訪日中国人に商品を買ってもらいたい! 2大SNS 「Weibo」と「WeChat」活用のポイントとは?
訪日する中国人に商品を買ってもらうには、どうすればいいですか?
これは、最近お客さまからよく聞かれることです。2015年の訪日中国人は約500万人で前年の2倍強という伸びを見せ、記憶に新しい「爆買いバブル」が巻き起こりました。そして、2016年の訪日中国人はさらに1.3~1.4倍に増加すると推定されています(Find Japanによる試算)。
現在、「爆買い」の状況は少しずつ変わってきていますが、「訪日観光客数が増加している」ことと「事前にインターネットで調べたうえで訪日して、目的のものを買う」という行動は変わっておらず、今後もこれを踏まえたプロモーションが必須といえます。
「それならば」と中国語でWebサイトを作ったとしても、それだけでは中国のユーザーに情報を簡単には見てもらえません。それは、中国には特殊なネット事情があるからです。
日本企業が中国のユーザーに情報を届けたいなら、中国の2大SNS「Weibo」と「WeChat」の活用がカギになります。この記事では、中国のネット事情を説明したうえで、どうすれば訪日前の中国ユーザーに情報を届けられるのかを解説します。
- 中国の特殊なインターネット事情
- 中国の2大SNS「Weibo」「WeChat」
- 消費者行動に合わせてどのサービスをどこで使うか決める
- WeiboとWeChatのアカウント取得方法は?
- 日本企業のプロモーション事例
- 言葉の壁~翻訳はどうすればいい?
1. 中国の特殊なインターネット事情
厄介なことに、中国本土(以下中国)においては、世界で当たり前に使われているグーグル、FacebookやTwitterなどの主要なサービスには基本的にアクセスできません。
また、規制されていない一般的なWebサイトにおいても中国以外のサーバーを利用している場合は表示にかなり時間がかかります。
これは「金盾(きんじゅん)/グレートファイヤーウォール」と呼ばれる中国の検閲システムの影響によるもので、これにより他国サイトの有害な情報をシャットアウトしているのです。
中国からアクセス可能どうかは、「Blocked in China」というWebサイトで確認できます。
中国のユーザーに伝わる情報発信方法とは?
それでは、どうしたら中国のユーザーに伝わる情報発信をできるのでしょうか? 大きくは、3つの方法が考えられます。
- 中国のサーバーにWebサイトを設置して情報発信する
- CDNサービスや香港サーバーを利用して情報を発信する
- WeiboやWeChatを利用して情報発信する
それぞれ、解説していきましょう。
中国のサーバーにWebサイトを設置して情報発信する
1つ目は、中国のサーバーにWebサイトを設置する方法です。ただし、これは基本的に「ICPサイト登録」が必要になります。中国国内のWebサイトはこのICP番号を表示する決まりがあり、取得するには一部地域を除き中国現地法人が必要になります。名義貸し業者もありますが、中国内での規制強化もありハードルは高いです。
- ICPとは(アイシーピー)
http://web-tan.forum.impressrd.jp/g/icp
CDNサービスや香港サーバーを利用して情報を発信する
2つ目は、CDNサービス(Content Delivery Network)や香港サーバーを利用して情報を発信する方法です。こちらは金盾の影響を受けないのでWebサイトは中国国内のWebサイトと変わりなく閲覧できます。しかし、筆者の経験からもICP番号を取得していないと中国最大の検索エンジン「バイドゥ(百度・Baidu)」からの評価が低くなるため、ある程度大きなプロモーション予算がないと、結局のところ閲覧されることは簡単ではありません。
WeiboやWeChatを利用して情報発信する
そこで、今回おすすめしたいのが3つ目です。それは、Webサイトの代わりに中国で最も使われているSNS「Weibo(微博・ウェイボー)」と「WeChat(微信・ウィチャット)」を活用する方法です。なぜこの方法がおすすめなのか? それは、中国人の情報収集方法に関係しています。
中国人のメンタリティとして、中国国内の広告は過大評価なものが多く、消費者は企業の広告などに対して「しょせん良いことしか言わない」と性悪説を持っています。そんな中で彼らが最も信頼する情報源は、家族や友人などの信頼できる人の「クチコミ」です。
中国の2大SNSサービスである「Weibo」と「WeChat」は情報収集やコミュニケーションツールとしてなくてはならないものになっており、特にWeChatは、月間アクティブユーザー数でスマートフォン保有者のほとんどを占める約7.62億人にのぼり、中国人の生活と深く結びついています。
