企業ホームページ運営の心得

チラシはオワコン? 5倍のアクセス増を実現した“ぐるなび”にあやかる戦術

使いどころ、作り方のポイントを押えることでチラシは有効に機能します
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の413

ぐるなびの挑戦

Goodshoot/Goodshoot/Thinkstock

グルメサイト「ぐるなび」がターゲティング広告を得意とする「マーベリック」と手を組んで「チラシ」に進出しました。日常生活において、インターネット検索の習慣がない高齢者層をターゲットに、ぐるなび加盟店舗の販促支援を「紙の広告」で展開します。

千葉県の柏・松戸市エリアでの試験配布で手応えを得て、夏には全国展開を狙っています。都内での取り組みを紹介したテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」によれば、掲載飲食店のサイトへのアクセス数は、チラシ配布日に従来の5倍を記録していました。

「チラシ」の効果はいまだ健在ですから当然です。だからWebに勝るとはいいません。どちらも「道具」ならば、適材適所で使い分けるのが正解です。そこで今回は、ぐるなびも注目する「チラシ」の効果について。主に飲食店など、「路面店」向けの内容となっています。

5分の4の刺激

チラシ、とりわけ「新聞折込チラシ」の効果が高い理由の1つに、新聞への信頼感があります。朝日新聞は昨年、自ら引き起こした「事件」によって、大きく部数を減らしましたが、それでも昨年末で700万部を越えていますし、読売新聞は900万部を誇ります(日本ABC協会発表)。

掲載内容を信頼しているから読者はお金を払うのであって、疑っている情報に金を払う人はいません。そして、その新聞とともに運ばれてくる「チラシ」に、一定の信頼を重ねるのは「錯覚」とはいえ自然な消費者心理です。

さらにWebとの比較におけるアドバンテージは「紙」の存在です。ネット上に浮かんでは消えるWeb情報に対して、紙のチラシは物理的な空間に存在して「ストック」されていくため、なにかの機会に目にすることもあります。また、視覚情報に加えて手に取ったときの「触感」、インクの「嗅覚」、紙がこすれる「聴覚」と、五感のウチ4つの感覚に接触するメディアなのです。

「チラシなんてみねーよ」と唾を吐く人もいるでしょうが、それでも効果があるとする理由は後ほど。

チラシ効果の真実

チラシそのものに効果がないという人もいます。しかし、これを正しく表現するなら、

効果のないチラシがある

ということ。つまり、効果の有無はチラシという媒体の責任ではなく、掲載されている内容、すなわち「コンテンツ」にあるということで、これはWebとまったく同じです。

実際の「売れるチラシ」については、業種業態、規模やホスピタリティ(店舗の受け入れ体制)、企画と季節と地域によって異なるので、本稿では割愛しますが、1つの目安になるのは「目立つ」こと。「目立つ」を意識していないチラシは少なくありません。

チラシでもっとも大切なこと

チラシ作りでは、何より「目立つ」ことが大切です。Webが探しに来てくれるのを待つ受け身の媒体であるのに対して、チラシはお茶の間に上がり込んでアピールする「攻め」のツールです。他のチラシに埋もれ、見逃されてしまっては「コンテンツ」以前の話で、「効果がない」とぼやくチラシに見られる特徴です。

目立たせる手法の1つに「単色刷」があります。おもに上質紙やざら紙を用い、一色だけを使って印刷するチラシです。カラーチラシが多くなった現在、反対に目立ちます。

一色といっても網点(濃淡)や、紙の色を変えることによって表現力は高まり、黄色の紙に黒インクで刷り上げたチラシのインパクトは大です。カラーを当然とする、Webにはない発想です。

最近ではDTPの知識がなくても、簡単にカラー印刷ができるようになりました。業者によってはワープロソフト「Word」で入稿ができます。しかし、カラーチラシで新聞折込に取り組むなら、「プロ」、あるいは「経験者」に発注することをオススメします。チラシには特有のコツやお約束があるからです。お約束を踏まえないチラシが「貧相」に見えるのは、同じ日に折り込まれる「プロの作品」という舞台に1人だけ素人が紛れ込むようなものです。

一方「一色刷」は、色数が絞られることから、デザイン処理も限定され、プロアマの差が少なくなります。そしてなにより目立ちます。

チラシはオワコン?

チラシの販促効果については、「ぐるなび」の進出やネット印刷の「ラクスル」の好調が雄弁に語りますが、それでも否定する人もいるでしょう。これは「テレビはオワコン(終わったコンテンツ)論」と同じです。

「自分は見ない」を論拠とする自己中心的な結論です。いまだにテレビの影響力が侮れないのは「グノシー」や「パズドラ」が執拗にテレビCMを繰り返していることが証明します。

そしてお客は自分ではありません。店の客がチラシを見る客層なら、チラシを配布するのは当然です。もちろん、客のだれ1人として新聞を購読せず、チラシを見ないというのならこの限りではありません。大切なのは、店の客層の情報行動にあわせるということです。

100年後はわかりませんが、向こう10年は「チラシ」が効果を発揮するシチュエーションは残ります。それは新聞を購読し、チラシで情報収集する客層の存命期間……とは、シビアな話ながら現実です。

チラシは麻薬

一方で、チラシは限定的な使用に留めなければなりません。

Web専業に切り替えたきっかけの1つが「チラシ」を巡るお客とのトラブルです。21世紀になったばかりのころ、Web媒体への切り替えを薦める私に対して、お客はチラシを配布したがり、最後は「喧嘩別れ」となりました。

チラシは繰り返すことで効果は薄くなり、最悪、チラシを配布しなければ客がこない状態に陥ります。その姿は重度の麻薬中毒患者のようです。実際、チラシを配布して立てた売上で、チラシの代金を支払っていた飲食店は、ある夜、街から姿を消しました。「チラシは麻薬」とは、チラシによる販促を手伝ってきた末の結論です。

チラシは「きっかけ」として限定的に使うのがベスト。近隣の住民に、店の存在を知ってもらうためのツールという位置付けです。そして来店した客を、リピーターに育てるのはTwitterやFacebookなどのWebが得意とする領域です。

今回のポイント

客層にあわせた媒体をチョイス

チラシは「目立つ」がなにより大事

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