企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用の現場

イベント参加者の50%が商品を購入、ファンの声を拡散して見込客のハートをつかむBenQのソーシャル活用

ファンミーティングとソーシャルメディアを連動させたマーケティングに取り組む
企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用

製品を体験された方の約半数が、その後に製品を買ってくださる。ファンの発信が拡散することで、次の購入者が増えるというループを作りたい

購買行動の意思決定要因として、家族や友人のクチコミが関与することは、今も昔も変わらない。それどころか、モノがあふれ情報過多となった現代、クチコミはより重要になったといえる。

ファンに情報を発信してもらい、ファンの声を拡散することで、見込み顧客の購入を後押しする。そんな取り組みをしているのが、ベンキュージャパンだ(以下、BenQ)。PC好き、特にゲーマーたちは「BenQのディスプレイでなければ」と口をそろえ、リピート購入率も非常に高い。

ファンとのつながりを大切にしたアンバサダープログラムとともに、ソーシャルメディアを活用するBenQと、運用をサポートするアジャイルメディア・ネットワーク(以下、AMN)に話を聞いた。

「やってみる」ことより細部にこだわる日本

――BenQのビジネスについて教えてください。

ベンキュージャパン株式会社
プロダクト&マーケティング部
部長
洞口 寛 氏

洞口液晶ディスプレイやプロジェクター、大型ディスプレイなどPC周辺機器を取り扱う台湾のメーカーです。日本では、PCやコンソールゲーム機、ブルーレイ・DVDレコーダーなど、接続表示装置としてさまざまな分野で活用されています。特にコンシューマー機においては、ゲーマーやカメラマン、デザイナーなどに広く支持されています。

――ソーシャルメディアを始めたきっかけについて教えてください。

洞口Twitterは2010年2月に開設しましたが、長い間うまく使えていませんでした。情報発信ツールとして、新製品のリリース情報などをツイートしていたものの、ユーザーとのコミュニケーションはできていなかったのが実情です。一方で、台湾本社や英国、米国社では、ソーシャルメディアでユーザーと自由なコミュニケーションをしており、「日本ではなぜやらないのか」と言われていました。

Twitterを使ったコミュニケーションに踏み切れなかったのは、「返信はどこまで対応するのか」「どういう発信をすればメーカー認知につながるのか」という方針が当時なかったからです。

海外では、新しいツールを使ったコミュニケーションに積極的に取り組むと同時に、活用しながらユーザーへの返信や情報の発信を行うことでそのノウハウを身に付けてきていました。一方、日本では特に炎上リスクや会話のディティールを重視するためにうまく活用するのが難しく、ジレンマを感じていました。

また、マーケティングコミュニケーション部のメンバーは2名いますが、外部メディアに掲載するコンテンツなどは基本的に内製していたためキャパシティーが足りないという課題もありました。

熱狂的ファンとつながるためにコミュニケーション型の運用へ

――現在は会話を交えた運用に切り替えていますね。今のような方針になったのはいつごろですか。

洞口この1年ぐらいの間で、情報発信でしか使えていなかったソーシャルメディアをコミュニケーションに活用しはじめています。きっかけは、アジャイルメディア・ネットワーク(以下、AMN)さんに、2016年の8月からアンバサダー(熱狂的ファン)プログラムをお願いしたことです。プログラムの一環として、FacebookとTwitterを活用することになり、運用をサポートしてもらっています。

アンバサダープログラムでは、ファンを増やすことを目指しています。というのも、弊社の製品はAmazonなどのECサイトや専門のPCショップを主に販売しており、ユーザーの裾野を広げたくても、「製品を直接見てから買いたい」「ブランドの認知が高まらない」という課題があったからです。

そこで、アンバサダープログラムの体験イベントなどを通してBenQのファンをつくり、ソーシャルメディアでユーザーと直接コミュニケーションして認知度を上げようと思ったのです。

ソーシャルメディアに加えて、イベントや雑誌、Webメディアなどへの出稿を通して認知を上げ、「購入してもらう」「さらにファンになってもらって情報を発信してもらう」「その発信を公式アカウントで拡散させる」という流れです。