従って、わざわざお金をかけて規制の多いWebサイトを作るよりも、WeiboやWeChatをうまく活用して情報を発信する方が効果的なのです。
2. 中国の2大SNS「Weibo」「WeChat」
WeiboとWeChatは中国の2大SNSサービスですが、その生い立ちや提供形態から、それぞれ得意、不得意な部分があります。各サービスの特徴をしっかりと理解し、効果的に活用できるようにしましょう。
「Weibo(微博)」はTwitterとFacebookを合わせた140文字SNS
Weiboはひと言でいうと「TwitterとFacebookの機能をあわせ持ったサービス」です。140文字までの投稿ができるほか、ユーザー同士で「いいね!」や「コメント」を通じて交流できます。
もともとはパソコンからスタートしたサービスのため、パソコン、スマートフォン両方に対して情報発信が可能です。また、オープンなプラットフォームであるため、情報拡散性が高くマーケティング上は「認知」「関心」を高めることに向いています。
- パソコン・スマホ両方へ情報発信が可能
- パソコン版はデザインカスタマイズが可能
- BtoBユーザー(企業、メディア、ソーシャルバイヤー)への訴求も可能
- 拡散性が高く「認知」「関心」を高めることに効果的
パソコン版のWeiboのページは、背景やナビゲーションの色などをカスタマイズでき、印象を変えることができます。また、Weiboはバイドゥの検索にもヒットするため、日本でWebサイトを立ち上げるよりも閲覧される可能性が高くなります。実際、Weiboをコーポレートサイトとして利用している企業も多く見られます。
日本企業のWeiboのカスタマイズ例
記事の「ネタ」になる情報を拡散目的で発信するのが効果的です。
- 企業情報
- 新製品・新サービス
- モニター・サンプリング
- 他社比較
- プレスリリース
スマホ特化のコミュニケーションツール「WeChat(微信)」
WeChatは、スマートフォンに特化したプライベートなコミュニケーションサービスです。日本の「LINE」と類似したサービスで、チャット機能のほかに自分のフォロワーに対しメッセージ配信もできます。また、「モーメンツ」というFacebookのニュースフィードのような機能やシェア機能で情報の拡散も可能です。
WeChatは比較的クローズドなプラットフォームであるため、友人同士のコミュニケーションツールとしてWeiboに比べ利用頻度が圧倒的に高く、情報の信頼度も高い傾向があります。また、「WeChat Payment」という4億人が利用している決済機能も提供されています。
- 月間アクティブユーザーが6.2億人でスマートフォン所有数とほぼ同数
- 比較的クローズドなサービスため、情報の信頼度が高い
- 「WeChat Payment」で決済がしやすい
開封を促すように、個人にメリットのある内容を発信するのが効果的です。
- プレゼントキャンペーン
- 割引クーポン情報
- クチコミ
- ゲームコンテンツ
3. 消費者行動に合わせてどのサービスをどこで使うか決める
これは日本でも同様ですが、2つのSNSの利用目的をしっかり決めてから臨まないと、いろいろな施策を打って予算をかけても効果が上がらないという事態になってしまいます。きちんと戦略を練ったうえで、効果的に利用してください。
ここでは、電通が提唱した消費者行動モデルのAISAS(アイサス)を例に挙げて、それぞれのプロセスで利用目的を明確化してみます。
Attention(認知・集客)に優れるWeibo
認知・集客に関しては、現状のWeibo、WeChatのフォロワーに対する情報発信はもちろん大切ですが、新規ユーザー(潜在ユーザー)に対しては拡散性に優れたWeiboの活用が有効です。
Weiboにて情報を拡散させるには、やみくもに情報発信するのではなくターゲットをしっかり認識することも重要です。Weiboでは情報収集目的のメディアやソーシャルバイヤー、KOL(Key Opinion Leader:影響力のあるブロガーなど)の目にとどまり記事にされると、多くのユーザーに拡散される可能性があります。
たとえば、購入してほしい化粧品のサンプルをKOLに積極的に提供して使ってもらえると、クチコミによる情報拡散で認知が高まり、訪日したときの商品購入につながります。
ただし、自社のアカウントのフォロワーが少ない状況では、情報はなかなか拡散していきません。予算があれば、最初はフォロワーを増やすためKOLを利用したプロモーションをおすすめします。KOLプロモーションはフォロワー数のレベルによって価格に幅はありますが、商品やターゲットに合ったKOLを利用すれば、高い効果を期待できます。
