【計算できる?】人口あたりの映画館のスクリーン数が1番多い県はどこ?
人口あたりの映画館のスクリーン数が1番多い県は?


アユムさん、最近、なにか映画見た?

見たい映画はたくさんあるんですが、なかなか腰が重くて……。

ところで、全国で1番映画館のスクリーン数が多い都道府県は東京都なんだけど、人口あたりの映画館のスクリーン数が1番多いのは何県だと思う?

テキトーに言いますが、埼玉県?

残念! 埼玉県は19番目に多い県だね。 人口あたりの映画館のスクリーン数が1番多いのは、石川県なんだよ!

え? そうなんですか? ところで、その「あたり」って何でしたっけ。アイスクリームのあたりみたいなものですか? それとも、犬も歩けば棒にあたり界隈?

あたりといえば、「あたり前田のクラッカー」! って、アユムさんは知らないか。「あたり」というのは、何かを基準にしたときに、どれだけあるかってことなんだよね。

基準に対してどれだけ?

たとえば、人口密度とかもそうだよね。面積あたりにどれだけの人がいるのかとか……。

人口密度! いつも何を何で割るのか迷うやつですね!

では、映画館のスクリーン数と人口で、人口あたりのスクリーン数を調べてみて! ちなみに、石川県は、スクリーンの数は62枚、人口は1,098(千人)だよ。(それぞれ2024年)
じゃあね。僕は先に帰ります。
参考データ:一般社団法人日本映画制作者連盟「全国スクリーン数(令和6年(2024年)12月末現在)」/総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)」

その「(千人)」っていって、さらっと仙人のように部屋を出ていくのはやめてください……。それもよくわかってないです……。
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。
そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学苦手な社会人に対して指導をしているアジアゾウをこよなく愛するモリさん。
この記事を読むべき人:単位の大切さを確認したい方
この記事を読む必要がない人:1あたりの量と単位について精通している方
この記事でわかること:1あたりと単位
スクリーンの数は62枚、人口は1,098(千人)、人口あたりのスクリーン数は?

モリさん! 今日は2つ課題があります! 「あたり」と「(千人)」です。

あたり? 何かのくじですか?

ちがいます。人口あたりの映画館?の、スクリーンの数? あれ…映画に行けば何かがあたる話だったのかな……。

「人口あたりの映画館のスクリーン数」ですね。「あたり」ですが、景品はあたりませんね。なるほど。それでは少し話を小さくしましょう。

小さな声で……?

たとえば、ここに10枚のクッキーがあります。5人で公平に分けるとき、1人あたり何枚ですか?

1人あたりということだから、10÷5=2で、1人あたり2枚ですね。少ない。

ここで「あたり」がでましたね。自然に人数で割ってましたね。

確かに、あたりが出ました!

「〇〇あたり」というとき、〇〇に対応する部分が基準の単位になります。今回は1人あたりのクッキーの数を求めたいので、「人」が基準の単位になります。そして、クッキーの数を、その人数(5人)で割ることで、1人あたりのクッキーの数が求められます。

なるほど。10(枚)を5(人)で割ることで、1人あたりのクッキーの枚数が出せたってことですね。

これを大きくしたのが、先ほど出てきた、人口あたりの映画館のスクリーン数です。

ということは、映画館のスクリーン数を人口で割るんですね。ウリャア!

物理的に割ってきた感じですね。

先輩は「石川県の映画館のスクリーン数は62枚、人口は1,098(千人)」と言っていたので、とりあえず「(千人)」を無視して計算すると、62÷1098=0.05646630236…ちっちゃ!

今の計算では、1098(千人)で割っているので、基準の単位は(千人)です。この計算では千人あたりのスクリーン数を求めていることになります。
単位の数字を大きくする

ところで、もう1つの課題、「(千人)」です。これはなんですか。

これは、大きな人数を表す単位です。1,098(千人)は、およそ1,098,000人を指します。

およそ、なんですか?

はい。この人口の例もそうですが、非常に大きな額の予算なども(億円)などと表しますよね。大きすぎる数は読み取りづらいので、このような単位で表し、概数(がいすう)などと呼びます。

ないすぅ。(ドヤ)

ナイスボケ! 「(千人)」の場合は、百の位を四捨五入して「(千人)」という単位を作っています。1,000人を塊としてみる感じですね。たとえば、12,300人は百の位を四捨五入することで、12,000人になります。さらに1,000人を塊とみると12(千人)と表せますね。

「(億円)」であれば千万の位を四捨五入する、であってますか?