理想は、ファンの発信が拡散することで、また次の購入者が増えるというループを作れたらいいと考えています。ソーシャルメディアは、情報発信や拡散の部分で活用しています。

アンバサダープログラムのイベントなどを通して、フォロワー数も増えましたので、さらにコミュニケーションを深めていきたいですね。

製品を体験したファンの声を伝えることで、購入を検討する人の背中を押していく

コミュニケーションの軸はコンテンツ

――具体的にどんなコミュニケーションをされていますか。

洞口コンテンツが重要ですので、AMNさんと一緒にいろいろ企画しています。たとえば、BenQのマスコットキャラクターがいるのですが、以前は名前がついていなかったんです。

そこでソーシャルメディアで投票を行って名前を決めるという企画を実施したところ、「BLIAN(ブライアン)」に決まりました。エンドユーザーとダイレクトにコミュニケーションができるようになったと感じますね。

ソーシャルメディアを活用したBenQ15周年記念の公募企画。ハッシュタグ「#BenQアンバサダー」を通じて情報拡散や投票が行われた。Twitterで当時の様子を検索する

定例会で情報を共有し、発信内容をGoogle Docsで管理

――企画や投稿など、具体的に2社の間でどのような運用をしていますか。

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
アカウント・エグゼクティブ
江田 容子 氏

江田アンバサダープログラムの定例会で、ソーシャルメディアに限らず、イベントなども含めて話し合っています。そこで、プロモーションする製品やプレスリリースなどの情報をいただき、弊社から配信チャンネルやコミュニケーション方法を提案しています。

Facebookの投稿はGoogle Docsを使って管理しています。いただいた情報をもとにコンテンツを作成して、修正と承認をいただくという流れです。投稿内容はイベント告知、イベントの様子、リリース、コンテンツ制作の様子などが中心です。ユーザーからコメントがあればその返信も対応しています。また、アンバサダーによる製品レビューの紹介も行っており、ファンのコンテンツを拡散することもFacebookの重要な役割です。

Twitterは情報発信に加えて、ユーザーとのコミュニケーションやアンバサダーの発信した情報の拡散に力を入れています。こちらもGoogle Docsで、「このツイートに対してこういう返信をしたい」「リツイートをしたい」ということ記載して、BenQさんに内容が適切か判断してもらっています。製品に関する技術的な内容は、サービス・サポートや製品担当の方の意見もいただきながら、返答を決めています。

洞口日本のキーメッセージは「ユーザーにとって身近な存在になれるか」というものです。一般量販店で製品を見られないという環境があるため、AMNさんとは、どうすればBenQがユーザーの身近な存在になれるか考えながら投稿案を一緒に考えています。

アンバサダーの体験イベントに参加した方には、ディスプレイやプロジェクターを一定期間レンタルして使ってもらっています。期間がきたら返却となるのですが、これまでの経験上、体験後に製品を購入いただく方が約半数です。リプレイスの際に再購入いただく方も多い。

これまでBenQを知らなかったという方が、イベントに参加した人や購入した方の満足した声に触れることで、購入のきっかけになることを期待しています。製品Webサイトでも、レビュー内容を掲載したり、購入先のリンクを案内したりしています。

江田製品を貸し出しているのは、実際に試した体験レビューを作っていただきたいからです。体験した方のなかには、「返却しないで購入したい」「もう買ったから返します」という方もいます。

洞口本来は100名規模でできるといいのですが、実機の貸し出しのため限定的になっています。ただ、話を聞く限り、確実に半数の方に買っていただけるのであれば、大きな規模で実現できたら面白いと思います。

体験イベントの目的は製品を体験してレビューしてもらうこと

ソーシャルメディアをきっかけにした売上貢献の可視化が課題

――ソーシャルメディアの運用目標は何か設定していますか。

洞口KPIは売り上げを重視しています。マーケティングコミュニケーション部署のKPI設計でも売り上げは重視されているため、実施したマーケティング活動が売り上げにつながったのかは重要です。

