売れるとはバカに見つかること、ネット時代の折れない心の作り方
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の511
心が折れる罵倒
やっぱりネットはスゴイですね
やっぱりネットは怖いです
ある店のWeb担当者(同一人物)の感想です。前者はブログを見たというお客が来店したときの感想です。後者は、そのブログのコメント欄に罵倒のつぶてが投げられていたときのこと。心が折れて、しばらくは投稿できなかったといいます。
どれだけ正しいことを言っても批判されることはあり、むしろ「批判されるぐらいでなければ、ブログやツイートは意味がない」とは、炎上商法をあおるものではなく、一面の真実です。
ネットで話題になることは、「バカに見つかる」ことだと同Web担当者に説明し、「折れない心の作り方」をアドバイスしました。私自身が10年の連載を通じて身につけた方法です。
企業のブログやソーシャルメディア活用が当たり前になった現在、企業のWeb担当者にも関係します。
リセットボタンはない
批判は真摯に受け止め、言葉足らずなら言葉を尽くし、謝罪や訂正が必要ならば素直に頭を下げるのは当たり前のこと。
この連載でもその昔、事実誤認で記事を発表したことがあります。当然ながら批判され、訂正しましたが、私の十二指腸には穴が空きました。文字通りの自業自得ですから、仕方がありません。
誤字脱字を執拗に責める人もいて、その度に心が痛むのは今も同じ。しかし、こう考えるようになってから、十二指腸に穴が空くことはなくなりました。
ミスは消せないけど、信頼は上書きできる
起きたミスを、完全になかったことにしたいと願うのは、死んだヒヨコを目の前にリセットボタンを探すファミコン世代の小学生の様なもの。起きたことは諦めるしかありません。しかし、ミスを可能な限り繰り返さず、より良い仕事、コンテンツを作り上げることで「信頼」を太字で上書きすることは可能です。
バカの壁がある
数年前にベストセラーとなった養老孟司さんの『バカの壁』は、1つの考えに固執し、異論を無視して排除する「原理主義者」を「バカ」と定義していましたが、ネットにこうしたユーザーを確認することは少なくありません。彼らにはどれだけ説明を尽くしても、歩み寄るどころかわずかな同意さえもしようとはしません。
さらに、批判や中傷したいだけの、いわゆる「クレーマー」もいます。どこの社会でも一定割合存在する「輩(やから)」ですが、所属属性などリアルの制限を受けないネットでは、分母が大きくなる分、実数が増えてしまいます。これへの対応は「無視」が最適解です。
ブレイクの神髄
私が考える「折れない心」とは、すべての批判に身体を投げだし、すべてを受け止めても耐えてみせる、プロレスラーのようにマッチョな心ではありません。不毛な議論を避けることで、心の消耗を避け、そもそも「折れない」ことも重視します。
ブログやツイートを続けていると、何かの拍子に多くのアクセスを集め、爆発的に拡散されることがあります。すると、必ずといっていいほど「見当違い」の批判が紛れ込みます。基本的には輩と同じく「無視」をおすすめしますが、罵倒を前にしても心穏やかにする心得を、タレントの有吉弘行さんの言葉に見つけます。
売れるとはバカに見つかること
「あだ名」で再ブレイクしたころの言葉です。実際は、人気番組で話題を集めたという噂だけで、番組出演をオファーしてくるテレビ業界人を「バカ」と定義しての言葉ですが、なかなか言い得て妙で、ネットにも当てはまります。
注目を集めるとやってくる
人気がでる=注目を集めると、必ず「輩」や「バカ」がやってくるのです。そのいちいちに反応していては心も体ももちません。
そもそも誹謗中傷は言論の自由の外にあります。威力業務妨害、名誉毀損、言葉だけでも傷害罪は成立することもあり、いつまで経っても執拗な攻撃が続くようなら、法律に訴えることもできます。身体への攻撃を示唆したなら、今は警察が比較的迅速に対応してくれます。こうした法的アプローチ、現実的対応を知っておくことも「折れない」ための方法です。
そうはいっても、目にするだけで萎えるほど、匿名の闇からの攻撃は品位を欠くものが少なくありません。そんなときは、
人生の時間の無駄遣いをさせて悪かった
と心のなかでわびるといいでしょう。理不尽な悪口を投稿するという不毛な作業の時間を、輩は確実に損をしているのです。
批判を受け止める
繰り返しになりますが、適切な批判や正当な抗議には真摯に対応すべきです。なかには親しくなれる人もいて、批判に真摯に答えたところ、すべての原稿を追い掛けて応援してくれている読者や、わざわざ用事をつくって「相談」に訪ねてくれるお客もいます。
異論に接したときは、一度立ち止まって受けてみるべきだと考えます。自分の意見は必ず正しいわけではないと、理屈ではわかっていても、ついつい自分の意に沿う声に耳をかたむけてしまうものです。
特にインターネットは興味のある世界にだけ浸り、そこに留まり続ける「蛸壺化」を起こす構造になっています。いつのまにか「バカの壁」を作っていることもあります。異論はそれに気づかせてくれる、有りがたい存在です。
骨折した骨は強くなる
ちなみに同意し支持してくれる人がいたとしても、あまり声をかけてはくれません。先ほどチラリと自慢したように、私にだってわずかながらもファンがいてくれ、折々に声援を寄せてくれますが、いつもお褒めいただくわけではありません。
これを「サイレントマジョリティ=声なき多数派」と勝手に解釈します。うぬぼれもまた困ったものですが、折れない心の土台を作る自己暗示のようなものです。
それでも心が折れてしまうこともあるでしょう。私だって今も毎週のように心が折れることがあります。しかし、骨折した骨が強くなるように、折れた心も再生したとき、それまでより強くなるものです。
心が「折れた」と感じたときは、それは「休め」の合図だと解釈し、しばし休養するとパワーアップして復活します。今、私は本稿で紹介した心得によって、おおよそ昼休みの時間ぐらいで回復しています。
今回のポイント
売れると「バカ」がやってくる
心が折れない工夫も必要
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