“カッパの黄桜”のイメージをソーシャルでも。カッパ課長が盛り上げる黄桜Facebookページ
「カッパの黄桜」というイメージが強く、会社よりもカッパのキャラクターが前面に出て広報担当として運用するほうが、お客様にとってすんなり伝わると考えました。
投稿内容には営業色を出さないようにしています。だからこそ、みなさんが気軽に話しかけて会話をしてくれていると思います。
京都市伏見区で50年以上の歴史をもつ老舗の清酒メーカーとして、清酒の製造・販売を行う黄桜。最近は食品や化粧品製造にも取り組んでいる。
同社はFacebookページにも、CMでおなじみのカッパのキャラクターを登場させ、ユーザーと活発にコミュニケーションをとっている。今回は、同社のFacebookページ運用を担当している黄桜 営業統括部 企画チーム 企画・広報担当 奥田友香氏に話をうかがった。
- 運用開始時期:2013年4月
- いいね!:5,214人
くつろぎ、うるおい、かがやく。黄桜株式会社の公式Facebookページです。黄桜カッパ広報部のカッパ課長が、地元京都の話題や黄桜の最新情報をお届けします!
Facebookページ運用の目的
黄桜好き、日本酒好きを増やすための新しい手段に
――Facebookページはどのような目的で開設したのでしょうか。
奥田黄桜の課題として、清酒を飲む人が減っているということがありました。お酒に関心がある人たちに、もっと清酒の魅力を知っていただくための手段としてFacebookページを開設しました。特に、興味を持っている人にピンポイントで情報を届けるのは、テレビCMや雑誌広告などのマス広告では難しかったので、新しい接点になると思い2013年の4月にFacebookページを開設しました。
Facebookページでは、清酒の情報はもちろんですが、黄桜を好きになってもらうことも目指しています。ですから、本社がある京都のスポット情報や、「今日は何の日」などの暮らしに役立つ情報、イベントなど旬の情報を交えて発信しています。
Facebookページを立ち上げるときは、「ブランドイメージを上げよう」「売上を上げよう」「商品を紹介しよう」という考えもありましたが、Facebookページを1年運営してみて特によかったと感じることは、お客様とのコミュニケーションが密になったことです。
黄桜の持っているイメージを活かしてカッパ課長を窓口に
――キャラクターを使った運用にするというのはどういう経緯で決まったのですか。
奥田Facebookを始める前から、お客様と話していると「あ、カッパですよね!」と言われることが多くありました。50年近く前からカッパをCMに使っていることもあって、「カッパの黄桜」というイメージが強いのですね。そこで、黄桜という会社よりもカッパのキャラクターが前面に出て広報担当として運用するほうが、お客様にとってすんなり伝わると考えました。
――キャラクター設定はどの程度行いましたか。
奥田「名前」「年齢設定」「好きな食べ物」「口調」「感情の絵文字(・Θ・)(´Θ`)(^Θ^)」など、基本的な部分を決めて、そこからずれないように運用しています。
カッパ課長は男性ですが、運用している私は女性。本当は男性が運用するほうがいいのかもしれませんが、私は理想の上司というイメージで運用しています。キャラクターの個性として「人懐っこい」というのがあって、映画「釣りバカ日誌」の主人公のハマちゃんのような陽気な人をイメージしています。
――Facebookの投稿では、よくカッパ課長のパネル写真が登場していますが、これはFacebookのコンテンツ用に作成したのですか。
奥田漫画家の小島功さんに新しく7パターンの絵柄を書いていただきました。写真撮影のとき、状況にあわせたパネルを選んでいます。
カッパ課長以外にも、ぬいぐるみの「カッパ隊」も登場しています。このぬいぐるみは直営レストランの「カッパカントリー」で販売しているものです。Facebookページを立ち上げるときに、このぬいぐるみをキャラクターにするという案もあったのですが、やはり黄桜のイメージのカッパをメインにしました。カッパ隊は、カッパ課長を助けるという役割で登場しています。
運用体制
ソーシャルメディア開設にあたって社内の準備を万全に
――Facebookページの運用体制はどうしているのですか。
