏を中心として全国に18店舗あり、店舗で使えるアプリとして2014年から「POCKET PARCO」を提供しています。パルコはショッピングセンターですので、自社製品を販売しているわけではありません。ご出店いただいているたくさんの専門店とお客様をつなぎ、楽しいお買い物体験を提供することがパルコの役割です。

オンラインで買い物ができる今、お店の役割は“触って試せる”といった体験ができる非常に重要な場所です。そして、ショッピングセンターは複数の体験ができることによって、ブランドとお客様の絆をより強くできるところです。お店とお客様の接点を店頭だけでなく、デジタル上に作ることを目的として「POCKET PARCO」はできました。

24時間パルコと接触してもらうためのオムニチャネルプラットフォーム

清田氏(以下、清田):ウエルシアグループアプリ」を提供しています。アプリを作った理由はアナログからデジタルへの移行です。ドラッグストアの告知媒体は、広く浅くという意味で、折り込みチラシがほとんどでした。しかし、消費者のデジタル化が急速に進んだことで、チラシによる効果が薄れてきてしまいました。

「お客様とより深く接点を持ちたい」「ロイヤルカスタマーを醸成したい」「ゆくゆくは1to1マーケティングを実現したい」といったことからアプリを導入しました。現在はチラシの施策は行いつつ、以前はチラシで行っていたクーポン配布などをアプリで代替する形で運用をしています。

――現在のアプリダウンロード数と、アプリの効果を感じるときを教えてください。

清田: アプリのダウンロード数は300万、MAUは7月末時点で110万人くらいです。一番アプリの効果を感じられるのは即時販促ですね。たとえば、売り上げが落ちる雨の日にクーポンを配信すると反応が良いです。チラシでは、なかなかできなかった施策ですので、効果を実感しています。また、アプリのコンテンツをリッチにすることで、よりウエルシア薬局のことを知ってもらうことができるので、ロイヤルカスタマーの醸成に貢献していると思います。

林: ★POCKET PARCOのDL数は現在190万ダウンロードです。さらに、パルコでは、PARCOカードというクレジットカード機能付きのハウスを提供しております。PARCOカードだけを使っているユーザーと、PARCOカードとアプリを併用しているユーザーを比較すると、PARCOカードとアプリを併用しているユーザーの方が、年間の平均来店購買日数で約2倍、LTVでは2倍以上の差があるとわかっています。アプリを使っているユーザーの方が、ロイヤルティが高いということです。

来店前、来店中、来店後のアプリの役割

――パルコの「POCKET PARCO」では、来店前、来店中、来店後でユーザーとどのような接点を持っているのか、教えてください。

林: 来店前、中、後で、大きく分けて5つの接点があります。これらの接点でよりユーザーとコミュニケーションを図るために、アプリ内では2つのインセンティブを用意しています(100コインで1ポイント(1円相当)に交換可能)。

  • ポイント
  • ポイントと交換できるコイン
アプリとユーザーをつなぐ来店前、来店中、来店後の5つのステップ

まず、来店前には、パルコに入っているお店のブログ記事が閲覧でき、「クリップ」というお気に入り登録機能で、記事をクリップすると10コイン貯まります。

来店中は、店舗内でGPSをオンにした状態でアプリを起動してチェックインすると、100コイン貯まります。また、チェックインすると「歩数計と連携しますか?」というポップアップが表示され、スマートフォンの歩数計と連携することで歩数カウントが始まり、館内で500歩達成すると500コイン付与されます。アプリ決済などでお買い物をすると金額に応じてポイントが付きます。

来店後には、ショップ評価があり買い物体験を☆(星)の数で評価してもらえると、100コイン貯まります。

このようにインセンティブを活用しながら、お店とお客様のマッチングをより高めていきたいと思っています。また、お客様のアクションに応じたポイント(コイン)付与が、ロイヤルティ向上につながっていると感じています。

――ウエルシアでは来店前、来店中、来店後でどのようなアプリの使い方をしているのか教えてください。

清田: 来店前には、クーポンやキャンペーン告知を実施しています。たとえば「該当商品を買うとTポイント20%還元」といったキャンペーンなどです。こういった情報をアプリのバナーやクーポン画面に表示させて来店意欲を促進させています。

来店中は、買い物に応じたポイント付与はもちろん、「お得な商品で買い忘れはないか」の確認として、アプリを使っていただいているお客様もいるようです。来店後は、購買履歴やポイントの付与、ポイント還元の履歴を見ることができる仕組みになっています。

来店前、中、後で使い分けられるまでは、アプリは進化できていないといえるかもしれません。

アプリ運営にもPDCAと分担が大事。それぞれの運営体制

――アプリ全体の企画やCRMの相関分析などの運営は何人体制で、どういうサイクルで回しているのでしょうか?

