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ウェブUXをインテリアデザイナーに学ぶ:北欧モダンデザイン界の巨匠ヴァーナー・パントン氏

現在に成功するオンラインのUXに適用していくために、パントン氏のデザインから得られる洞察を紹介する
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

人は好きな色に座るほうが快適だ

これは、デザインの革命家と呼ばれるヴァーナー・パントン氏がかつて語った言葉だ。理屈にはこだわらず、人の好き嫌いを左右する漠然とした関係性にしっかりと焦点を合わせた主張だと思う。

パントン氏のこの主張は、デザインについて何を語っているのだろうか? そして、より重要なことは、これをあなたがオンラインマーケティング戦略に適用するには、どうすればよいのだろうか?

答えは、ユーザーエクスペリエンス(UX)に力を注ぐことだ。デザインがいかに認知科学に影響し意思決定を促すのかを理解しよう。

この記事では、パントン氏のデザインに関係する話をいくつかとりあげ、そこから現在に成功するオンラインのUXを作るために得られる洞察を紹介する。

UXに力を入れる理由

パントン氏のネオン・スイミングプール
パントン氏のデザインした「ネオンのあるスイミングプール」

パントン氏は、家具デザインが素晴らしく奇抜だった時代に活動し、ネオンのあるスイミングプールでデザイン界に大きなうねりを起こして、1950年代末のポップ・ムーブメント形成に寄与した。

同氏が、機能をおろそかにすることなく感情を喚起するデザインに重点的に取り組んだことは、その風変わりな作品のすべてに、さらには、今日のデザイン活動のなかにも見て取ることができる。

ユーザーエクスペリエンスは、「主観」が大きな比重を占める分野だ。そのため、UXのさまざまな取り組みに定量的な指標を直接的に関係づけることは難しい。オンラインの取り組みは、ユーザーの感情に関係してくるので、原因を特定することは難しいかもしれない。しかし、コンバージョンの増加や直帰率の減少を見れば、強化されたUXに託した意図と連動することがわかる。

デザイン・マネジメント・インスティテュートによる分析を見ると、デザイン主導の企業は、そうでない企業を株価指数で228%上回っている。それは、効率的なユーザーエクスペリエンスの構築などの取り組みによるものだ。デザイン主導型の企業は、顧客とかかわるタッチポイントごとにユニークな体験を提供して、効果的により多くの製品を販売し、より多くの利益を得ているのだ。

さらに、関係者によるワークショップを推進すれば、関係者間の協力関係を促進しつつ、効果的に要望を集めることができる。

UXデザインをいかに検証するか

パントン氏のコーンチェア
パントン氏のコーンチェア

パントン氏のコーンチェアは、両親の経営するレストランのために同氏が作ったものだ。レストランの客がこれを絶賛したことで、販売生産する運びとなった。できあがったコーンチェアは、ニューヨークの5番街のショップに少しの間だけ展示されたが、あまりに人が集まりすぎたために、すぐに撤去された。

ユーザーエクスペリエンスは、「直観」を軸とする。ユーザーインターフェイスの普及により、ターゲットとするオーディエンスの全体としての体験を考慮しつつも、ユーザー個人の体験に焦点を合わせることがきわめて重要になっている。

ターゲットとするのが1人であれ複数であれ、ユーザー体験のコンセプトの検証にはシステマティックな手法をとることが重要だ。下図に示したケニード・ボウルズ氏による検証スタックは、「デザイン理論」「ユーザー調査」「ユーザーが残す証拠」の間の密接な関係を示しており、全体として、UXの概念を効果的に検証している。

UX検証スタック
下から「デザイン理論」「ユーザー調査」「ユーザー残す証拠」の順に積み重なっている

この検証スタックでは、それぞれを改善するにあたって、データに基づいた提案を出すようにとしている。早期に関係者から同意をとりつけ、ユーザーテストを繰り返して主張の裏付けをとることによって、ユーザーエクスペリエンスに関する論拠の改善とコンセプトの強化を同時に行うことができる。

UX改善への道

パントン氏のSチェア
パントン氏のSチェア

パントン氏のSチェアは、一体成型のプラスチックでできた脚のないユニークなイスだ。1995年には、ヌードでこの椅子に座ったモデルのケイト・モスがVOGUEの表紙を飾った。このイスはいまでもポップ・ムーブメントの象徴となっているが、積み重ねられたプラスチック製バケツに着想を得たものだという説もある。

