商標権とSEOに関連する新たな訴訟——大企業が中小企業を狙った訴訟? (前編)
願わくは、この投稿がSEOmoz読者各位の御意にかないますように。
今回は、商標権侵害とメタタグに関する訴訟についてお話しするわ。競合相手よりも検索上位に入るということは、特にその相手が無尽蔵の資金と非常に包括的な登録商標を所有している場合、とても危険だっていう話よ。
マイケル・グランツおよびハイヤー・ア・ヘルパー社 訴訟
United States District Court of Arizona, 2-08-cv-01271
訴訟当事者について
引越し用トラックレンタル会社Uホール・インターナショナル社(U-Haul)は、2005年頃から引越しに関するサービスと製品を提供するサイトeMove.comを所有している。今回はそのUホール社とeMove.comが、ハイヤー・ア・ヘルパー社(Hire a Helper)とその所有者であるマイケル・グランツ氏を相手に訴訟を起こしたの。
2007年に設立されたハイヤー・ア・ヘルパー社は、同名のWebサイトHireAHelper.comを運営していて、引越しサービスをはじめ数種類の臨時労働サービスを提供している。この訴訟では、グランツ氏と妻のエミー・グランツ氏も被告として提訴されているわ。
これはちょっと、ダビデとゴリアテの戦いみたいな状況だわ。Uホール社が大手企業なのに対し、グランツ氏のハイヤー・ア・ヘルパー社は、競合の激しい引越し産業におけるほやほやの新興企業なんだから。
訴訟にいたる背景の概要
この件に関しては、込み入ったおもしろい事情がいくつかあるの。グランツ氏はおそらく、自分のサイトを立ち上げる前から、Uホール社に目をつけられていたのでしょうね。
2005年に顧客と臨時労働者を結びつけるWebサイトを作る構想を初めて持った当時、グランツ氏は駆け出しのWebデザイナーで、まだ学生だったの。
ハイヤー・ア・ヘルパー社の設立に先立つ2005年、グランツ氏は引越し手伝い人としてeMoveに登録したわ。Uホール社は、グランツ氏が同社のプロプライエタリな企業秘密とノウハウを盗む目的で登録したと主張しているの。グランツ氏がeMoveに登録していた5か月の間に、彼は引越しの手伝いを23回断り、4回引き受けているけど、実際にきちんと仕事をしたのはたったの1回だけだった。eMoveではこの事実を、グランツ氏が同サイトにアクセスするという隠された動機があった証拠として挙げているわ。
一方のグランツ氏は、2005年に引越し手伝い人としてeMoveに登録したことについて、学生だったため暇な時間に引越しを手伝うことでいくらか小遣い稼ぎをしたかったからだと主張しているわ。また、引越しの仕事をほとんど引き受けなかったのは、学業で手いっぱいだったため、結果として都合がつかなかったからだとも説明しているの。同氏は、人々の引越しを手伝った経験が、自分のサイトで提供する臨時労働力の一種に引越し業務を含めようと考えた理由の一部だと大っぴらに認めているわ。
興味深いことに、引越し手伝い人として登録するためにグランツ氏がeMoveと結んだ契約には、法的強制力なんてたぶん認められそうにないんだけど、eMove.comに関するすべての情報の守秘義務についての条項がたくさん含まれていたの。公開されている情報まで対象になっているわ。また、商標、トレードドレス(製品のパッケージに使われる宣伝用印刷物や包装など全般の形態)、ドメイン名の使用に関する厳しい規定もある。Uホール社がハイヤー・ア・ヘルパー社だけでなくグランツ氏個人をも提訴した理由の1つは、グランツ氏が個人の資格でこの契約を結んでいたからなの。
2005年に短期間だけeMoveの会員になっただけでなく、グランツ氏は2007年にHireAHelper.comを開設する2か月前、自分のブログにeMove.comに関する記事を投稿しているわ。この記事でグランツ氏はeMove.comについて、「まずいデザイン」だという問題点はあるものの、デザインに凝ったEコマースサイトよりも事業においては成功しているサイトだといって、嫌味な褒め方をしているのよ。Uホール社は、この記事の投稿とハイヤー・ア・ヘルパー社のサイト開設からわずか数か月のうちに今回の訴訟の準備を開始したようだけど、偶然かしら? 私にはそうは思えないわ。
この記事は2回に分けてお届けする。次回は、この訴訟における問題点について考えてみよう。→後編を読む
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