Webに必須の「作業実績コンテンツ」をクレームなしで載せる方法
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の382
毒にも薬にもなるコンテンツ
効果の高い薬は、毒性も強いといわれ、どんな薬も飲み過ぎれば毒になります。万物に通じる真理のようで、影響力の強い人間が扇動によって社会を混乱させることもあれば、研ぎ澄まされたナイフがたやすく自らを傷つけるように、ビジネスに結びつきやすいコンテンツはトラブルの種にもなります。だからこそ取り扱いには注意が必要です。その注意すべきコンテンツとは「作業実績」。
語感から建築現場など、いわゆる「ガテン系」を想像しがちですが、コンサルに代表される個別事例を扱う商売のほか、飲食店なら忘年会や新年会などもこれに当たり、もちろんWeb屋にも通じます。むしろ、量販店以外のすべての職種において効果を発揮するコンテンツが「作業実績」です。
作業実績は、発注者に安心感を与える必須コンテンツともいえ、その充実はサイトの信頼感を高めます。ただし、クレームになりやすいので注意が必要です。
トラブルのケーススタディ
まずクレームの実際を見ていきます。
CASE1:公開対象からのクレーム
自社ショールームの設置作業や、自社サイトの制作過程といった、自社内で完結している作業なら、だれに遠慮することなく公開できます。しかし、客の事例となれば話は別です。クライアントによっては、作業工程の公開を嫌うケースがあります。
たとえば、ある内装業者は、手がけたアパレルのアンテナショップの装飾作業風景をコンテンツにしたいという申し出を断られました。夢を売るビジネスなので「舞台裏」を見せたくないというのです。
また、別の事例では展示のための「ノウハウ」を公開することにつながると拒否されました。どちらも事前確認だったので、クレームにまで発展しませんでしたが、仮に無許可で公開していたら、信頼関係を損ねたことは間違いありません。
クライアントがいる案件では、可能な限り公開許可を得なければなりません。この可能な限りがポイントで、掲載を拒否されても「作業実績」を作りだす方法については後ほど。
「ロゴ」や「キャラクター」にも注意が必要です。いわゆる「映り込み」に関しては、商標権や著作権による権利侵害にあたることはありませんが、ロゴをメインに紹介した場合は、その角度からのクレームがはいる可能性もあります。
参考:「写真に写り込んだ彫刻は著作権侵害なの?」【漫画】僕と彼女と著作権・第1話
CASE2:発注元からのクレーム
中小零細の現場でよくある事例です。いわゆる「下請け」の場合、元請けが公開を嫌うことがあり、無許可で公開すればクレームとなります。商取引上の問題は脇に置きますが、元請けがクライアントに「自社スタッフによる作業」と説明しながら、下請けに丸投げすることがあるのです。つまり、公開によって元請けの「嘘」がばれます。社会正義からの「告発」でもなければ、避けるのが無難です。
もちろん、事前に許可を得ていれば問題ありませんが、その許可をださない元請けが少なくない理由は「嘘」だけではありません。作業実績がネットで公開されてしまうと、下請け企業に直接依頼されてしまい、旨味が減ると怖れるのです。元請けが公開を嫌う理由は、作業実績コンテンツに高い効果がある証拠だといえます。
CASE3:被写体からのクレーム
作業実績コンテンツに写真は不可欠です。どれだけ言葉を費やしても、一枚の写真がもつ説得力には勝てません。型枠にコンクリートを流し込む風景でも、笑顔が溢れる忘年会でも同じです。現場なら作業員、忘年会なら参加者から公開の許可得ていないとクレームになるのは、個人情報保護法の濫用が定着した現在においては常識です。作業員が社員だとしても、無許可の掲載は後のトラブルの種となりますし、社員紹介コンテンツでさえ、顔写真の掲載を拒否するスタッフがいます。
無許可でも掲載する方法
すでにお気づきのように「許可を取る」ことがクレームを避ける基本であり鉄則です。特に店舗や会社の場合、わずかながらも「宣伝」となるので嫌う理由などない、と考えるのはWeb担当者の傲慢です。そもそも、ネットで情報を公開するメリットがわかっていない人はいまだに健在なのです。そこからトラブル発生を怖れ断る企業もあります。
このとき、十分な説明を尽くすことで理解を得る方法を、正しい手順と思うかもしれません。確かに「店の宣伝になる」と口説き落とせることもあります。しかし、説得が相手の感情を刺激することもあります。
ネットで公開するメリットを感じていない企業の多くは、ネットを活用しておらず、緊急性も必要性も感じていません。平たく言えば「余計なお世話」であり、言葉遣い1つ間違えれば、「上から目線」と反発されてしまいます。簡単に説明して、理解を得られないようなら断念するか「無許可」を選ぶべきでしょう。
それでは「無許可」でも掲載できる方法を紹介します。
- 対策1:作業部分にフォーカス
作業そのものは自社のコンテンツです。契約書に非公開の文言がなければ公開できます。外観や社名、ロゴなど、現場や企業が特定できる写真は避け、自社スタッフの「作業風景」だけで仕上げます。すべての現場に通じる作業の写真だけアップし、手元や背中を中心に、顔も映り込まないようにすれば、プライバシーの問題も回避できます。
- 対策2:一般事例化する
写真素材の「イメージ」を利用し、実際の利用者と切り離します。説明においては、固有名詞と日時を避けておけば、仮に突っ込みが入っても「一般例」と逃げを打てます。
- 対策3:トリビアで埋める
詳細を紹介できないことでコンテンツの内容が薄くなるなら、別のトリビアで埋めます。ガテン系なら作業に使う工具や商品といった、一般情報に字数を割き、忘年会なら宴会芸の変遷などで厚みを持たせます。
- 対策4:モザイクやぼかしは厳禁
前述の対策を実施する場合、写真の一部を切り取るトリミングはOKですが、モザイクやぼかしによる写真の加工は「怪しく」なるので厳禁です。
つまり、無許可で掲載するのではなく、許可なしでも掲載できる構成に編集するということです。もちろん、基本的には事前の掲載「許可」をとるに越したことはありません。しかし、「無許可」でもクレームを回避して公開すべきなのが「作業実績」。それだけ効果が高いコンテンツだからです。
今回のポイント
事前許可でトラブル回避が鉄則
ただし説得はNG。見せ方を考えるのもWeb担当者の仕事
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