Sチェアは、継ぎ目のない素材を選択することで一貫性を演出し、スムーズに重ねられるという機能性も備えたデザインだった。

UXのデザインは、気をそらすことなくユーザーが決断まで進めるように、一貫性と機能性を兼ね備える必要がある。

  • ユーザビリティ:使いやすさの向上

    ユーザーがサイトとコンバージョンファネルをどのように移動するのかを観察し、経路全体を吟味する。

    サイトとサイトの使いやすさについてどう思うかを、ユーザーに尋ねる。

    (使用するツール:UserTesting.com

  • 情報デザイン:視覚的な階層構造を作る

    データを使ってデザインを判断する。

    サイトにおいてよく見られる振る舞いを追跡し、サイトやページのレイアウトを調整する。

    (使用するツール:Simple Mouse tracking

  • コンテンツ戦略:個性を組み込む

    すべてのプラットフォームについて、ブランドからの語りかけのトーンを確認する。

    (使用するツールについてはDistilledのコンテンツガイドで検討されている)

いろいろな潜在ユーザーを、時間をかけて観察するべきだ。ユーザーの体験とユーザーが受けた影響は、意思決定のプロセスに絶え間なく影響を及ぼすのだから。

ブランドとユーザーの対話はいかにUXを向上させるか

パントン氏のリビングタワー
パントン氏のリビングタワー

パントン氏のリビングタワーは、高さが2メートルもある印象的な構造物だ。ユニークな形に切り抜かれ、コミュニケーションを促進するようなデザインが施されている。奇妙なアメーバのような切り抜きによって、普段とは違う姿勢で座るように促し、会話を弾ませる。

ユーザーエクスペリエンスの取り組みは、対話のための空間ときっかけを作ることで強化できる。

ソーシャルチャンネルやフィードバックでユーザーと関わり合っているブランドは、その目標として、「ユーザーがいるターゲット市場に狙いを絞る」とか「ユーザー/オーディエンスが好むような対話の場を作る」といったものを設定すべきだ。

ブランドのソーシャル戦略を考えたり作ったりする際には、まず次のような質問を考えることが重要だ。

  • そのソーシャルプラットフォームはブランドのコンセプトにかなっているか?

  • ユーザーがあえてそのプラットフォームでブランドと対話する理由は?

  • そのソーシャルプラットフォームはユーザーにどんな付加価値を提供できるか?

  • ユーザーにとって、どんなときにブランドと対話するのが最も有益か?

ユーザーの間で現在、競合ブランドや業界に関する議論がどのように行われているかを調査することは、ソーシャルメディア戦略とコンテンツ制作のための潜在的なチャンスを見つけるのに役立つかもしれない。そのうえで、ネットワークのリファラー、コンバージョン、ランディングページ訪問の分析などを通じて、ソーシャルチャンネルの影響を測定する。

UXにユーザー中心のデザインが必要なのはなぜか

アルネ・ヤコブセン氏のアントチェア
アルネ・ヤコブセン氏のアントチェア

パントン氏はアルネ・ヤコブセン氏の下で学び、ヤコブセン氏のアントチェア作りに関わった。アントチェアは、デンマークの大手製薬会社のカフェテリア用として制作を依頼されたものだ。脚の部分は、快適で軽く、重ね置きできるように設計されている。イスの脚が3本だけなのは、ランチタイムに人々の脚やほかの家具にできるだけ当たらないようにするためだ。

ユーザーエクスペリエンスの取り組みでも、これと同じような方法論に基づいて、シームレスな体験を損なうことなく、ユーザーが使える機能を増やすようにするべきだ。

信頼、動機付け、および機能性のバランスを取ると、最終的にユーザーエクスペリエンスを向上させることができる。定性試験と定量試験、およびトラッキングを通じて、ユーザーのパターンを調査し、学習する。

ユーザーエクスペリエンスの要素、原則、方法論をあなたはどのようにオンラインマーケティング戦略に取り込んだだろうか? Mozに集まるみんなの声を聴きたい!

個々の色と色彩心理学に関するパントン氏の見解について知りたい人には、こんな資料がある。

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