ただし、ソーシャルメディアの情報発信や拡散が売り上げのきっかけをどう作っていったのか、実際につながったのかどうかが課題としてあります。ソーシャルメディアの拡散やブログ記事によって、レビューが増えたのか、それが売り上げにどれだけつながったのかが、最終的な数値として出てくる内容になると思います。

――ソーシャルメディアが事業に貢献しているのかという話は、どの企業でも課題だと思います。

洞口最終的には、パートナーさんにも理解いただけるような数値やスキームとしての形ができあがればいいですね。

管理ツールでツイート件数や内容を漏らさずチェック

――ソーシャルメディアの分析はどうやっていますか。

江田運用ツールの「つぶやきデスク」を使って、「BenQ」に関するツイートをチェックしています。

たとえば、2017年2月にゲーミングシリーズ「ZOWIE」の体験イベントを開催したところ、XL2540 がトレンド入りしました。言及数がすごく多かったのですが、つぶやきデスクの検索フォルダ機能により、該当ツイートの収集、計測がスムーズにできました。

製品や社名への言及数は、イベントや施策がないときは落ち着いていますが、なんらかの施策を実施すると上がるので、その数値はイベント事務局として常に管理しています。

ツールの検索フォルダでは、「BenQ」「製品名」「型番」などのキーワードを登録してチェックしています。前述したGoogle Docsにも製品ごとの言及数を記載して、今どの製品の注目が高いのかわかるようにしています。

ホットな製品について言及している方には、こちらから声をかけるなどアクティブアプローチをしています。つぶやきデスクは、アンバサダーの発信だけでなく、全体でどのくらいの言及があるのかがわかるので便利ですね。

検索キーワードを登録して、ソーシャルメディア上の動きを定点観測する

――ツール導入のきっかけはどこにありましたか。

江田以前から弊社のメンバーが他社の案件でつぶやきデスクを使っており、キーワードを含むツイートを収集できる、URLのタグ付けができるという理由で勧められました。運用メンバーでどのツールを使うか比較検討しましたが、価格や機能、それに使っている本人からの推薦があったことで選択しました。

アクティブアプローチを続けることで、ファンが積極的に発信するように

――アクティブアプローチについて詳しく教えてください。

江田BenQさんはTwitterで非常に言及が多いメーカーです。特に、ZOWIEシリーズは大変人気ですし、購入したときにパッケージの箱やモニターをセットした写真をアップする方もいます。そうした場合に公式アカウントからリツイートしたり、お礼を伝えたりしています。

先日、長野在住のアンバサダーを取材したときに聞いたのですが、BenQファンの間では、「製品写真をアップすると、公式アカウントが話しかけてくる」という話が広まっているそうです。

最初はメーカーが話しかけてくることが珍しくて、びっくりされたり、喜んだりしていましたが、今はそれを狙って、「並べてみた」「買った」など積極的にユーザーが発信してくれるようになりました。運用メンバーもユーザーとのやり取りが楽しいと言っています。

――他のソーシャルメディア担当者へのアドバイスがあればお願いします。

洞口ソーシャルメディアはコンテンツが最も重要だということに尽きますね。情報をどうやって出すかというアイデアが一番のポイントです。

ソーシャルメディアは、広告媒体の出稿と比べるとコストは安いですが、どうすればコンテンツを使って拡散できるか考えなければなりません。

コンテンツのアイデアは、AMNさんに助けられています。以前、イベントの準備をしている様子をコンテンツにすることを提案されました。そのときは、そんな情報が必要なのかと思ったのですが、ユーザーと密にコミュニケーションして身近に感じてもらうためには、人を出す、裏側を出すことが重要だと感じました。

江田まさにそうですね。BenQさんは代理店である弊社に丸投げするのではなく、コンテンツを一緒に考えていただけるので助かっています。やはり製品の詳細を知っているのは担当者さんですし、1つひとつをこだわって作っているので、血が通ったコンテンツが制作できています。

――今後どういった施策をしていきたいですか。

洞口先日、AMNさんのユーザー会で他の業界の担当者の方とお話する機会があったのですが、メーカーコラボレーションができると新しい展開ができそうです。BenQのファンの方はいろいろな施策をおもしろがってくれるので、他のメーカーと一緒に楽しい企画をやりたいですね。

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