企業ホームページ運営の心得

グーグルを凌駕するハッシュタグ革命

ググるよりもハッシュタグを情報検索に活用するイマドキの若者
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の509

ググるよりもソーシャル検索

scyther5/Thinkstock

先日、ある中高生に話を聞くと、「あまりグーグルでは検索しない」といいます。調べることがないのが理由です。

ほぼすべての同級生が、スマホを持ったことで生まれた「ネットワーク効果」が、わざわざ外部の人間と触れあう理由と「未知の情報」を調べる時間を奪っているようです。

彼らがLINEやInstagramでフォローしているのは、クラスメイトや部活仲間などリアルの知人。このネットワークによる効果とは、利用者の増加に連動した利便性の向上を指します。

さらに「調べる」ときも、グーグル検索よりTwitterやInstagramの「ハッシュタグ」を多用しているといいます。周囲への聞き取り調査にとどまり、統計的な裏付けは不十分ながらも、Web担当者としては見過ごせない地殻変動が起こりつつあるように感じます。そしてハッシュタグには拡散力があります。

ハッシュタグがある日常

ガラケー全盛期を知る30歳過ぎのオジサン世代には、「ブームに乗ってSNSのアカウントを作って放置したまま」という人もいるでしょう。SNSにキラキラ写真を上げる若者の気持ちなど、わかるはずもありません。

ですが今、TwitterやInstagramは情報検索ツールとしての活用が広がり、とりわけ若年層をターゲットにした企業にとって無視できない存在です。

SNSマーケティングのアライドアーキテクツの2016年調査によると、ハッシュタグの認知率は約90%、2015年調査からさらに伸びていることがわかります。

レポート詳細を読むと、ハッシュタグの利用目的は「気になる商品や情報を探すため(73%)」が最も多く、「検索が簡単なため(76%)」が検索理由の一番に挙げられています。

桁違いの拡散力を実体験する

ハッシュタグの拡散力を体験するのは簡単です。眠っているSNSアカウントを立ち上げて、ハッシュタグを付けてつぶやきます。体験しやすいのは写真のいらないTwitterです。内容は趣味でもいいですが、テレビ番組など、リアルタイムのネタを選ぶといいでしょう。

私はTwitterで、いわゆるマスコミによる「報道しない自由」を批判する立場から時事ネタを発信しています。そうすると、必然的にというのもおかしな話ですが、テレビ報道をつぶやくことが多くなります。

これまでは、多様な言論の末席を汚す程度の軽い気持でのツイートなので、拡散への努力をしてきませんでしたが、ある日、たわむれに番組名をハッシュタグにして投稿しました。すると瞬く間にリツイートされていきます。同じ番組を見ていたツイッター民による同意と賛意です。

ジモティー犬

実際はネタやタイミングにも左右されますが、ハッシュタグを付けたツイートの拡散力は「桁違い」です。「テレビ離れ」が叫ばれますが、今でもSNSで話題になる情報の多くはテレビであり、意見を共有したいネット民に「刺さる」ということでしょう。

私が取り上げた政治的なネタや批判系の投稿は、反論どころか「攻撃」されることもあるので、ビジネス的には不向きですが、健康やグルメ、家電紹介など、番組を選べば高い効果が期待できるでしょう。

Twitterで推論立てたハッシュタグの拡散力が確信に変わったのは、Instagramを積極的に利用するようになってからです。

ある日、地元の掲示板「ジモティー」に生後2か月の芝犬の里親募集を見つけます。引き渡しの条件は、「(可能な限り)毎日仔犬の様子をネットにアップすること」とありましたが、たまたま取得していたInstagramのアカウントでこの条件をクリアします。

当初はただの写真投稿だけでしたが、「#芝犬」のハッシュタグをつけると閲覧者が増えることを実感します。アルファベットで「#shibainu」とタグ付けすると、カナダ人の愛犬家が「cute!」とメッセージを寄せてきました。

Instagramの交流のなかで、若年層がはまる理由に出会います。

若者の拡張現実

スマホというパーソナルツールで接するネットを、若者はパーソナル空間と錯覚しているのです。

ある大学生のアカウントでは、文字通り「日常風景」が連続投稿されており、同級生の名前まで確認できます。個人情報を拡散しているというためらいがありません。

これはmixiやTwitterの普及期にも指摘されたことで、いつの時代も若者は失敗を繰り返すのでしょう。いずれにせよ、若者にとってのInstagramは文字通りの「拡張現実」です。

また、距離や時間、国境する越えて「同好の士」が集まるのも「インターネット」の利点であり、「写真」や「動画」という「一目瞭然」のInstagramが、世界中で広まるのは当然のこと。

とはいえ、ビジネス活用に懐疑的だったのは、自社ビジネスとの「ひも付け」ですが、商品名や興味の対象、利用方法などをハッシュタグとして投稿すればOKです。

正しさよりポピュラー

とあるネット系の有識者が、新聞の取材に「ネットは議論のプラットフォームではなくなった」と答えていましたが、それは事実誤認です。

今、メディアがネットを怖れているのは、ハッシュタグに代表される民意の集積が、マスコミの「報道しない自由」を凌駕しつつあるからです。さらにハッシュタグなどのピープルパワーは、グーグル検索の致命的欠陥を補っています。

グーグルで正しい答えを求めるためには、キーワードや関連語を踏まえた正しい質問を用意しなければなりません。しかし、TwitterやInstagramでは「そのものズバリ」のキーワードの頭に#をつけるだけで、(少なくとも現状は)そのキーワードの情報を得られるようになったからです。

ビジネスで利用するなら、正しいキーワードより、よく使われているハッシュタグがいいでしょう。キーワードの量は露出に連動するからです。埋没するリスクもありますが、誰も使わない言葉は誰も探してはくれません。

今回のポイント

ハッシュタグで検索

Web利用の地殻変動がおきている、かも

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