PV至上主義の終わり、体験または滞在時間へ

3rdパーティcookie死後を見据え、「メディアがいかにして収益を上げるか?」について、アドテク屋の視点で私の案をまとめました。
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偉そうなタイトルで煽りました。
メディアの皆様、今後収益をいかにして伸ばすか、どういった議論をされてますか?

例えば、やっぱり質の良い記事を書こう!有料の定期購読読者を増やそう!バーティカルメディア立ち上げよう!D2Cに挑戦しよう!といったことを日々議論されてますか?

3rdパーティcookie死後を見据え、メディアがいかにして収益を上げるか?について、アドテク屋の視点で私の案をまとめました。
良かったら読んでやってくださいませ。

 

さて、本記事を書く前提ですが、
 

1.今後、リタゲが効かなくる
2.枠指定imp保証の純広告は売れにくいまま

とします。

まずは今までの収益の上げ方について振り返ります。

 

メディアの収益方法

メディアの収益方法は、以下の5つに分類出来るかと思います。

1.広告枠
2.記事広告
3.記事の定期購読
4.メディア運営代行
5.他(イベント開催、物販、etc)

「5.他」に関しては、メディアビジネスからの多角化、業態変更にあたるので、ここでは詳細に触れません。

 

大多数のメディアが、1.広告枠と2.記事広告の収益がほとんどを占めるかと思います。
その1と2を中心に、どうにか収益を上げていくために「PV至上主義の終わり、体験または滞在時間へ」意識や仕掛けを変えていく必要がありますよ、という話です。

 

現状、PV至上主義は正しい

前提で挙げた通り、純広告はなかなか売りにくいので、余り在庫の率(運用型広告)が高まりますが、3rdパーティcookieの死後は、その運用型広告の収益が下がります。

 

なぜ今までの運用型広告の収益が高かったかと言うと、リタゲ広告があるからです。
リタゲ広告の詳細な仕組みは省略しますが、一度興味を持ってサイトを訪れた人に広告を効率よく見てもらう仕組みと思ってください。

 

たとえば自動車について書かれた記事があったとして、「興味関心で記事を読みに来た人」と「一度その自動車のサイトを訪れたことがある人」では、後者の方がその自動車を買ってくれる可能性が高いのです。(だからリタゲ広告は高く売れる)

 

ただし、リタゲ広告にはメディアにとって大きな問題があります。
それは媒体価値がほぼ関係ないということです。
個人の趣味ブログと優良媒体の広告の効果の差がないのです。
(正確にはあるんですが省略)

 

その結果、内容の薄いタイトル詐欺的な記事が増えます。
最悪のケースとしては、ウェルクやメリーのようなことが起きました。
(嘘記事を書いてPV集めて広告で儲けていた問題)

 

この傾向に拍車をかけたのが、RTB(DSP、SSP)の発展でクリック課金からimp課金へ主流が変わったことと、2016年にGoogleのアドセンスが1pvでの広告枠数制限をなくしたことです。

そのため、とにかく広告枠を増やしてPVを伸ばしてimp課金で儲けることが可能となりました。

 

アカウントが停止されるかもしれない恐怖と闘いながら、広告枠を徐々に増やしていくテストをメディアが繰り返していた時期がありましたが、枠を増やすと収益が上がっていく報告を、ちょいちょい見かけていたのを思い出します。
アドテクの発展のせいで、PV至上主義が合理的に起きたのです。

 

リタゲ死後に運用型広告を続けるとどうなるのか?

リタゲは効果が高かったため、広告を見せるだけでお金を貰うimp課金に説明がついていましたが、その効果が下がるとクリック課金型へと広告メニューが遷移していきます。
これは広告主の圧力のせいで必ずそうなります。(全広告代理店さんが納得するはず笑)

 

imp課金にこだわって広告費を貰えないくらいなら、リスク込みでクリック課金でも広告を受けるメディアが出てきます。

そして、クリックされやすい広告クリエイティブ(女性の肌露出系など)が増えることになります。(クリックのA/Bテストすると、こうなっちゃうんですよ…)

 

また、imp課金で続けるためには「支払い能力が高くimp課金でもOKといってくれる広告主」に頼ることになります。
そのような広告主はどんな商材を扱っているかと言うと…、金融系商材、情報系商材、コンプレックス商材あたりが多いのです。

 

上記した広告は、人によって受け取り方が変わると思いますが、私としては嫌な広告だなという感想です。
まだリタゲで同一広告に追い回される方がマシです。

 

どうすれば良いのか?