そうです。こんな感じで、「(千人)」なら1000を1つのかたまりとしてみています。

ということは、先ほどの62÷1098の計算は、1098(人)ではなく、1098(千人)で割った、つまり(千人)という単位で割ったってことですね?

その通り。なので、0.0564... は千人あたりの映画館のスクリーン数となりますね。

千人あたり…つまり、千人のグループがあって、1グループあたりって感じですか?

そうですね。イメージがつかみにくいときは、そう考えるのもいいでしょう。

ですが、「千人あたりで0.0564枚」って超わかりにくくないですか?

そういうときは、単位を変えましょう。考え方を説明します。たとえば、100枚のクッキーを50人で分けます。1人あたり何枚ですか?

100÷50=2枚、です。相変わらず少ないです。

それでは、100枚のクッキーを10人をひとまとまりとした5団体で分けるとすると、1団体あたり何枚ですか?

100÷5=20枚です。あ、50(人)から5(十人)と人数の単位が大きくなったので、割る数自体は小さくなりますね。単位あたりの分け前の数は、先ほど(1人あたり)より大きくなりますね。

そうなんです。つまり、50(人)から5(十人)というように、基準の単位が大きくなれば、ひとつあたりの数は大きな数になります。

ということは、「(千人)」を「(万人)」という単位に変えてみていいですか? 「(万人)」にしたいので、1,098(千人)を10で割って109.8(万人)とし、計算しやすくするために四捨五入して110(万人)とします。これで 62÷110(万人)=0.56363…
「(千人)」単位より10倍くらい大きな数値になりました!

万人単位になりましたが、もう少し大きくてもいいですね。

となると、十万人単位…?

はい。万人単位のスクリーン数を10倍すれば、十万人単位のスクリーン数になります。

なるほど! ということは、0.56363636363…を10倍して、十万人あたり「5.64」ということですね。

ちなみに、上位5位は石川、山形、大分、熊本、福岡です。

へ~。
四捨五入した値を計算に用いるときは

最後に、注意点に触れておきます。最初の(千人)あたりのスクリーン数である 62÷1098≒0.05646630236 を ×100 して「十万人あたり」のスクリーン数にしてみると 5.646630236… となり、これは「5.65」となります。

あれ、自分の出した 5.64 と 0.01 だけですが、数が違いますね。なんでこんなことになっちゃうのでしょう?

私の計算と、アユムさんの計算で違うことと言えば、なんでしょう?

あっ、自分は「(千人)」→「(万人)」に変換するときに一度四捨五入を挟みましたが、モリさんは「(千人)」→「(万人)」と、ひとっ飛びです。

すばらしい! その通りです。「(万人)」でいったん、四捨五入して数値を丸めていますよね。このように、同じ答えを求めるにしても途中で丸め処理が入ると、数値はもとの大きさから、わずかにズレます。許容範囲とする場合もありますが、厳密な計算が求められるときは大問題なので注意が必要です。

そ、そうなんですね。

小数点以下の処理が必要な計算では、手順によっては誤差が生じることは、きちんと理解しておきましょう。「千人」単位から直接「十万人」単位にした、「十万人あたり約5.65枚」 がより正確な数字となります。

単位といえば、いまだに単位を落として卒業できない夢を見ます。

それはタイガー&ホース、いわゆるひとつのトラウマですね。よく運動して、よく寝てください。ホースと共にあらんことを。

(まさかのスターウォーズ! フォース!)
ポイント
- 「○○あたり」は、基準となる単位で対象を割ることで求められる。たとえば「1人あたり」は(1人)という単位あたりの数(人)で割ることを意味する。
- 「(千人)」のような大きな数字の単位は、数値が読みづらくなるのを避けるために使用される。1000人を1つの塊として扱うイメージである。この単位で計算された数値を、より分かりやすい単位(例:10万人あたり)に変換することで理解しやすくなる。
今日の問題をおさらい
Q1. 石川県は、映画館のスクリーン数は62枚、人口は1,098(千人)
(1)千人あたり、映画館のスクリーン数は何枚?
(2)十万人あたり、映画館のスクリーン数は何枚?
(1)62÷1098=0.056(枚)
(2)0.05646×100=5.65(枚)
答え:千人あたり0.056(枚)/十万人あたり5.65(枚)
Q2.人口密度は、「面積あたりの人口」です。どのような式で求められるでしょうか
「あたり」の前に来るのは「面積」なので、人口÷面積で求められます。
答え:人口÷面積

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