有名人のSNS炎上・トラブルは対岸の火事にあらず! 企業担当者が理解すべきポイントとは
オーガニック運用・広告配信・危機管理など、企業のSNS活用のポイント、最新情報を、SNSマネージャー養成講座の講師陣「チーフSNSマネージャー」のメンバーが、それぞれの得意分野を中心に解説します。
今回は、SNSマネージャー養成講座で講師も務める小野寺翼氏が回答します。
昨今、芸能人やYouTuberといった「有名人のSNS活用」をよく見かけますが、「有名人によるSNSでの炎上をはじめとしたトラブル」も頻繁に話題になっていて、正直怖いです。企業担当者として、こういった事例から学ぶべきことはあるのでしょうか?
ご指摘の通り有名人によるSNS活用とSNSに関連したトラブルも増えています。「有名人に起きているトラブルは一般人には関係ない」とは思わないでください。トラブルの本質は、企業のSNS担当さらには一般のSNSユーザーにも学ぶべきポイントが多いのです。
有名人が関わるSNS上のトラブルは大きく2つに分かれる
まず、有名人が関連して起こるSNS上のトラブルは、大きく2つに分かれます。
- 本人のSNS上での発言や行動
- SNS以外(他メディアやプライベート)での行動
以下それぞれのケースを見ていきます。
(1)有名人本人のSNS上での発言や行動によるトラブル
まずは、有名人本人がSNSで行った発信や活動がきっかけで起きた炎上事例を見ていきましょう。
事例:配慮に欠けた不適切な発言
(1)某有名タレントが、2016年熊本震災が発生したタイミングで、当時開設したばかりの自身のTwitterで「自衛隊きちんとして欲しいね」と投稿。多くのSNSユーザーから「自衛隊はがんばっている」など反発を受け炎上に発展。
(2)某お笑い芸人が自身のTwitterに自慢の愛車の写真を投稿。しかし、その愛車を停めていた場所が身体障害者用の駐車スペースであったため、Twitterユーザーから「これはマズい」「通報しました」などといった批判ツイートが殺到し騒動に発展。
これら2つの例はいずれも、自身の行動や発言への配慮、言い方をかえれば「他者への配慮」「優しさ」の欠如がきっかけで起きた炎上です。
(1)の事例の場合は、災害に対応する自衛隊の方々への配慮が不足しています。大きな災害発生時の発信という視点でも考える必要があり、実際に被害に遭っている人たちへの配慮や優しさが求められるときに、軽率な発言だったと言わざるを得ません。
(2)の事例は、そもそも社会のルールや障害者理解が欠けており、こういった内容をSNS上で発信すると、即炎上につながります。
(3)某俳優が有名アイドルグループの解散報道に対し、自身のTwitterで「あほくさ。〇〇のことなんかより大事な選択肢が国会で選択されている」とマスコミ批判と取れる内容を投稿。この投稿に対し、アイドルグループのファンからの非難が殺到し炎上した。
芸能人やスポーツ選手をはじめ、有名人にはその人たちを応援するファンが存在します。特定の有名人を批判する発言は、この事例のように相手のファンに叩かれる結果となります。「言論の自由」があるとはいえ、そもそもの話としてSNS上では否定的な発言よりもポジティブさや優しさのある発言を増やしていくことが大切だと筆者は考えます。
影響力の強い有名人は、PR目的の商品紹介に注意を
影響力の強い有名人、いわゆるインフルエンサーが特定企業とタイアップをしSNS上で商品紹介する行為が増えています。いわゆる「インフルエンサーマーケティング」と呼ばれる施策です。インフルエンサーがSNS上でPRを行う際は、金銭などの報酬を受けるケースが大半ですが、一般にはその旨を明示する必要があります。たとえば、投稿テキストにハッシュタグ「#PR」と付けPR(宣伝)投稿だと明示するというのが慣習です。
企業とタイアップを行い紹介した投稿で、この明示をせずに投稿してしまうと、非営利の投稿を装い消費者を欺く投稿、いわゆる「ステルスマーケティング(略称:ステマ)」と扱われ問題となります。
(4)某漫才コンビが自身の生まれた都道府県で開催された映画祭の紹介を、報酬を受けTwitterで投稿。その際に「#PR」を付けておらず、ステマと認識され騒動に発展。
(5)某テレビ局のアナウンサー数名が、有名人御用達の美容室で、ヘアカットやネイルのサービスを無料で受けたにもかかわらず、投稿に「#PR」と明記をせずに投稿を行い、SNS利用者からステマと認識され騒動へと発展した。
(5)の事例は、報酬についてグレーではあるものの、無償でサービスを受けたらステマの対象になり得ると理解しておきましょう。
両事例ともに「#PR」を投稿につけ宣伝であると明示していれば騒動には発展しなかったということです。そもそもの話ですが、報酬を受け取っているのに、受け取っていないと装う(少なくともそうとれる)ことは「真摯さ」に欠ける行為です。
実際に、企業の担当者という立場でインフルエンサーマーケティングに取り組み、自社の製品やイベントを有名人やインフルエンサーに紹介してもらう際にはこの理解を大切にしましょう。
ステルスマーケティングに関するガイドラインについては、WOMマーケティング協議会が「WOMマーケティングに関するガイドライン」を提唱していますので、ぜひ、参考にしてみください。
参考:WOMマーケティングとは - WOMマーケティング協議会
https://www.womj.jp/70699.html