奥田今は社内では私1人がFacebook担当です。始めは2人、途中で3人になりましたが、1人でも大丈夫ということになりました。投稿の制作については、代理店とライターにも協力してもらって作成しています。コメントの返信は、私が担当しています。
――代理店と一緒に運用ということで、ガイドラインなどは決めたのでしょうか。
奥田Facebookページを開設するときに、運用マニュアル、運用ルールを作成しました。投稿は私が作成する分と、代理店とライターが作成する分がありますが、お互いが作成したものを必ずチェックして承認するというフローで運用しています。
コメントの返信については、運用当初は代理店の方に返し方をチェックしていただいていましたが、トレーニングしてうまくできるようになったので、今は代理店のチェックなしで運用しています。
社内の担当者は私1人ですが、専任というわけではなく、商品企画の仕事の1つとして担当しています。仕事の配分としては、商品企画が7、Facebookが3くらいです。最初に運用マニュアルを整備したので、1人でも運用できています。また、お客様とのコミュニケーションをきっかけに新しい商品のアイデアが生まれることもあり、仕事の境目がなくなってきたと感じることもあります。
運用リスクを考えFacebookのみに専念
――ソーシャルメディアの公式アカウントはFacebookだけのようですが、なぜはじめにFacebookを選んだのですか。
奥田Twitterの運用についても検討したのですが、Facebookのほうが、実名登録ということで炎上リスクがTwitterに比べれば少ないだろうと考え採用しました。
会社には年齢層が高い人も多く、Facebookを理解している人も少なかったのでなかなかOKがでなかったのですが、運用マニュアルを作成して管理体制をしっかりし、リスク管理として万一のことがあったときの対応方法も整理したので社内説得ができました。
お客様窓口の役割もFacebookページが持つように
――Facebookページではコメントを毎回返されていますし、みなさんからのコメントも多いですね。カッパ課長としてコミュニケーションするにあたって、気をつけていることはありますか。
奥田Facebookページでコメントをしていただいている方の年齢層が、想定していたよりも高く40~50代の方が多くなっています。みなさん、黄桜のイメージをすでに持たれている方なので、そのイメージを壊さないようにしています。
また黄桜という会社よりも、カッパ課長というキャラクターが「生きている」のが伝わるように、日々の会話を一緒に楽しんでいこうと思っています。人と会社のコミュニケーションではなく、人と人とのコミュニケーションを意識しています。
よくいわれることではありますが、投稿内容には営業色を出さないようにしています。営業色が強くないからこそ、みなさんが気軽に話しかけて会話をしてくれているのかな、と思います。普段のやりとりのなかで、新しい商品の企画やアイデアをいただくこともあります。
――今のように、ファンのコメントが増えるきっかけはあったのでしょうか。
奥田直営店レストラン「カッパカントリー」を昔からよく利用していただいていたお客様が、当初よりFacebookページにコメントや、店舗での写真を積極的に投稿されていました。その方が積極的に書き込んでくれたおかげで、自然と他の方も「このページには気軽に書き込んでもいいんだ」と思って、コメントを返してくれるようになったようです。
運用を開始するときに、「いいね!」が1万人くらい集まらないとコメントはつかないよ、と言われていたのですが、2,000を超えたくらいから盛り上がってきました。
――返信に困るようなことなどはありませんか。
奥田最近、直営店のレストランでの苦情を投稿いただいたことがありました。そのコメントにはすぐに対応をしました。Facebookページが、お客様相談室のような機能も請け負うということは予想外だったのですが、結果的にFacebookページですぐに返信ができ、そのコメントに対してその方からいいね!をいただいたので安心しました。また、苦情の内容についても直営店のほうに連絡し、改善するようにお願いしましたし、お客様は常に見ているということも伝えました。
Facebookが