林: アプリ運用には大きく4つのフェーズで仕事をわけています。

パルコが実践するアプリ運営のためのDAPCサイクル

それぞれについて説明しますと、まず「Data:データ&インフラマネジメント」です。アプリを運用していくには、まずデータを活用できる環境インフラを構築することがスタート地点となります。次に、アプリを作った後に日々増えていくデータを分析する作業が「Analytics:分析」です。さらに、分析によって見えてきたインサイト・示唆によってお客様とのコミュニケーションにどう活かすのか、ということを設計していくのが「Planning:プランニング」です。最後に、プランニングで実行されたものが「Communication:プランされたコミュニケーションの実現」です。

この4つの仕事を2つの部署で行っています。仕組みを作る、データを分析するのはデジタル推進部が担い、コミュニケーションプラニングとコミュニケーションはCRM推進部と店舗の皆さんにやっていただいており、本部側は15名ほどの体制でやっています。

清田: 弊社はTポイントも扱っているため、弊社とCCCとアプリの運営会社の3社で運営をしています。社内に関しては販促企画部マーケティンググループの4名がメーカー様のクーポンやキャンペーンの立案を進めて、その後CCCと定例会を開いて分析しています。

定例会では、「PV」「利用率」「ROI」の3つにKPIを絞って、よかったことや工夫点をPDCAで回している状況です。運営会社については、確認事項やリスクマネジメントなどをお願いしています。人数でいえば、弊社の社員が4名、CCCが5名、運営会社が2名の、計11名で回しています。

――ウエルシアではキャンペーンなど、メーカー様さんとのコミュニケーションが多いですが、メーカー様さんとの関係でなにか変わったことはありますか?

清田: アプリをやり始めた頃は、規模が小さいこともあって、なかなかメーカー様に参加してもらえませんでした。しかし、規模が大きくなるにつれて成功事例が増え、メーカー様にも積極的に取り組んでいただけるようになりました。

アプリが支持されるようになるためには、ダウンロード数とユーザーのための機能が大事

――アプリを立ち上げる方々に向けて、より支持されるようになるためのメッセージをお願いします。

清田: やはり、はじめは数にこだわらないと意味がありません。業態ごとに違うと思いますが、どうやってダウンロード数を増やすのか、MAUを増やすためにどんなことをしたらいいのか、そこに注力すべきだと思います。お得なときだけアプリを使ってもらうというような状況になると、なかなかアプリとして機能しないので、どうやったら習慣化して使ってもらえるかを考えながら仕組みを作ることです。

また、メーカー様が絡むのであれば、メーカー様から見ても魅力のあるアプリにしていくほうがいいでしょう。初めから媒体費を高くするとハードルが高くなってしまうので、お試し期間を設けて効果があれば多少お金をもらうような形にもっていったらいいのではないかと思います。

林: お客様は必ずしもお得感や割引といった価値観だけでお店を選んでいるのではないと思います。ウエルシアさんのアプリにもある、混雑状況をアプリで見られる仕組みは、コロナ禍では安心安全の意味がありますし、弊社アプリなら歩数カウントという、お客様に何かしらの楽しみを頻度高く経験してもらう仕組みを工夫して提供しています。

また、パルコの場合、各専門店のアプリをダウンロードしてもらうようにスタッフの方々がお客様に声をかけています。もちろんこれも大事なことですが、パルコのようなショッピングセンターが運営しているアプリもおすすめしてほしいと思っています。各専門店だけではなく、アプリを通して集まってきたショッピングセンターのデータも使いながら、より良いコミュニケーション策をプランニングして実行に移していければと考えています。逆に、弊社としても各専門店が獲得されたデータをうまく活用させていただくことで双方でよりよいサービスができると考えていますし、そういう思考で取り組んでいただけると嬉しく思います。

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