KOLプロモーションは、WeiboだけでなくWeChatのフォロワーを増やすうえでも有効な施策になります。
Interest(興味・関心)は動画サービス「秒拍」が効果あり
次は「認知・集客で情報に触れたユーザーに、どのように興味を持たせるか?」ですが、現状でおすすめするのは「動画」の利用です。今、中国では社会現象になるほど動画が注目されています。
作り込まれた動画でなくても、自撮りで商品を説明しているような動画も効果的です。Weiboは「秒拍(ミャオパイ)」という公式動画アプリを提供しており、動画がタイムラインに流れると同時に自動再生される仕組みとなっています。
- 秒拍(ミャオパイ)
http://www.miaopai.com/
前述したKOLへのサンプル配布などは、KOLが実際に商品を利用でき、動画作成のネタとして取り上げやすいので効果的です。
また、興味・関心を持ったユーザーにWeChatのフォローを促すことも重要です。それにより、その後WeChatで開封率の高いプッシュ通知を送信できるようになるからです。WeChatでフォローしてもらえれば、1対1のカスタマーサポートなどの対応を行いやすくなり、ロイヤルティを高められます。
Search(検索・比較)はWeiboのクチコミ力を活用
Weibo、WeChat、バイドゥなどで検索して情報収集を行うなかで、やはり一番重要視される意思決定要因は「クチコミ」です。Weiboは検索性が高く、オープンな場で多くのクチコミを入手できるツールとして利用されるため、必ず押さえておきましょう。
また、Weiboはバイドゥと相性が良く、パソコン・スマートフォンにかかわらず検索結果に表示されるため、ユーザーの比較検討時に閲覧される可能性も高いです。
Action(購入)は4億人が利用するWeChat Payment
クロージング(購入)のプロセスでは、WeChatへ誘導を行いましょう。WeChatは、「WeChat Payment」という決済サービスを提供しています。WeChat Paymentはユーザーが自分の銀行口座をWeChatに登録するだけでオンライン・オフラインを問わず簡単に利用でき、手数料もかからないということもあり、中国では4億人が利用する最もポピュラーな決済手段になっています。
また、中国では購入前にチャットで問い合わせることが常識となっています。この1対1のカスタマーサポートもWeChatで効果的に行えます。
たとえば、訪日前の宿泊予約であれば、「WeChat Payment」を利用して予約も可能ですし、訪日後に店舗誘導したい場合にクローズドの優待券などを送るのにもWeChatは効果的です。
WeChat Paymentは、日本では代理店のネットスターズが扱っています。
- WeChat Payment(ネットスターズ)
http://www.netstars.co.jp/wechatpayment
Share(共有・拡散)はWeiboとWeChatで共有先が異なる
共有・拡散のプロセスでは、Weiboではオープンに多くのユーザーに拡散され、WeChatでは友人へプライベートで信頼度の高い情報として共有されるため、両サービスを押さえておく必要があります。それぞれで、共有しやすい投稿を準備しましょう。
いつ行う? 中国のユーザーに合わせたプロモーションのタイミング
2つのツールの利用方法について説明してきましたが、それでは、実際にどのタイミングでどのようなネタを配信すればいいのでしょうか?
まずは、中国人観光客が訪日するタイミングを把握しましょう。訪日「前」のタイミングでいかにアピールできるかがカギになります。年間を通して中国人観光客の多い期間と、それに向けたプロモーションの時期は次のとおりです。セール情報などを事前に発信し、訪日した際に来店してもらえるようにプロモーションを行いましょう。
正月、春節シーズン
1月から3月にかけて中国の「旧正月」と呼ばれる大型の連休があります。前年の10月~12月がプロモーションに最適な時期になります。桜シーズン
3月下旬から4月中旬にかけて日本の桜が見ごろの時期に合わせて多くの中国人観光客が訪れます。日本の桜は中国でも人気が高く、多くの桜の写真がWeiboやWeChatで投稿されます。1月~3月が桜シーズンに向けた最適なプロモーション時期になります。夏休みシーズン
7月から9月の夏休み期間中、訪日数が増加します。4月~6月が夏休み期間に向けた最適なプロモーション時期になります。ちなみに最も旅行者が増える時期でもあります。国慶節