法律や専門知識への配慮と正しい理解を
法律や専門知識の理解が不足している、ときにはその時点での情報が欠如しているのに発信してしまったといった事例は、当然ですが炎上につながります。実際にあった事例が、以下です。
(6)血液循環や免疫力アップ、酸化力アップを目的とする「血液クレンジング」と呼ばれる治療法が世に広まった際、複数の芸能人がこの治療をSNSで紹介。ところが、この治療法には医学的根拠がないと指摘する声があり、社会問題へ発展した。
治療や医薬品、その効能をうたう情報発信は、「薬機法」をはじめとした法律や専門知識の正しい理解がないと、今回のようにトラブルに発展し得ることを理解しましょう。
法律に反する内容は、そもそもあるべきことではないのです。法律を含め専門知識が不足したままの発信には注意してください。専門知識が求められる発信を行う際は、法律家や医師をなど、発信内容に関する専門家に監修してもらうべきでしょう。
(2)SNS以外(他メディアやプライベート)での行動がきっかけでのトラブル
こちらは、マスメディアをはじめとしたSNS以外のメディア、さらにはプライベートでの行動がきっかけによるトラブルです。こちらは、SNS上でのトラブルの火種となる発信者が生活者側にあるというパターンです。
(1)テレビ番組にも出演をしている女性音楽家が、新聞に掲載のコラムで、自身の子供がテレビゲームで遊ぶ時間を守らなかった際に、ゲーム機をへし折ったと発言。この行動が虐待にあたるのではとSNS上にコメントが殺到した。
(2)有名ジャーナリストが、自身が出馬した都知事選に落選した際、「今の国民はボケている」など、有権者を非難する内容をネットニュースのインタビュー記事で発言。この発言に対し、SNS上では非難が殺到し大炎上に発展した。
こういった配慮にかけた発言は、炎上につながります。また、下記のような内容は、SNSでの炎上に発展しやすい傾向があります。
- 政治や宗教に関する偏った見解
- 性別(ジェンダー)に関する内容
- 差別的な発言
- コンプライアンスやハラスメントに関する内容
(3)男性俳優のプライベート中での「歩きタバコ」姿を目撃した一般人が、その様子と非難する発言を投稿。その後、俳優本人から「盗撮だ」と逆に非難をするなどもめごとに発展。その様子を観ていた他のSNSユーザーからも「歩きたばこは迷惑だ」「男性ファンへの態度ががっかり」などと批判があがり炎上した。
(4)某ミュージシャンが自宅の引っ越しをする際、手伝った引っ越し業者が自身のTwitterアカウントで自宅の場所をツイート。有名人の住所が漏洩するというトラブルに発展した。
(3)の事例の場合、「歩きタバコ」は良くない行為ではありますが、本人のコメントにある「盗撮」という指摘も間違っていません。実際問題、公人である有名人の写真を勝手に撮影し許可なくSNSにアップをすることは、肖像権侵害やプライバシー侵害にあたります。
(4)の事例は、ミュージシャン側が個人情報漏洩の被害者と言える事例でしょう。SNSに投稿をしたユーザーが加害者となります。この事例を企業担当者目線で考えた場合、自社員が加害者にならないよう気をつけたいものです。
SNSで発生した炎上事例やトラブルの内容は、定期的に伝え学ぶ
実際、自社員がSNS上でトラブルとなる発信を行ってしまった場合、本人さらには所属する企業のブランド毀損や損害発生も起こり得ます。そのためには、自社員に炎上リスクについて啓発・教育を続けることが重要です。こうした事例に対しては、「自社員向けのSNSガイドライン」を作成し、個人によるSNS活用における知識やルールを伝えるのが重要でしょう。
まとめ
今回、「有名人のSNS炎上・トラブルとその対策」という切り口で解説しましたが、企業担当者の皆さんにとっては、自社のSNSアカウントにおける発信や活動も本質は同じではないかと考えます。
有名人のトラブル事例は、「企業の公式SNSでの発信、さらには他メディアでの発言でも気を付けるべき内容」と、本質は共通すると考えるからです。また、生活者発信が火種となるトラブルからは自社員が加害者にならないよう、さらにはいちユーザーとしての発信という観点からも「(自身をふくめ)誰も不快にさせない、傷つけない、トラブルに巻き込まれない」ために学ぶべきと考えます。
今回、ご紹介したような知識や気を付けるべき点を大切にしていただき、皆さんがSNSを良い形で活用していただくことを願ってやみません。そして人と人とのつながりを通じ伝え合うSNSだからこそ、「優しさ」を持って利用することが大切だと考えます。この一言で今回のコラムをしめさせていただければと考えます。
2020年より私たちは、「SNSマネージャー養成講座」という資格試験をスタートしました。SNSマネージャーの上位資格である上級講座では、実際に運用しているアカウントをサンプルにして、徹底的に運用目的とKPIなどの必要項目を掘り下げて企画書を作成するワークを実施しています。
この記事を読んで「理屈はわかったけど、実際自社のアカウントに当てはめるとピンと来ない。さてどうしたものか……」とお悩みのあなた。ぜひチャレンジを。
タイトルデザイン、タイトルイラスト:995(Twitterアカウント)
三度の飯より猫が好きなイラストレーター。ゆるくてかわいいイラストが得意です。
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