お客様窓口の1つになる
また、こうしたコメントの返信をお客様相談室と共有することで、同様のお問い合わせがきたときのお手本になっています。Facebookページヘのいいね!やコミュニケーションが増えると、Facebookページがお客様にとって、窓口の1つになると感じています。
コミュニケーションが活発だからできたキャンペーン
――Facebookページでのコミュニケーションが商品企画にも活きるということですが具体的にどんなアイデアがあるのでしょうか。
奥田先日、新商品のネーミングキャンペーンを開催しました。初めての企画だったのですが、すごく反響があって、みなさん一生懸命商品名を考えてくださいました。
キャンペーン内容は投稿で告知し、Facebookのメッセージで投稿してもらうという方法だったのですが、89件の応募がありました。良い名前をたくさん応募していただき、そのうち、最終候補が2つ残りました。なかなか決まりませんでしたが、候補の2つの折衷案として「お酒のシャーベット シャリッと」になりました。
キャンペーンは最優秀賞1名、優秀賞2名で、賞品として賞品と黄桜グッズをプレゼントというものだったので、賞品の価格価値は出していません。それでも多くの人が参加していただいたのは、興味を持ってくれた方が多かったのだと思います。こちらの「お酒のシャーベット シャリッと」は2014年6月17日に販売開始しています。
1か月分のスケジュールを投稿カレンダーで共有
――代理店さんと一緒に投稿を作成しているということですが、投稿はどのように決めているのですか。
奥田毎月、1か月分の投稿スケジュールを決めています。投稿は土日をのぞく平日は毎日投稿しています。といっても必ずスケジュールどおりというわけではなく、旬な情報があれば差し替えるなど、調整しながら投稿を作成しています。
たとえば、京都の情報はライターと代理店にお願いしています。ライターに依頼した経験がなかったので不安もあったのですが、意図をきちんと伝えることで、ページの雰囲気にあわせた投稿を作成しています。京都在住の方なので、京都のお店情報などにも精通していて助かっています。
投稿はまとめて作成するのはなかなか難しく、その時々で作成し、承認フローにまわすという流れです。
投稿のタイミングもある程度決めています。月曜は、朝8時半に「おはようございます」というメッセージとともに投稿していますし、お昼の話題は12時、おやつの話題は午後3時、アルコールの話題は午後5時半以降にアップするというようにしています。週末の京都情報は、金曜日の5時半にアップしていて、土日に京都を訪れる人の参考になればと思っています。
運用ツール
複数チームの運用を想定してツールを選択
――Facebookの運用ツールはどのように選びましたか。
奥田Facebookページの立ち上げるときに、代理店を含めた全員がアクセスしてやりとりできることを条件に探しました。予算の制限もあるなかで、「つぶやきデスク」が予算内で便利に利用できるということで代理店から提案されました。
予算内で、複数人で投稿内容をチェックできるという要件を満たすツールが他になかったので重宝しています。またスマートフォンからもアクセスできるので便利です。
――複数人での運用はどのように行っていますか。
代理店と弊社でそれぞれ投稿用のアカウントと管理用のアカウントを持っています。弊社で投稿するときは、投稿用のアカウントでログインして投稿を作成し、代理店が管理用のアカウントでログインして承認します。逆に代理店が作成したものは、私が管理用でログインして承認します。承認は必ず投稿の前日までに完了するようにしています。
「承認」を終えているかどうか、相手がチェックしたかがわかるので、つぶやきデスクはとても使いやすいです。また、メモ機能で「○○を修正しました。承認お願いします」というように連絡事項が伝えられるのも便利です。電話やメールで連絡しなくてよいので、簡単ですしわかりやすいです。
投稿を作成するときに、短縮URLがその場で生成できるのもいいですね。他のURL短縮サイトにアクセスしなくていいので、作業が楽です。
――承認と投稿はリアルタイムですか、それとも予約して行っているのでしょうか。