まず認識しなければいけないのは、記事の質と広告の効果は何の関係性もないということです。

勘違いして欲しくないのは、記事の内容と広告の効果には因果関係があります。
あくまで、記事の「質」だけが関係ないということです。

 

例えば、ゲーム攻略記事にゲームの広告が貼られているのは分かりやすいと思います。
ゲーム攻略記事に広告が貼られたゲームは売れやすいです。
ですが、個人の適当に書かれた攻略Blogと、専用の記者が作ったゲーム攻略記事とで、PV数の差は大きくなりますがコンバージョン率には影響しません。(どちらかと言うと個人Blogの方がコンバージョン率が良かったりもする)

ゲーム記事だけを扱うようなバーティカルメディアであれば、まだ質の追求も意味がありますが、一般ニュースを扱うようなニュースサイトでは、ほぼ何も影響しません。

よって「記事の質を上げて、読者に選ばれるメディアになろう」はとても難しいのです。(記事作成コストにダイレクトに影響するので)

 

また、ありがちな打ち手として「アプリ化」があります。
デジタル化の文脈の元「リタゲが効きやすく、定期購読に誘導しやすいアプリを作りましょう」は一見、理にかなってそうですが実は悪手です。

自分の手元のスマホを見れば分かる通り、1メディアのためにアプリをDLすることはありえません
仮に本気でアプリ化を目指すなら、徹底的にユーザー目線を追求して、TVerのようなTV業界全体でのエコシステムを築くくらいの気概と労力が必要になります。

 

そこで現実的な範囲で考えて登場する打ち手が、読者の体験向上または滞在時間の長期化です。

 

読者の体験向上について

読者の体験を向上させる方法は沢山ありますが、現在主流なのは世間の反応を同時に示すことでしょう。
記事は世間の反応とともに消費されています

 

昔で言えば「はてブ」や、今だと「NewsPicks」でしょうか。
加えて、Yahooニュース、スマートニュース、グノシー等を思い出してください。
世間の反応が高いものが、より消費されています。
また、自分がシェアした記事に反応が返ってくることも重要視されています。

 

そういった読者が欲しい「記事の+アルファ」を提供することを目指すのが良いです。
付加価値と表現することが出来るかもしれませんが、それを提供することで、どんな接触面(ソーシャルか、キュレーションアプリか)であっても、積極的にお気に入りのメディアを見に来るでしょう。

もちろん、酷い広告ばかりが並ぶメディアであれば、積極的な再訪を望むのは難しいので、貼る広告についても体験の一部としてこだわる必要があります。

この際、自社で利用しているCMSを拡張し、各種の運用を変える必要がりますが、その程度の投資は覚悟する必要があります。

 

滞在時間の長期化について

Youtubeの利用者や一人当たりの利用時間は、年々伸びています。
また、Twitterや他SNSも同様に、一人当たりの平均利用時間は伸びています。
だらだら長時間利用する、ながら視聴する、という体験を提供することが、メディアへの依存度を高めているようです。
最近だと、TikTokの仕組みが非常に素晴らしく、ついつい長く見てしまいます。

 

この際、利用者の体験を著しく悪化させるような多数の広告枠や、サイトからの離脱を促すクリック前提の広告は、自社メディアのブランド育成、長期滞在化とは相反しており、やめた方が良いでしょう。
いかに長時間を自社メディア内に留まってもらい記事広告や動画広告のような離脱しない広告でのマネタイズが重要になります。

 

もちろん、SNSやキュレーションアプリのように、読者のエントランスページを取れれば一番良いと思いますが、それを獲得する難度が高いのは説明するまでも無いでしょう。

 

付帯効果として

上記した体験向上や長時間滞在化の技術は、3.記事の定期購読や4.メディア運営代行についても、プラスの効果を産むと思っています。

もう、この記事が長すぎるので、詳細については割愛しますが、詳しく聞いてみたい方は個別に要望ください笑

 

まとめ

私なりに、これからのメディアの収益方法をまとめてみました。

所詮、アドテク屋から見た収益アップの方法なので、賛否両論あると思います。
願わくば、この記事をネタに色々とディスカッションしていただき、メディアの収益アップの一助になれば幸いでございます。

1つだけ言えることは、皆から愛されるブランドあるメディアはやっぱり強い、ということ。
そこを目指せば、自ずと答えは見つかるのかな?と思っています。

 

 

筆者:株式会社EVERRISE 伊藤孝

企業の「攻めのDX」を支援するシステム開発会社EVERRISEの取締役。創業メンバーで14年目。 情報専門卒→大手SI→小規模SI→起業後現職。 中1からプログラムが大好きで、ずっとPGの道を進んできたが経営を安定させるため営業に専任。現在はDXコンサル営業。アドテクも得意。

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※EVERRISEへの問い合わせは、コーポレートサイトからどうぞ!

 

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