10月には中国の大型連休、国慶節があり、この時期に旅行者が増えます。7月~9月が国慶節に向けた最適なプロモーション時期になります。年末セール時期
12月の年末のセールを目的に買い物をする中国人観光客が増えます。10月~12月が年末セール時期に向けた最適なプロモーション時期になります。
4. WeiboとWeChatのアカウント取得方法は?
それぞれのアカウントの種類、申請方法について簡単に紹介します。
WeiboアカウントはFind Japanから公式アカウントを申請する
Weiboアカウントは、法人であれば「企業認証公式アカウント」になります。公式アカウントを取得すると、Weiboのアカウント名の横に青い「V」マークが表示されます。特に人気ブランドなどは偽アカウントが多く存在するため、認証された公式アカウントから情報発信することはユーザーに信頼してもらうためにも、非常に重要です。
企業認証公式アカウントは、Weiboの日本オフィシャルパートナーである「Find Japan」から日本語で申請でき、現地法人がなくても取得可能です(2016年6月現在)。認証にはさまざまな書類を提出する必要があり、提出後に審査が行われます。
- Weibo公式アカウント申請(Find Japan)
http://www.find-japan.co.jp/weiboservice/weiboapply/account.html?1023153931
WeChatアカウントは公式アカウントが2種類ある
WeChatでは、現地法人のない企業は公式アカウントは取得できません。ただし、代理で申請してくれる業者もあるので、可能であれば認証アカウントを取得してください。WeChatの公式アカウントには「購読アカウント」と「サービスアカウント」の2種類があります。
アカウント内のコンテンツを充実させたいときは、「サービスアカウント」を取得してください。画面内の表示位置も良く開封率が高くなり、カスタマイズすればミニゲームなどを組み込むこともできます。フォローに対する解除防止を高めるのに効果的です。
ただしサービスアカウントは配信数が月4回と制限があるため、とにかく情報を数多く配信したいという場合は「購読アカウント」を取得してください。
5. 日本企業のプロモーション事例
WeiboとWeChatを利用してプロモーションを行った日本企業の例を3つご紹介します。
事例① 某子供向け商品メーカー
施策: WeChat内での簡易抽選ゲームを利用したキャンペーン施策
キャンペーン内容: 参加者全員に約1,000円のクーポンプレゼント。また抽選で10名に約10万円のベビーカー、300名に約3,000円のクーポン券のプレゼントを行う(※抽選はWeChat内の簡易ゲームにて実施)
結果: 見込み客となるWeChatのフォロワーを5万人獲得/日本の実店舗への来訪者 約900名(来店率1.8%)
事例② 某コンビニエンスストアー
施策: Weibo、WeChatにて動画を利用したミニドラマ配信
キャンペーン内容: 動画にてオリジナルのミニドラマを定期的に配信。通常の記事より高い開封率で人気コンテンツとなる
結果: フォロワー数(Weibo)478%UP(23万→133万)/フォロワー数(WeChat)600%UP(※数値非公開)
事例③ 某化粧品メーカー
施策: KOLを活用したプロモーションを実施
キャンペーン内容: KOLに対してサンプル商品を配布し、KOLによるプレゼントキャンペーンを実施してもらう。さらに、特集ページを設置し情報の露出を促進する
結果: [特集ページA]コメント数4,646件、閲覧数148.8万 / [特集ページB]コメント数2,538件、閲覧数99.1万
事例③では、KOLを利用したキャンペーンにより、商品のブランド力が高められたと同時にソーシャルバイヤーによってクチコミ情報が拡散されました。これにより、ユーザーとソーシャルバイヤー間での商品の売買が活性化されました。
6. 言葉の壁~翻訳はどうすればいい?
さて、ここまでWeiboとWeChatのプロモーションについて解説してきましたが、中国向けのコンテンツを作る際には「中国語の翻訳はどうするか?」という問題があります。中国語がわかるスタッフを雇って自社で運用できればベストですが、それもなかなか難しいでしょう。
クオリティの信頼度という意味では、翻訳会社や運用代行会社へ依頼するのが一番です。翻訳会社のなかでも、WeiboやWeChatの運用経験がある会社にお願いすることをおすすめします。
次の3社はいずれもWeibo、WeChatをネイティブで運用対応が可能な企業で、各種プロモーションを依頼することもできます。
Find Japan
https://weibo-japan.comKEMBO
http://kembo-net.com
価格を抑えたければ、Webサイトから翻訳のオーダーが可能なクロスランゲージの「365翻訳」というサービスを使ったり、ランサーズやクラウドワークスなどを利用してフリーランスの翻訳者に依頼したりする方法もあります。
こうした方法なら翻訳前の日本語1文字につき5~10円といった低価格で依頼できる場合もありますが、品質には振れ幅があります。
365翻訳(クロスランゲージ)
https://honyaku365.transer.com/クラウドワークス
http://crowdworks.jp/
中国語を恐れず、誠意を持って取り組もう
ここまで、中国のインターネット環境の理解から、サービスのアカウントを取得して運用をスタートするまでの流れを解説してきました。いかがでしたか?
中国は特有のインターネット事情があり、その特殊な市場では日本のように大手広告代理店に任せていれば結果が出るというものではありません。無駄に費用をかけることなく、効率的に情報発信を行ってください。
メディア規制がある中、最も大きな影響力を持つのはやはりWeiboとWeChatの2大SNSです。まずはこの2つのサービスを徹底的に理解することから始めてください。
そして中国語を恐れないでください。そもそも皆さんは漢字を小さいころから学んでいます。この時点で他の言語よりもアドバンテージが大きく、理解も早いのです。
中国のユーザーの行動を理解し有益な情報を適切に与え続け、そして誠意を持って対応すれば、必ずユーザーから信頼されて商品を手に取ってくれることでしょう。
皆さまの中国市場での活躍をお祈りいたします。
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