奥田投稿予約機能を使っています。その場で投稿をするということはなく、毎回スケジュールにあわせて、前日までに投稿時間を設定しています。
効果測定
話題にしている人を20%にすることを目標に運用
――Facebookページを運用してどんなところに効果を感じていますか。
奥田Facebookページの運用が商品の売上につながったかは、まだはっきりとはわかりませんが、直営店のレストランにいらっしゃる方が増えたように感じています。直営店のお酒の情報などを投稿すると、「行ってみよう」「行ってきた」というコメントをいただくことがあって、コミュニケーションを通してレストランに足を運んでもらうことができていると思います。
――テレビCMと比べてソーシャルメディアの効果はどうでしょうか。
奥田黄桜としてCMを放送する時間帯は限られていて、夜9時以降のドラマ枠などがほとんどです。その時間帯にテレビを見ている40代~50代の男性がターゲットなのですが、Facebookのほうがより幅広い層に届けられていると思います。
大手であればいろいろな枠で放映できますが、黄桜はそこまで露出量が多くないので見る人が限られてしまうのです。Facebookページの男女比は、今は7:3で男性が多いのですが、年齢層で最も多いのは35~44歳で、次が45~54歳です。FacebookではCMのターゲットよりも、年齢層を下げることを意識しています。
――効果測定としてどういう数値を追っていますか。
奥田コミュニケーションをとることが目的なので、Facebookページのいいね!に対して「話題にしている人」の比率をチェックしています。定期的に数値を測定していますが、今はだいたい15%~20%くらいです。いいね!が増えると話題にしている人の割合が下がると言われているので、それを下げないようにすることと、競合他社のFacebookページよりも話題になる割合を高くすることを目標にしています。
――どういった投稿の反応がよいのでしょうか。
奥田お酒に関連するイベントの告知をシェアすると反応がよいです。黄桜としてイベントに出展するときの告知も兼ねているのですが、いいね!やシェアが多くなります。
なお、イベントのときにはカッパ課長の名刺を用意しています。QRコードからFacebookページにアクセスするようにしているので、そこからFacebookページの誘導につなげています。カッパ課長の名刺は営業担当も持っているのですが、お客様からカッパ課長の話題がでることもあるそうで、社内的にも期待がでてきています。
自分が楽しみながら人と人とのコミュニケーションをする
――Facebookページの運用で悩むことはありますか。
奥田コミュニケーションを積極的にしていくことを目指して運用し、うまくコミュニケーションが増えていますが、このままさらに増えていくと、コメントを返す時間がなくならないか心配です。コミュニケーションの質は下げたくないので、質を維持したままどこまでできるか考えることがあります。
もう1つは、人事異動があったときの引き継ぎです。運用マニュアルやルールは整備されているので、ある程度は引き継げますが、コミュニケーションの部分は人のクセのようなものもあるので、ちょっと心配です。
――他のページの運用担当者に伝えたい運用のコツがあればお願いします。
奥田楽しんで運用するのが一番だと思います。お客様とのコミュニケーションが増えてくるにつれて、おもしろいコメントがあったり、料理の写真をアップしてくれる方がいらっしゃったり、とてもうれしく思っています。
私は個人としてもFacebookを使っていますが、それと同じ感覚で、友だちとコミュニケーションをとる楽しさを感じながら運用しています。
ユーザーと一緒に楽しみながら
コミュニケーションすることが一番のコツ
――今後はどのような展開を考えていますか。
奥田ネーミングキャンペーンはお客様も楽しんでいただきましたし、社内でもこんなにたくさんのアイデアをいただけたことに驚いています。ですので、今度は商品の中身から一緒に作っていくような企画をしてみたいです。
それから、今年中に1回オフラインのイベントを開催したいと思っています。まだ具体的には進んでいませんが、秋には酒造を開放する蔵開き、日本酒の日などがあるのでそのあたりをめどに、直営店や京都で何かイベントができたらいいなと思っています。
ソーシャルもやってます!